都市計画法 — 街をどう作るかのルールと開発の許可制度
この章の主張
- 土地は所有者が自由に使えるはずだが、街並みや防災のために『どこに何を建てられるか』が法律で決まっている。
- 都市計画法は『区域指定(市街化/調整/用途地域 13 種)』と『行為規制(開発許可・都市計画事業)』の 2 軸で押さえる。
- 区域の階層(都市計画区域 → 区域区分 → 用途地域)と、開発許可の要否判定フローを 2 枚の図で叩き込む。
1. 都市計画区域と準都市計画区域 — 法律が及ぶ範囲を決める
都市計画法はまず**『どこに適用するか』**を区域として線引きします。すべての国土に法が及ぶわけではありません。都市計画区域は街として一体的に整備すべき範囲、準都市計画区域はその外側で街化のおそれがある範囲、それ以外は区域外(白地)です。
都市計画法 第5条第1項: 「都道府県は、市又は人口、就業者数その他の事項が政令で定める要件に該当する町村の中心の市街地を含み、かつ、自然的及び社会的条件並びに人口、土地利用、交通量その他国土交通省令で定める事項に関する現況及び推移を勘案して、一体の都市として総合的に整備し、開発し、及び保全する必要がある区域を都市計画区域として指定するものとする」(e-Gov 都市計画法第5条)
1.1 都市計画区域 — 都道府県が指定する『街にする区域』
都市計画区域は原則として都道府県が、関係市町村と都道府県都市計画審議会の意見を聴いたうえで指定します(都市計画法 第5条 第1項)。区域が2以上の都道府県にわたる場合だけ、国土交通大臣が関係都道府県の意見を聴いて指定します(都市計画法 第5条 第4項)。事務所数や規模ではなく、区域がまたがるかどうかで権者が振り分けられる点が宅建業の免許権者と似ています。
1.2 準都市計画区域 — 高速 IC 周辺などの『街になりそうな区域』
準都市計画区域は、都市計画区域外でスプロール化のおそれがある区域に最小限の規制をかける仕組みです(都市計画法 第5条の2 第1項)。高速道路のインターチェンジ周辺や幹線道路沿いに郊外型店舗が無秩序に建つのを防ぐのが想定用途です。指定権者は都道府県で、用途地域・特別用途地区・特定用途制限地域などを定められますが、区域区分(市街化区域と市街化調整区域の線引き)はできません。
2. 区域区分(線引き) — 市街化区域と市街化調整区域
都市計画法 第7条 第1項は、都市計画区域の中をさらに『街にする区域(市街化区域)』と『街にしない区域(市街化調整区域)』に分けると定めます。これを区域区分(線引き)と呼びます。ただし区域区分は必須ではなく、三大都市圏や政令指定都市等の所定の区域以外は、線引きをしない『非線引き区域』のままにできます(同項ただし書)。
2.1 市街化区域 — すでに市街地、または 10 年以内に優先的に市街化
市街化区域は都市計画法 第7条 第2項で『すでに市街地を形成している区域、及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域』と定義されます。市街化区域には用途地域を必ず定めなければなりません(都市計画法 第13条 第1項第7号)。市街化区域=用途地域必須、と覚えれば建蔽率・容積率を含む建築基準法の集団規定が自動的に乗ってくることが理解できます。
2.2 市街化調整区域 — 市街化を抑制する区域
市街化調整区域は同条第3項で『市街化を抑制すべき区域』と定義されます。原則として用途地域を定めず、開発行為は規模を問わず原則すべて知事の許可が必要です(都市計画法 第29条 第1項柱書)。許可不要となるのは農林漁業用建築物等の例外(同項各号)に限られ、それ以外は法34条の11号列挙パターンを通らなければ開発許可が下りません。
3. 用途地域 13 種 — 街の役割を 13 のゾーンに分ける
市街化区域には必ず用途地域を定めます。用途地域は住居系8種・商業系2種・工業系3種の合計13種類で、建てられる建物・建てられない建物が建築基準法 第48条・別表第二で詳細に決められています。あなたが押さえるべきは**「13種のうち住宅が建てられないのは工業専用地域だけ」**という1点です。商業地域でも工業地域でも住宅は建てられます。
3.1 第一種低層住居専用地域 — 低層住宅専用の最も静かな住宅街

