メモリの設備投資は2026年に史上最大となるが、販売可能ビットが洪水になるのは2028年後半から2030年|工場ごとに装置搬入と製品出荷を分けて既存の検証記事と突き合わせた

未分類

メモリの設備投資は2026年に史上最大となるが、販売可能ビットが洪水になるのは2028年後半から2030年

メモリ半導体株は、2027年の予想利益の4〜5倍で取引されている。この値札が予言しているのは「今の利益は数年で消える」ということだ。消す主体として市場が名指ししているのは、需要の減退ではなく供給の氾濫である。

供給を心配すること自体は正しい。歴史上、メモリ産業を殺してきたのは外から現れた新規参入者ではなく、好況の頂点で既存各社が自ら仕込んだクリーンルームだった。いま韓国・米国・日本・中国のメーカーが同時にアクセルを踏んでいるのだから、数年後の供給過剰を疑うのは当然の反応だ。

ただし、ここには読み違えやすい罠がひとつある。工場への投資額と、実際に市場へ出てくる販売可能ビットを同じものとして扱うと、供給ショックの時期を2〜3年早く見誤る。

そこでこの記事では、いま進行中の増産計画を工場単位でばらして、①投資枠の発表 ②躯体工事 ③装置搬入 ④製品(販売可能ビット)の出荷、という4段階に分けて並べ直した。あわせて、当サイトがこれまでに書いてきた工場・能力・決算の記事と数値を突き合わせ、食い違う箇所を隠さず注記した。突き合わせの結果、注記が必要な箇所は16件あった。

メモリ4社のPERは、2つの基準で見る必要がある

まず値札を確認する。ここで注意が要るのは、「予想PER」と呼ばれるものが1種類ではないことだ。株価の基準日とEPSの期間が違えば、同じ会社でも違う数字が出る。

同じ「予想PER」でも基準が違えば別の指標どちらの系列でも予想PERは3.3〜5.6倍のレンジにあるが、株価の基準日もEPSの期間も違うので1本の棒に混ぜていない⚠ 両系列は株価の基準日(7/17 と 7/30)とEPSの期間(年次 と 次の4四半期)が違う。 系列をまたいだ差を「割安になった」と読んではいけない系列A / 2026年7月17日終値 × 年次コンセンサス予想EPS出典記事の掲載値。1社につき2027年基準と2028年基準の2本(単位: 倍)01234565.5倍20274.8倍2028Micron4.0倍20273.8倍2028SK hynix 未検証 3.8倍20273.7倍2028Samsung 未検証 5.3倍20274.3倍2028Kioxia 未検証 系列B / 2026年7月30日終値 × NTM(次の4四半期)予想EPS当サイトのスナップショット。1社1本(Kioxiaは意図的に除外/単位: 倍)01234565.2倍NTMMicronMU5.6倍NTMSanDiskSNDK3.6倍NTMSamsung0059303.3倍NTMSK hynix000660濃い塗り=2027年基準/NTM基準薄い塗り=2028年基準斜線=当サイト未検証MicronSK hynixSamsungKioxiaSanDisk
メモリ4社の予想PER — 系列A(7/17終値・年次コンセンサスEPS)と系列B(7/30終値・NTM EPS)を分けて並べる

この図の基準と出典

  • 系列A: 週刊金融日記 第740号(メモリ半導体株の低PERは歴史的なミスプライスなのか 供給編)。2026年7月17日終値 × 2027年/2028年の年次コンセンサス予想EPS。当サイトで裏取りできたのは Micron のみで、SK hynix・Samsung・Kioxia は7月17日時点の株価が当サイトに無く突き合わせ不能のため、棒に斜線を入れている。
  • 系列B: 当サイト earnings-dynamics スナップショット(Koyfin Estimates)。2026年7月30日終値 × NTM(次の4四半期合計)予想EPS。対象期間は Micron 2026年8月期Q4〜2027年5月期Q3SanDisk 2026年8月期Q4〜2027年5月期Q3Samsung Electronics 2026年Q2〜2027年Q1SK hynix 2026年Q3〜2027年Q2
  • Kioxia は当サイトの保有株価が2026年6月3日で止まり7月の下落を反映しないため、系列Bから意図的に除外している。
  • Micron の「2027年」は会計年度2027(2027年8月期)を指す。暦年ではない。

出典記事の掲載値は、2026年7月17日終値と2027年/2028年の年次コンセンサス予想EPSで計算されている。当サイトが別途保持しているのは、2026年7月30日終値と今後12か月(NTM)の予想EPSによるものだ。

銘柄2027年予想EPSベース2028年予想EPSベース当サイト保有値(7月30日・今後12か月ベース)
Micron5.5倍4.8倍5.15倍(株価739ドル / EPS 143.50ドル)
SK hynix4.0倍3.8倍3.34倍(株価140.1万ウォン / EPS 41.97万ウォン)
Samsung Electronics3.8倍3.7倍3.61倍(株価20.85万ウォン / EPS 5.77万ウォン)
Kioxia5.3倍4.3倍掲載しない(後述)
SanDisk5.57倍(株価1,015.89ドル / EPS 182.45ドル)

左2列と右1列を並べて「13日間で割安になった」と読んではいけない。EPSが上昇していく局面では、同じ会社でも今後12か月ベース > 2027年ベース > 2028年ベースの順に低くなる。基準が違うだけである。

Micronについては裏取りが取れた。7月17日終値848.95ドルは当サイトの7月22日の記事でも確認していて、6月24日の1,048.51ドルから19%下げた水準だ。PER5.5倍から逆算される会計年度2027(2027年8月期)のEPSは約154ドルで、当サイトが持っている同年度Q1〜Q3の予想実データ合計112.17ドルと整合する。含意される第4四半期のEPSは42.19ドルで、34.87→37.41→39.89→42.19という上昇トレンドにきれいに乗る。

Kioxiaを当サイト側の表から外したのは意図的だ。当サイトが持つKioxiaの株価は2026年6月3日時点の77,540円で、7月の下落を含んでいない。これで計算したPERを「現在の水準」として出すと誤りになる。

設備投資が史上最大になる2026年に供給は増えない。発表・躯体工事・装置搬入・ビット出荷の4段階に分けると、投資とビットの間には2〜3年のずれがある
図1: 投資枠の発表・躯体工事・装置搬入・製品出荷の4段階に分けると、投資と販売可能ビットの間には2〜3年のずれがある

韓国:896兆ウォンの構想と、2026年に増える月4万枚

政府のMOUが下落の起点になった

2026年6月29日、ソウル。李在明大統領は、Samsung電子の李在鎔会長とSKグループの崔泰源会長を横に並べ、SamsungとSK hynixが韓国南西部にそれぞれ2つ、合計4つの巨大メモリ工場を建設し、サプライヤーや人材のエコシステムまで含めて800兆ウォン(7月17日時点の為替レートで約5,380億ドル、約87兆円)を投じる長期構想を発表した。この時点で、各工場の着工・完成時期は示されていない。

翌30日、韓国政府は各社と投資MOUを締結し、この構想をAIデータセンター、国家AIコンピューティングセンター、Amkorの先端パッケージング投資まで含む総額896兆ウォンの計画として具体化した。

主体金額中身
SKグループ470兆ウォンメモリ工場2棟+1GWのAIデータセンター等
Samsung425兆ウォンメモリ工場2棟+国家AIコンピューティングセンター等
Amkor1兆ウォン先端パッケージング増設

政府はこれとは別枠で、電力・用水などの基盤インフラ整備費を最大100%支援し、産業団地の造成期間を5年以内に短縮する。さらに龍仁ですでに進む産業団地の最終工場完成を最大12年前倒しするなどして、5年以内に韓国のメモリ生産能力を倍増させるという政策目標を掲げた。

メモリ半導体株が下落を始めたのは、この発表の前後からである。7月7日にはKOSPIがサーキットブレーカーを発動して4.91%下げ、同日Morgan Stanleyがメモリ3社のエクスポージャー削減を推奨するレポートを出している。皮肉なことに、その同じ7月7日にSamsungが公表したQ2速報値は、売上171兆ウォン・営業利益89.4兆ウォンで、営業利益は前年同期の19.1倍だった。当サイトの7月8日の検証記事で数字を突き合わせてある。

→ South Korean tech giants to build a $518 billion chipmaking hub to serve soaring AI demand(AP)

