開発financial-data

キオクシア 2026年3月期 第4四半期(Q4 FY25)決算サマリー

キオクシアホールディングス株式会社(東証プライム: 285A)が 2026年5月15日 に発表した 2026年3月期(FY25)通期・第4四半期 決算と、翌期 2027年3月期 第1四半期(Q1 FY26、2026年4月〜6月)ガイダンス のまとめ。

公式の決算説明資料2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)PDF、四半期ごとの過去決算短信(Q1 / Q3)から、四半期PL(売上収益・売上原価・売上総利益・粗利率)の推移を引き直したもの。

::: callout サマリー(3行)

  1. Q4 FY25 単独で売上が ¥1兆29億。前四半期(Q3 FY25 ¥5,436億)から +¥4,592億、ほぼ倍増。IFRS 粗利率 64.1%、Non-GAAP 営業利益 ¥5,991億、Non-GAAP 親会社帰属四半期利益 ¥4,099億 で、いずれも単四半期で過去最高を更新。
  2. 「売上は伸びる、COGS はほぼ横ばい」。Q1 FY25 → Q4 FY25 で売上は ¥3,428億 → ¥1兆29億(約3倍)に伸びた一方、売上原価は ¥2,716億 → ¥3,599億(+¥883億、+33%)に留まっており、増分のほぼ全部が粗利に直行している。これはマイクロンが FY26 Q3 決算で示した構造とまったく同じ形。
  3. Q1 FY26(4-6月)ガイダンスは売上 ¥1兆7,500億・Non-GAAP 営業利益 ¥1兆3,000億・Non-GAAP 純利益 ¥8,690億1四半期だけで FY25 通期実績(純利益 ¥5,596億)を上回る という、メモリ史上でも極めて異例の予想。会社 OP 利益率ガイド 74.2% と Q4 SG&A 実績から逆算すると、Q1 FY26 の粗利率は約 77% への上振れを織り込んでいる計算になる。 :::

::: callout 関連ページ: 同時期のマイクロン(NASDAQ: MU)FY26 Q3 決算 Prepared Remarks 全文和訳・SCA(戦略的顧客契約)解説は こちら。本記事の図1(売上 vs COGS)は、マイクロン記事の同名チャート(figure-11-revenue-cogs-gm)を、キオクシアの IFRS データで作り直したものです。 :::

::: callout 社内ダッシュボード: キオクシア(285A)の 「実績 vs 前Q時点の会社ガイダンス」 6四半期分のチャート・表・株価反応beat-monitoring/285A で時系列追跡しています(Non-GAAP 営業利益ベース、Q4 FY26 まで/コンセンサスではなく自社の前Q会社ガイダンスを基準にビート率を測定)。さらに Q1 FY2020〜Q4 FY2025 の全24四半期 IFRS PL / BS / CF と Non-GAAP 主要指標memory-makers/kioxia に集約されています(表示は『市況ボトム→AI反転』が1画面に収まる直近15Qに絞り込み、ロー データは全24Q保持)。 :::


図1: 売上 vs 売上原価(COGS) — Q4 で COGS は据え置き、増分はほぼ全部 粗利に直行

Kioxia 四半期別 売上・売上原価・粗利率 推移(Q1 FY25 〜 Q1 FY26 ガイド)
図1: キオクシアの四半期別 売上収益(積み上げバー上端)・売上原価 COGS(グレー部分)・売上総利益 GP(紫部分)・IFRS 粗利率(右軸折れ線)。Q1 FY25 → Q4 FY25 で売上は約3倍、COGS は +33% のみ。Q1 FY26 ガイドは売上がさらに +74.5%(QoQ)、粗利率は会社 OP 利益率ガイド 74.2% から逆算した推計値で ~77%。

数字で読む構造

期間売上収益売上原価売上総利益粗利率
Q1 FY25(2025年4-6月)¥3,428億¥2,716億¥712億20.8%
Q2 FY25(2025年7-9月)¥4,483億¥3,262億¥1,221億27.2%
Q3 FY25(2025年10-12月)¥5,436億¥3,670億¥1,766億32.5%
Q4 FY25(2026年1-3月)¥1兆29億¥3,599億¥6,429億64.1%
Q1 FY26 ガイド(2026年4-6月)¥1兆7,500億〜¥4,020億(推計)〜¥1兆3,480億(推計)〜77%(推計)