第一種低層住居専用地域は13種で最も用途が厳しい地域です。建物の高さは10m または 12mに制限され、店舗は床面積50m²までの兼用住宅のみ可能です。小学校・中学校・幼稚園・診療所は建てられますが、大学・病院は不可。一戸建ての閑静な住宅街がイメージです。
3.2 第二種低層住居専用地域 — 低層住居中心、150 m² までの店舗 OK

第一種低層住居専用地域より少し緩和され、床面積150m²までの小規模店舗が建てられます。コンビニサイズの店舗が混在する住宅街です。高さ制限は同じく10mまたは12m。
3.3 第一種中高層住居専用地域 — 中高層マンションの住宅街

中高層住居専用地域では絶対高さ制限がなくなり、マンションが建てられます。病院・大学もここから建てられます。店舗は500m²までで2階以下。
3.4 第二種中高層住居専用地域 — 中高層住居中心、1,500 m² までの店舗 OK

第一種中高層よりさらに緩和され、店舗は1,500m²まで2階以下で建てられます。事務所も建てられるようになります。
3.5 第一種住居地域 — 住居の環境を守る地域

住宅中心ですが、3,000m²までの店舗・事務所・ホテルが建てられます。住居系ではここからホテルが解禁されます。
3.6 第二種住居地域 — 主として住居の環境を守る地域

店舗・事務所の規模制限が10,000m²まで緩和され、カラオケボックスも建てられます。風俗系を除く中規模商業が住宅と混在する地域です。
3.7 準住居地域 — 道路沿いの自動車関連と住居を調和

国道や幹線道路沿いを想定した地域で、自動車修理工場・ガソリンスタンドが建てられます。住居系8種類のうち道路系の用途を許容する唯一の地域です。
3.8 田園住居地域 — 農業と調和した低層住宅街(2018 創設)

2018年に創設された最新の用途地域で、農地と低層住宅の混在を保護します。基本的には第一種低層住居専用地域に農産物直売所等が加わるイメージ。13種のなかで唯一、農地法に類似した農地の形質変更に市町村長の許可が必要な地域です(都市計画法 第52条)。
3.9 近隣商業地域 — 近隣住民のための商業地

日用品の商店街がイメージ。住宅と商業が混在し、ほとんどの建物が建てられます。一定規模以下の工場も可能です。
3.10 商業地域 — 銀行・百貨店・繁華街の中心

商業活動が最も活発な地域で、建蔽率の上限が80%まで認められます。住宅も建てられる点を忘れないでください。
3.11 準工業地域 — 環境悪化のおそれが少ない工業と住居の混在

軽工業を中心に住宅・商業が混在する用途が最も広い地域。13種で唯一、ほぼ全ての用途が許容されます(風俗営業等の一部例外を除く)。
3.12 工業地域 — 工業中心、住宅も OK だが学校・病院 NG

工業の利便を増進する地域。住宅は建てられるけれども、学校・病院・ホテルは建てられません。工場との両立を考えた切り分けです。
3.13 工業専用地域 — 工場専用、住宅も建てられない