→ 半導体メガクラスター構築の前倒し、および5年以内のメモリ生産能力倍増に向けた総合支援策(韓国産業通商資源部)

SK hynix:月55万枚から100万枚へ、ただし2030年代をかけて

能力拡大のロードマップが業界報道で最も具体的に見えているのは、SK hynixである。

崔会長は6月のCOMPUTEXで、同社全体のウェハー生産能力を今後5年間で倍増させると明言した。韓国のThe Elecによれば、同社は主要サプライヤーに対し、世界全体のDRAMウェハー投入能力を現在の月約55万枚(中国・無錫工場の約20万枚を含む)から、2030〜2031年に月100万枚前後へ増やす計画を示している。会社が投資家向けに正式開示した能力ガイダンスではなく、装置会社などへ提示されたとされる業界ロードマップである点は押さえておきたい。

この月55万枚という水準は、当サイトが持つDRAM能力の四半期データ(2026年Q1に54万枚、Q2に56万枚)と整合する。数字自体は当サイトの6月24日の記事でも同じ月55万枚→月100万枚として記録していた。

内訳を工場ごとに見る。

清州 M15X では2026年2月に初期ウェハーの投入が始まった。ロードマップでは同年後半に月4万枚を立ち上げ、2027年に月8万枚へ拡大する。この「2026年後半に月4万枚」は、当サイトの能力データが2026年Q2の56万枚から同年Q4の60万枚へ4万枚増える形で、四半期系列としてぴったり一致している。

龍仁半導体クラスター では、第1工場を6つのクリーンルームに分け、最初の区画への装置搬入開始を2027年5月から同年2月へ前倒しした。その後おおむね半年ごとに月6万枚ずつ立ち上げ、6区画すべてが埋まる2030年上期に、第1工場で月36万枚へ達する。

ここが読み違えやすいところだ。月36万枚は2027年の能力ではないし、龍仁全体の最終能力でもない。2027年に始まるのは第1工場の最初の区画への装置搬入と立ち上げにすぎず、歩留まりを安定させて大量出荷へ移るにはさらに時間がかかる。そして龍仁クラスターは最終的に4つの工場で構成される。会社の公式計画では、第4工場は最初のクリーンルームの建屋完成目標が2033年であり、装置への投資はさらにその先まで続く。龍仁は2030年で完成する話ではなく、2030年代を通じて立ち上がり続けるプロジェクトなのだ。

なお当サイトの既存記事は、この前倒しを「完成を3か月前倒し→2027年2月」と書いていた。2027年2月に第1工場が完成するのは他の記述と噛み合わないので、「装置搬入開始の前倒し」と読むのが正しい。既存記事側の表記を後で直す。

NAND については、従来は新工場よりも高層化によるビット密度の向上を優先すると見られていた。ところがSK hynixの郭魯正CEOは7月2日、政府ブリーフィングの場で清州への総額100兆ウォンの投資を表明した。うち約80兆ウォンを新しいNAND工場M17に、約20兆ウォンをP&T7などHBMの後工程を担う先端パッケージング設備に投じる。M17は2027年に着工し、2029年上期の稼働を目指す。P&T7は2027年末完成、2028年量産の予定だ。

このM17は、当サイトのリポジトリを検索してもまったく出てこない新情報だった。7月8日の記事では清州100兆ウォンを「HBM・DRAM・エンタープライズSSD向け」と粗く括っていたが、正しくは8割がNANDの新工場である。DRAM勢がグリーンフィールドを競って建てる一方でNAND側の新設は少ない、という構図に対する反証材料になる。Kioxia株の下落局面で将来のNAND増産リスクを意識させた材料のひとつになった可能性もある。

後工程については、清州のP&T7だけではない。当サイトのSK hynix 1Q26まとめに記録してあるとおり、米インディアナ州West Lafayetteにも38.7億ドルの後工程拠点があり、HBM4E/HBM5世代を見据えて2028年下期の量産を目指している。パデュー大学との提携付きだ。

投資枠を合計すると、SK hynixが公表した中長期投資戦略は龍仁600兆ウォン、清州100兆ウォン、南西部400兆ウォン、合計1,100兆ウォンに達する。政府発表のSKグループ分470兆ウォンは、この南西部400兆ウォンにAIデータセンターなどを加えた数字であり、矛盾ではない。そして1,100兆ウォンは数年以内に全額を使う確定予算ではなく、需要と市場環境を見ながら段階的に執行される構想である。龍仁の600兆ウォンでさえ、2033年までに使い切るものではない。

資金余力の面では、7月にNASDAQへのADR上場に伴う新規発行・公募で約265億ドルを調達した。ADR価格は149ドルで、応募は7倍超だった。ここは当サイトの数字と少しずれる。7月8日時点では、当初45.45兆ウォン(約296億ドル)だった調達額がKOSPI急落で43.14兆ウォン(約281億ドル)へ縮小したところまで追っていた。281億ドルと265億ドルの差16億ドルについては、上場後の確定額として265億ドルを採るが、内訳の確認が残っている。

年次のCapExも押さえておく。SK hynixの設備投資は2023年の6.6兆ウォンから2024年に約15兆ウォン、2025年に30.2兆ウォン、2026年は約40兆ウォンへと積み上がる見通しだ。1Q26時点のネットキャッシュ35兆ウォンがその原資になる。同四半期の売上は52.58兆ウォン、粗利率は79.3%だった。

→ SK hynix Plans to Double DRAM Wafer Capacity by 2030-2031(The Elec)

Samsung:1cナノ転換と平沢P5、そしてTaylorの遅れ

Samsung電子は2026年に、全社の設備投資と研究開発費を合わせて110兆ウォン超を投じる方針だ。半導体工場のCapExだけではなく全社R&Dを含む数字である点に注意したい。

これとは別に、韓国の電子新聞(ETNews)の業界取材によれば、同社はHBM向けウェハー投入能力を2025年末の月約17万枚から2026年末に月約25万枚へ、約5割増やす計画だという。この起点17万枚は、当サイトのHBM能力データ(2025年Q4に17万枚)と完全に一致する。ただし到達点については、当サイト側は2026年Q4を24万枚としており、別系統の推計では年平均ベースで21.5万枚という値も持っている。同じ「HBM向け能力」で2系統の数字が併存しているので、どの定義かを明示しないと比較できない。

最先端の1cナノ世代DRAMも、既存ラインの転換と平沢P4への装置追加により、2026年末までに月産20万枚の体制を整える計画と報じられている。これは当サイトの能力データとも一致する。当サイトはさらに中身を特定していて、華城Line 17の1c化とLine 12のDRAM転用がその実体だ。

なおSamsungのHBM4はメモリダイに1c DRAMを使うため、HBMの25万枚と1cの20万枚は別々に足せる能力ではなく、相当部分が重複していることには注意が必要である。

半導体不況期に建設が止まっていた平沢のメガファブP5は、2026年に躯体工事を本格再開した。6つのクリーンルームの階が3層ある巨大なトリプルファブで、会社が示す量産開始目標は2028年。業界報道では、HBM用コアダイを含む先端DRAMが主力になるとみられ、市況次第でファウンドリー設備の導入も検討されている。

グリーンフィールドが予定通りに立ち上がらない実例も、Samsung自身が持っている。米テキサス州のTaylor工場は累次の延期を重ね、量産が2027年にスリップした。当サイトのメモリ税の検証記事に記録がある。

HBMの世代競争では、Samsungは攻勢に転じている。2026年2月、1c DRAMと自社4ナノFinFETプロセスのベースダイを組み合わせたHBM4の量産・商用出荷を開始し、第1四半期にはNVIDIA Vera Rubin向けの量産販売を始めたと会社自身が開示した。5月末にはHBM4Eのサンプル出荷を開始し、COMPUTEXではHBM5のモックアップまで公開している。

ここで1点、慎重に扱うべき数字がある。「HBM4の累計売上が10億ドルを突破した」という報道だ。当サイトが持っている「HBM4売上が10億ドルを超えた」という記述は、Micronの2026年6月24日の決算説明資料の原文に基づくものである。Samsung側の10億ドルは聯合ニュースの報道ベースで、当サイトでは一次資料を確認できていない。同じ「10億ドル」が両社に付いているため、取り違えのリスクが高い。ここではSamsung側を報道ベースの数字として扱う。

