台湾4大AIサーバーODM、2026年5月単月で揃って過去最高 — Quanta/Wistron/Wiwynn/Inventec の5月実績を /memory-makers の月次データで読み解く
要点
台湾上場のAIサーバーODM4社(Quanta・Wistron・Wiwynn・Inventec)の2026年5月月次売上は、4社とも「5月単月」としては過去最高を更新した。一方、絶対値の歴代ピークは2026年3月で、5月はそこから1割前後調整した位置にある。
このサイトの /memory-makers ハブで継続観察している月次売上データ(出所: FinMind / 公開情報觀測站)と、5月14日前後に各社が開いたQ1法説会のコメントを突き合わせると、5月の数字の読み方が見えてくる。
5月実績まとめ
| 会社 | コード | 5月売上(億NT$) | YoY | 3月ピークからの調整 | 直近詳細 |
|---|---|---|---|---|---|
| Quanta(廣達) | 2382.TW | 3,114.8 | +94.4% | -14.1%(3月3,628億から) | 月次チャート |
| Wistron(緯創) | 3231.TW | 2,901.8 | +39.2% | -12.9%(3月3,330億から) | 月次チャート |
| Wiwynn(緯穎) | 6669.TW | 840.5 | +18.2% | -14.8%(3月986億から) | 月次チャート |
| Inventec(英業達) | 2356.TW | 828.1 | +35.3% | -5.4%(3月876億から) | 月次チャート |
数値は FinMind の
TaiwanStockMonthRevenue(公開情報觀測站経由の各社開示)。NTD実額を 1e8 で除し「億NT$」単位に正規化。
「過去最高」という言い方には注意がいる。4社とも前年同月(2025年5月)を上回って5月単月としては歴代最高だが、全月通算のピークは3月で、5月はそこから一旦調整した位置にある。「同月比較で過去最高」と「絶対値で過去最高」を切り分けて読みたい。
Quanta(廣達 / 2382.TW)— GB300量産で下半期も三桁成長見通し
5月の数字
- 5月売上: 3,114.8億NT$, YoY +94.4%
- 前年同月(2025年5月)は1,602.4億NT$ → ほぼ倍増
- 絶対値の歴代ピークは2026年3月の3,628億NT$、4月3,399.2億から5月3,114.8億で月次は2ヶ月連続で前月割れ
Q1法説会(5月14日)でのキー発言
5月14日に開催されたQ1法説会では、過去最高水準のAIサーバー比率と粗利率圧縮のトレードオフが論点になった(BigGo Finance Q1法説会まとめ / Digitimes Q1法説会報道)。
- Q1売上: NT$809.2億(YoY +66.6% / QoQ +66.7%、過去最高)
- サーバー売上が全社売上の80%以上、そのうちAIサーバーが75%超
- 粗利率: 4.78%(前年同期7.92%から314bps圧縮、QoQでも154bps圧縮)
- 通年見通し: AIサーバー三桁成長、汎用サーバーは二桁成長へ上方修正(従来は横ばい予想)
- GB300(単価$3M超)の出荷が前四半期比2倍超に増加
- CFO楊元慶: 「30日前より楽観的」「AI容量拡大を優先し、コストセンターから利益センターへ転換した」と発言
5月数字の読み方
5月単月としては前年同月から+94.4%とほぼ倍増だが、月次ベースでは3月→4月→5月で2ヶ月連続の前月減。3月の駆け込み出荷の反動と、GB200から GB300 への切り替え期の谷の可能性が混ざっている。下半期の三桁成長見通しは、CFOコメントを踏まえると GB300 ラックの量産加速で取り戻すシナリオ。
Wistron(緯創 / 3231.TW)— AI製品比率70%、AMD GPUモジュール独占供給
5月の数字
- 5月売上: 2,901.8億NT$, YoY +39.2%
- 前年同月(2025年5月)は2,084.1億NT$
- 絶対値の歴代ピークは2026年3月の3,330.4億NT$、4月2,834.4億から5月2,901.8億で月次は前月比でわずかに反発
Q1法説会(5月8-9日)でのキー発言
Wistron は2026年Q1の決算で売上・利益とも過去最高水準を記録した(Digitimes Q1法説会報道 / BigGo Finance FY2025 Q4 法説会)。
- Q1売上: NT$846.3億(YoY +144%、QoQ +17.4%、過去最高)
- 純利益: NT$96.3億(YoY +80.7%、過去最高)
- **AI関連製品が売上の約70%**を占める
- AI比率は2025年の38%から2027年に53%へ上昇する見通し
- AMD GPUモジュール/ベースボードの独占供給ポジションを強みとして強調
- 台湾北部 Zhubei 新工場の生産能力は 2026年中NVIDIAが事実上押さえていると報じられている
5月数字の読み方
