SK Hynix 1Q26 決算サマリー記事の制作ログ
キオクシアの 1Q26 サマリー記事(/kioxia-fy25-q4-summary-japanese)と同じ形式で SK Hynix もまとめてほしい、という依頼から始まった。「設備投資の計画がかなりアグレッシブだと思うんで、その辺をちょっと見ていきたい」という具体的な指定がついていたので、CapEx を見せ場にする方向で組んだ。
最終的に apps/web/content/2026-06/2026-06-25/sk-hynix-1q26-summary-japanese.md を公開したが、初稿で 1 回作り直しを食らった。記録を残す。
やったこと(時系列)
- キオクシア記事の構造(4 行サマリー → 図1 売上 vs COGS → CEO 発言 → CapEx)を把握
- SK Hynix 1Q26 の数字・CEO Kwak Noh-Jung と CFO Kim Woohyun の発言・CapEx 計画をリサーチさせた
- 初稿の図1を「売上 vs 営業費用」「営業利益率」で組んだ ← ここで作り直し
- ユーザーに突っ込まれて DART と SK Hynix 英文IR から粗利を取り直し
- 粗利率 79.3% で図1を作り直し、本文も書き換え
- 続けて Q2 26 予測の別記事計画を memo に書き、Codex レビューにかけた
初稿で営業利益にしてしまった理由
Claude Code に「SK Hynix は四半期決算で粗利を公式開示しないので、軸は『売上 vs 営業費用』『営業利益率』に変更します(誠実性確保)」と一方的に判断させてしまった。プレスリリースには売上・営業利益・純利益の 3 つしか載らないのは事実だが、それで終わらせるのが早すぎた。
ユーザーから即座にツッコミが来た。
でもなんで営業利益なの?粗利じゃなくて?なんで?
説明として「SK Hynix は四半期で COGS を出さない。事業報告書(사업보고서)の年次まで待たないと出てこない」と返したら、続けて
そうなんだ。あらりわかんないんだ。何このKEファースって。マジで意味わかんないっすね。
frontmatter の callout に「K-IFRS 粗利率」と書いてあったので、その「K-IFRS」が何者なのかが分からなかったらしい。説明し直した。
- K-IFRS は Korean adopted IFRS(韓国版 IFRS)
- 中身はキオクシアの IFRS とほぼ同じ
- 韓国の上場企業は 2011 年から義務化
- だから「会計基準が違うから粗利が出ない」のではない
- 本当の理由は SK Hynix の運用の問題(プレスリリースに粗利を載せない慣行)
ここまで説明したら次の指示が来た。
やり直して、あらり出せるでしょ。
DART と英文IR から粗利を取り直す
「四半期で公式開示しない」と Claude Code 側で判断したのが間違いだった。DART(金融監督院の電子公示システム)の連結財務諸表(연결재무제표)を四半期ごとに探したら、Income Statement の Revenue / Gross Profit / Operating Profit のフル時系列が出てきた。並行で SK Hynix 英文IR の https://www.skhynix.com/ir/UI-FR-IR07/ も叩いたら、こちらにも Quarterly の Income Statement 詳細ページがあり、粗利・営業利益・税前利益・純利益まで全部時系列で公開されている。
「公式が出さない」のではなく、「プレスリリース PDF には載らないが、IR サイトの別ページには載っている」が正解だった。記事を作る側がプレスリリースだけ見て判断してはいけない、という教訓。
数字を突き合わせると、
| 期間 | 売上 | 売上原価 | 売上総利益 | 粗利率 |
|---|---|---|---|---|
| Q4 25 | 32.83兆KRW | 10.25兆KRW | 22.58兆KRW | 68.8% |
| Q1 26 | 52.58兆KRW | 10.90兆KRW | 41.68兆KRW | 79.3% |
Q4 25 → Q1 26 で売上が +19.75兆ウォン増えたのに、COGS は +0.65兆(+6%)の横ばい。増分売上 19.75兆のうち 19.10兆(97%)が粗利に直行している。キオクシア(IFRS 粗利率 64%)・マイクロン(粗利率 84.6%)と同じ「メモリ単価駆動」の構造が、DRAM 専業の SK Hynix でも数字で出た。
ユーザー側でも公式 IR から数字を取って突き合わせてもらったら、小数点以下まで完全一致。一次ソースとして公式 IR の URL を出典に追加した。
学び
- 「公式が四半期で出さない」と決め打ちしない。プレスリリースの PDF に無くても、IR サイトの別ページにあることが多い。DART と英文IR の両方を当たる
- K-IFRS = 韓国版 IFRS。中身は IFRS とほぼ同じで、会計基準の差ではない。粗利が見えにくいのは会社の開示運用の問題
- 誠実性を理由にユーザーが欲しい数字を諦めない。「精度が足りないから推計を出さない」は時として「探し方が足りないのを正当化している」だけ
- 記事内の専門用語(K-IFRS, COGS, GP)はユーザーが読んでも分かるように callout に短い説明を入れる
後半: Q2 26 売上・EPS 予測の別記事を立案
サマリー記事の書き換えが終わったところで、次の依頼が来た。
マイクロンの韓国輸出統計を使った Q4 予測(
/korea-export-micron-quarterly-mapping)を見てほしい。SKハイニクスは1ヶ月遅れだけど同じロジックがそのまま使えるはず。しかも韓国輸出統計には SKハイニクスが入ってるからほぼ予測可能。SKハイニクスの次の決算の売上と EPS を予測する別記事を作って。要するに売上原価が同じで、結局これって粗利が増えてるのって単価が上がってるってことじゃない?