シェアの現状は、Counterpoint Researchの推計で第1四半期にSK hynix 58%対Samsung 21%。当サイトが持つ別系統の予測(2026年通年でSK hynix 44%対Samsung 33%)とは方向が逆に見えるが、四半期実績と通年見通しなので直接は矛盾しない。むしろこの落差が、HBM4世代で差が縮まるかどうかの争点そのものである。

対するSK hynixも、The Bellを引用した7月13日の業界報道によれば、NVIDIA向け12層HBM4の量産出荷を6月末に開始しており、9月から本格的に出荷量を増やす。当サイトは「HBM4は2025年Q4に出荷開始」と記録していたので、こちらはサンプル・初期出荷、6月末は量産出荷、という区別で読む必要がある。

→ Samsung Ships Industry-First Commercial HBM4 With Ultimate Performance for AI Computing

2026年の増分は、集計基準で首位が入れ替わる

ここまでの計画を「ビットがいつ市場に出てくるか」で並べ直すと、2026年に韓国の新設工場から追加される能力は、SK hynix M15Xの月4万枚(それも年後半から)程度である。世界のDRAMウェハー投入量から見ればわずか2%弱の上乗せにすぎない。当サイトの能力データ(2026年の世界合計204万〜230万枚)で割ると1.7〜2.0%となり、検算が通る。

しかも、現在の投資の大半はクリーンルームの躯体工事、HBM後工程のパッケージング能力、そして既存ラインの1cナノへの転換に向かっている。ライン転換は、装置の入れ替え期間中むしろ生産を止める。2026年のウェハー投入能力(面積)の増加はこのように限定的で、既存ラインの微細化や歩留まり改善によって販売可能ビットそのものはある程度増えるが、それでも現在の需要には足りない。

史上最大の設備投資が行われる2026年に、需給を緩和させるような供給増は起きない。韓国メディアの取材に対し業界アナリストが「意味のある供給改善は2027年後半以降」と口を揃えるのは、このためである。当サイトの検証記事も「本格的な需給緩和は早くても2027年後半、正常化は2028〜2029年」という見立てで一致している。

ここで、増分の数字を扱うときの注意点を明示しておきたい。「2026年のウェハー能力増設の単独最大はCXMT」という主張は、集計基準によって成立しなくなる。

2026年の増産の単独最大はCXMTだが、集計基準を新規ラインの立ち上げ量に変えるとSamsungの1cナノ転換が上回り、首位が逆転する
図2: 純増で見ればCXMTが最大だが、新規ラインの立ち上げ量で見ればSamsungの1cナノ転換が上回る

SemiAnalysisの純増ベースでは、2026年の月産能力の増分はCXMT +8.5万枚、SK hynix +6万枚、Micron +3万枚、Samsung +1.5万枚となる。この4社の数字は当サイトの構造化データと完全に一致している。

一方、TrendForceの報道ベースでは、Samsungの1cナノDRAMだけで2026年内に+14万枚(2025年Q4の6万枚から2026年末の20万枚へ)だ。当サイトの独自計算ではSamsung 2026年は+8万枚で、SemiAnalysisの+1.5万枚とは約5倍の差がある。当サイトのDRAM工場能力ページは、この乖離を「純増と粗増の集計方法の違い」と整理してある。純増は、新規ラインの立ち上げからレガシーラインの停止とHBMベースダイへの転用を差し引いた数字なので、額面で受け取るとSamsungの1cナノの実際の立ち上がり速度を見誤る。

同じ2026年の増産でも、基準が違えば首位が入れ替わる。「CXMTが単独最大」と書くなら、純増ベースであることを添える必要がある。

2027年になると、M15Xが月8万枚へ、龍仁は2月に装置搬入が始まる。ただしクリーンルーム1区画の立ち上げと歩留まり習熟には1年前後かかるため、年間を通じたビット寄与はなお限定的だ。SK hynixの郭CEOは、NASDAQ上場当日のロイターのインタビューで「2027年は供給の観点から業界史上最悪の年になる」と述べ、2030年以降も顧客需要が自社の供給能力を上回り続けるとの見通しを示している。

2028年からが本番になる。SamsungのP5が年後半に量産入りし、龍仁第1工場の初期区画が本格稼働を始める。2029〜2031年に龍仁が月36万枚へ積み上がり、M17(NAND)が稼働し、SK hynixの月産100万枚体制と国家計画の「メモリ生産能力倍増」が完成する。

ただし当サイトの四半期推計では、SK hynixの能力は2028年Q4に68万枚である。2025年Q4の52万枚から3年で+16万枚のペースだ。この傾きでは2030〜2031年の月100万枚には届かない。2028年末の68万枚から2年で+32万枚を積む必要がある。この乖離はそのまま、「龍仁は2030年代を通じて立ち上がり続ける」という見方の裏付けになる。

そして、この新設能力にはすでに買い手の行列ができている。2025年10月、SamsungとSK hynixはOpenAIとの間で、AIインフラ計画「Stargate」向けに最大月産90万枚のDRAMウェハーを供給する意向書を交わした。出典記事はこれを当時の世界能力の「約4割」と書いているが、当サイトの能力データ(2025年Q3の世界合計194万枚)で割ると45〜46%になる。4割ではなく、ほぼ半分と言うべき規模だ。拘束力のある確定注文ではないにせよ、少なくとも建前において、韓国勢の能力倍増計画は特定の大口顧客の需要表明に紐づいている。

→ Samsung and SK join OpenAI's Stargate initiative to advance global AI infrastructure

米国と日本:Micronの2,500億ドルと、Kioxiaの規律

MicronとKioxiaを並べると、同じメモリでも供給能力の増やし方がDRAMとNANDで違うことが見えてくる。Micronは更地に新しい工場を次々と建てる。Kioxia-Sandisk連合は既存クリーンルームの空きスペースに装置を入れ、世代交代でビットを絞り出す。この対比が、そのままDRAM陣営とNAND陣営の供給規律の違いを映している。

Micron:発表は2026年、コンクリートは2027年、ビットは2027年後半から2030年

Micronはもはや単なる半導体企業ではなく、米国の「国産メモリ」プロジェクトの中核である。

7月9日に更新された米国投資構想は、2035年までのファブ・研究開発・技術投資で2,500億ドル超(従来の約2,000億ドルから増額)。アイダホ州ボイシの2工場、ニューヨーク州クレイで20年以上をかけて最大4棟を整備するメガキャンパス、バージニア工場の近代化、HBM先端パッケージングの米国内展開などを含み、長期的には同社のDRAM生産量の4割を米国内で作ることを目標とする。Micronは米国企業だが、先端メモリは現在、米国内の工場では作られていない。最大約64億ドルのCHIPS法直接補助契約も締結済みで、各プロジェクトの進捗と条件達成に応じて支給される。

スケジュールを工場ごとに確認する。

アイダホ第1工場(ID1) は、2027年半ばに最初のDRAMウェハーが出てくる予定だ。ただしこれは「最初の1枚」であって、フル生産とは別物である。クリーンルームは60万平方フィートで、世界最大級のDRAM工場のひとつになる。当初の2027年後半から半ばへ前倒しされたので、当サイトの既存記事にある「2027年下半期」は古い値だ。第2工場(ID2) の初ウェハーは2028年末。ID1に隣接し、HBMのパッケージング機能を米国内に初めて導入する拠点でもある。

ニューヨーク は2026年1月に着工し、7月9日、ホークル州知事同席のもとで最初のコンクリートが打設されたばかりだ。工場1棟につきエンパイア・ステート・ビル4棟分のコンクリートを流し込むという建設は当初計画より1四半期以上早く進んでいるが、それでも会社が示す第1工場の供給寄与は2030年以降。最大4棟のキャンパス全体は、20年以上をかけて段階的に整備される。

広島 では、7月4日に東広島市のMicron広島工場で、先進DRAMとHBMに対応する新クリーンルームの起工式が行われた。経済産業省が最大5,360億円を補助する。投資規模は約1.5兆円(96億ドル)で、官民の比率が見える案件だ。広島は1β DRAMの生産を担い、1γ世代ではEUVをMicronで最初に導入した、次世代DRAM・HBMの開発拠点でもある。日本はいわばMicronのHBMの母港なのだ。

ただし、この新棟も即戦力ではない。会社が正式に示すのは製造装置の搬入開始が2028年後半というところまでで、そこから試運転と歩留まり習熟を経るため、製品が出てくるのはさらに先である。ここは当サイトの既存記事と噛み合わない箇所だ。当サイトは広島について「HBM出荷は2028年頃を目標」「工期2028年2月まで」と記録していた。装置搬入が2028年後半なら、同じ年にHBMを出荷するのは難しい。どちらが新棟の話でどちらが既存棟の話なのか、基準の切り分けが必要だと注記しておく。