YoY +39.2% は5月単月としては過去最高だが、Quanta(+94.4%)や Inventec(+35.3%)と比べると伸び率がやや低めに見える。これは前年同月(2025年5月 2,084億NT$)の比較ベースが既に高水準だったため。Wistron は2025年5月時点で AI サーバー出荷が立ち上がり始めており、ベースが高い分の YoY 圧縮として読める。前月比では4月2,834億 → 5月2,902億で月次反発しており、月次のトレンドは底堅い。
Wiwynn(緯穎 / 6669.TW)— メモリ調達代行モデル切替で見かけ伸びが弱含み
5月の数字
- 5月売上: 840.5億NT$, YoY +18.2%
- 前年同月(2025年5月)は711.3億NT$
- 絶対値の歴代ピークは2025年12月の1,042.9億NT
、2026年3月の986.5億NT - 月次は4月827.3億 → 5月840.5億で前月比はわずかに反発
Q1法説会・公式リリースのキー内容
Wiwynn の Q1 2026 決算は売上・利益・EPSとも「同期間の過去最高」を記録した(Wiwynn 公式リリース)。
- Q1売上: NT$276.508億(YoY +62.0%)
- 純利益: NT$141.14億(YoY +44.1%)
- 粗利率: 7.6%、営業利益率: 6.3%
- 基本EPS: NT
75.95(前年同期 NT52.70) - 経営陣コメント: 「2026年Q1の連結売上・利益・基本EPSは、いずれも同期過去最高を記録」
メモリ調達代行モデルへの切り替え
5月数字を読むうえで欠かせない論点が、**2026年4月から始まったメモリ調達の代行モデル(procurement agency model)**への切り替えだ。
Beginning April 2026, Wiwynn shifted memory procurement for certain customers to a "procurement agency model," where memory revenue is excluded from reported figures. (2026年4月以降、Wiwynn は一部顧客向けメモリ調達を「代行モデル」に切り替え、メモリ売上は売上計上対象から除外される) — Wiwynn Q1 2026 公式リリース
経営陣は「総利益への影響はなく、出荷量は引き続き二桁成長を達成する」("total profit is expected to remain unaffected by partial changes in business models, with shipment volume continuing to achieve double-digit growth")と説明している。
5月数字の読み方
YoY +18.2% は会計処理変更による剥落を含んだ「見かけ」の数字だ。実需ベース(出荷量・利益)では二桁成長を維持していると経営陣は説明している。Q1のYoY +62.0% から急減速したように見えるが、4月以降の数字には会計影響と実需変化の両方が乗っているため、3ヶ月程度ならして読むか、Q2決算(8月予定)で出荷量ベースの説明を確かめる必要がある。
なお、AIメモリ関連のボトルネックについて、CEO Emily Hong は Bloomberg のインタビュー(2026-05-28) で「メモリだけでなく、電力・冷却も AI サーバー量産のボトルネックになっている」と発言している。
Inventec(英業達 / 2356.TW)— 中国CSP向けAIサーバーが牽引
5月の数字
- 5月売上: 828.1億NT$, YoY +35.3%
- 前年同月(2025年5月)は612.0億NT$
- 絶対値の歴代ピークは2026年3月の875.6億NT$、4月847.9億から5月828.1億で月次は2ヶ月連続でわずかに前月割れ
- 他3社と比べて3月ピークからの調整幅が-5.4%と小さい
Q1法説会(5月12日)でのキー発言
Inventec の Q1 2026 は過去最高売上を記録し、サーバー事業が初めてPC事業を上回った(BigGo Finance Q1法説会まとめ / Digitimes Q1法説会報道)。
- Q1売上: NT$200.31億(YoY +27.6%、QoQ +17%、過去最高)
- サーバー事業の全社売上比率が初めて50%超
- 汎用サーバー: 出荷 +20〜25%、売上 +30%以上の見通し
- AIサーバー売上の50%超を中国CSPが占める(最大成長エンジン)
- GM Jack Tsai 発言: 「サーバー事業が PC 事業を上回った」「汎用サーバー市場は回復し、CPU 需要が戻っている」
- 通年見通し: PC は出荷ほぼ横ばい〜低一桁減、車載事業は前年比2倍以上
- NVIDIA Rubin・AMD MI の量産は2026年下半期以降の予定と明言
5月数字の読み方
