メリッツ証券の SK Hynix 3Q26 レビューを原本で読む — 2026年営業利益を285兆、2027年を481兆ウォンへ上方修正、目標株価320万ウォン据え置き
メリッツ証券の SK Hynix 3Q26 レビューを原本で読む
SK Hynix の3Q26決算(2026年10月28日発表)を受けて、メリッツ証券の半導体アナリスト、キム・ソヌ氏が同日中にレポートを出した。X では韓国語の要約が回っているが、元の PDF はメリッツ証券のサイトで公開されている。本稿は原本を読んでまとめ、X の要約・会社の決算説明会の発言と突き合わせた。
- 原本: メリッツ証券 Company Brief「SK하이닉스 (000660) 실적 추정치 재상향 사이클 도래」(2026年10月28日、PDF 8ページ)
- X の要約: → @mindmoon_108 の投稿(2026年10月29日)
- 決算の数字: SK Hynix 3Q26 決算サマリー
- 決算説明会の発言: SK Hynix 3Q26 決算説明会の要約
レポートには「当社の許可なく複製・配布できない」との注記があるため、本稿は全文訳ではなく要約にとどめ、表は数値を引用して組み直した。
このレポートの要点
- 予想を引き上げた: 4Q26の営業利益予想を86.2兆から103.8兆ウォンへ20%、2026年通期を264.5兆から285.3兆ウォンへ8%上げた。2027年は481.0兆ウォンで、市場予想(FnGuide)を約19%上回る
- 上げた理由: 上半期は値上げ幅・出荷の伸びとも市場平均をやや下回っていたが、来年の HBM 条件、LTA の延長交渉、新工場 M15X の立ち上げで、これが逆転するとみる
- 株価の見方: 過去20年、メモリ株は利益予想の変化率で動いてきた。今後3か月で市場の予想が上がり、株価も戻るとみる
- 経営の評価: 配当より自社株買い・消却を続ける方針と、顧客の懐具合を見て投資する慎重さを、過去のメモリ好況にはなかった変化として評価した
- 目標株価: Buy、320万ウォンを据え置いた。レポート記載の10月28日の株価148.7万ウォンから115%の上昇余地(同日の終値は150.8万ウォン)
1. 3Q26 の実績をどう見たか
営業利益83.3兆ウォンは、FnGuide の市場予想77.0兆ウォンを8.3%、メリッツ自身の予想80.1兆ウォンを4%上回った。レポートは、80.1兆は市場で最も高い予想だったとしたうえで、ウォン高(原文は「為替レートの低下」)の逆風があってもそれを超えたと評価している。
| 項目 | 3Q26 実績 | 市場予想 | メリッツ予想 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 104.6兆ウォン | 98.2兆(+7%) | 99.9兆(+5%) |
| 営業利益 | 83.3兆ウォン | 77.0兆(+8.3%) | 80.1兆(+4%) |
| 営業利益率 | 80% | 78% | 80% |
| 支配株主純利益 | 39.5兆ウォン | 57.9兆(−32%) | 62.4兆(−37%) |
かっこ内は実績が予想をどれだけ上回ったか(下回ったか)。市場予想は FnGuide の集計で、昨日の決算サマリーで使った別の集計(営業利益77.19兆、上振れ8.0%)とは少しずれる。純利益が予想を大きく下回ったのは、営業外で為替関連の損失と投資資産の評価損が出たためだ(決算説明会で CFO が説明)。
レポートは部門別の営業利益を DRAM 65.2兆・NAND 18.3兆ウォン、営業利益率を DRAM 84%・NAND 72%と見積もっている。SK Hynix は部門別の利益を開示していないので、これはメリッツの推定値だ。
数量と価格は、メリッツの想定と次のようにずれた。
| 前四半期比 | DRAM 出荷量 | DRAM 平均単価 | NAND 出荷量 | NAND 平均単価 |
|---|---|---|---|---|
| 実績 | +10% | +29% | −1% | +25% |
| メリッツの想定 | +13% | +22% | +4% | +15% |
出荷量は想定を下回り、単価が想定を大きく上回った。数量ではなく値上げで上振れた決算だったことが分かる。
2. 何をどれだけ引き上げたか
| 単位: 兆ウォン | 4Q26E 新 | 4Q26E 旧 | 差 | 2026E 新 | 2026E 旧 | 差 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上 | 125.0 | 108.5 | +15% | 361.5 | 340.3 | +6% |
| うち DRAM | 98.6 | 81.5 | +21% | 273.5 | 253.8 | +8% |
| うち NAND | 26.5 | 25.8 | +3% | 86.0 | 84.5 | +2% |