相対的に早い手を打てたのは、新築ではなく買収だ。2026年3月、台湾Powerchipから既存工場(銅鑼P5)を18億ドルで取得した。既存のクリーンルーム(30万平方フィート)を改修する方が、更地に建てるより速い。とはいえ、その銅鑼ですら意味のある規模の出荷は2027年半ばからだ。それほどまでに半導体工場というものは時間がかかる。

なお当サイトは銅鑼について「元PSMC、2024年取得」と書いていて金額を持っていない。2024年(合意・報道)と2026年3月(18億ドルでの取得完了)は別の段階と読むのが自然だろう。さらに当サイトの構造化データは銅鑼の出荷寄与を「FY2028から」としていて、会社発言の「暦年2027年半ば」より1年遅い。ここは当サイト側を直す必要がある。

そして、既存改修の裏で更地の新棟も並走している。銅鑼には同サイズの第2クリーンルーム(Twin Fab)がEUV対応で2026年夏に着工済みで、出荷はFY2028だ。加えてシンガポールに2本ある。HBM後工程は2027年前半からパッケージング能力に有意に貢献し、NAND新工場は2028年後半に最初のウェハーが出る。MicronのNAND増産はシンガポール発なので、DRAMばかり見ていると見落とす。

業績は絶好調である。直近四半期の売上高は415億ドルで前年同期比346%増、調整後粗利率は84.9%に達し、来四半期のガイダンスは売上500億ドル・粗利率約86%である。当サイトの構造化データでも、DRAM 313.28億ドル+NAND 99.43億ドル+その他1.85億ドル=414.56億ドルとして持っている。

注目すべきは契約の中身だ。2026年のHBM供給は価格・数量とも契約済み。さらにMicronは、データセンターから自動車まで16件の戦略的供給契約(SCA)を締結している。多くは2026〜2030年の5年契約で、take-or-pay、つまり顧客は引き取らなくても支払う。特定数量の購入義務があり、大型契約には価格の上限と下限まで設定されている。16件のうち14件の最低契約売上高は合計約1,000億ドル、顧客から受け取る前受金・金融コミットメントは約220億ドル(現金預金180億ドル+金融コミットメント40億ドル)。対象はHBMだけでなくDRAM・NANDと複数市場にまたがる。なおBofAの整理では、この5年契約は自動車向けを除いた条件になっている。

もうひとつ、HBM市場見通しの上方修正がある。MicronはHBMのTAMを2025年の約350億ドルから2028年に約1,000億ドルへ、年率約40%で成長すると予測する。この「1,000億ドル到達」は従来予測より2年前倒しされた。1,000億ドルとは、Micronの試算では2024年のDRAM市場全体よりも大きい。

ただしHBMのTAM予測は、当サイト内にすでに3種類が併存している。Goldman Sachsは2028年に1,684億ドル、BofAは2030年に約2,460億ドル、Bernsteinは暦年2030年に1,000億ドルだ。Bernsteinが2030年に1,000億ドルと見ているところにMicronが「2028年に1,000億ドル」と言っているのだから、「2年前倒し」という表現は当サイトのデータとも整合する。いずれにせよ出典を併記しないと比較にならない。

装置調達の裏付けも取れている。MicronはASMLとの複数年EUV供給契約を締結済みで、1δノード以降のEUV採用拡大を支える。EUV装置の不足は能力拡大の制約要因なので、これを押さえていることは供給側の前提として重要だ。

→ Micron Accelerates U.S. Investments, Pours First Concrete at New York Fab

→ マイクロン、AI向け先進メモリの支援に向けて、広島工場のクリーンルームに着工

Kioxia:四半期で1.3兆円稼ぐ会社が、年平均4,700億円しか投じない

日本のKioxiaはNAND専業メーカーである。増やし方がMicronとまったく違う。

7月3日、Kioxiaは第10世代BiCS FLASH(第8世代の218層から332層へ積み上げた3D NAND)による1Tb TLCデバイスのサンプル出荷開始を発表した。量産は岩手県・北上工場の第2製造棟K2の最新設備で行う。K2自体は2025年9月にすでに稼働を開始しており、そこに最新世代の装置を段階的に入れていく形だ。第10世代は、ウェハー接合技術(CBA)とOPS技術に積層数の増加と横方向の微細化を組み合わせ、第8世代比でビット密度59%向上、インターフェース速度は4.8Gbpsと33%向上した。

ここに、NAND増産のからくりがある。会社全体では、前工程のGB出力をFY2029にFY2024比で約2倍にする計画だが、これはウェハー枚数を倍にするのではない。同じクリーンルームで、装置の追加と世代交代によってビット密度を上げ、GB出力を倍にするのである。

世代の呼び方についてひとつ補足しておく。当サイトが持っているTrendForceの世代表では、第9世代(BiCS9)は400層超で研究開発段階、量産は2027〜2028年という想定だった。実際にはKioxiaは第9世代を製品としては挟まず、332層を「第10世代」として出してきた。予測表が外れた形なので、当サイト側のデータには注記が必要になる。

需給については、KioxiaがInvestor Dayで引用したTechInsights予測では、NANDの逼迫は2027年末まで続く見通しだ。Kioxiaは従来の1年契約中心から複数年のLTAへ移行し、販売の安定性を高めている。

会社が示した直近四半期の業績予想も凄まじい。5月15日発表の2026年4-6月期予想は、売上高1.75兆円(前年比5.1倍)、非GAAP営業利益1.3兆円、利益率74%。当サイトの構造化データで検算すると、1.3兆円 ÷ 1.75兆円=74.3%、前年同期の3,428億円に対して5.10倍で、いずれも一致する。この四半期営業利益を4倍すれば5.2兆円で、トヨタ自動車の通期営業利益予想(3兆円)を超える。価格急騰期の一四半期の年率換算と自動車会社の通期予想を並べるのは乱暴な比較だが、現在のNANDが稼ぐ利益の桁を体感するには十分だろう。

だが、ここからが面白い。これだけ稼ぐ会社の設備投資計画が、FY2026〜2028で年平均4,700億円なのだ。FY2025実績の2,837億円からは66%増だが、過去ピークだったFY2022の5,104億円をなお下回る。四半期で1.3兆円を稼ぐ会社が、である。当サイトの四半期キャッシュフローデータで実額を足し上げると、FY2025は2,836.74億円、FY2022は5,103.54億円で、どちらも検算が通る。24四半期を通じてFY2022がピークだったことも確認できた。

理由ははっきりしている。前回サイクルのトラウマだ。あの局面、四日市第7棟の第1期には、Kioxiaと当時のWestern Digitalの合弁事業全体で約1兆円が投じられた。その直後にコロナ特需が蒸発し、NAND市況は急落。Kioxiaの非GAAP営業損益はFY2022に674億円、FY2023には2,540億円の赤字へ沈んだ。当サイトのデータで四半期を足し上げると、FY2022が△674.08億円、FY2023が△2,540.17億円。この痛みが組織に刻まれている。

実際、KioxiaはInvestor Dayで、ハードルレートを上回る案件にだけ資金を投じる「厳格な投資規律」を明言した。現在は四日市第7棟や北上K2に前工程スペースの余力があり、新棟をいきなり建てるより、まず既存クリーンルームへの装置投入を優先する。

そして2026年1月、KioxiaとSandiskは四日市・北上の合弁契約を2034年末まで延長した。両社は製造JVについて同等の意思決定権を持つ。四半世紀続く日米NAND連合の能力増強は、どちらか一社の一存では決まらない。前回サイクルで大火傷を負った2社の合議が、この連合の増産に構造的なブレーキをかけている。

規律の証拠がもうひとつある。Kioxiaは四半期の強気なガイダンスを出す一方で、FY2026通期のガイダンスは地政学リスクと市場の不確実性を理由に開示を見送っている。四半期だけ強気で、通年は留保しているのだ。

→ Investor Day 2026(キオクシアホールディングス)

中国:CXMTとYMTC、ただしウェハー枚数で読むと誤る

韓国勢の増産は政府計画と長期契約に紐づき、Micronは米国の国策の時間割で動き、日米NAND連合は2022年のトラウマを規律として刻んでいる。既存プレイヤーの供給行動は、良くも悪くも利益計算の内側にある。

