台湾 後工程・テスト4社の2026年7月 — 4社そろって単月過去最高、ASE・Powertechは2022年ピークを4年ぶりに更新

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台湾 後工程・テスト4社の2026年7月 — 4社そろって単月過去最高

2ヶ月前に 台湾OSAT 4社の月次売上の読み方 で、テスト工程の月次売上を「AI 半導体がいまどれだけ作られているか」の先行指標として読む枠組みを書いた。ウェハが完成してからサーバーとして出荷されるまでの通り道にテスト工程があるので、NVIDIA や ODM の売上に計上されるより数週間〜数ヶ月手前で数字が動く、という話だった。

その続報にあたる。2026年7月分が4社とも出そろい、5月時点の見立てが2つの点で変わった。

この記事で扱うのは次の4社。台湾の上場企業は毎月10日までに前月の単月売上を開示する義務があるため、四半期決算を待たずに月次で追える。

結論

  • 4社とも単月の過去最高を更新した。 5月時点で過去最高を更新していたのはテスト専業の KYEC と Ardentec だけで、ASE は史上4位、Powertech は史上2位だった。7月は ASE が 737.8億NT$、Powertech が 82.7億NT$ に達し、いずれも2022年に付けたピークを4年ぶりに超えた
  • 伸び率の序列が入れ替わった。 5月は KYEC(+36.6%)を筆頭にテスト専業が上位で ASE が最下位(+28.6%)だったが、7月は Ardentec(+52.3%)と ASE(+43.2%)が上位に来た。「テスト専業ほど強い」という2ヶ月前の濃淡は、7月時点では成り立たない。
  • 4社そろって「差」も「勢い」もプラスになった。 前月差(1次差分)と、その前月差がさらに増えたかどうか(2次差分)が全社同時にプラスになったのは、春節明けの反動増が出る3月を除くと、2024年1月以降で2025年8月とこの7月の2回だけである。

4社の月次売上

7月の着地を並べるとこうなる。「勢い」は前月差がその前の月の前月差からどれだけ増えたか(2次差分)で、プラスなら増え方そのものが加速していることを示す。

会社2026年7月前年同月比前月差勢い過去最高との関係
ASE737.8億NT$+43.2%+80.0+52.5過去最高(前ピークは2022年9月の666.5億)
Powertech82.7億NT$+29.4%+6.5+9.5過去最高(前ピークは2022年6月の80.9億)
KYEC39.9億NT$+36.7%+3.7+5.3過去最高(5月・7月と更新)
Ardentec17.7億NT$+52.3%+2.2+1.9過去最高(4月以降ほぼ毎月更新)

2022年のピーク値は前回記事で台湾メディア報道と突き合わせたもの。ASE の「43個月來新高・歷史第四高」→ 鉅亨網、Powertech の「歷史次高」→ 聯合新聞網 がそれぞれ5月時点の位置づけで、そこから2ヶ月でピークを抜いたことになる。

以下の図は直近13ヶ月に絞ってある。月ごとの数字を図の中に直接書くと、これ以上長い期間では文字が潰れて読めなくなるからだ。2024年からの長期推移(前年同月比の折れ線つき・直近31ヶ月)は各社のモニタリングページが持っているので、形を追いたいときはそちらを開いてほしい — ASE / Powertech / KYEC / Ardentec。この記事は「その月に何が起きたか」に絞る。

ASE — 春節を除けば2024年以降で最大の増加額

ASEの直近13ヶ月の月次売上・前月差・勢い。2026年7月は737.8億NT$、前月差+80.0億、勢い+52.5
図1: ASE は6月 +27.5億、7月 +80.0億と2ヶ月続けて増加幅が拡大した

7月は 737.8億NT$、前年同月比 +43.2%。2022年9月のピーク 666.5億を 10.7% 上回った。

注目すべきは水準よりも増え方だ。前月差 +80.0億は、春節明けの反動増が出る3月(2026年3月 +94.8億、2025年3月 +87.9億)を除けば、2024年以降で最大の月次増加額になる。前年の同じ7月の増加額(+20.3億)と比べると約4倍だ。

2月に春節で -78.9億まで落ち、3月に +94.8億で戻したあと、4月 +6.7億・5月 +7.8億と足踏みしていた。そこから6月 +27.5億、7月 +80.0億と2ヶ月連続で増加幅が広がっている。勢い(2次差分)も6月 +19.7、7月 +52.5 と続けてプラスで、これは「増えている」のではなく「増え方が加速している」状態を指す。

ASE は売上の中身がパッケージング+テストの ATM と、EMS(電子機器の受託製造)に分かれる。連結の月次だけでは両者の内訳までは分からないので、この加速がどちらにどれだけ効いているかは四半期のセグメント開示を待つ必要がある。前回記事の時点では ATM が四半期ベースで過去最高を連続更新していた。

Powertech — 6月の落ち込みを7月に取り返した

Powertechの直近13ヶ月の月次売上・前月差・勢い。2026年7月は82.7億NT$、前月差+6.5億、勢い+9.5
図2: Powertech は6月に -3.0億と落ちた反動もあり、7月に +6.5億で2022年ピークを抜いた

