SK Hynix 2026年 第3四半期(3Q26)決算サマリー — 売上104.6兆ウォンで初の100兆超え、営業利益率79.7%、通期還元は約100兆ウォン

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SK Hynix 2026年 第3四半期(3Q26)決算サマリー

SK Hynix(韓国取引所: 000660、SK하이닉스)は 2026年10月28日(韓国時間) に、2026年7〜9月期(3Q26)の暫定決算を発表した。本稿はその要点を、数字・事業・需給・株主還元の順に整理する。

一次ソースは SK hynix Newsroom「3Q26 Business Results」 と PR Newswire 版プレスリリース(Yahoo Finance 転載)。2つのソースで数値はすべて一致した。数値は K-IFRS 連結の暫定値で、監査の過程で変わりうる。

サマリー(5行)

  1. 売上 104.62兆ウォン、営業利益 83.33兆ウォン。 前四半期比で売上 +32%、営業利益 +38%。四半期売上が初めて100兆ウォンを超え、営業利益率は 79.7%(前四半期 76.3%)まで上がった。
  2. 発表前のコンセンサスを上回った。 韓国経済新聞が10月27日に報じた EpicAI 集計の予想(売上 98.73兆・営業利益 77.19兆)に対し、実績は 売上 +6.0%、営業利益 +8.0% の上振れ。
  3. 純利益は 39.78兆ウォンで前四半期比 −58%。 前四半期は金融収益65.86兆ウォン(うち金融商品の評価益53.24兆)が乗り、純利益(93.92兆)が営業利益(60.54兆)を33兆ウォン上回っていた。今回は逆に営業利益を43.6兆ウォン下回った。決算説明会によると、ウォン高による為替関連の純損失11.6兆と、投資資産の評価損22.9兆が主因。
  4. HBM4 が主力に交代する。 HBM4 の出荷が本格化し、4Q には出荷量・売上ともに HBM3E を上回る見通し。主要顧客14社と長期契約(LTA、通常5年)を結び、2027〜28年の生産能力の50%超が契約で埋まった。
  5. 2026年度の株主還元は約100兆ウォン。 現金配当30兆以上と、自社株買い・消却60兆以上の組み合わせ。3Q の配当は1株2万ウォン(うち1万ウォンはキオクシア投資益による特別配当)。

関連ページ: 前々四半期の 1Q26 決算サマリー(粗利率・COGS の時系列つき)。月次の輸出統計など先行指標は SK Hynix のメーカーページ にまとめている。


1. 損益: 売上は前期比+32%、営業利益は+38%

売上から純利益までの段階

2026年7–9月期の売上104.62兆ウォンから営業費用を引いて営業利益83.33兆、為替関連の純損失11.6兆と投資資産の評価損22.9兆などを引いて税引前利益50.71兆、法人税などを引いて純利益39.78兆になるウォーターフォール
図1: 3Q26 は営業段階で売上の79.7%が残ったが、為替関連の純損失11.6兆と投資資産の評価損22.9兆で税引前利益は50.71兆まで減った。営業外の2項目は決算説明会の数字(0.1兆単位)、営業費用は内訳が未開示なので1本で描いている
2026年4–6月期の売上79.32兆ウォンから売上原価と販管費を引いて営業利益60.54兆、金融収益65.86兆を足し金融費用などを引いて税引前利益122.71兆、法人税28.79兆を引いて純利益93.92兆になるウォーターフォール
図2: 前四半期(2Q26)は半期報告書で内訳まで分かる。営業利益60.54兆ウォンに金融収益65.86兆(うち評価益53.24兆、配当収益10.03兆)が乗り、法人税28.79兆を引いても純利益が営業利益を上回った。図1と同じ縮尺

四半期の推移

SK Hynixの四半期売上と営業利益の推移。2024年4–6月期の16.42兆ウォンから2026年7–9月期の104.62兆ウォンへ、営業利益率は33%から80%へ
図3: 売上は2024年4–6月期から10四半期で6.4倍。棒の色の部分(営業利益)の割合は33%から80%まで上がり、増えた売上のほとんどが営業利益に残っている
期間売上営業利益営業利益率純利益純利益率
3Q25(2025年7-9月)24.45兆KRW11.38兆KRW46.6%12.60兆KRW51.5%
4Q25(2025年10-12月)32.83兆KRW19.17兆KRW58.4%——
1Q26(2026年1-3月)52.58兆KRW37.61兆KRW71.5%40.35兆KRW76.7%
2Q26(2026年4-6月)79.32兆KRW60.54兆KRW76.3%93.92兆KRW118.4%
3Q26(2026年7-9月)104.62兆KRW83.33兆KRW79.7%39.78兆KRW38.0%