中国勢は少し違う。彼らとて歩留まりや販売価格を無視できるわけではないが、国家安全保障上の戦略産業として、普通の民間企業ではあり得ないほど長い投資回収期間と低い資本収益率を許容できる。CXMTは2016年の設立から2025年にようやく初の通期黒字を計上したが、それでも2025年末の連結未分配利益はマイナス366.5億元である。約10年におよぶ先行投資の赤字を、国家と地方政府の資本が支え続けてきた。太陽光パネルで、EVで、鉄鋼で世界が見てきた「中国式の供給爆発」がメモリでも起きるのではないか。これが、メモリ株の低PERに織り込まれた恐怖の最も深い部分だろう。

CXMT:同じ株価が、PER309倍にもPER6倍にもなる

7月16日、CXMTは上海証券取引所STAR市場でIPOの公開申込を実施した(上場予定日は7月27日)。公開価格は8.66元、上場時の想定時価総額は約5,792億元(約852億ドル)。調達額はオーバーアロットメント前で579億元(約86億ドル)と、目論見書が当初示した投資案件への予定投入額295億元のほぼ倍に膨らみ、2020年のSMICを超える中国半導体史上最大、今年のアジア最大級のIPOとなる。

業績は爆発している。2026年1-3月期の売上高は508億元で前年同期の8.2倍、親会社株主に帰属する純利益は約248億元。2025年に初めて計上した通期の親会社帰属純利益は18.75億元だったから、その13倍あまりをたった3か月で稼いだことになる。この売上508億元と純利益247.62億元、通期18.75億元、未分配利益△366.5億元は、いずれも当サイトが目論見書ベースで構造化済みの数字と一致する。

生産能力の正確な数字を会社は開示していない。SemiAnalysisは2025年末時点で合肥・北京の月産約26.5万枚と推計しており、業界の最新推計では月約30万枚に達している。ここは当サイト内で数字が割れていた箇所だ。当サイトの既存記事は同じSemiAnalysis出典で「2025年は月20万枚」としている。ただし26.5万枚+2026年の増分8.5万枚=2026年末35万枚という計算が成立するのは前者で、20万枚だと28.5万枚になって2026年末の35万枚に届かない。内部整合を優先して26.5万枚を採り、既存記事側との差分を注記しておく。

SemiAnalysisの推計では、全社能力は2026年末35万枚、2027年末42万枚、2028年末50万枚と積み上がる。上海の新サイトは、Phase 1が2027年に月10万枚、Phase 2が2028年にもう月10万枚を加える計画だ。合わせて月20万枚である。

出典記事は上海サイトについて「全区画を最終的にフル稼働させれば単独で月40万枚超を収容し得る設計」と書いている。設計上の収容上限と、発表済みフェーズの計画値20万枚は別物だ。両者を混同すると供給インパクトを2倍に見誤る。当サイトが以前のファクトチェックで「追加予定能力と供給不足量の混同」として指摘したのと同じ型の誤りなので、区別して書く。

シェアについても基準の確認が必要だ。目論見書によれば2025年第4四半期の世界DRAM売上シェアは7.67%で、Samsung、SK hynix、Micronに次ぐ世界4位に浮上した。ただし当サイトが持つTrendForce基準のデータでは、CXMT・JHICC・Swaysureなどを合わせた「その他」全体が7.1%である。CXMT単独が7.67%で、その他の合計が7.1%というのは成立しないので、目論見書は別の市場規模を分母にしている。TrendForceは2025年第1四半期から中国勢を集計対象に追加しており、それ以前とは接続しない。「シェアは1年でほぼ倍」と書けるのは目論見書の連続系列としてであって、TrendForce基準では4.6%から7.1%の1.5倍である。

CXMTの急伸を助けた一因は韓国勢自身だ。SamsungとSK hynixがHBMと先端DRAMへ生産能力を振り向けたことで汎用DRAMに空白が生まれ、そこへCXMTがDDR5やLPDDR5Xを投入して滑り込んだ。この構図は目論見書自身が、能力増・HBMシフトによるASP急騰・DDR5移行の3要因として説明している。

需要側の裏付けもある。ロイターによればCXMTはTencentと200億元超・3〜5年の供給契約を結び、DIGITIMESのサプライチェーン取材によれば、PCメーカー各社が2027年末分までCXMTのメモリ確保に殺到している。Appleすら中国市場向け製品でCXMT製メモリをテストしていると報じられるが、これは性能で選ばれたというより、値上げを続ける3社への交渉カードだろう。重要なのは、中国自身が深刻なメモリ不足だという事実である。中国のAIデータセンター建設もまた爆発しており、増産分はまず国内の飢えが吸い込む。

ただし、ここで安心してはいけない。「国内で吸収されるなら世界価格は壊れない」というのは論理的に誤りである。中国のPC・サーバー・スマホメーカーがCXMT製品へ切り替えれば、それまで中国へ売られていたSamsung、SK hynix、MicronのDRAMが、そのぶん他地域へ回る。直接輸出という形を取らなくても、輸入代替を通じて世界の需給は緩む。中国の供給リスクは、税関を通らずに世界へ伝播する。

そしてCXMTのIPOは、メモリ株のPERを読むことの難しさを極端な形で見せてくれる。想定時価総額5,792億元は、2025年通期の親会社帰属利益18.75億元に対してはPER約309倍。ところが2026年第1四半期の利益248億元を機械的に年率換算すれば、PERは約6倍まで落ちる。同じ株価が、通期実績ではPER300倍超、直近四半期の年換算ではPER6倍になる。当サイトが持つ会社ガイダンス(上期の中央値を2倍した通年1,070億元)で割ると約5.4倍で、これも近い水準だ。

国家の威信をかけた史上最大のIPOですらこうなのだから、価格と利益が急変するメモリ企業を単年度のPERで評価することがいかに危ういかが分かる。そしてこの問いは、そっくりそのままPER4倍で放置されるSK hynixやMicronに返ってくる。その分母のEPSは、はたして正常利益なのか。

→ China's CXMT Is Set to Challenge DRAM Incumbents(SemiAnalysis)

ウェハーでは最大、ビットでは半分

ここで、出典記事に足りていない補正を入れる。中国勢の影響をウェハー枚数のまま読むと、約2倍に過大評価してしまう。

CXMTのウェハーは月50万枚に届くが、ビットでは既存3社の半分しか出ない。等価密度で換算すると業界のDRAMビット生産能力の年平均成長率への押し上げは+1.5ポイント(12.7%から14.2%)に収まる
図3: 等価密度で換算すると、業界のDRAMビット生産能力の伸びへの押し上げは年+1.5ポイントに収まる

CXMTのDRAMビット密度は、既存3社の約半分しかない。 つまり月50万枚のウェハーから取れるビットは他社の半分相当だ。DDR5の単ダイ密度は24Gbで、既存3社の32Gb世代から一世代遅れている。

等価密度で換算(ウェハー数を半分カウント)すると、2025年末から2028年末までにCXMTが業界全体のDRAMビット生産能力の年平均成長率に与える押し上げは約+1.5ポイントにすぎず、業界の伸びは概ね12.7%から14.2%になる。2030年でも押し上げは+3ポイント未満(20%から23%)に留まる見込みだ。当サイトの6月26日の記事で検証済みの数字である。

この補正は、出典記事の結論を弱めるのではなく強める。「CXMTの全力増産を織り込んでもなお需要の伸びに追いつかない」と言うとき、ウェハー枚数ベースの+8.5万枚ではなく、等価ビットで見た実質4万枚台相当で足りるということだ。

HBMではさらに差が開いている。米国の輸出規制でEUV露光装置を調達できず、SemiAnalysisは主力のG4プロセスを韓国勢の1b/1cより数世代古い1z相当と推定している。HBM3の8層品ですら安定量産に苦戦しており、当サイトが検証した歩留まりは前工程35%・後工程70%で合計約25%だ。SemiAnalysisの独自モデルによれば、HBM向けウェハー能力は2025年末で月わずか5,000枚(全体の2%)、2026年末3万枚、2027年末5.5万枚、2028年末でも10万枚である。

ただしこの数字には出典の食い違いがある。当サイトの構造化データはCXMTのHBM能力を2025年Q4に3万枚、2028年Q4に6万枚として持っていて、こちらの出典はSemiAnalysisではない。2025年末で6倍、2028年末では逆に当サイト側が低い。系統が違うので、どちらかに寄せず併記する。