(出所: キオクシア決算短信(IFRS)。Q2 / Q1+Q2 の単四半期数値は Q3 累計(¥1兆3,348億)から Q3 単四半期(¥5,436億)と Q1 単四半期(¥3,428億)を差し引いて算出。Q1 FY26 の COGS / GP / 粗利率は、会社が開示した GAAP 営業利益ガイド ¥1兆2,980億・Non-GAAP 営業利益ガイド ¥1兆3,000億から、Q4 FY25 実績の SG&A 等を加算して推計した値。)

「COGS はほぼ動かない」が今 NAND で起きていること

Q1 FY25(¥3,428億)から Q4 FY25(¥1兆29億)までの 売上 +¥6,601億(約3倍) に対して、売上原価は +¥883億(+33%)に留まっている。製造能力(ウェハ投入・ビット出荷量)は大きく伸ばしておらず、増分の正体は 平均販売単価(ASP)の急上昇 だ。

実際、決算短信本文(Q4 単四半期の前四半期比較)にも次のように明記されている。

当第4四半期連結会計期間(2026年1月1日〜3月31日、以下「当四半期」)の売上収益は1兆29億円(前四半期比4,592億円増加)となりました。これは 出荷量(記憶容量ベース)が減少したものの、平均販売単価の大幅な上昇 などによるものです。

つまり、Q3 → Q4 で ビット出荷は減らしている のに、単価上昇だけで売上 +¥4,592億 / 粗利 +¥4,663億 を稼いだ。粗利 +額が売上 +額よりわずかに大きい(粗利は ¥1,766億 → ¥6,429億 で +¥4,663億)のは、Q4 では売上原価が QoQ で逆にわずかに減少(¥3,670億 → ¥3,599億)していることによる。

この構造はマイクロン Q3 FY26(売上 $41.5B、粗利率 84.6%)と同じ形で、メモリ業界全体で「製造量を増やさず、単価上昇だけで粗利が直線的に積み上がる」フェーズに入った ことを示す決算と言える。


Q4 FY25 単独の主要数値

決算短信の「前四半期比較表」(Q3 FY25 → Q4 FY25)から、主要な絶対値と差分を整理する。

指標Q3 FY25 実績Q4 FY25 実績QoQ 差分
売上収益¥5,436億¥1兆29億+¥4,592億
 うち SSD & ストレージ¥3,004億¥6,003億+¥2,999億
 うち スマートデバイス¥1,862億¥3,373億+¥1,511億
 うち その他¥570億¥652億+¥82億
売上原価¥3,670億¥3,599億△¥71億
売上総利益¥1,766億¥6,429億+¥4,663億
粗利率(IFRS)32.5%64.1%+31.6pt
GAAP 営業利益¥1,428億¥5,968億+¥4,540億
Non-GAAP 営業利益¥1,447億¥5,991億+¥4,545億
GAAP 親会社帰属四半期利益¥878億¥4,077億+¥3,199億
Non-GAAP 親会社帰属四半期利益¥895億¥4,099億+¥3,204億

ポイントは次の3点。

  • SSD & ストレージ売上が QoQ で約2倍(¥3,004億 → ¥6,003億)。記事タイトルにある通り、AI データセンター向け大容量 SSD の単価が一段上振れし、Q4 単独でセグメント売上が倍増した。
  • スマートデバイス売上も QoQ で +81%(¥1,862億 → ¥3,373億)。スマートフォン・組み込み向け NAND の単価上昇が広く波及している。
  • 売上原価は QoQ で △¥71億 と逆に減少。出荷ビットを増やさずに棚卸資産消化と単価上昇で利益が出ているため、COGS が動かない構造になっている。

FY25 通期業績(IFRS)

指標FY24 通期FY25 通期YoY
売上収益¥1兆7,065億¥2兆3,376億+37.0%
売上原価¥1兆1,370億¥1兆3,247億+16.5%
売上総利益¥5,694億¥1兆129億+77.9%
粗利率(IFRS)33.4%43.3%+9.9pt
GAAP 営業利益¥4,517億¥8,704億+92.7%
Non-GAAP 営業利益¥4,530億¥8,762億+93.4%
税引前利益¥3,707億¥7,841億+111.5%
当期利益¥2,723億¥5,545億+103.6%
Non-GAAP 親会社帰属当期利益¥2,660億¥5,596億+110.4%
Non-GAAP 1株当たり当期利益(EPS)519.96円1,024.07円+97.0%
親会社所有者帰属持分 当期利益率(ROE)23.7%51.9%