7月は 82.7億NT$、前年同月比 +29.4%。2022年6月の 80.9億をわずかに上回り、4年1ヶ月ぶりに過去最高を更新した。

6月は -3.0億とこの13ヶ月で2番目に大きい落ち込みだったので、7月の +6.5億にはその反動が含まれる。ただし2ヶ月をならしても6月・7月の合計で +3.5億のプラスであり、5月の水準(79.2億)から着実に切り上がっている。前月差 +6.5億は3月(+6.7億)に次ぐ大きさだ。

Powertech の数字が持つ意味は、メモリメーカー自身の売上とは違うところにある。後工程の受託料は数量と工数で決まり、メモリ価格の高騰がそのまま乗らない。だから Powertech の売上が過去最高まで来たことは、価格と切り離した出荷数量そのものが積み上がっている証拠として読める。前工程側の Nanya など、メモリメーカーの月次と合わせて見ると増産の進み具合を価格効果抜きで追える。

KYEC — 6月の踊り場を7月に取り戻した

KYECの直近13ヶ月の月次売上・前月差・勢い。2026年7月は39.9億NT$、前月差+3.7億、勢い+5.3
図3: KYEC は5月 +0.4億・6月 -1.6億と足踏みしたあと、7月に +3.7億で再加速した

7月は 39.9億NT$、前年同月比 +36.7%。5月に付けた過去最高(37.8億)を2ヶ月ぶりに更新した。

4月 +1.4億・5月 +0.4億・6月 -1.6億と3ヶ月かけて増加幅が細っていたところに、7月の +3.7億が入った。勢いは +5.3 で、3月(+5.3)と同水準まで戻している。KYEC はテスト専業のなかでも AI / HPC 向けのバーンインテストが主戦場なので、この踊り場と再加速は特定案件のテストラインの立ち上がり時期に左右されやすい。単月の上下より、2〜3ヶ月ならした水準の切り上がりを見るほうが安全だろう。

Ardentec — 前年比 +52.3% と月次増加額はいずれも4社で最大

Ardentecの直近13ヶ月の月次売上・前月差・勢い。2026年7月は17.7億NT$、前年同月比+52.3%、前月差+2.2億
図4: Ardentec は前年同月比が1月の +22.3% から半年で +52.3% まで上がった

7月は 17.7億NT$、前年同月比 +52.3%。伸び率は4社で最も高い。しかも前月差 +2.2億は、2024年以降で同社最大の月次増加額だ(春節明けの3月を含めても最大)。

Ardentec の前年同月比は、1月 +22.3%、3月 +27.0%、5月 +33.0%、6月 +36.6%、7月 +52.3% と半年かけて一貫して上がってきた。同社は AI / HPC 向けよりも大手 IDM からの受託が主力で、車載 MCU・セキュリティIC・RF デバイスなど信頼性要求の高い分野のテストを得意とする。つまりこの加速は、テスト需要の拡大が AI 半導体の周辺にとどまらず、汎用・車載・産業用まで広がっていることを示している可能性がある。

ただし規模が小さいぶん(月17.7億NT$ は ASE の 2.4% でしかない)、案件ひとつの立ち上がりで率が大きく動く。率だけで需要の広がりを断定せず、次月以降も同じ方向が続くかを見たい。

なぜ「水準」ではなく「差」と「勢い」を見るのか

売上高そのもの(水準)は、右肩上がりの局面では毎月のように「過去最高」を出す。だから水準だけを見ていると、需要が加速しているのか、単に前月と同じペースで積み上がっているだけなのかが区別できない。

そこで各社の図には3段を置いた。

  1. 月次売上(水準) — その月にいくら売れたか
  2. 前月差(1次差分) — 前の月からいくら増えたか
  3. 勢い(2次差分) — その増え方が、前の月の増え方より大きいか

②がプラスでも③がマイナスなら、増えてはいるがペースは落ちている。ピークアウトはたいてい③から先に崩れる。逆に②と③が同時にプラスなら、増え方そのものが加速している局面だと言える。

4社そろって②と③がプラスになった月を2024年1月以降で数えると、2024年3月・2025年3月・2025年8月・2026年3月・2026年7月の5回しかない。このうち3月の3回は、2月の春節で落ちた反動が必ず出る月なので、季節要因で説明がつく。季節要因では説明できない同時プラスは2025年8月と今回の2回だけということになる。

読むときの注意

3点ある。

テスト売上は「数量 × テスト時間 × 単価」で決まる。 AI 半導体はテスト時間そのものが長期化しているため、「売上4割増 = チップ4割増」ではない。数量とテスト強度を掛け合わせた量産活動の総量が4割増、という読み方が正確だ。

月次には季節性がある。 2月は春節で必ず落ち、3月に戻る。7月も例年は前月から増えやすい月で、ASE は2024年7月 +46.7億、2025年7月 +20.3億とプラスだった。今年の +80.0億はそれを大きく超えるが、「7月だから増えた」ぶんが含まれることは踏まえておく。前年同月比と併せて見る理由がここにある。

月次では内訳が分からない。 台湾の月次開示は売上高の1行だけで、AI 向けか非AI向けか、テストかパッケージングかの内訳は出ない。速報性と引き換えに粒度は粗い。内訳は四半期のセグメント開示を待つ必要がある。


データは FinMind(TaiwanStockMonthRevenue)から取得し、NTD 実額を 1e8 で除して「億NT$」に正規化している。図は月次データから自動生成しているので、翌月分が開示されたら同じ形式で作り直せる。