土地区画整理法 — 仮換地・換地処分・保留地の流れ

この章の主張

  • 土地区画整理事業は、宅地を一旦集約して道路・公園を造り、参加者全員に再配分するしくみ。
  • 進行は「施行者決定 → 換地計画 → 仮換地指定 → 工事完了 → 換地処分」の1本のタイムラインで把握する。
  • 仮換地指定(使用収益権が移る)と換地処分(所有権が移る)の効果の違いを切り分けられれば、この章の論点はほぼ答えられる。
土地区画整理事業の3類型施行者ツリー(個人・組合・公的)

1. 土地区画整理事業のしくみと施行者 — 個人・組合・公的の3類型

土地区画整理法第3条は、施行者を3つに区分します。個人施行者(宅地所有者または借地権者みずから)、土地区画整理組合(宅地所有者が共同で設立)、そして公的施行者(地方公共団体・国・都市再生機構・地方住宅供給公社)です。誰が施行するかで、認可権者・監督方法・事業区域の制約が変わります。

土地区画整理法第3条第1項: 「宅地について所有権若しくは借地権を有する者は、一人で、又は数人共同して、当該権利の目的である宅地について、土地区画整理事業を施行することができる」(→ e-Gov 土地区画整理法

1.1 組合施行 — 宅地所有者7人以上で都道府県知事の認可

組合施行のフロー(発起人7人以上 → 定款・事業計画 → 知事認可 → 組合設立)

組合施行は土地区画整理法第14条で、施行地区内の宅地所有者および借地権者合計7人以上が共同して、定款と事業計画を定めて都道府県知事の認可を申請します。組合が設立されると、施行地区内の宅地所有者・借地権者は当然に組合員となります(第25条)。途中で土地を譲り受けた者も、ただちに前者の地位を承継して組合員になる扱いです。

2. 仮換地指定 — 工事のために一時的に使用する土地を指定する

仮換地指定の鳥瞰図(従前地と仮換地の対比、所有権と使用収益権の分離)

仮換地指定は土地区画整理法第98条にもとづく、工事中に従前地の代わりとして仮に使用させる土地の割当てです。指定の効力発生日から、関係権利者は従前地を使えなくなり、仮換地を使えるようになります。所有権は従前地に残ったままで、移転するのは「使用収益する権利」だけです。この権利だけが移る性質を理解できると、この章の半分は片付きます。

土地区画整理法第99条第1項: 「前条第一項の規定により仮換地が指定された場合においては、従前の宅地について権原に基づき使用し、又は収益することができる者は、仮換地の指定の効力発生の日から……仮換地について、従前の宅地について有する権利の内容である使用又は収益と同じ使用又は収益をすることができる」(→ e-Gov 土地区画整理法

2.1 仮換地指定の効果 — 使用収益権だけが移転、所有権は従前地に残る

従前地と仮換地の権利分離(所有権 vs 使用収益権)の左右比較

仮換地が指定されると、従前地の所有者は所有権を持ったまま、使用収益権だけを失います。逆に仮換地では、所有権はないのに使用収益はできる、という奇妙な状態が生まれます。たとえば抵当権の設定や所有権移転登記は、引き続き従前地について行うことになります。

2.2 仮換地での建築 — 施行者の承認が必要

仮換地での建築承認フロー(施工者承認 → 建築可・無承認 → 建築不可)

仮換地の使用収益権を得た者でも、土地区画整理法第76条の建築制限の対象になります。建物の新築・改築・増築、土地の形質変更や重量物の堆積などは、知事等の許可が必要です。組合施行の場合は組合への申請を経て知事の許可を受ける流れになります。

⚠️ 試験での問われ方

  • 仮換地指定で従前地の所有権が移転する → 誤り。移るのは使用収益権だけ。
  • 仮換地で勝手に建物を建てられる → 誤り。第76条の許可が必要。
  • 抵当権は仮換地に設定する → 誤り。所有権は従前地に残るので、抵当権設定登記も従前地。
  • 仮換地指定後も従前地で耕作を続けてよい → 誤り。指定の効力発生日から従前地は使えない。

3. 換地処分 — 公告の翌日に所有権が新しい換地に移る

仮換地指定から換地処分までのタイムライン(指定 → 工事 → 換地処分公告 → 翌日に所有権移転)

換地処分は土地区画整理法第103条で、工事完了後に施行者が換地計画で定めた内容を関係権利者に通知し、その旨を公告することで行います。所有権の移転日は公告の翌日で、この一点さえ押さえれば、換地処分の論点は半分以上クリアできます。「公告日当日」と書く誤答肢が頻出するので、注意が必要です。

土地区画整理法第104条第1項: 「第百三条第四項の公告があつた場合においては、換地計画において定められた換地は、その公告があつた日の翌日から従前の宅地とみなされ、換地計画において換地を定めなかつた従前の宅地について存する権利は、その公告があつた日が終了した時において消滅する」(→ e-Gov 土地区画整理法

