台湾 後工程・テスト4社の2026年8月 — 4社とも過去最高、ただし加速が続いたのはASEだけ

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台湾 後工程・テスト4社の2026年8月 — 加速が続いたのはASEだけ

前回の 台湾 後工程・テスト4社の2026年7月 では、4社そろって単月過去最高を更新し、しかも「差」も「勢い」も全社同時にプラスになったところまで書いた。テスト工程の月次売上は、ウェハが完成してからサーバーとして出荷されるまでの通り道にあたるので、NVIDIA や ODM の売上に計上されるより数週間から数ヶ月手前で数字が動く。その先行指標としての続報になる。

8月分が4社とも出そろった。水準はまた全社が過去最高を更新している。ただし今回読むべきなのは水準ではなく、7月に全社そろっていた加速が1ヶ月で崩れたという点になる。

この記事で扱うのは次の4社。台湾の上場企業は毎月10日までに前月の単月売上を開示する義務があるため、四半期決算を待たずに月次で追える。

結論

  • 4社とも単月の過去最高を更新した。 これで ASE と Powertech は2ヶ月続けて2022年のピークを上回り、KYEC と Ardentec も更新を続けている。ただし水準の更新そのものは前月からの継続で、新しい情報ではない。
  • 「勢い」がプラスだったのは ASE だけになった。 7月は4社そろって前月差も勢いもプラスという珍しい月だったが、8月に勢い(2次差分)がプラスを保ったのは ASE の +4.7 だけで、Powertech は -3.6、KYEC は -2.8、Ardentec は -2.0 と揃ってマイナスに転じた。前月差そのものも Powertech が +6.5 から +2.9、KYEC が +3.7 から +0.9、Ardentec が +2.2 から +0.2 へと大きく縮んでいる。
  • 前年同月比でも ASE だけが上向いた。 ASE は +43.2% から +45.7% へ伸び、これは2024年1月以降で最も高い。残る3社は Powertech が +29.4% から +24.5%、KYEC が +36.7% から +31.6%、Ardentec が +52.3% から +46.6% へと揃って低下した。7月に崩れた「テスト専業ほど強い」という序列は、8月にはフルラインの ASE が単独で伸びを高める形に変わった。

4社の月次売上

8月の着地を並べるとこうなる。「勢い」は前月差がその前の月の前月差からどれだけ増えたか(2次差分)で、プラスなら増え方そのものが加速していることを示す。

会社2026年8月前年同月比前月差勢い過去最高との関係
ASE822.5億NT$+45.7%+84.7+4.7過去最高(前ピークは2022年9月の666.5億)
Powertech85.6億NT$+24.5%+2.9-3.6過去最高(前ピークは2022年6月の80.9億)
KYEC40.8億NT$+31.6%+0.9-2.8過去最高(5月以降ほぼ毎月更新)
Ardentec17.9億NT$+46.6%+0.2-2.0過去最高(4月以降ほぼ毎月更新)

前月の同じ表と見比べると、水準の列はどれも上がっているのに、右の2列だけが様変わりしている。7月は前月差が ASE +80.0 / Powertech +6.5 / KYEC +3.7 / Ardentec +2.2、勢いが +52.5 / +9.5 / +5.3 / +1.9 で、全社が加速していた。

以下の図は直近13ヶ月に絞ってある。月ごとの数字を図の中に直接書くと、これ以上長い期間では文字が潰れて読めなくなるからだ。2024年からの長期推移(前年同月比の折れ線つき・直近31ヶ月)は各社のモニタリングページが持っているので、形を追いたいときはそちらを開いてほしい — ASE / Powertech / KYEC / Ardentec。この記事は「その月に何が起きたか」に絞る。

ASE — 春節を除けば2024年以降で最大の増加額を2ヶ月連続で更新

ASEの直近13ヶ月の月次売上・前月差・勢い。2026年8月は822.5億NT$、前月差+84.7億、勢い+4.7
図1: ASE は7月 +80.0億、8月 +84.7億と大きな増加幅を2ヶ月続けた

8月は 822.5億NT$、前年同月比 +45.7%。2022年9月のピーク 666.5億を 23.4% 上回っている。

前月差 +84.7億は、春節明けの反動増が出る3月を除けば2024年以降で最大の月次増加額で、先月その座にあった7月の +80.0億を1ヶ月で更新した。全期間で数えても 2026年3月の +94.8億、2025年3月の +87.9億に次ぐ3番目になる。

勢い(2次差分)は7月の +52.5 から +4.7 へ落ちている。これは増加が止まったという意味ではなく、7月と同じくらい大きな増加をもう一度作ったという意味になる。増加幅が高い水準のまま横ばいになったので、2次差分は小さな正の値に収まった。

前年同月比 +45.7% は、月次データを揃えている2024年1月以降で最も高い。3月の +14.6% を底に、4月 +19.2%・5月 +28.6%・6月 +32.9%・7月 +43.2%・8月 +45.7% と5ヶ月続けて伸びを高めており、8月時点でこの形を保っているのは4社で ASE だけになる。