13種のうち唯一、住宅を一切建てられない地域です。臨海工業地帯のコンビナートがイメージ。試験では「住居系以外で住宅が建てられない地域は?」という形で何度も出題されます。
⚠️ 試験での問われ方
- 住宅が建てられないのは → 工業専用地域のみ
- 大学・病院が建てられないのは → 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域、工業地域、工業専用地域
- ホテル・旅館が建てられるのは → 第一種住居地域以降の住居系・商業系・準工業地域まで
- カラオケボックスが建てられないのは → 住居系の準住居地域より厳しい地域すべて
4. 地域地区の重ね合わせ — 特別用途地区・高度地区・防火地域
都市計画法 第9条の地域地区は、用途地域の上にさらに目的別の地区を重ねる仕組みです。用途地域だけでは対応できない地域特性(防火・景観・高さ)を、別系統の制限で補完します。
4.1 特別用途地区 — 用途地域の規制を地域実情で補完
特別用途地区は用途地域の指定がある区域内でのみ定められます(都市計画法 第9条 第14項)。文教地区・特別工業地区など、市町村が条例で具体化し、用途地域の規制を上乗せ(厳しく)または緩和します。準都市計画区域でも指定可能です。
4.2 防火地域・準防火地域 — 火災延焼を防ぐ建築規制
防火地域・準防火地域は建築基準法と連動し、規模・階数に応じて耐火建築物または準耐火建築物を強制します。建築基準法上の建蔽率は、防火地域内で耐火建築物を建てる場合に +10% の緩和が受けられます。
4.3 地区計画 — 街区単位のオーダーメイド計画
地区計画は都市計画法 第12条の4以下で定められ、街区単位で建物の配置・道路・公園の位置をきめ細かく計画します。住民参加のまちづくりの中核制度で、市町村が地区計画を決定します。地区計画区域内では、土地の区画形質の変更や建築の際に市町村長への届出が必要です(都市計画法 第58条の2)。
5. 開発許可 — 一定規模以上の土地造成は知事の許可が必要
開発許可は都市計画法 第29条 第1項で『主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更』を対象とします。建築目的の土地造成だけが対象で、単純な土地の売買・分筆は対象外です。
5.1 開発行為の定義 — 『建築目的の区画形質の変更』
開発行為は『建築目的』×『区画形質の変更』×『一定規模以上』の3要素で判定します。区画形質の変更とは、道路を新設して敷地を区切る区画変更や、切土・盛土による土地の形状変更を指します。建築物だけを建てる行為(造成を伴わない)は開発行為ではなく、建築基準法の確認手続きで処理されます。
5.2 区域別の許可面積要件 — 市街化区域 1,000 m² 以上が起点
開発許可の閾値は区域ごとに異なります。市街化区域 1,000 m² 以上、非線引き都市計画区域・準都市計画区域 3,000 m² 以上、都市計画区域外 10,000 m² 以上が必要面積で、市街化調整区域だけは規模を問わず原則すべて許可が必要です。「市街化1,000・非線引き3,000」の数字を逆にしないことが基本です。
5.3 許可不要の例外 — 農林漁業用・公益施設・非常災害
面積要件を超えても、都市計画法 第29条 第1項各号の例外に該当すれば許可不要です。代表は ①農林漁業用建築物(市街化区域以外)、②公益施設(駅舎・図書館・公民館・社会福祉施設)、③非常災害の応急措置、④通常の管理行為や軽易な行為(同項第11号)です。学校・病院は公益施設の例外には含まれない点に注意してください。
5.4 市街化調整区域の特例(34 条) — 限定された用途のみ許可
市街化調整区域では、都市計画法 第34条の1号〜11号に列挙された用途以外は原則として許可が下りません。代表的なのが第1号の『周辺住民の日常生活に必要な店舗・サービス施設』、第4号の『農林漁業用施設』、第10号の『地区計画に適合するもの』、第11号の『条例で定めるもの』です。住宅は『自己の業務用』『分家住宅』等の限定された場合のみ許可されます。
⚠️ 試験での問われ方
- 市街化区域での1,000m²未満の開発 → 許可不要(面積要件未達)
- 市街化調整区域での500m²の宅地造成 → 許可必要(規模問わず)
- 図書館の建築のための開発 → 許可不要(公益施設の例外)
- 学校の建築のための開発 → 許可必要(学校は例外に含まれない)