(出所: 3Q25・2Q26・3Q26 は 3Q26 リリースの比較表。1Q26・4Q25 は 1Q26 決算サマリー で SK Hynix 公式IRから転記した値。4Q25 の純利益は本稿では確認していない。利益率はリリースの金額から本稿で計算。リリース表記は営業利益率80%・純利益率38%)

比較売上営業利益
前四半期比(QoQ)+32%+38%
前年同期比(YoY)+328%+632%

売上の伸び(+32%)より営業利益の伸び(+38%)が大きい。増えた売上25.30兆ウォンのうち22.79兆ウォン(90%)が営業利益に乗った計算になる。1Q26 の記事で見た「単価が上がり、原価はほとんど増えない」構造が3Qも続いている。

コンセンサスとの比較

項目予想(EpicAI 集計)実績差
売上98.73兆KRW104.62兆KRW+6.0%
営業利益77.19兆KRW83.33兆KRW+8.0%
営業利益率78.2%79.7%+1.5pt

(出所: 韓国経済新聞 2026年10月27日。証券各社の予想平均。単一ソースなので参考値として扱う)

同じ記事は、発表前の2026年通期予想を売上 341.64兆・営業利益 262.69兆ウォンとしていた。1〜3Qの実績累計は売上 236.51兆・営業利益 181.49兆ウォンなので、通期予想から逆算した4Qは 売上約105兆・営業利益約81兆ウォン となり、3Q実績とほぼ同じ水準だ。3Qが予想を上回った以上、4Qの予想は今後切り上がる可能性が高い。

強気のメリッツ証券の予想との比較

メリッツ証券(キム・ソヌ氏)は10月12日のレポートで、3Q の営業利益を 80.1兆ウォン(前四半期比+32%)と予想していた。内訳は DRAM 63兆(営業利益率84%)、NAND 17兆(同69%)。当時の市場予想とされた74兆ウォンを6兆上回る、各社の中でも強気の数字だった。

SK Hynixの3Q26営業利益の予想と実績。10月上旬の市場予想74.0兆、10月27日の市場予想77.19兆、メリッツ証券80.1兆に対し、実績は83.33兆
図4: 実績83.33兆ウォンは、強気だったメリッツ証券の予想80.1兆も4.0%上回った。10月上旬の市場予想74兆に対しては12.6%、発表前日の市場予想77.19兆に対しては8.0%の上振れ
予想営業利益実績との差
市場予想(10月上旬)74兆KRW実績が +12.6%
市場予想(10月27日、EpicAI 集計)77.19兆KRW実績が +8.0%
メリッツ証券(10月12日)80.1兆KRW実績が +4.0%
実績83.33兆KRW—

(出所: メリッツ証券の予想は ビジネスポスト と ニューデイリー の10月12日の報道。レポートの原文は確認していない。10月上旬の市場予想74兆は同じ報道が挙げた数字で、集計元は書かれていない)

メリッツは2026年通期の営業利益を264兆ウォン、2027年を454兆ウォンと見ていた。3Q までの実績累計181.49兆から逆算すると、通期264兆に届くには4Q で82.5兆ウォンあれば足りる。3Q 実績(83.33兆)と同じ水準で届く計算だ。SK Hynix は部門別の営業利益を開示していないので、DRAM 63兆・NAND 17兆という内訳がどちらで外れたかは確かめられない。

追記(2026年10月29日): メリッツ証券が決算を受けて予想を引き上げた。 10月28日のレポートで、4Q の営業利益予想を86.2兆から103.8兆ウォンへ、2026年通期を264.5兆から285.3兆ウォンへ、2027年を481.0兆ウォンへ上げた(目標株価320万ウォンは据え置き)。上の「4Q 82.5兆で届く」という計算は旧予想に基づくもので、新しい予想では4Q に103.8兆を見込んでいる。原本を読んだまとめは メリッツ証券の SK Hynix 3Q26 レビューを原本で読む。

