台湾 後工程・テスト4社の2026年9月 — 過去最高を更新したのはASEだけ、残る3社は前月比で小幅マイナス

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台湾 後工程・テスト4社の2026年9月 — 過去最高を更新したのはASEだけ

前回の 台湾 後工程・テスト4社の2026年8月 では、4社とも単月過去最高を更新した一方で、7月に全社そろっていた加速が崩れ、勢い(2次差分)がプラスを保ったのは ASE だけだったところまで書いた。テスト工程の月次売上は、ウェハが完成してからサーバーとして出荷されるまでの通り道にあたるので、NVIDIA や ODM の売上に計上されるより数週間から数ヶ月手前で数字が動く。その先行指標としての続報になる。

9月分が4社とも出そろった。今回は水準の列にも変化が出た。過去最高を更新したのは ASE だけで、残る3社は8月の水準をわずかに下回った。

この記事で扱うのは次の4社。台湾の上場企業は毎月10日までに前月の単月売上を開示する義務があるため、四半期決算を待たずに月次で追える。

結論

  • ASE と残る3社の差が、水準の列にまで出てきた。 ASE は 881.3億NT$ で3ヶ月続けて過去最高を更新した。Powertech(-0.5億)・KYEC(-0.1億)・Ardentec(-0.1億)は8月比でそろって小幅に減り、過去最高は8月のまま据え置きになった。春節の2月を除くと、この3社が同じ月にそろって前月比マイナスになったのは2024年9月以来になる。
  • 勢いは4社ともマイナスになった。 8月は ASE だけが +4.7 とプラスを保っていたが、9月は ASE も -25.9 に転じた。ただし ASE の前月差は +58.8億と依然大きく、前月差が +50億を超えた月が3ヶ月続くのは2024年以降で初めてになる。ASE の勢いのマイナスは「増え方が少し小さくなった」という意味で、減速の入口と決めるには早い。
  • 前年同月比では、3位と4位が入れ替わった。 8月に単独で伸びを高めた ASE は +45.7% から +45.5% へほぼ横ばいで、4社の首位は8月に続いて Ardentec(+46.9%)だった。Powertech は +24.5% から +27.0% へ上がり、KYEC は +31.6% から +24.5% へ下がって、2社の順位が入れ替わった。この2社の動きは、今年の9月ではなく前年9月の動きでほぼ説明できる(後述)。

4社の月次売上

9月の着地を並べるとこうなる。「勢い」は前月差がその前の月の前月差からどれだけ増えたか(2次差分)で、プラスなら増え方そのものが加速していることを示す。

会社2026年9月前年同月比前月差勢い過去最高との関係
ASE881.3億NT$+45.5%+58.8-25.9過去最高(前ピークは2022年9月の666.5億)
Powertech85.1億NT$+27.0%-0.5-3.4過去最高は8月の85.6億(2022年6月の80.9億は上回ったまま)
KYEC40.7億NT$+24.5%-0.1-1.0過去最高は8月の40.8億
Ardentec17.8億NT$+46.9%-0.1-0.3過去最高は8月の17.9億

前月の同じ表では「過去最高との関係」の列が4社とも太字だった。9月にその列が太字のまま残ったのは ASE だけになる。前月差の列も、8月は ASE +84.7 / Powertech +2.9 / KYEC +0.9 / Ardentec +0.2 と全社プラスだったが、9月は ASE 以外がマイナスに入った。

以下の図は直近13ヶ月に絞ってある。月ごとの数字を図の中に直接書くと、これ以上長い期間では文字が潰れて読めなくなるからだ。2024年からの長期推移(前年同月比の折れ線つき・直近31ヶ月)は各社のモニタリングページが持っているので、形を追いたいときはそちらを開いてほしい — ASE / Powertech / KYEC / Ardentec。この記事は「その月に何が起きたか」に絞る。

ASE — 前月差+50億超が3ヶ月続き、4社で唯一の過去最高

ASEの直近13ヶ月の月次売上・前月差・勢い。2026年9月は881.3億NT$、前月差+58.8億、勢い-25.9
図1: ASE は7月 +80.0億、8月 +84.7億、9月 +58.8億と、大きな増加幅を3ヶ月続けた

9月は 881.3億NT$、前年同月比 +45.5%。3ヶ月続けて単月の過去最高を更新し、2022年9月のピーク 666.5億を 32.2% 上回っている。

前月差 +58.8億は、7月の +80.0億・8月の +84.7億よりは小さい。それでも春節明けの反動増が出る3月を除けば、2024年以降で3番目に大きい増加額になる(1位と2位は8月と7月)。2024年以降で前月差が +50億を超えた月は、3月を除くとこの3ヶ月しかない。

勢い(2次差分)は -25.9 で、2026年4月の -88.1 以来のマイナスになった。ただしこれは前月差が +84.7億から +58.8億へ縮んだという意味で、売上が増えている点は変わらない。勢いの符号だけで「減速」と決めず、前月差の絶対値と合わせて読む必要があるのは前回と同じだ。

前年同月比 +45.5% は8月の +45.7% とほぼ同じで、2024年1月以降では8月に次いで2番目に高い。3月の +14.6% から8月まで5ヶ月続けて伸びを高めてきた流れは、9月で横ばいになった。

月次の値を足すと、7〜9月の3ヶ月合計は 2441.6億NT$ で、4〜6月の 1910.6億から 27.8% 増えている(月次売上を単純合算した値で、四半期決算の売上高とは一致しないことがある)。

Powertech — 3ヶ月ぶりの前月比マイナス、ただし前年比は上向いた

Powertechの直近13ヶ月の月次売上・前月差・勢い。2026年9月は85.1億NT$、前月差-0.5億、勢い-3.4
図2: Powertech は8月の過去最高から -0.5億と、ほぼ横ばいで踏みとどまった