| 営業利益 | 103.8 | 86.2 | +20% | 285.3 | 264.5 | +8% |
| 支配株主純利益 | 78.6 | 64.2 | +22% | 252.2 | 260.8 | −3% |
4Q26の上方修正はほぼ DRAM で、NAND はわずかしか動かしていない。通期の純利益だけが下がったのは、3Q の営業外損失を織り込んだためとみられる。
4Q26 の前提は、DRAM の出荷量が前四半期比+24%、平均単価が+9%、NAND は出荷量・単価ともに+5%。会社は4Q の出荷を DRAM 20%台半ば増、NAND 1桁台半ば増と案内しており、出荷量は会社の案内に沿っている。
2027年については、今回のレポートに修正前の数字の表がない。本文は「再び引き上げた」とだけ書いている。昨日の決算サマリーで引いたメリッツの前回値は454兆ウォンで、これと比べると約6%の引き上げになる。2027年の四半期別の営業利益予想は次のとおり。
| 単位: 兆ウォン | 1Q27E | 2Q27E | 3Q27E | 4Q27E | 2027E |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上 | 129.6 | 147.9 | 155.5 | 159.8 | 592.8 |
| 営業利益 | 104.9 | 120.1 | 126.3 | 129.7 | 481.0 |
| 営業利益率 | 81% | 81% | 81% | 81% | 81% |
1Q27 は DRAM の出荷量を前四半期比−10%と置く一方、単価を+15%とし、営業利益は横ばいから微増を見込む。単価の根拠に挙げているのがモバイル向け DRAM で、1Q27 の見積価格を1Gb あたり2.5ドル、前四半期比+65%と見ている(レポートの図5。出典はメリッツ自身)。
なお、2Q27E の税引前利益は235.5兆ウォンで、営業利益120.1兆を約115兆ウォン上回る。大きな営業外利益を置いているが、その中身は本文に書かれていない。2027年の純利益494.1兆が営業利益481.0兆を上回るのはこのためだ。
市場予想との差
レポートの図から逆算すると、FnGuide の市場予想は2026年の営業利益が約263兆、2027年が約404兆ウォンになる(メリッツの予想がそれぞれ8.6%、19.1%上回るとの記載から計算した)。2026年の約263兆は、昨日の決算サマリーで引いた FnGuide の通期予想262.69兆と合う。2027年の差のほうがずっと大きい。
3. 「構造的な逆転」の3つの理由
レポートは、上半期の SK Hynix は値上げ幅・出荷の伸びとも市場平均をやや下回ったが、ここから逆転すると書く。理由は3つ。
- HBM: 来年の HBM の取引条件の交渉を通じて、値上げ幅が市場平均を上回るようになった
- LTA: 顧客から長期供給契約(LTA)の延長を求められる過程で、既存契約の価格条件が改善している
- 出荷: 新工場 M15X の稼働拡大に加え、1c 世代のサーバー向け DRAM と LPDDR の品質認証が終わり、出荷の伸びが本格化する
これを受けて、市場の4Q26・2027年の利益予想は一斉に上がるとみる。メリッツは過去20年、メモリ株は「成長株」として利益予想の変化率で株価が動いてきたとし、今後3か月の予想引き上げに沿って株価が急速に戻ると予想している。
4. 経営方針をどう評価したか
後半は経営方針の話で、見出しは「模範的な経営方針による再評価:有機的な再投資と“本物の”株主還元」。
- 会社は決算説明会で、DRAM と HBM は2029年まで売り切れ、メモリ全体の供給不足は2030年まで続くとした(とレポートは書く。CEO の実際の発言は「協議中の需要も含めれば2029年まで事実上売り切れ」という条件つき)
- 14社と LTA を結び、その数量は2028年までの生産能力の過半を占める見込み
- 急に膨らむ余剰資金の使い道について、会社はバランスの取れた答えを出したと評価する
- 筆頭株主に有利な配当にこだわらず、自社株買い・消却を続けると約束した
- 営業外の一時的な利益も株主と分け合う
- 龍仁(ヨンイン)第1工場(Y1)以降に生産余力が増えても、顧客の財務状況と購買余力を見て柔軟に投資する
筆頭株主は SK スクエア(グループ合計20.0%)で、配当を厚くすれば最大の受け手は SK スクエアになる。キム氏はこの点を踏まえ、「全株主」と「大株主」の利害をそろえる方針と、売上の拡大より利益率を優先する柔軟な生産計画を、過去のメモリ好況では見られなかった変化と書いている。キム氏自身、決算説明会で配当と自社株買いの配分について質問している(説明会の要約の Q2)。
需要については、AGI を目指すモデル開発企業の投資競争で、値上がりしてもかえって需要が増える「逆の価格弾力性」が生じているとし、2027〜28年の供給不足は明らかだとした。ふつうの商品は値上がりすれば買う量が減るが、いまのメモリの買い手は価格より「量を押さえられるか」を気にしている。値上がりが「この先も足りなくなる」という合図になり、前倒しの発注を呼ぶ、という理屈だ。これはメリッツの見立てで、データで確かめられた事実ではない。