この先のハードル: 4Q は87.25兆、2027年は四半期100兆台

FnGuide のコンセンサス画面(2026年10月27日時点。3Q 決算の発表前)では、営業利益の市場予想は次のとおり。四半期の予想が載っているのは2027年1–3月期までなので、2027年4–12月は通期予想から逆算した平均で示す。

期間営業利益の予想前の期間比
2026年10–12月87.25兆KRW3Q 実績比 +4.7%
2027年1–3月93.58兆KRW+7.3%
2027年4–12月(四半期平均)103.42兆KRW+10.5%
(参考)2026年通期262.69兆KRW—
(参考)2027年通期403.84兆KRW2026年通期比 +53.7%
SK Hynixの四半期営業利益。2025年1–3月期7.44兆から2026年7–9月期83.33兆まで実績、市場予想は2026年10–12月期87.25兆、2027年1–3月期93.58兆、2027年4–12月は平均103.42兆
図5: 4Q の予想87.25兆は3Q 実績の+4.7%、2027年1–3月期は93.58兆、4–12月は四半期平均103.42兆。前四半期比の伸びは+96%→+61%→+38%と鈍ってきており、予想はこの先+5〜10%台の伸びを置いている
四半期営業利益前四半期比
2025年1–3月7.44兆KRW△7.9%
2025年4–6月9.21兆KRW+23.8%
2025年7–9月11.38兆KRW+23.6%
2025年10–12月19.17兆KRW+68.5%
2026年1–3月37.61兆KRW+96.2%
2026年4–6月60.54兆KRW+61.0%
2026年7–9月83.33兆KRW+37.6%
2026年10–12月(予想)87.25兆KRW+4.7%
2027年1–3月(予想)93.58兆KRW+7.3%
2027年4–12月(予想・四半期平均)103.42兆KRW+10.5%

これらの予想は、3Q の予想が76.96兆だった時点のものだ。予想した側から見れば「3Q 76.96兆 → 4Q 87.25兆」で+13.4%の伸びを置いていた。3Q が予想を6.4兆上回ったので、4Q のハードルは実績比で+4.7%まで下がった形になる。ただし、3Q の上振れを受けて予想は今後切り上がる可能性が高い。

注意点が1つある。FnGuide の通期予想262.69兆から1〜3Q の実績(181.49兆)を引くと、4Q は約81.2兆ウォンになり、四半期予想の87.25兆と6兆ほど食い違う。通期と四半期では予想を出している証券会社の顔ぶれが違うためと考えられる。メリッツ証券の通期264兆からの逆算では82.5兆ウォンだった。2027年4–12月の平均103.42兆も通期予想からの逆算なので、同じずれを含みうる。

(出所: FnGuide Company Guide のコンセンサス画面、2026年10月27日時点の値を10月28日に取得。報道では MoneyToday 2026年10月19日 が4Q を87.27兆と伝えていた)

純利益が前四半期から半分以下になった点

営業利益は増えたのに、純利益は 93.92兆 → 39.78兆ウォンと 54.15兆ウォン減った。営業利益との差を並べると次のとおり。

営業利益と純利益の四半期推移。2026年4–6月期は純利益93.92兆が営業利益60.54兆を上回り、7–9月期は純利益39.78兆が営業利益83.33兆を下回った
図6: 2025年7–9月期から2026年1–3月期までは、純利益と営業利益の差は数兆ウォンに収まっていた。4–6月期に+33.38兆、7–9月期に△43.56兆と、直近2四半期だけ差が大きく振れている
期間営業利益純利益純利益 − 営業利益
1Q2637.61兆KRW40.35兆KRW+2.74兆KRW
2Q2660.54兆KRW93.92兆KRW+33.38兆KRW
3Q2683.33兆KRW39.78兆KRW−43.56兆KRW

2Q の内訳は、8月18日に SEC へ提出された 2026年半期報告書(Form 6-K) の連結損益計算書と注記24で確認できる(図2)。

2Q26(4〜6月、3か月)金額
営業利益60.54兆KRW
+ 金融収益+65.86兆KRW
 うち金融商品の評価益53.24兆KRW
 うち配当収益10.03兆KRW
 うち為替差益2.15兆KRW
 うち受取利息など0.44兆KRW
− 金融費用△3.64兆KRW
 うちデリバティブ損失2.48兆KRW
− 持分法損益・その他の収益と費用△0.05兆KRW
= 税引前利益122.71兆KRW
− 法人税(実効税率 23.5%)△28.79兆KRW
= 純利益93.92兆KRW