9月は 85.1億NT$、前年同月比 +27.0%。8月の過去最高 85.6億をわずかに下回ったが、2022年6月のピーク 80.9億を上回った状態は3ヶ月続いている。

前月差 -0.5億は、6月の -3.0億以来3ヶ月ぶりのマイナスになる。勢いは -3.4 で2ヶ月続けてマイナスだ。7月 +6.5億 → 8月 +2.9億 → 9月 -0.5億と、増加幅は月を追って縮んできた。

ここで一つ気になるのは、Powertech の9月は2024年(-6.2億)、2025年(-1.8億)も前月比マイナスだったことだ。3年分しかないので季節性とまでは言えないが、9月の小幅減だけを見て局面の変化と読むのは早い。

前年同月比は +24.5% から +27.0% へ上がった。ただしこれは今年の9月が強かったからではなく、前年の2025年9月が前月比 -1.8億と落ちていたため、比較の基準が低くなった影響が大きい。メモリ後工程に特化しているぶん、AI 向けとメモリ市況のどちらが効いているのかは月次の数字だけでは分けられない。

KYEC — 40億NT$台で足踏み、前年比は2025年4月以降の最低に並ぶ

KYECの直近13ヶ月の月次売上・前月差・勢い。2026年9月は40.7億NT$、前月差-0.1億、勢い-1.0
図3: KYEC は7月の一段上げのあと、8月・9月と40億NT$台で横ばいが続いた

9月は 40.7億NT$、前年同月比 +24.5%。8月の過去最高 40.8億を 0.1億下回った。

前月差は -0.1億、勢いは -1.0。7月に +3.7億と一段上がったあと、8月 +0.9億、9月 -0.1億と、水準は40億NT$台で足踏みしている。

前年同月比 +24.5% は、前年比がプラスに転じた2025年4月以降で最も低い値で、2025年7月の +24.5% と並ぶ。7月の +36.7% から8月 +31.6%、9月 +24.5% と2ヶ月続けて下がった。Powertech とは逆に、前年の2025年9月が前月比 +1.7億と伸びていたため、比較の基準が上がった影響が出ている。水準が横ばいで基準だけが上がれば、伸び率は落ちる。

Ardentec — 3ヶ月続けて17億NT$台後半、前年比は4社で最も高い

Ardentecの直近13ヶ月の月次売上・前月差・勢い。2026年9月は17.8億NT$、前月差-0.1億、勢い-0.3
図4: Ardentec は7月に +2.2億と急増したあと、17.7億・17.9億・17.8億と同じ水準を保っている

9月は 17.8億NT$、前年同月比 +46.9%。8月の過去最高 17.9億を 0.1億下回った。

前月差は -0.1億、勢いは -0.3。7月の +2.2億は2024年以降で最大の増加額(3月を含めても最大)だったが、その後は 17.7億 → 17.9億 → 17.8億と、上がった水準をそのまま3ヶ月保っている。下がってはいないが、もう一段上がる気配もまだ数字には出ていない。

前年同月比 +46.9% は8月の +46.6% からわずかに上がり、8月に続いて ASE(+45.5%)を上回って4社で最も高かった。規模が小さいぶん1社の受託案件で振れやすく、単月の増減を強く読みすぎないほうがよい。

なぜ「水準」ではなく「差」と「勢い」を見るのか

月次売上そのもの(水準)は、需要が伸びている局面ではほぼ毎月「過去最高」になる。過去最高という見出しは出しやすいが、それだけでは局面が変わったかどうかが分からない。

そこで見るのが差分になる。

  • 前月差(1次差分) = 今月の売上 − 前月の売上。プラスなら増えている
  • 勢い(2次差分) = 今月の前月差 − 前月の前月差。プラスなら増え方そのものが加速している

この3ヶ月の動きは、差分で見るとはっきり段階を踏んでいる。7月は4社とも前月差・勢いがともにプラスだった。8月は4社とも水準は過去最高のまま、勢いがプラスなのは ASE だけになった。9月は勢いが4社ともマイナスになり、ASE 以外は前月差までマイナスに入った。ASE 以外の3社でいえば、8月に勢いが先にマイナスへ転じ、9月に前月差がマイナスへ入って水準の更新も止まった。変化は1ヶ月早く、差分の側に出ていたことになる。

ただし2次差分は振れやすい。ASE の勢いは -25.9 だが、前月差は +58.8億と大きなプラスのままだ。符号だけを見て「加速」「減速」と決めず、1次差分の絶対値と合わせて読む必要がある。

読むときの注意

  • テスト売上は「数量 × テスト時間 × 単価」で決まる。 売上が伸びていても、テスト対象のチップが増えたのか、1個あたりのテスト時間が伸びたのか、単価が上がったのかは月次の数字からは分けられない
  • 2月は春節で必ず落ち、3月に反動で戻る。 このため2月・3月の前月差は他の月と同じ土俵で比べられない。この記事で「3月を除けば」「2月を除くと」と断っているのはそのため
  • 前年同月比は前年の動きにも左右される。 9月の Powertech と KYEC の前年比の動きは、今年の9月より前年の9月の増減で多くが説明できる。前年比の上下だけで今月の強弱を判断しない
  • 月次開示には内訳が無い。 どの顧客向けか、どの製品向けかは四半期決算まで待つ必要がある。AI 向けと推定したくなる場面は多いが、月次データそれ自体は用途を語らない
  • 単月の増減を強く読みすぎない。 特に Ardentec のように月次売上が17億NT$台の規模だと、1社の受託案件で前月差が大きく動く。今回の3社の -0.1億〜-0.5億は、どれも8月の水準に対して1%未満の動きでしかない
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