3月ピーク875.6億から5月828.1億で-5.4%。他3社と比べて落ち込みが小さく、月次の安定度が高い。これは中国CSP向けAIサーバーが Inventec の差別化要因になっており、北米CSP偏重の3社(特に Wiwynn / Wistron)とは違うリズムで動いている可能性を示唆する。
共通テーマ — 5月数字をどう読むか
1. 同月比較で過去最高だが、絶対値ピークは3月
4社とも前年同月を上回って「5月単月としては過去最高」だが、絶対値で見れば歴代ピークは2026年3月にある。3月のリストック反動と GB200 → GB300 切り替え期の谷が重なり、4月・5月は調整局面に入った可能性がある。
2. AIサーバー比率は引き続き上昇
- Quanta: サーバー売上の75%超がAIサーバー(Q1)
- Wistron: 全社売上の約70%がAI関連製品(Q1)
- Wiwynn: Q1売上 YoY +62.0%(4月以降は会計変更影響を要分離)
- Inventec: サーバー事業が初めて全社売上の50%超
PC事業の存在感がさらに薄まる構図は4社共通で、AIサーバーへの収益依存度は引き続き高まっている。
3. 下半期の主役は GB300、Rubin は出荷タイミングの議論段階
5月時点の経営側コメントを総合すると、下半期に量産が本格化するのは Blackwell Ultra(GB300)。NVIDIA Rubin は「2026年下半期以降の量産」(Inventec)という言及はあるが、4社のIRコメントでも主役は GB300 という温度感だ。Rubin が市販レベルで月次売上に効くタイミングはもう少し先、というのが現時点の読み筋。
4. 顧客ミックスの違いが月次のリズムを分ける
- 北米CSP偏重: Quanta(Google / Apple / Meta)、Wiwynn(Meta / Microsoft / AWS)、Wistron(NVIDIA / Dell)
- 中国CSP比率が高い: Inventec(AIサーバー売上の50%超が中国顧客)
3月ピークからの調整幅は Inventec が-5.4%と最も小さく、北米CSP偏重の3社(-12〜15%)と差が出ている。顧客分散の効果が出ているとみることもできる。
ユーザー貼り付け文(出所の元記事)との差分メモ
本記事は、読者から共有された「台湾4大委託生産企業、人工知能サーバーのおかげで5月に過去最高の業績を達成」というニュース文を起点に、手元の月次データと各社IRで突き合わせて書いた。元文と本記事で表現が違うポイントを整理しておく。
| 元文の表現 | 本記事の確認結果 |
|---|---|
| 「5月に過去最高の業績を達成」 | 5月単月としては過去最高。絶対値の歴代ピークは2026年3月で、5月は3月から1割前後の調整局面 |
| Quanta YoY +94.4% | データ一致(3,114.8億NT$) |
| Wistron YoY +39.2% | データ一致(2,901.8億NT$) |
| Wiwynn YoY +18.2% | データ一致(840.5億NT$)。ただし4月以降のメモリ調達代行モデル切替による会計影響を含む |
| Inventec YoY +35.3% | データ一致(828.1億NT$) |
| 「Vera Rubin の本格量産が下半期に開始」 | Inventec 法説会では「NVIDIA Rubin・AMD MI の量産は下半期以降の予定」。下半期に主役は**Blackwell Ultra(GB300)**で、Rubin は本格量産より前の段階 |
| 「Wistron のネットワーク通信は10倍以上の成長」 | Q1法説会・公式リリース・主要報道では確認できず(10倍以上の根拠は本記事の調査範囲では未取得) |
| 「Inventec の AIサーバー関連売上は今年ほぼ2倍に成長」 | Q1法説会では明示数値は確認できず。同社は「AIサーバーは成長中だがサーバー売上の50%未満」と説明しており、通年で2倍となる根拠は本記事の調査範囲では特定できなかった |
観察のための補助リンク
- /memory-makers — 各社の月次推移チャートをまとめたハブページ
- /networking-monthly-revenue-observation-framework — AIサーバー組立・スイッチODMの月次売上を読むための観察フレームワーク
データソースについて
- 月次売上数値: 台湾証券取引法に基づく各社の月次開示。本記事ではオープンデータAPI FinMind の
TaiwanStockMonthRevenueデータセット経由で取得し、「億NT$」単位(÷1e8)に正規化した。各社公式IRページの月次プレスと同一の数値になる。 - Q1法説会のコメント: 各社の Q1 2026 法説会・公式リリースと、Digitimes / BigGo Finance / Taipei Times の報道を引用元として明記している。
本記事は投資助言・売買推奨ではない。月次売上の観察を目的とした記事で、銘柄の売買判断は読者自身の責任で行ってください。記載の数値・解釈は執筆時点(2026-06-09)の情報に基づき、将来の業績や株価を予測するものではない。