Powertech — 水準は過去最高、増え方は7月の半分以下

Powertechの直近13ヶ月の月次売上・前月差・勢い。2026年8月は85.6億NT$、前月差+2.9億、勢い-3.6
図2: Powertech は7月の +6.5億から8月 +2.9億へ、増加幅が半分以下に縮んだ

8月は 85.6億NT$、前年同月比 +24.5%。2022年6月のピーク 80.9億を上回った状態が2ヶ月続いている。

ただし前月差は7月の +6.5億から +2.9億へ半分以下に縮み、勢いは -3.6 とマイナスに転じた。7月の +6.5億は春節明けの3月を除けば2024年以降で最大の増加額だったので、その反動という見方はできる。

前年同月比 +24.5% は、2026年に入ってからでは6月の +21.7% に次いで2番目に低い。1月の +43% を頂点として、月ごとに上下しながら伸びが鈍っていく形になっている。メモリ後工程に特化しているぶん、AI 向けとメモリ市況のどちらが効いているのかは月次の数字だけでは分けられない。

KYEC — 増加幅が +3.7億から +0.9億へ

KYECの直近13ヶ月の月次売上・前月差・勢い。2026年8月は40.8億NT$、前月差+0.9億、勢い-2.8
図3: KYEC は水準を更新しつつも、増加幅は7月の4分の1に縮んだ

8月は 40.8億NT$、前年同月比 +31.6%。単月の過去最高を更新した。

前月差は +0.9億で、7月の +3.7億から4分の1に縮んでいる。勢いは -2.8。7月の +3.7億は春節明けの3月を除けば2024年以降で最大の増加額だったので、ここも高い増加幅からの反落という読み方になる。

前年同月比は2025年10月の +41.8% を頂点に、そこから緩やかに下がってきている。水準そのものは伸び続けているが、前年の水準も一緒に上がっているぶん伸び率は落ちていく、という局面に入りつつある。

Ardentec — 4社で最も高い伸び率だが、前月からはほぼ横ばい

Ardentecの直近13ヶ月の月次売上・前月差・勢い。2026年8月は17.9億NT$、前月差+0.2億、勢い-2.0
図4: Ardentec は7月に +2.2億と急増した反動で、8月はほぼ横ばいにとどまった

8月は 17.9億NT$、前年同月比 +46.6%。単月の過去最高を更新した。

前月差は +0.2億とほぼ横ばいで、勢いは -2.0。7月の +2.2億は2024年以降で最大の増加額(3月を含めても最大)で、月次売上17億NT$台の規模に対してかなり大きな一段上げだった。8月はその水準を維持しただけ、という形になる。

前年同月比 +46.6% は7月の +52.3% から落ちたが、それでも4社で最も高い。ASE の +45.7% とはほぼ並んでいる。規模が小さいぶん1社の受託案件で振れやすく、単月の増減を強く読みすぎないほうがよい。

なぜ「水準」ではなく「差」と「勢い」を見るのか

月次売上そのもの(水準)は、需要が伸びている局面ではほぼ毎月「過去最高」になる。過去最高という見出しは出しやすいが、それだけでは局面が変わったかどうかが分からない。

そこで見るのが差分になる。

  • 前月差(1次差分) = 今月の売上 − 前月の売上。プラスなら増えている
  • 勢い(2次差分) = 今月の前月差 − 前月の前月差。プラスなら増え方そのものが加速している

7月は4社とも両方がプラスだった。8月は4社とも水準は過去最高のままなのに、勢いがプラスなのは ASE だけになった。水準だけを見ていると「4社そろって絶好調」で終わるが、差分まで見ると1ヶ月で構図が変わったことが分かる。 ここが差分を見る理由になる。

ただし2次差分は振れやすい。ASE の勢いが +52.5 から +4.7 に落ちたのは減速ではなく、大きな増加を2ヶ月続けた結果である。符号だけを見て「加速」「減速」と決めず、1次差分の絶対値と合わせて読む必要がある。

読むときの注意

  • テスト売上は「数量 × テスト時間 × 単価」で決まる。 売上が伸びていても、テスト対象のチップが増えたのか、1個あたりのテスト時間が伸びたのか、単価が上がったのかは月次の数字からは分けられない
  • 2月は春節で必ず落ち、3月に反動で戻る。 このため2月・3月の前月差は他の月と同じ土俵で比べられない。この記事で「3月を除けば」と何度か断っているのはそのため
  • 月次開示には内訳が無い。 どの顧客向けか、どの製品向けかは四半期決算まで待つ必要がある。AI 向けと推定したくなる場面は多いが、月次データそれ自体は用途を語らない
  • 単月の増減を強く読みすぎない。 特に Ardentec のように月次売上が17億NT$台の規模だと、1社の受託案件で前月差が大きく動く
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