金融収益の8割(80.8%)が金融商品の評価益だった。営業利益の外側で、営業利益に近い規模の利益が乗っていたことになる。

3Q の内訳は速報のリリースには載っていないが、同日の決算説明会で CFO のキム・ウヒョン氏が説明した(図1)。営業外では、ウォン高による為替関連の純損失が11.6兆ウォン、投資資産の評価損が22.9兆ウォン出て、営業外の純費用は合計32.6兆ウォン。税引前利益は50.7兆ウォンだった。

3Q26(7〜9月、3か月)金額
営業利益83.33兆KRW
− 為替関連の純損失△11.6兆KRW
− 投資資産の評価損△22.9兆KRW
+ その他の営業外損益(差額)+1.9兆KRW
= 税引前利益50.71兆KRW
− 法人税など(差額)△10.93兆KRW
= 純利益39.78兆KRW

(出所: 為替と評価損は Investing.com が公開した決算説明会の文字起こし(AI で作成し編集者が確認したもの)。税引前利益50兆7085億ウォンは暫定実績の公示を伝えた韓国の報道による。2Q の122.71兆から58.7%減で、報道の減少率とも合う。法人税などは純利益との差額)

2Q に大きく乗った評価益の一部が、3Q には評価損として戻った形だ。勘定ごとの正確な内訳は、四半期末から45日以内(11月中旬まで)に出る四半期報告書で確かめられる。

評価益の対象がどの金融商品かは、半期報告書の注記からは特定できなかった。キオクシア関連の金融資産は、2024年度の監査報告書で「長期投資資産に含まれる金融資産の公正価値評価」として監査上の主要な検討事項に挙がっていた。ただ、2Q の評価益53.24兆ウォンのうちどれだけがキオクシア分かは示されていない。3Q の評価損22.9兆ウォンも、決算説明会では「投資資産の評価損」とだけ説明された。X 上では、キオクシアの株価が6月末から9月末にかけて大きく下がったことと結びつける投稿が多い。


2. 事業: HBM4 の本格出荷と、サーバー向け DDR5・eSSD

製品別の売上(HBM は推定)

SK Hynixの四半期売上の製品別内訳。2023年10–12月期から2026年7–9月期まで。HBMの推定売上は1.1兆ウォンから10.6兆ウォンへ増えたが、DRAM売上に占める比率は1Q25の45%から14%へ下がった
図9: HBM の推定売上は12四半期で約9.5倍になった。それでも HBM 以外の DRAM(約11倍)と NAND(約7.7倍)がそれ以上に伸び、DRAM に占める HBM の比率は2025年1–3月期の45%をピークに下がっている

※1 DRAM・NAND・その他の金額(会社開示): 各四半期の決算資料(SK hynix IR の決算説明資料)にある「Revenue by Product」の構成比(整数%)に、四半期売上を掛けた。1Q25 と 1Q26 は、SEC に提出した F-1/A(2026年7月6日)に製品別の金額が載っているので、そちらを使った。構成比は整数に丸められているので、±0.5pt の誤差がある。検算として、2024年の4四半期分と2025年4–12月期の積み上げを F-1 の通期金額と比べ、DRAM・NAND とも2%以内で一致することを確かめた。

※2 HBM の金額(筆者推定): SK hynix は HBM 単独の売上を開示していない。そこで、決算資料の「Revenue by Application」にある DRAM 用途別の積み上げ棒グラフ(数字は書かれていない)から、「Graphics(incl. HBM)」の帯が DRAM 全体に占める比率を画素単位で測った。測定値は 1Q25 が47.3%、3Q26 が15.5%で、誤差は ±1pt。隣の四半期の資料にある同じ棒を測り直しても、差は0.2pt 以内だった。この帯にはゲーム用の GDDR も含まれるので、GDDR の分として DRAM 売上の2ptを引き、HBM の比率とした。3Q26 なら(15.5% − 2pt)× DRAM 売上78.5兆ウォン = 約10.6兆ウォンになる。