会社開示を見ても、2025年の主力事業売上の98.3%はDDRとLPDDRであり、HBMは独立の売上項目にすらなっていない。CXMTのHBMは世代的にもHBM3級で、規制で締め出された中国国内市場(Huawei等)向けの存在だ。SamsungとSK hynixがHBM4の量産で争う世界とは、少なくとも現時点では別のリーグにいる。

次世代でも壁がある。DDR6はより高い速度(14400 MT/s起点)と密度を要求し、既存3社は1c以降のノードで全面的にEUVを使う。CXMTはDDR6で速度律速になりやすく、密度も半分のままになる可能性が高い。

CXMTの立ち上がりを外から測る間接指標もある。持分1.80%を持つ兆易創新(GigaDevice)経由のCXMTへのDRAM委託生産の調達額は、2024年8.52億元、2025年12億元、2026年予測57億元と急増している。ただしGigaDeviceは持分法適用の要件を満たさないため、CXMTの財務情報そのものは載らない。

YMTC:DRAMのCXMTと違い、技術的には射程内

NANDのYMTCは、CXMTより一段と侮れない。

YMTCは武漢の既存2工場で月産約20万枚のウェハー能力を持つと推計され、UBSがロイターに示した2025年の世界NAND売上シェアは11.8%で、Sandiskと並ぶ第5位グループの一角である。当サイトが持つ別の数字では「シェア13%に到達」「2026年後半までに15%を目標」というものもあるが、11.8%はUBS・2025年通期・売上ベースで出典と基準が最も明確なので、こちらを採る。13%との差は基準差、15%は目標値として実績と混ぜない。

技術面では独自の「Xtacking」ウェハー接合技術で267層の3D NANDを量産しており、ロイターが引用するアナリストは最新のXtacking 4.0を世界大手の先端技術に近い水準と評価する。Samsungの286層、SK hynixの321層と比べても、DRAMにおけるCXMTの周回遅れとは違い、射程内にいる。2022年の米規制強化前には、Appleが中国市場向けiPhoneへの採用を検討して評価を進めていた実力企業である。

そのYMTCが今、猛烈に踏み込んでいる。ロイターによれば、武漢第3工場はすでに建屋が完成して製造装置の搬入が進んでおり、2026年後半に稼働を開始、2027年に月産5万枚へ立ち上げ、最終設計能力は月10万枚。さらに各月10万枚の追加工場を2棟計画している(こちらは所在地も時期も未定だ)。

既存能力と単純合計すれば、前工程スペースは月50万枚規模になる。ただしこの数字は、当サイトが以前のファクトチェックで「未確定で実行リスクが大きい」と判定したものだ。新工場は一部能力をDRAMへ振り向ける可能性も報じられており、50万枚のすべてがNANDになるわけではない。

安全保障上、最も注目すべき事実がこれだ。第3工場では、製造装置の5割超を中国国内サプライヤーから調達する計画である。3D NANDの心臓部である垂直エッチング工程でも、YMTCは中微(AMEC)など国内装置メーカーとの連携を強化している。米国のエンティティリスト掲載が、結果として中国装置産業の育成装置として機能したことになる。もちろん、国産装置で工場を建てられることと、世界大手と同じ歩留まりとコスト/ビットで量産できることはまったく別の問題だ。それでも、制裁は中国のDRAM最先端化は止めたが、NANDでは工場建設と能力拡張を止められていない。

DRAMとNANDでは、下振れリスクの質が違う。DRAMのCXMTはビット密度が半分なので、ウェハーを積んでも影響が希釈される。一方NANDは、DRAMより拡産の難度がはるかに低い。当サイトの検証では、NAND側の最大の下振れ変数は能力そのものではなくYMTCの生産規律である。誰か1社が規律を破れば、NAND産業全体の供給は容易に崩れる。

→ Exclusive: Chinese chipmaker YMTC plans new factories amid heightened US-Sino trade tensions(Reuters)

HBMが汎用DRAMをラインから押し出している

出典記事が定量化していない論点をもうひとつ足す。「これだけ投資しているのに、なぜ供給が増えないのか」という問いへの、供給側からの答えである。

HBMは同じビット数を作るのにDDR5の約3倍のウェハーを消費する。ビット供給シェアは2025年約8%から2027年約13%だが、ウェハースタートのシェアは約18%から約30%へ膨らみ、SK hynixの汎用DRAM能力は2026年Q4から2028年Q4まで月40万枚で横ばいに置かれている
図4: だから投資が増えてもDDR5の供給は増えず、SK hynixの汎用DRAM能力は2028年まで横ばいで置かれている

HBMは積層・パッケージ工程で歩留まりが落ちるため、同じビット数を作るのにDDR5の約3倍のウェハー生産能力を消費する(Micron公表値)。HBM4世代では約4倍になる。

この差は、ビットとウェハーで比重を比べると見える。ビット供給シェアで見たHBMは2025年に約8%、2027年に約13%。ところがウェハースタートで見ると2025年に約18%、2027年に約30%である。ビット以上に生産能力が奪われており、標準DRAM(スマホ・PC用)が物理的にラインから押し出されている。毎年約3〜5%のDDR5ビット成長が、この「HBM税」で直接消える。DRAM全体のビット供給は年+24%で伸びるが、HBM税を引いた汎用DDRのビット成長は約+20%に落ちる。

結果は、当サイトが持つSK hynixの能力データにはっきり出ている。SK hynixの汎用DRAM(非HBM)能力は、2026年Q4に月40万枚、2028年Q4も月40万枚で横ばいである。 同じ期間にHBM向け能力は2025年Q4の月16万枚から2028年Q4の月28万枚へ増える。総ウェハー能力は増えるのに、増分がHBMに吸われて汎用DRAMには回らない。

「販売可能ビットの洪水は2028年後半から」という見立てに対して、汎用DRAM側は2028年まで増えないという、供給側からの補強データになっている。

供給プロジェクトを一覧にする

ここまでの計画を、工場単位の構造化データにして並べた。投資額・装置搬入・製品出荷を別の列に持たせているのが要点である。

メモリ供給プロジェクト28件 — 投資額と「ビットが出てくる時期」を分けて並べる

投資額の列を単純合計しても総投資額にはならない。 龍仁600兆ウォン・南西部400兆/425兆ウォンのような一括発表枠は、二重計上を避けて代表プロジェクトにのみ載せている。