依頼の構造を読み解くと、
- マイクロン記事で確立した「韓国DRAM単価 → 四半期売上」の単回帰(R²=0.97)を SK Hynix に転用
- マイクロンより SK Hynix の方が韓国輸出統計の主要構成員なので、当てはまりが強いはず
- 暦四半期(Q2 = 4-6月)なので月次データを 3 ヶ月束ねれば 1 対 1 対応(マイクロンは 8 月末締めで月をずらす調整が要った)
- 4月・5月の韓国月次は確定済み、残りは 6 月(7/15 確定)
既存のデータファイル(skhynixQuarterlyFinancials.ts、koreaChipItemExports.ts)が揃っていることを確認。明日の実装はデータ生成スクリプトを書いて、既存PLに粗利率を追加するだけで済む見通しが立った。
計画書を memo/2026-06-25/sk-hynix-q2-26-prediction-plan.md に書いて Codex レビューにかけた。
Codex レビューの戻り
1 回目で致命的指摘 5 件。全部本質的だった。
- 付録Bの仮予測値が回帰モデルと内部矛盾(Q1 26 実績より低い「ベースケース」を出してしまっていた)
- 9〜10 点しかない時系列で水準同士の回帰は「トレンド同士の偶然」で R² が高く出る「見かけ相関」の可能性。差分系列での回帰(モデル E/F)を併走させて因果性を検定する必要がある
- EPS は為替・非営業損益・税率の影響が直撃するので「参考レンジ」に格下げ
- ほか 2 件
全部反映して 2 回目に出したら、残り 3 件 + 補足 1 件。これも反映。
3 回目のレビューで「致命的な問題なし、実装に進める計画として成立」の Green Light が出た。
Codex を 3 回回した感想
- 1 回目の指摘は構造的バグ(モデルと数値の内部矛盾)を含んでいて、自分では気づかなかった
- Codex は「瑣末な点へのクソリプはするな、致命的な点だけ指摘して」と指示しても、必要なら 5 件出してくる
- 計画段階で 3 往復しておくと、実装に入ってから「やっぱりこのモデル設計だと精度を主張できない」と崩壊するのを防げる
明日やること
-
apps/web/scripts/generate-sk-hynix-prediction.mjsを書いて、韓国DRAM単価から Q2 26 売上・粗利・営業利益を予測するTSデータを生成する - 水準回帰(モデルA/B/C)と差分回帰(モデルE/F)を両方流して、R² を併記する
- 記事ページ
apps/web/app/pages/sk-hynix-q2-26-prediction.vueを作る(マイクロン版と同じレイアウト) - 6 月確定値(7/15)を待たずに 4 月・5 月実績+6 月推計で初版を公開し、6/26 中にデプロイ
- 7/15 の 6 月確定値が出たら追記更新、7/24 頃の SK Hynix Q2 26 発表で答え合わせ
関連ファイル
- 公開記事:
apps/web/content/2026-06/2026-06-25/sk-hynix-1q26-summary-japanese.md - 図1 SVG:
apps/web/public/images/sk-hynix-1q26-summary-japanese/figure-01-revenue-cogs-gm.svg - 計画書:
memo/2026-06-25/sk-hynix-q2-26-prediction-plan.md - 参照したマイクロン記事:
/korea-export-micron-quarterly-mapping - 参照したキオクシア記事:
/kioxia-fy25-q4-summary-japanese