通期で見ても、売上 +37% に対して売上原価 +16.5% / 粗利 +78% という形で、典型的な「単価駆動」の決算になっている。年度を通じての ROE 51.9% は単年度の数字としては突出した水準。


Q1 FY26(2026年4月〜6月)ガイダンスの強さ

会社は同時に翌四半期(2027年3月期 第1四半期、2026年4月〜6月)のガイダンスを開示した。

指標Q4 FY25 実績Q1 FY26 ガイドQoQ
売上収益¥1兆29億¥1兆7,500億+74.5%
GAAP 営業利益¥5,968億¥1兆2,980億+117.5%
Non-GAAP 営業利益¥5,991億¥1兆3,000億+117.0%
GAAP 当期純利益(親会社帰属)¥4,077億¥8,700億+113.4%
Non-GAAP 当期純利益(親会社帰属)¥4,099億¥8,690億+112.0%

このガイダンスのインパクトを直感的にするために、いくつかの参照値と並べる。

  • Q1 FY26 だけで予想される Non-GAAP 純利益 ¥8,690億 は、FY25 通期 Non-GAAP 純利益 ¥5,596億 を 1四半期で上回る。前年同期(Q1 FY25 ¥182億)比では 約 48倍
  • Non-GAAP 営業利益 ¥1兆3,000億 は、Q4 FY25 単独実績 ¥5,991億 の 2.17倍。営業利益率は 74.2%(GAAP ベース)。
  • 2027年3月期 通期予想は地政学リスク・市場不確実性を理由に開示見送り。一方で四半期ガイダンスだけ強気に出してきた点は、会社が Q2 以降の単価動向に確信を持ち切れない留保とも読める。

なお、ガイダンス資料の中で会社は新製品計画として、218層 第8世代 3D フラッシュメモリ(BiCS FLASH)製品の2026年前半本格出荷開始次世代332層製品の量産計画 に言及している。設備投資(CapEx)は FY25 の 約2倍となる ¥4,500億 を計画していると報じられている(出典: EE Times Japan)。


経営陣のコメント・IR 説明会の論点

早坂伸夫 代表取締役社長CEO の発言(要旨)

決算短信の代表者欄には 代表取締役 早坂 伸夫 と記載されている(2026年5月15日付)。同日の決算説明会・各報道で取り上げられた発言の要旨は次の通り。

  • 生成 AI の活用が学習から推論にシフトする中、ストレージの重要性が強く認識された1年となった」(出典: ITmedia ビジネスオンライン 2026年5月15日
  • 「AI サーバー向け需要は一層強くなっている」(決算説明会、複数報道経由)
  • 製造能力強化策として、エンタープライズSSD「KIOXIA LC9 シリーズ」を含む各セグメントへの製品展開と、フラッシュメモリ製造力の強化を継続する方針

花沢秀樹 CFO の発言(要旨)

  • 売価の上昇は非常に大きなスピードで進んでいる」(出典: ビジネス+IT 2026年5月15日
  • 投資意欲の高い AI データセンター向け需要が、サプライヤー側の単価交渉力を押し上げているという認識

会社のセグメント別売上開示(FY25 通期)

決算短信の「経営成績等の状況の概要」セクションに従ったセグメント別売上は以下の通り。キオクシアは「メモリ事業の単一セグメント」だが、製品の用途別に開示している。

アプリケーションFY24 通期FY25 通期YoY
SSD & ストレージ¥9,911億¥1兆3,626億+37.5%
スマートデバイス¥5,012億¥7,600億+51.7%
その他¥2,142億¥2,150億+0.4%
合計¥1兆7,065億¥2兆3,376億+37.0%
  • SSD & ストレージが売上の 約 58% を占める主力事業。ここに AI 推論向け SSD の単価上昇が直撃した。
  • スマートデバイスが +52% で次に強い。スマートフォン NAND 単価の正常化と新世代スマホ向けの容量増が効いている。
  • その他(SD カード等のリテール製品、Sandisk グループ向けの製造合弁経由売上)は ほぼ横ばい。AI 起点の単価上昇は、まだリテール末端にはフルには波及していないことを示唆する。

市場の反応(X / Twitter 上のサマリー)