拠点製品/増やし方投資額装置搬入ビットが出てくる時期/到達能力
SK hynix韓国・7件
清州 M15X韓国DRAM既存棟へ装置投入2026年2月(初期ウェハー投入)2026年後半月8万枚(2027年)
2026年に韓国で新設工場から増える能力は実質ここだけ。2026年後半に月4万枚、2027年に月8万枚。世界のDRAMウェハー投入量に対しては2%弱の上乗せ
龍仁クラスター 第1工場韓国DRAM新設(更地)600兆ウォン(龍仁全体)≈ $403B2027年2月(2027年5月から前倒し)2028年月36万枚(2030年上期)
6つのクリーンルームに分割し、おおむね半年ごとに月6万枚ずつ立ち上げる。6区画すべてが埋まるのは2030年上期。装置搬入の開始と歩留まり習熟には1年前後かかるため、2027年のビット寄与は限定的
龍仁クラスター 第2〜第4工場韓国DRAM新設(更地)2033年以降(第4工場)
龍仁は最終的に4工場構成。第4工場は最初のクリーンルームの建屋完成目標が2033年で、装置投資はさらにその先まで続く。龍仁は2030年で完成するプロジェクトではない
清州 M17韓国NAND新設(更地)約80兆ウォン≈ $54B2029年上期
清州への総額100兆ウォン投資のうち約80兆ウォンが新NAND工場M17。DRAM勢の投資競争に対してNAND側の新設は少ないため、この発表はKioxia株の下落局面で将来のNAND増産リスクを意識させた材料のひとつになった可能性がある
清州 P&T7韓国HBM後工程後工程約20兆ウォン≈ $13B2028年(量産)前工程の能力に載らない/時期未提示
HBMの後工程(パッケージング)能力。2027年末に完成し2028年量産。前工程のウェハー能力とは別枠で、ここが詰まるとHBMは出荷できない
米インディアナ州 West Lafayette米国HBM後工程後工程38.7億ドル≈ $3.9B2028年下期(量産)前工程の能力に載らない/時期未提示
HBM4E / HBM5 世代を見据えた米国内の後工程拠点。パデュー大学と提携。後工程は清州P&T7だけではない
韓国南西部 新工場2棟韓国DRAM新設(更地)400兆ウォン(南西部分)≈ $269B未提示前工程の能力に載らない/時期未提示
2026年6月の政府MOUで示された枠。SKグループ分470兆ウォンは、この400兆ウォンに1GWのAIデータセンター等を加えた数字。着工・完成時期はいずれも未提示
Samsung韓国・5件
平沢 P4 + 既存ライン転換韓国DRAMライン転換2026年内2026年後半〜2027年1cナノ 月20万枚(2026年末)
最先端1cナノDRAMを2026年末までに月20万枚体制へ。P4への装置追加と、華城Line 17の1c化・Line 12のDRAM転用による既存ライン転換の組み合わせ。ライン転換は装置の入れ替え期間中はむしろ生産を止めるため、ウェハー面積としての純増は小さい
HBM向けウェハー能力(全社)韓国DRAMライン転換2026年内2026年月25万枚(2026年末)
2025年末の月約17万枚から2026年末に月約25万枚へ約5割増(業界取材ベース)。HBM4はメモリダイに1c DRAMを使うため、このHBM25万枚と1cの20万枚は単純合算できず相当部分が重複する
平沢 P5韓国DRAM新設(更地)2027年〜2028年後半
6つのクリーンルームの階が3層あるトリプルファブ。半導体不況期に建設が止まっていたが2026年に再開。会社が示す量産開始目標は2028年。HBM用コアダイを含む先端DRAMが主力になるとみられ、市況次第でファウンドリー設備の導入も検討されている
米テキサス州 Taylor米国DRAM新設(更地)2027年(累次の延期)
当初計画から累次の延期を重ね、量産が2027年にスリップした。大型グリーンフィールドは予定通りには立ち上がらないという実例
韓国南西部 新工場2棟韓国DRAM新設(更地)425兆ウォン(AI関連含む)≈ $286B未提示前工程の能力に載らない/時期未提示
2026年6月の政府MOU。メモリ工場2棟に国家AIコンピューティングセンター等を加えた枠。着工・完成時期は未提示
Micron米国・9件
アイダホ州ボイシ 第1工場(ID1)米国DRAM新設(更地)2026年2027年半ば(最初のウェハー)
クリーンルームは60万平方フィートで世界最大級のDRAM工場のひとつ。ただし「最初のウェハー」はフル生産とは別物。当初の2027年後半から半ばへ前倒しされた
アイダホ州ボイシ 第2工場(ID2)米国DRAM新設(更地)2028年2028年末(最初のウェハー)
ID1に隣接。HBMのパッケージング機能を米国内に初めて導入する拠点でもある
ニューヨーク州クレイ メガキャンパス米国DRAM新設(更地)2030年以降
工場1棟につきエンパイア・ステート・ビル4棟分のコンクリートを流し込む。建設は当初計画より1四半期以上早いが、会社が示す第1工場の供給寄与は2030年以降。最大4棟のキャンパス全体は20年以上かけて段階整備される
広島県東広島市 新クリーンルーム日本DRAM新設(更地)約1.5兆円(経産省補助 最大5,360億円)≈ $9.6B2028年後半2029年以降
広島は1β DRAMの生産を担い、1γ世代ではEUVをMicronで最初に導入した次世代DRAM・HBMの開発拠点。会社が正式に示すのは装置搬入開始が2028年後半までで、そこから試運転と歩留まり習熟を経る
台湾 銅鑼 P5(旧Powerchip)台湾DRAM既存工場の買収18億ドル(取得額)≈ $1.8B2026年2027年半ば
既存クリーンルーム(30万平方フィート)の改修は更地に建てるより速い。それでも意味のある規模の出荷は2027年半ばから。半導体工場の立ち上げがいかに時間を食うかを示す対照例
台湾 銅鑼 Twin Fab台湾DRAM新設(更地)FY2028
買収したP5と同サイズの第2クリーンルームをEUV対応で新設。既存改修の裏で更地の新棟も並走している
シンガポール HBM後工程シンガポールHBM後工程後工程2027年前半(能力に寄与)前工程の能力に載らない/時期未提示
HBMのパッケージング能力に2027年前半から有意に貢献する見込み
シンガポール NAND新工場シンガポールNAND新設(更地)2028年後半(最初のウェハー)
MicronのNAND増産はシンガポール発。DRAMほど注目されないが、NAND側の新設能力として効いてくる
バージニア州 Manassas 近代化米国DRAMライン転換2026年〜2026年〜2027年DDR4能力を4倍化
1α DRAM・DDR4/LPDDR4の車載・産業・防衛・医療向け拠点。月間ウェハー投入量を2Q26比で4Q27までに1.5倍にする。先端メモリではないが供給の一部
Kioxia日本・2件
岩手県 北上 第2製造棟(K2)日本NAND既存棟へ装置投入CapEx FY2026-28 年平均4,700億円(全社)≈ $3.1B2026年〜(第10世代の装置を段階投入)2026年後半〜前工程GB出力をFY2029にFY2024比 約2倍
ウェハー枚数を倍にするのではなく、同じクリーンルームに装置を追加して世代交代でビット密度を上げ、GB出力を倍にする。第10世代BiCS FLASH(332層)は第8世代比でビット密度59%向上
三重県 四日市 第7製造棟日本NAND既存棟へ装置投入順次2026年〜
前工程スペースに余力があり、新棟を建てるより既存クリーンルームへの装置投入を優先する方針。Sandiskとの合弁契約は2034年末まで延長され、両社が製造JVについて同等の意思決定権を持つため、増産は一社の一存では決まらない
CXMT中国・2件
合肥・北京中国DRAM既存棟へ装置投入IPO調達 579億元≈ $8.6B継続稼働中月26.5万枚(2025年末)→ 35万枚(2026年末)
2026年のウェハー能力増設は、ネット増分で見れば単独最大(+8.5万枚)。ただしCXMTのビット密度は既存3社の約半分で、ウェハー枚数のまま影響を読むと過大評価になる
上海 新サイト中国DRAM新設(更地)2026年〜2027年2027年(Phase 1)Phase 1 月10万枚(2027年)+ Phase 2 月10万枚(2028年)
発表済みフェーズの合計は月20万枚。「単独で月40万枚超を収容し得る」のは設計上の収容上限であって計画値ではない。両者を混同すると供給インパクトを2倍に見誤る
YMTC中国・3件
武漢 第1・第2工場中国NAND既存棟へ装置投入継続稼働中月約20万枚
独自のXtackingウェハー接合技術で267層3D NANDを量産。2025年の世界NAND売上シェアは11.8%で第5位グループの一角
武漢 第3工場中国NAND新設(更地)進行中2026年後半(稼働開始)月5万枚(2027年)→ 設計能力 月10万枚
製造装置の5割超を中国国内サプライヤーから調達する計画。垂直エッチング工程でも中微(AMEC)等との連携を強化。米国のエンティティリスト掲載が中国装置産業の育成装置として機能した
追加2工場(所在地未定)中国DRAM/NAND新設(更地)未定各月10万枚(計画)前工程の能力に載らない/時期未提示
所在地も時期も未定。既存能力と単純合計すると前工程スペースは月50万枚規模になるが、この数字は未確定で実行リスクが大きい。一部能力をDRAMへ振り向ける可能性も報じられており、50万枚すべてがNANDになるわけではない
出典(13件)

数字の前提(読む前に確認すること)