※3 GDDR を2ptとした根拠: 会社が HBM の比率を数字で示したのは2回だけで、3Q24 が「DRAM 売上の30%」、4Q24 が「40%超」だった。同じ四半期の帯の測定値は33.1%と42.3%なので、差は2〜3pt になる。3pt を引くと 4Q24 が39.3%となり「40%超」を満たさないため、2pt を採った。

※4 推定の検算: 推定値を、会社の発言と第三者の推計に照らした。

  • 2Q24: 会社は「HBM 売上が前四半期比+80%超」としており、推定は+98%
  • 3Q24: 会社は「前四半期比+70%超」としており、推定は+70%。測定誤差の範囲で一致とみなした
  • 2025年通期: 会社は「HBM 売上が前年の2倍超」としており、推定は2.2倍
  • 2Q26・3Q26: Bernstein は輸出統計の回帰分析で、3Q26 を約76億ドル(約10兆ウォン、前四半期比+11%)と推計している。推定は 3Q26 が10.6兆、2Q26 が9.0兆

※5 限界: GDDR の比率が四半期ごとに変われば、推定もその分ずれる。また 2Q26 以降の決算資料はグラフの凡例の並び順が逆になっている。帯の色で同じ区分を照合したが、区分の定義そのものが変わっていたとしたら確かめようがない。4Q25 から 1Q26 にかけて HBM がほぼ横ばいという点は、第三者の推計で裏付けが取れていない。

2026年に入ってからの増収を引っぱっているのは HBM ではなく、サーバー向け DDR5 などの汎用 DRAM と NAND だ。3Q26 の売上104.6兆ウォンの内訳を推定すると、HBM が約10.6兆、HBM 以外の DRAM が約67.9兆、NAND が約25.1兆になる。HBM の推定売上は 4Q25 から 1Q26 にかけてほぼ横ばいで、2Q26 は+13%、3Q26 は+18%と伸びは緩やかだった。汎用 DRAM は同じ期間に 17.0兆から67.9兆へ4倍になった。HBM の価格は年単位の契約で先に決まるのに対し、汎用 DRAM は四半期ごとの値上げがそのまま売上に乗る。この差が比率の逆転に表れている。

2027年の HBM 値上げで、営業利益はどこまで伸びるか

SK hynix 3Q26 決算説明資料の11ページ「Products/Tech Strategy」。HBM の項に、M15X を2026年末までにフル稼働へ引き上げること、4Q に HBM4 が出荷量・売上で HBM3E を上回ること、2027年の HBM 交渉を終え汎用 DRAM との収益性の差が大きく縮まる見通しであることが書かれている
3Q26 決算説明資料の11ページ。HBM の3つ目の項目「2027 HBM negotiations finalized; profitability gap with conv. DRAM expected to narrow meaningfully」が、2027年の値上げを示している(出所: SK hynix IR)

決算資料は、2027年分の HBM の交渉を終え、汎用 DRAM との収益性の差が大きく縮まると書いた。縮まるのは利益率そのものではなく、HBM と汎用 DRAM の差だ。図9で見たとおり、2026年は汎用 DRAM の値上がりが HBM を置き去りにした。HBM の価格は2025年のうちに年契約で決まっていたからだ。2027年はその差を値上げで取り戻す。決算説明会でも、2027年の HBM は売上も利益も前年比で大きく伸び、利益率も改善すると説明した(決算説明会の要約 の Q6)。

値上げの幅は会社が開示していない。外部の予想では、TrendForce が9月29日に(TrendForce のプレスリリース)、2027年の HBM の平均販売価格(ASP)を前年比+121%、つまり2.2倍と予想している。この倍率で、営業利益の上乗せを試算した。

2026年の HBM 利益率(仮定)HBM4 の原価増(仮定)2027年の HBM 利益率営業利益の上乗せ(年)2026年の営業利益(予想262.7兆)比
70%なし86%約+48兆+18%
70%1台あたり+30%82%約+44兆+17%
60%なし82%約+48兆+18%
60%1台あたり+30%77%約+43兆+16%

どの仮定でも、上乗せは年40兆ウォン台半ば、2026年の営業利益の2割弱になる。値上げ後の HBM の利益率は77〜86%で、3Q26 の全社の営業利益率80%と並ぶ。資料の「差が大きく縮まる」と整合する水準だ。