- 農林漁業者の自宅建築のための市街化調整区域での開発 → 許可不要(法29条1項2号)
- 開発許可申請を経ない開発行為 → 行為自体が違法
6. 都市計画事業 — 道路・公園・区画整理を実行する制度
都市計画事業は、都市計画決定された道路・公園・下水道などを実際に整備する手続きです。都市計画法 第59条で都道府県知事(一定規模以上は国土交通大臣)が施行者に対し事業認可を行います。認可・告示後は事業地内の建築が原則として制限されます。
6.1 事業認可後の建築制限 — 知事の許可が必要に
都市計画法 第65条 第1項は、都市計画事業の認可・承認の告示があった後、事業地内において①土地の形質の変更、②工作物の建設、③建築物の建築をするときは、都道府県知事の許可を受けなければならないと定めます。許可基準は『事業の施行の障害となるおそれがないこと』で、用地買収を円滑に進めるための制限です。認可前は通常の建築規制(53条等)のみが適用され、土地利用は比較的自由です。
このカテゴリから出る過去問
本カテゴリの過去問27年分(合計62問)の集約・解説は Phase 3 で
/takken/quiz/{year}/{q-number}/に展開予定です。公式由来確認済の問題のみを掲載します。出典: 一般財団法人 不動産適正取引推進機構(→ RETIO 試験情報)
主な頻出論点は次のとおりです(順序は近年の頻出度順):
- 用途地域13種ごとの建築可否(毎年1問)
- 開発許可の要否判定(面積要件・例外)
- 市街化調整区域の特例
- 都市計画区域・準都市計画区域の指定権者
- 地域地区の組み合わせ規制
参照条文
- 都市計画法 第5条(都市計画区域): e-Gov 都市計画法
- 都市計画法 第5条の2(準都市計画区域): 上記同 URL
- 都市計画法 第7条(区域区分): 上記同 URL
- 都市計画法 第8条・第9条(地域地区): 上記同 URL
- 都市計画法 第12条の4以下(地区計画): 上記同 URL
- 都市計画法 第13条(都市計画の基準): 上記同 URL
- 都市計画法 第29条(開発許可): 上記同 URL
- 都市計画法 第33条(開発許可の基準): 上記同 URL
- 都市計画法 第34条(市街化調整区域の特例): 上記同 URL
- 都市計画法 第52条(田園住居地域内の農地の形質変更): 上記同 URL
- 都市計画法 第53条(都市計画施設等区域内の建築制限): 上記同 URL
- 都市計画法 第58条の2(地区計画区域内の届出): 上記同 URL
- 都市計画法 第59条(都市計画事業の認可): 上記同 URL
- 都市計画法 第65条(事業地内の建築制限): 上記同 URL
- 建築基準法 第48条・別表第二(用途規制): e-Gov 建築基準法
参考書籍(論点漏れチェックに参照、本文の引用なし)
- みんなが欲しかった!宅建士の教科書 法令上の制限・税・その他(TAC出版, 2025年度版, 2024年, ISBN: 978-4-300-10980-5, 該当章 P.10〜68)
- 1週間で宅建士の基礎が学べる本(インプレス, 第7版, 2024年, ISBN: 978-4-295-01804-6, 該当章 P.180〜220)
- パーフェクト宅建士基本書(住宅新報出版, 2025年度版, 2024年, ISBN: 978-4-910499-23-7, 該当章 P.480〜560)
- 動画で学べる宅建士テキスト 2025年版(KADOKAWA, 2024年, ISBN: 978-4-04-606547-4, 該当章 P.310〜360)
関連カテゴリ
- 2_2 建築基準法 — 用途地域 13 種の建蔽率・容積率・斜線制限を具体化する集団規定
- 2_5 土地区画整理法 — 都市計画事業の中で最大規模の手法
- 2_6 盛土規制法 — 開発許可と並ぶ造成規制
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2_2 建築基準法 — 都市計画法で区域と用途を決めたら、次は建物の最低基準と集団規定(接道・建蔽率・容積率・斜線制限)に進みます。
本教材は 令和8年度(2026年度)宅地建物取引士資格試験 を対象として、2026 年 4 月 1 日時点で施行されている法令 に基づき執筆しています。法改正は
/takken/changelog/に掲載します。