5月15日の決算発表後、X 上では次のような論点が広く取り上げられた(個別投稿の引用はX 検索 "キオクシア 285A 決算" から本記事執筆時に参照)。

  • 「コンセンサスを大幅超過」: Q4 売上は事前コンセンサス約 ¥9,253億 に対して実績 ¥1兆29億、純利益も予想 ¥3,836億 に対して ¥4,077億 と上振れ。
  • 「Q1 FY26 ガイドの強さが衝撃」: 1四半期だけで通期実績を上回る純利益予想に対して、「ガイダンスが本当ならメモリ史上前例なし」「48倍の根拠は AI データセンター向け NAND の構造変化」といった反応が多く見られた。
  • 株価反応: 発表後の取引で株価が急騰し、5月18日にサーキットブレーカーが発動。エヌビディア決算で AI 向けメモリ需要拡大が改めて確認されたことも追い風となり、時価総額が 30兆円を突破 したという報道(@apaes53 河合達憲氏ら)。
  • 元キオクシア社員の解説: 「サーバー向け売上が Q1 ¥2,000億 → Q4 ¥6,000億 と1年で3倍になった」「フラッシュが枯渇したら次は HDD が枯渇する」 という見立て(@mofmof_investor)。
  • 慎重論: 「HBM 作れないのが痛い」「メモリ株は需要消失局面の暴落リスクがある」「中国メーカーの増産・関税環境の変動リスク」といった反対サイドの意見も並存(@kamiyaf14 ほか)。
  • アナリスト見立て: ゴールドマン・サックスが 「2028年まで NAND の需給タイト感が継続」「2029年3月期まで粗利率 80% 前後を確保しながら増収増益が続く」 とのレポートを出していると引用(@kioxiaman 経由)。

マイクロン Q3 FY26 との比較(参考)

参考までに、同じく「売上は伸びる、COGS はほぼ横ばい、増分はほぼ全部 粗利に直行」の構造を示したマイクロン FY26 Q3 と並べる。

Kioxia Q4 FY25Micron Q3 FY26
期間2026年1〜3月2026年3〜5月
売上¥1兆29億 / 約 6.7B(¥150/換算)$41.5B
粗利率64.1%(IFRS)84.6%(GAAP)・84.9%(Non-GAAP)
次四半期ガイド粗利率~77%(推計)86%(Non-GAAP 会社開示)
主力ドライバーSSD & ストレージ売上 QoQ +99.8%データセンター売上 25B 突破、DC SSD 売上 5B 突破
構造的説明単価上昇主導、出荷ビット減でも増収SCA(戦略的顧客契約)16件で売上の半分以上を長期固定化

両社の決算は「短期サイクルの上ブレ」ではなく、「メモリ需給の構造転換」を別々の角度から映している。マイクロンは DRAM/HBM 主導、キオクシアは NAND/SSD 主導という違いがあるものの、両社ともに直近四半期で粗利率が前年比+30pt 前後の急上昇 を見せている点が共通している。


メモ・前提・出典

  • 本記事の数値はすべて IFRS ベース。Non-GAAP は PPA 影響額・株式報酬費用等の調整後ベースで、会社が経営管理上の社内指標として開示しているもの(監査対象外)。
  • Q2 FY25 単四半期の数値は、Q3 FY25 累計(¥1兆3,348億)から Q3 FY25 単四半期(¥5,436億)と Q1 FY25 単四半期(¥3,428億)を差し引いて算出。原典は Q1 決算短信 PDFQ3 決算短信 PDF通期 決算短信 PDF
  • Q1 FY26 ガイドの COGS / 粗利 / 粗利率は会社未開示 で、本記事の数字は 会社開示の GAAP 営業利益ガイド ¥1兆2,980億 + Q4 FY25 実績の SG&A 水準 ~¥460億 を加算した推計値。誤差レンジを含むので、会社開示は売上と OP / 純利益までしかない 点に注意。
  • CEO 名は公式 決算短信 の代表者欄に従い「早坂 伸夫 代表取締役」と記載した。一部報道(ITmedia 等)では「太田裕雄 社長」とする記述が見られたが、本記事は公式 IR 文書を一次ソースとして優先した。
  • 本記事はキオクシアホールディングス公式の翻訳・要約ではなく、当サイトが学習・記録目的で公開資料から作成したものです。投資判断には必ず公式の IR ライブラリを参照してください。

主な参照記事