ただし、この上乗せは2027年の市場予想にある程度織り込まれている。3Q 決算前の予想(FnGuide、10月27日時点)では、2027年の営業利益は403.8兆ウォンで、2026年から141兆増える。HBM の値上げはその3割前後を説明する計算になる。残りは汎用 DRAM と NAND の値上げと、出荷量の増加だ。

※1 2026年の HBM 売上(約39.6兆ウォン): 図9の推定(1Q26 8.0兆、2Q26 9.0兆、3Q26 10.6兆)に、4Q26 を12.0兆と置いて足した。4Q26 は 3Q26 の伸び(前四半期比+18%)がやや鈍ると見た仮定で、HBM4 が HBM3E を上回るという会社の見通しを踏まえている。

※2 試算の式: 出荷量は2026年と同じと置いた。値上げで増えた売上はそのまま営業利益になり、原価だけが HBM4 の分だけ増える。営業利益の上乗せ = 2026年の HBM 売上 ×(2.21 − 1)− 2026年の HBM 原価 ×(原価の増加率)。2026年の HBM 原価は、売上 ×(1 − 利益率)で出した。

※3 2.2倍の中身: TrendForce の ASP は業界全体の平均で、SK hynix 個別の値上げ幅ではない。また、単価の高い HBM4 と HBM4E への切り替えも含んだ「製品構成込み」の平均で、同じ製品の値上げ幅ではない。HBM4 は土台のチップ(ベースダイ)を外部に作らせるなど1台あたりの原価が上がるので、その分を「原価増」の列で見た。

※4 2026年の HBM 利益率: 会社は開示していない。全社の営業利益率は 2Q26 が76%、3Q26 が80%で、それより低いと見て60%と70%の2通りを置いた。

※5 入れていないもの: 出荷量の増加は入れていない。M15X は2026年末にフル稼働になる予定なので、2027年は出荷量も増えるはずで、その分は上乗せがさらに大きくなる。逆に、顧客が積層数を12段から8段へ減らす動きは、1台あたりの単価を下げる方向に働く。

DRAM

  • 成長の柱は サーバー向け DDR5 の販売増 と HBM4 出荷の本格化
  • 4Q26 には HBM4 が出荷量・売上ともに HBM3E を上回り、主力製品になる見通し。対応のため、清州の M15X を年末までにフル稼働へ引き上げる
  • 1c 世代(10nm級の第6世代)プロセスの比率を急ピッチで上げる
  • AI サーバー向けに DDR5 と、LPDDR5 ベースのモジュール SOCAMM の販売を広げる

NAND

  • 321層 TLC の企業向け SSD(eSSD)の販売が拡大。データセンター向けの高付加価値製品が全般に伸びた
  • 国内 NAND 生産能力のうち321層の比率を、4Q26 に半分超へ引き上げる
  • 中長期では、HBF(High Bandwidth Flash)とシステム最適化を軸に、NAND を AI 向けの中核製品に育てる方針

3. 需給と長期契約: 2027〜28年の生産能力の半分超が契約済み

  • 先端プロセスの技術的な難しさと新工場の立ち上げに時間がかかることから、メモリの供給不足は2030年まで続く と会社は見ている
  • 短期の需要はエンタープライズと個人向けの AI、中長期は自動運転・ロボットなどの「フィジカル AI」が牽引すると説明
  • グローバルCSP を含む主要顧客14社と LTA を締結。契約期間は通常5年で、延長を協議している顧客もある
  • LTA は 2027年・2028年の総生産能力の50%超 をカバーする。価格は市況を反映した「合意済みのレンジ」の中で決まる

価格がレンジ連動である点は押さえておきたい。数量は固まったが、価格まで固定されたわけではない。


4. 財務と投資: ネットキャッシュ 98.7兆ウォン

SK Hynixの現金・借入金・ネットキャッシュの推移。ネットキャッシュは2025年12月末の12.7兆ウォンから2026年9月末の98.7兆ウォンへ
図7: 現金性資産は9か月で3倍超に増え、借入金は22.2兆から15.8兆ウォンへ減った。ネットキャッシュは12.7兆から98.7兆ウォンになった(2026年6月末は前四半期末比からの逆算)
項目3Q26末前四半期末比
現金性資産114.5兆KRW+26.5兆KRW
借入金15.8兆KRW−2.8兆KRW
ネットキャッシュ98.7兆KRW—