5. 目標株価の出し方
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 1株純資産(BPS) | 818,662ウォン(2026E と2027E の平均) |
| 適用倍率 | 4.0倍(ROE は2026E 109.5%、2027E 84.7%) |
| 理論値 | 3,274,649ウォン |
| 目標株価 | 3,200,000ウォン |
| 現在株価(レポート記載、10月28日) | 1,487,000ウォン(同日の終値は1,508,000ウォン) |
| 上昇余地 | 115.2% |
目標株価は10月12日に310万から320万ウォンへ引き上げたばかりで、今回は据え置いた。現在の株価は52週高値291.9万ウォンからほぼ半値で、直近1か月で15.9%下げている。メリッツの予想利益で計算した PER は2026E 4.2倍、2027E 2.1倍。
X の要約・原本・会社発表の突き合わせ
X に出回った要約(原本の1ページ目の本文とほぼ同じ)を、原本の表と、会社の決算説明会での発言と突き合わせた。X の日本語は自動翻訳なので、判定は韓国語の原文で行った。
| 要約の記述 | 判定 | 確認した内容 |
|---|---|---|
| 3Q26 営業利益83.3兆ウォン、前四半期比+38% | ○ | 会社発表は83.33兆ウォン、前四半期比+38% |
| 市場予想77兆ウォンを上回る | ○ | 原本の表は FnGuide の76.96兆。別集計では77.19兆 |
| DRAM/NAND の営業利益率84%/72% | △ | メリッツの推定。会社は部門別の利益を開示していない |
| 為替下落にもかかわらず(自動翻訳) | 訳の問題 | 原文「환율 하락」はウォン/ドルのレート低下、つまりウォン高。CFO もウォン高を逆風と説明した |
| HBM の取引条件交渉で値上げ幅が市場平均を上回る | △ | 交渉が終わったことは CFO が説明。値上げ幅が市場平均を上回るという部分はメリッツの評価 |
| LTA 延長の過程で既存契約の価格条件が改善 | △ | 延長を協議している顧客がいることは会社の説明どおり。価格条件の改善は、説明会の英語文字起こしの範囲では確認できなかった(自動翻訳の「機械契約」は「既契約」の誤訳) |
| 1c 世代のサーバー DRAM と LPDDR の品質認証完了 | △ | 1c 世代の DDR5 と AI サーバー向け LPDDR5 SOCAMM を増やすことは会社の説明どおり。認証完了という言い方は文字起こしの範囲では確認できなかった |
| 4Q27E/2027E 営業利益104兆/481兆ウォン | × | 2027E 481.0兆は表と一致。しかし表の4Q27E は129.7兆で、103.8兆(約104兆)は4Q26E の値。原本の本文の時点で「4Q26E」の誤記とみられる |
| DRAM と HBM は2029年まで売り切れ | △ | CEO の発言だが、「協議中の需要も含めれば」という条件つき |
| 2030年まで供給不足 | ○ | CFO が説明会で述べた |
| (要約では省略)14社と LTA、2028年までの生産能力の過半 | ○ | 会社は「14社、2027・2028年の総生産能力の50%超」と説明 |
| 配当にこだわらず自社株買い・消却の継続を約束 | △ | 2026年度は配当30兆以上と自社株買い・消却60兆以上で、配当もかなり出す。自社株買いの規模は四半期ごとに取締役会が決める。3Q の自社株買い20兆のうち約10兆は役員・従業員の報酬用で、消却されない |
| 営業外の一時的な利益も株主と分け合う | ○ | キオクシア投資の実現益を特別配当で返す(3Q に1株1万ウォン) |
| Y1 以降、顧客の財務状況を見て柔軟に投資 | ○ | 龍仁などの新工場は建屋を先に建て、装置は需要に合わせて入れる。需要の確認では顧客の財務の健全性・資金調達力も見ると CFO が説明 |
数量と単価(前章の表)も、会社の説明「DRAM の出荷は10%前後増・単価は20%台後半の上昇、NAND の出荷は小幅減・単価は20%台半ばの上昇」と一致した。
まとめると、数字の大半は会社発表と原本の表で裏が取れた。気をつけたいのは次の3点だ。
- 「4Q27E 営業利益104兆ウォン」は誤記とみられる。 正しくは4Q26E が103.8兆、4Q27E は129.7兆ウォン
- LTA の価格条件の改善と、1c 世代の品質認証の完了は、会社の発言としては確認できなかった。 メリッツの取材や評価が混ざっている可能性がある
- 「2029年まで売り切れ」「自社株買いの継続を約束」は、会社の発言より強い言い方になっている。