きっかけ — 「下半期もAIサーバー堅調」の台湾記事
朝に台湾の半導体記事を読んだ。「AI需要でCPU不足、サーバー供給が需要を下回るが、半導体市場の見通しは下半期も堅調」という趣旨で、新華、UMC、VIS、泰盛科技などの台湾メーカーが下半期に強気の見方を示している、という内容だった。
記事に出てくる会社を /memory-makers の既存リスト(Samsung・SK hynix・TSMC・Foxconn・Quanta 等27社)と突き合わせたら、ほぼ全部が未登録だった。
漏れていたのは次の6社:
- UMC(聯華電子, 2303.TW) — ファウンドリ
- VIS(世界先進, 5347.TWO) — 8インチPMIC/HV特化ファウンドリ
- 泰盛科技 / Taisil(3532.TW) — シリコンウェーハ
- Aspeed / 信驊科技(5274.TWO) — サーバーBMC(管理チップ)
- Richwave / 立積電子(4968.TW) — RFフロントエンド(Wi-Fi/Cellular)
- ASMedia / 祥碩科技(5269.TW) — USB/PCIeブリッジ
UMC・VIS・Taisil・ASMedia は既存ページに名前だけあった。Aspeed と Richwave は完全に新規追加。「他のカードと同じ粒度で月次・四半期・EPSを揃えて」という指示が来たので、ワークフローで一気にデータを取りに行った。
ワークフローで一気にデータ取得
25分・17エージェント・81ツールコールで全7フェーズ走り切った。FinMind とローカルCSVを叩いて、6社分の月次売上(24ヶ月)・四半期売上(8四半期)・四半期EPS(8四半期)を取得し、TypeScriptデータファイルとして apps/web/app/data/memory-makers/ 配下に書き出した。
ワークフロー完了直後、git status が空に見えてヒヤッとした。原因はワークフロー内のエージェントが cd apps/web した影響でシェルの作業ディレクトリがズレていただけ。12ファイルとも実体は存在していた。
月次売上が表示されない問題
ユーザーから「ちょっと待って、月次売上高とかデータ見えないんですけど、入ってますか。本当に。表示確認してね」と差し戻しが入った。
dev サーバーで /memory-makers/umc を開いて確認したら、ページは200を返すがチャートが描画されていない。原因を順に追った。
- データファイル本体(
umcMonthlyRevenue.ts等)は正しく存在し、export もされている index.tsでの再エクスポートも問題なしregistry.tsのMAKER_DATASETSへの登録が6社分すべて抜けていた
getMakerDatasets(id) という resolver があり、ここでid→データセットをマップしている。ワークフローの edit:maker-page エージェントが「変更不要」と誤判断してスキップしていた。
registry.ts に6社分のマッピングを追記して dev サーバーを再起動したら、UMCページのHTMLが72KBに膨らみ、<svgタグが4つ、月次売上が5回、月營収が3回ヒットした。チャートが描画された瞬間だった。
ハブページ /memory-makers でも6社のカードに月次・四半期データのタグが出ているのを確認して、ようやく「入っています」と報告できた。ワークフロー完了の自己申告は信用ならない、というのが今回の教訓。
「BMCって何?」— 製品写真ギャラリーの追加
データが表示できたところで、次のフィードバックが来た。
今回追加した例えばサーバーBMCとかって全然何か内容わかんないんですよ。写真をですね、例えばちっちゃめでいいんでホームページとかからそのイメージ画像みたいなのを4枚ほどこう4カラムで横に並べて表示してくれませんかね。月次売上とそのピンクの説明のところの間ぐらいに。
ピンクの説明(投資家視点でなぜウォッチすべきか)と月次売上チャートのあいだに、4カラム×4枚のサムネイルを差し込む。1枚あたりキャプションを添えて「どういう製品を作っている会社なのか」を補足する。
6社並列でサブエージェントを起動し、各社の公式HPからWebFetch→画像URL特定→curl ダウンロード→マニフェストJSON返却、という流れで24枚をローカル保存した。MakerProductGallery.vue コンポーネントを新規作成し、makerProducts.ts にデータを登録して [maker].vue に差し込んだ。
dev サーバーで6社全部を確認したら、product-card と画像srcが描画され、24枚とも HTTP 200 で配信できていた。
落とし穴 — 「Wi-Fiアイコン」「サーバー外観」では伝わらない
完成したと思って報告した直後、ユーザーから決定的な指摘が来た。
ASPEED(信驊科技) いや、ここだけちょっとやっぱりまだわかんないんですけど、そのAIサーバー1台ごとに搭載され、出荷台数に直結するんですよね。ということは、なんかAIサーバーには必ず1個載るんですかね。そのチップ、それ自体が見たいんですけど。
/memory-makers/aspeed を開き直して画像を見つめた。確かに、引っ張ってきたのは ServeTheHome(第三者サイト)のサーバー内部の俯瞰写真で、肝心の BMC チップ本体は写っていない。GPU や CPU なら誰でも見たことがあるが、BMC(Baseboard Management Controller)はマザーボード上の小さなBGA一個で、専用の写真がほぼ存在しない。