リリースの「現金」は、貸借対照表の「現金及び現金同等物」だけではない。2026年6月末の半期報告書と突き合わせると、現金及び現金同等物26.84兆、短期金融商品22.40兆、短期投資資産38.72兆の合計87.96兆ウォンが、リリースの前四半期末の値(114.5兆 − 26.5兆 = 88.0兆)と一致する。本稿ではこの範囲を「現金性資産」と呼ぶ。

貸借対照表(2026年6月末)

3Q26 の貸借対照表は速報に載っておらず、11月中旬の四半期報告書で出る。ここでは直近で開示されている2026年6月末の連結貸借対照表を、総資産を100とした比例縮尺で示す。

SK Hynixの2026年6月末の貸借対照表を総資産100の比例縮尺で示した図。総資産348.9兆ウォンのうち現金性資産88.0兆、長期投資資産85.3兆、有形固定資産88.9兆。負債86.2兆、純資産262.7兆
図8: 2026年6月末の総資産348.9兆ウォンは、現金性資産25.2%・長期投資資産24.5%・有形固定資産25.5%でほぼ4分の1ずつ。調達側は利益剰余金だけで69.4%を占め、借入金は5.3%にとどまる
  • 総資産は2025年12月末の176.1兆から、半年で348.9兆ウォンへほぼ倍になった
  • 長期投資資産は2025年12月末の14.5兆から85.3兆ウォンへ、半年で約6倍になった。上期の金融商品の評価益(63.18兆、うち2Q 53.24兆)と規模は近いが、どの勘定にいくら乗ったかの内訳は開示されていない
  • 負債のうち最大は未払法人税32.0兆ウォンで、借入金(18.6兆)より大きい
  • 2027年は龍仁(ヨンイン)クラスター第1期の本格稼働などで、設備投資が大きく増える 見通し
  • 投資の規模と時期は、顧客需要・製品競争力・収益性・投資効率を見ながら柔軟に調整するとしている
  • 具体的な設備投資額はリリースに書かれていない

5. 株主還元: 2026年度に約100兆ウォン

項目内容
2026年度の目標約100兆ウォン(現金配当30兆以上 + 自社株買い・消却60兆以上)
60兆に含まれるもの8月に発表した40兆ウォンの自社株買い。先週買い付けを終え、近く消却する
還元の基準フリーキャッシュフローの50%以上
3Q の配当(取締役会決議)総額14兆ウォン、1株2万ウォン(業績連動の普通配当1万ウォン + キオクシア投資益の特別配当1万ウォン)
3Q の自社株買い(取締役会決議)20兆ウォン。うち10兆ウォンは消却して還元額に算入、残る約10兆ウォンは従業員報酬に充てるため還元額に含めない

運用の原則として、配当は営業成績にもとづいて決め、大きな投資益が出たときは特別配当で返し、自社株買いは毎四半期続けると明記した。今年キオクシア投資で得た利益の大半は株主に還元するとしている。

自社株買い20兆ウォンのうち半分が従業員報酬向けである点は見落としやすい。見出しの「20兆ウォン」と、還元額に数える「10兆ウォン」は分けて読む必要がある。


6. リリースに書かれていないこと(未確認)

次の項目は、本稿の執筆時点(10月28日午前)で一次ソースから確認できていない。

  • 3Q26 の営業外損益の内訳 → 決算説明会で為替関連の純損失11.6兆・投資資産の評価損22.9兆と説明(第1章)。勘定ごとの正確な数字は四半期報告書待ち
  • DRAM・NAND のビット出荷と平均販売価格(ASP) → 決算説明会で DRAM はビット出荷+10%前後・ASP 20%台後半の上昇、NAND はビット出荷が小幅減・ASP 20%台半ばの上昇と説明
  • 2026年・2027年の設備投資の金額(決算説明会でも「2027年は大きく増える」との説明のみ)
  • カンファレンスコールでの経営陣の発言 → 決算説明会の要約記事 にまとめた
  • 部門別(DRAM / NAND)の売上・営業利益
  • 売上総利益と粗利率(1Q26 記事では IR サイトの損益計算書から取得した項目)
  • 決算発表後の株価の反応

出典

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