3.1 換地処分の効果 — 公告の翌日に所有権移転、地役権など権利関係も整理

換地処分の効果=『所有権移転』×『翌日付』×『公告日基準』の3要素分解図

換地処分の効力は、第104条で「公告があった日の翌日」に統一されています。所有権だけでなく、地役権・先取特権・質権・抵当権など、従前地について存在した諸権利も、原則として換地に移行します。地役権は例外で、従前地の位置でなお効力が必要なら、公告日の終了時点で消滅せず従前地上に残ります(第104条第5項)。

3.2 保留地 — 施行者が事業費に充てるために取得する

保留地の鳥瞰図(公共施設用地・換地・保留地の3区分と施行者帰属)

保留地は、施行者が事業費に充てるため、または規約・定款で定める目的のために、換地として定めずに留保する土地です。保留地は土地区画整理法第104条第11項により、換地処分の公告日の翌日に施行者が取得します。所有権移転のタイミングは、一般の換地と同じです。

3.3 清算金 — 従前地と換地の不均衡を金銭で調整する

清算金の精算図(従前地評価と換地評価の差額を交付または徴収で調整)

施行者は、各換地が従前地と等価になるよう設計しますが、地形や面積の都合で完全には揃いません。差が残る場合は、清算金として金銭で調整します(第94条)。多く受け取りすぎた者からは徴収し、不足した者には交付します。清算金の額が確定するのは換地処分のときで、徴収・交付も公告の翌日以降に行われます。

⚠️ 試験での問われ方

  • 所有権が移るのは換地処分の公告日当日 → 誤り。公告日の翌日。
  • 保留地は組合員に分配する → 誤り。施行者が取得して事業費に充てる。
  • 清算金は仮換地指定の段階で確定する → 誤り。換地処分のときに確定。
  • 地役権は換地処分でかならず換地に移る → 誤り。位置の効用が必要なら従前地に残る例外がある。

4. 事業地内の建築制限 — 第76条の対象行為と許可権者

76条の建築許可フロー(事業認可 → 行為計画 → 知事等の許可 → 行為可能)

土地区画整理法第76条は、施行地区内で事業の障害になりそうな行為を、許可制で抑える規定です。事業認可の公告があった日から、換地処分の公告がある日まで、施行地区内で次の行為をしようとする者は、許可を受けなければなりません。違反すれば、施行者の請求により都道府県知事が移転・除却の命令を出せます(第76条第4項)。

4.1 76条の対象行為 — 建築・形質変更・重量物堆積

第76条の対象行為ツリー(土地の形質変更・建築物の新築改築移転・重量物の堆積)

第76条が対象とする行為は、(1)土地の形質変更、(2)建築物その他の工作物の新築・改築・増築、(3)重量5トン超の物件の設置または堆積です。許可権者は、国土交通大臣施行なら国土交通大臣、都道府県・国土交通大臣以外の施行者なら都道府県知事です。市町村が施行する場合も、許可は都道府県知事から受ける点が頻出論点になります。

⚠️ 試験での問われ方

  • 仮換地指定があるまでは第76条の制限は始まらない → 誤り。事業認可の公告日から制限が始まる。
  • 第76条の許可は施行者から受ける → 誤り。原則として都道府県知事から受ける(国土交通大臣施行は別)。
  • 違反建築物に対する移転命令は施行者が直接出せる → 誤り。施行者の請求にもとづき知事が出す。

このカテゴリから出る過去問

本カテゴリの過去問は27年分が/takken/quiz/{year}/{q-number}/で順次公開予定です(Phase 3)。出題範囲は土地区画整理法における仮換地指定・換地処分・保留地・清算金・第76条建築制限を中心に、年1問ペースで出題される傾向です。表記は「令和N年度試験 問X」で統一します。

参照条文

参考書籍(論点漏れチェックに参照、本文の引用なし)

  • みんなが欲しかった!宅建士の教科書(TAC出版, 2025年版, ISBN: 978-4-300-XXXXX, 該当章 法令上の制限編 P.XX〜XX)
  • 1週間で宅建士の基礎が学べる本(インプレス, 2025年版, ISBN: 978-4-295-XXXXX, 該当章 P.XX〜XX)
  • 動画で学べる宅建士テキスト(日建学院, 2025年版, ISBN: 978-4-86358-XXXXX, 該当章 P.XX〜XX)
  • パーフェクト宅建士基本書(住宅新報出版, 2025年版, ISBN: 978-4-909683-XXXXX, 該当章 P.XX〜XX)

注: 上記4冊は論点の網羅性チェック専用に参照。本文の文章・章立て・例示・図解は、e-Gov公開条文と過去問頻出論点から独自に組み立てています。版・ISBNは出版社の最新版に随時更新します。

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