BMCはサーバーの「裏方の管理コンピュータ」で、メインCPUが電源OFFでも独立して動く。リモートからの電源ON/OFF、温度・電圧監視、OS立ち上げ前の故障診断、ファームウェア更新を担う。IPMI/Redfish 規格のデファクトで、Aspeed が世界シェア75〜80%を握る。だから Aspeed の月次売上はAIサーバー出荷台数の先行指標になる。
Richwave も同じ問題だった。引っ張ってきた画像は wifi.png mobility2.png iot.png automotive.png の4枚で、Wi-Fi電波アイコン・スマホアイコン・IoT機器・車のアイコンが並んでいた。用途シーンの説明にはなるが、RF FEM チップ本体は一切写っていない。
Richwave の主力は無線ルーターやスマホに載る RFフロントエンドモジュール。PA(電力増幅)・LNA(受信増幅)・スイッチ・フィルタを QFN パッケージに統合した数mm角のチップで、Wi-Fi 7 のRF段に1〜2個載る。
Codex CLI の image_gen.imagegen で実写画像生成へ
ユーザーは「全社見直してほしい」と言い、計画書化に切り替わった。memo/2026-06-14/memory-makers-product-svg-plan.md を作って、全33社×4枚=132 SVGのマトリクスを管理することにした。
最初はSVGで技術図解を作っていたが、ユーザーから「SVGじゃなく実写AI画像で」とリクエストが入った。OpenAI image API を curl で直接叩いたら billing hard limit reached で落ちた。Codex CLI(GPT-5.5)の image_gen.imagegen ツールを試したら、1.8MB の高品質な AST2700 BMC チップ写真が返ってきた。BGAパッケージの黒い基板、刻印された型番、ピンの並びまで実写そのものに見える。
このやり方をスキルに固定して(codex-image-gen スキル)、6社並列で実写画像生成を回した。途中で codex exec が stdin 待ちで詰まる現象に出くわしたが、生成済み画像は ~/.codex/generated_images/<session-id>/ に保存されていたので、止まっていたプロセスを kill して7枚を回収した。
本日確保した実写画像7枚:
- aspeed: photo_1(AST2700 BGA・35mm角), photo_2(AST2600 BGA・31mm角)
- foxconn: photo_1(GB200 サーバートレイ俯瞰、CPU+GPU+ヒートシンク)
- richwave: photo_1(RF FEM QFNチップ)
- tsmc: photo_1(12インチシリコンウェーハをロボットアームが持ち上げる構図)
- winbond: photo_1(NOR Flash SOP8 W25Q128)
- accton: photo_1(1U EdgeCore 48ポートスイッチの前面)
学び — ワークフローの「変更不要」判定を信用しない
今日の作業で一番効いた教訓は3つ。
- ワークフロー完了の自己申告と実際の表示は別物。
registry.tsのような中継地点への登録漏れは、データファイルが揃っていても表示されない。dev サーバーでHTMLを直接 grep して<svgタグ数・データキーワード数を数えるまで完了とみなさない - 「用途シーン」と「製品実物」は別物。Wi-Fiアイコン・サーバー外観の俯瞰写真では、肝心のチップ本体は伝わらない。BMC・RF FEM のような裏方チップは「実物のBGA/QFNパッケージ」を見せて初めて「ああこれか」と腑に落ちる
- OpenAI API が落ちても Codex CLI から GPT-5.5 の image_gen.imagegen が叩ける。billing limit のフォールバック経路として
codex-image-genスキルに明文化済み。次回からは最初から Codex 経由でいく
明日以降の残タスクは、SK hynix の HBM cube、Samsung の DRAM/HBM、Wistron の HGX baseboard、Phison の NAND コントローラなど、推定28枚の実写画像生成と makerProducts.ts への wire-up。ABF基板・銅箔ロール・ATE装置といった「そのまま見せられる実物」が揃っている社から優先して進める。
関連ファイル
- 計画書:
memo/2026-06-14/memory-makers-product-svg-plan.md - データ:
apps/web/app/data/memory-makers/{aspeed,richwave,umc,vis,taisil,asmedia}*.ts - レジストリ:
apps/web/app/data/memory-makers/registry.ts - ギャラリー:
apps/web/app/components/MakerProductGallery.vue - 実写画像:
apps/web/public/memory-makers/products/{accton,aspeed,foxconn,richwave,tsmc,winbond}/photo_*.png - スキル:
~/.claude/skills/codex-image-gen/SKILL.md