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韓国メモリ輸出を「数量 × 単価」に分解する

「半導体の輸出金額が爆発している」というニュースは毎月流れる。だが金額だけ見ても、それが「数量(出荷量)が増えたから」なのか「単価が上がったから」なのかは分からない。韓国関税庁(KCS)の品目別統計には金額のほかに**輸出重量(kg)**があり、半導体の申告数量単位は個数ではなく重量なので、これが「数量」の一番近い代理変数になる。

そこで 金額 = 数量(輸出重量)× 単価(USD/kg) に分解する。インタラクティブな分解チャート(品目ごとに「金額の旬報3段バー」+「数量バー+単価線」+「数量の前年同月比」)は /memory-makers/korea-chip-exports に置いた。本記事はそこから読み取れる構図をまとめる。

結論:DRAM は「価格で伸び」、HBM は「物量でも伸びる」

品目(2026-05・月末確報)金額YoY単価(重量基準)数量(重量)の動き
DRAM(モジュール除く)$11.43B+409%$77,531/kgほぼ横ばい〜前年割れ(5月 YoY −8%)
NAND・フラッシュ$1.72B+207%$56,832/kg抑制ぎみ
MCP(HBM 含む)全品目で最高単価($90,000/kg 超)最高数量も増加(両輪)

ポイントは品目間の非対称だ。

  • DRAM:単価が 2024 年初の約 11,000/kg から 2026-05 には 77,531/kg へ、ざっと7倍に上がっている。一方で輸出重量(数量)は 2024-01 の約 129 トンから 2026-05 の約 147 トンとほぼ横ばいで、しかも直近の前年同月比は −8%(2026-05)まで落ちている。つまり物量はむしろ減り始めているのに、金額は単価だけで伸びている
  • MCP(HBM):ここだけは重量(数量)も単価も両方伸びる。単価は全品目で最高、かつ重量の前年同月比もプラスが続く

なぜこうなるか:HBM が DRAM ウェハを「2〜3倍」食う

HBM は DRAM のダイ(チップ)を8〜12段スタックし、ベースのロジックダイの上に TSV で積んで1パッケージにした製品だ。複数チップを複合した構造なので、関税分類上は **MCP(복합구조 칩、HSK 8542.32.3000)**に入る。HBM 単独の HS コードは無いため、MCP が HBM 出荷の代理指標になる(韓国の MCP 急増の中身は圧倒的に HBM)。

そして HBM は 1ビットあたり DRAM ウェハを 2〜3倍消費する。ダイが大きく、TSV スタックを伴い、歩留まりも低いためだ。だから HBM を増産するほど、同じ DRAM のウェハ・キャパが HBM に吸われ、コモディティ DRAM(DDR5 など)のビット供給が削られる

この「共食い」が分解チャートにそのまま出ている。

  • MCP(HBM)の重量増=ウェハ・キャパが HBM 側へ流れ込んでいる
  • DRAM の重量が頭打ち〜前年割れ=コモディティ側に回せる物量が減っている
  • DRAM の単価が急騰=供給が締まった結果の値上がり

「物量を増やせない(むしろ減る)のに単価が急騰する」は、供給制約のもとで起きる典型的な動きだ。DRAM の重量 YoY が 2026-05 に −8% へ沈んでいることは、共食い仮説を弱めるどころか、むしろ裏付ける。

NAND は別の話:同じ「値上がり」でも原因が違う

ここは混同しやすい。NAND(3D NAND)は DRAM とは別の工場・別プロセスで、HBM は DRAM ウェハは食うが NAND ウェハは直接は食わない(DRAM ファブで NAND は作れない)。

NAND も足元で品薄・単価上昇だが、原因は HBM の共食いではなく、NAND メーカー自身の減産(2023〜24 年の不況で絞った)+ AI サーバ向け eSSD 需要の回復だ。結果(数量を抑えて単価が上がる)は DRAM と似ているが、メカニズムは分けて読むのが正しい。

注意点

  • これは「生産量」そのものではなく輸出重量(通関ベース)。在庫や出荷タイミングのブレは乗る。ただし DRAM/NAND の物量代理としては実用上問題ない
  • 単価(USD/kg)=金額 ÷ 重量。製品価格そのものの上昇に加え、同じ 1kg の中身が HBM のような高単価品へ入れ替わるミックスシフトも同時に効く
  • 品目別×旬(1〜10日・1〜20日の進捗)は관세청の無料 API・公式リリースには無く、証券リサーチ(SK증권 반도체 한동희のリサーチを @jun89320 が体系開示、Jukan が英訳)の통관 잠정치を取り込んでいる。出所の詳しい経緯は こちらの記事 に書いた

まとめ

金額を「数量 × 単価」に割るだけで、同じ「メモリ輸出の急増」でも品目ごとに中身がまったく違うことが見える。

  • DRAM・NAND:数量は伸びない(むしろ減る)。伸びは単価ドリブン
  • MCP(HBM):数量も単価も伸びる両輪。ここが今の半導体相場の主役

そしてこの非対称の根っこには「HBM が DRAM ウェハを 2〜3倍食う」という物理がある。チャートで数量と単価を分けて見ると、ニュースの「過去最高」という見出しの下で何が起きているかが具体的に読める。

インタラクティブな品目別チャート(金額の旬報3段・数量バー・単価線・数量の前年同月比)は /memory-makers/korea-chip-exports で見られる。