  • 投資額のドル換算は2026年7月17日時点の概算(800兆ウォン=約5,380億ドルという発表値から逆算した1,487ウォン/ドル、および1.5兆円=約96億ドルを用いた)。発表通貨の額を investmentLabel に、比較用の概算を investmentUsdB に持つ。
  • 複数プロジェクトへ一括で発表された投資枠(龍仁600兆ウォン、南西部400兆/425兆ウォンなど)は、二重計上を避けるため代表プロジェクトにのみ investmentUsdB を載せている。列を単純合計しても総投資額にはならない。
  • bitStartYear はチャート用に bitStart を年へ丸めた値。後工程(HBMパッケージング)はウェハー投入能力ではないため null にしている。
  • SK hynix の月55万枚には中国・無錫の約20万枚が含まれる。当サイトの dramFabCapacity.ts の skHynix 系列に無錫が含まれるかは出典に明記がなく、両者を厳密に接続することはできない。
  • CXMTの2025年末能力について、当サイトの既存記事(ai-semiconductor-endgame-2026-part-2)は同じSemiAnalysis出典で月20万枚としている。本データは月26.5万枚を採用した。26.5万+2026年の増分8.5万=2026年末35万枚と内部整合するのに対し、20万枚では計算が合わないため。
  • CXMTのHBM向け能力について、SemiAnalysisのモデル(2025年末 月5,000枚→2028年末 月10万枚)と、当サイトの dramFabCapacity.ts が持つ系列(2025Q4 3万枚→2028Q4 6万枚、出典はnote記事+TrendForce)は桁が違う。出典系統が別のため、どちらかに寄せず併記する。
  • YMTCの「前工程スペース単純合計 月50万枚」は、当サイトの既存ファクトチェック(china-dram-nand-market-factcheck)で「未確定で実行リスクが大きい数字」と判定済み。本データでも note にその旨を明記している。

同じデータを、ビットが市場に出てくる年を横軸にして並べ直すとこうなる。バーの長さが「装置搬入から製品が出るまでのラグ」を表す。

2026年に出てくるビットは既存棟の装置投入だけ年が特定できる22件のうち2026年にビットが出るのは8件だけで、すべて既存棟への装置投入かライン転換。更地の新工場は2027年以降にずれ、9件は2028年以降になる2026年=投資は史上最大2028年後半〜=ビットが本格的に出てくる20262027202820292030203120322033ビットが市場に出てくる年 →SK hynix清州 M15X月8万枚Samsung平沢P4+ライン転換月20万枚SamsungHBM向け能力(全社)月25万枚Micronバージニア 近代化Kioxia岩手 北上 K2Kioxia三重 四日市 第7棟CXMT合肥・北京月35万枚YMTC武漢 第1・第2工場月20万枚Samsung米テキサス TaylorMicronアイダホ ID1Micron台湾 銅鑼 P5CXMT上海 新サイト月20万枚YMTC武漢 第3工場月10万枚SK hynix龍仁 第1工場月36万枚Samsung平沢 P5Micron台湾 銅鑼 Twin FabSK hynix清州 M17Micronアイダホ ID2Micron広島 新クリーンルームMicronシンガポール NAND新工場MicronNY州クレイSK hynix龍仁 第2〜4工場時期未提示・後工程(前工程の能力に載らない、または時期の発表がない)SK hynix清州 P&T72028年(量産)SK hynix米インディアナ 後工程2028年下期(量産)SK hynix南西部 新工場2棟 時期未提示 Samsung南西部 新工場2棟 時期未提示 Micronシンガポール HBM後工程2027年前半(能力に寄与)YMTC追加2工場(未定) 時期未提示 SK hynixSamsungMicronKioxiaCXMTYMTC
メモリ供給プロジェクトのタイムライン — 装置搬入からビットが出てくるまでのラグ(2026〜2033年)

この図の読み方

  • バーの長さは、装置搬入(発表がなければ着工)から販売可能ビットが市場に出てくるまでのラグ。バー右端の数値は到達時の月間ウェハー投入能力。
  • は横軸の左端(2026年)より前に搬入・着工が始まっているもの。 は搬入・着工が「順次」「継続」等で年を特定できず、ビットが出てくる年だけを示すもの。 は時期未提示・後工程。
  • 拠点名は図の幅に収めるため短縮している(正式名は上の一覧表を参照)。年は各プロジェクトの bitStart を年に丸めた値。
  • 出典: 韓国産業通商資源部/The Elec/TrendForce/電子新聞/SemiAnalysis/Reuters/各社IR資料。プロジェクトごとの対応は上の一覧表の出典欄にある。

争点は2028年以降にある

需要編と供給編の2週分をまとめる。

2026〜2027年にも、微細化、高層化、既存ラインへの装置追加、そしてCXMTの急増産によって、販売可能ビットは相当に増える。しかし大型グリーンフィールド工場の供給寄与はまだ限定的で、各社の開示と需給モデルが示すのは、その供給増をなお上回る需要である。メモリ半導体企業の業績が2028年前半まで伸びていく見込みは高い。ここまでは、ボトムアップのリサーチ能力がある半導体アナリストの間では概ね共通の見解になっている。

仮に、この2028年前半までの業績予想を市場も否定していないとしたら、PER4倍という値札の意味は「2028年までの利益は本物だろうが、その後に利益が垂直落下する」という予言になる。市場は2028年よりもっと早く業績が悪化すると思っている節もあるのだが、いずれにせよ争点は2028年以降に何があるかだ。

供給側から見た2028年以降は、この記事で並べたとおりである。Samsung P5、龍仁第1工場、Micronのアイダホ第2とニューヨークと広島、SK hynixのM17、CXMTの上海Phase 2、YMTCの武漢第3工場のフル稼働と追加2棟。これらが同時に着弾する。

一方で、市場が新たな需要をゼロ評価しているのもまさにそこである。世界モデルと合成データが生む「機械が機械のために生む需要」、フィジカルAIとその一分野である自律型軍事ドローン、各国が競って開発するソブリンAI、価格に殺されて行列を作っているエッジAIの待機需要。2028年以降の供給の増加に、これらの新しい需要がぶつかったとき、メモリ半導体の価格はそれでも大きく崩れるのか。それともこれらの新しい需要が2028年以降の供給増をさらに上回るのか。

供給側の数字が答えているのは、そこまでだ。少なくとも「2026年の設備投資が史上最大だから2027年に供給が氾濫する」という筋書きは、工場ごとの装置搬入と製品出荷の時期を並べると成立しない。

当サイトの既存記事・データとの差分(16件)

この記事を書くにあたって、当サイトの既存記事と構造化データを突き合わせた。食い違った箇所と、その扱いを明示しておく。

#論点出典記事の値当サイトの値この記事での扱い
1Stargateの規模世界能力の約4割能力データで割ると45〜46%「ほぼ半分」に直した
2HBM4累計売上10億ドルSamsungMicronの決算原文で確認済みSamsung側は報道ベースと明記。取り違えリスクを注記
32026年増設の単独最大CXMT +8.5万枚純増と粗増で首位が入れ替わる(Samsung 1cは粗で+14万枚)純増ベースであることを明示
4CXMT 2025年末能力月26.5万枚既存記事は月20万枚内部整合を優先して26.5万枚を採用。差分を注記
5CXMTのHBM能力2025年末 月5,000枚→2028年末10万枚2025Q4 3万枚→2028Q4 6万枚(別出典)出典を分けて併記
6CXMTのDRAMシェア7.67%(世界4位)TrendForce基準では「その他」全体が7.1%目論見書基準であり接続しないと注記
7「シェアが1年でほぼ倍」ほぼ倍TrendForce基準では1.5倍基準を明示
8上海サイトの能力単独で月40万枚超発表済みフェーズは合計20万枚設計上限と計画値を区別
9YMTCの前工程スペース単純合計で月50万枚既存検証で「未確定・実行リスク大」留保を明示
10Kioxiaの世代呼称第10世代=332層TrendForce予測はBiCS9=400層超第9世代を製品として挟まなかった経緯を補足
11銅鑼P5の取得2026年3月・18億ドル「2024年取得」(金額なし)合意と取得完了の段階差として整理
12銅鑼P5の出荷寄与2027年半ば構造化データはFY2028当サイト側を直す(要修正)
13広島の立ち上げ装置搬入2028年後半「HBM出荷2028年頃」噛み合わないため基準の切り分けが必要と注記
14HBM TAM 2028年1,000億ドルMicron自社見通しGoldman 2028年1,684億/BofA 2030年2,460億/Bernstein 2030年1,000億出典併記。「2年前倒し」は当サイトと整合
15SK hynixのADR調達約265億ドル7月8日時点で約281億ドル(予定額)上場後の確定額を採用。差16億ドルは要確認
16龍仁の2027年2月装置搬入開始の前倒し既存記事は「完成を前倒し」装置搬入と読むのが正しい。既存記事側を直す

このうち #12 と #16 は当サイト側の修正が必要な箇所で、#13 と #15 は追加確認が残っている。

出典記事: 週刊金融日記 第740号「メモリ半導体株の低PERは歴史的なミスプライスなのか 供給編」。需要編は第739号。