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メモリーカルテル ── SKハイニックス(000660.KS)、マイクロン(MU)、サムスン(005930.KS)の3社で DRAM市場シェアの約89% を握る寡占構造を指す言葉だ。サムスンが最大の38%、3社合計で約9割。先端チップを作りたいなら、ここを通らない選択肢はない。

この3社は、需要が供給を上回る現在の状況を利用して、四半期ごとに価格を引き上げてきた。背景にあるのは「DRAMの能力をHBM生産が3倍食う」構造的事情だ。HBMはDRAMダイを縦に積み重ね、TSV(シリコン貫通ビア)で接続したものなので、HBM 1スタックを作るのに通常DRAMの3倍の生産能力を消費する。HBM3(12層)からHBM4(16層)へ移行すれば、必要なDRAM能力はさらに膨らむ。結果として通常のサーバー用RAMの供給は構造的に細り、価格が急騰する。

DRAMの契約価格は、2025年Q4から2026年Q1にかけて 前年比で約700%上昇する水準 に近づいている。Morgan Stanleyの推計だ。ALETHEIA CAPITALも「サーバー向けDRAMの平均販売価格は2026年Q3にさらに +30%、Q4に追加で +10〜15% 上昇する。HBMの平均販売価格は2027年に前年比で2倍になる」と見ている。

DRAM3社の寡占構造 — サムスン38%・SKハイニックス34%・マイクロン17%で合計89%。価格決定力は3社が完全に握っている

3社が増産を遅らせた理由 — メーカー側にも合理性はある

この記事の元となった海外アナリストの論考は「3社は意図的に増産を遅らせ、AI設備投資サイクルを締め上げている」という強い主張をしているが、メーカー側にも理由はある。

メモリ事業はブームと不況のサイクルを繰り返してきた。価格上昇局面で増産を急ぐと、需要が落ちたときに供給過剰が市場に出てきて利益率が崩れる。SKハイニックス・サムスン・マイクロンが2024〜2025年にかけて積極的な能力拡張を本格化させなかったのは、過去のブームと不況の経験を引きずっているためで、それ自体は責められるものではない。

ただ、ここからが筆者の意見と重なる。3社は2026年に入ってから明確に強気のプライシングに切り替えた。 粗利益率60%でも王様のように暮らせるはずだが、より高い利益率を取りに行く方向を選んでいる。マイクロンのサンジェイ・メロトラCEOは、本格的な生産能力は 2028年まで立ち上がらない とBloombergのインタビューで述べた。供給逼迫はまだ2年残る、ということだ。

ハイパースケーラーCapExの4割がメモリへ吸い込まれる

価格が上がれば、買い手はそのぶん多く払う必要がある。ハイパースケーラーのCapExに占めるメモリの比率は、SemiAnalysisの試算で 2026年に約30%、2027年に約36.2% へ上がる見通しだ。

筆者は、この予想すら下振れすると見ている。なぜなら、メモリ価格は予想を上回るペースで上がり続けているからだ。2027年のメモリ比率は40%に達する可能性がある。 Morgan Stanleyが見込む2027年CapEx総額1.1兆ドルの40%は約4,400億ドル。これは2025年のCapEx総額全体にほぼ等しい。1年分の設備投資総額が、そのままメモリの売り上げに変わる計算になる。

ハイパースケーラーCapExに占めるメモリ比率 — 2026年30% → 2027年36.2%(SemiAnalysis)→ 著者予想40%。Morgan Stanleyの2027年1.1兆ドル予想に当てはめると、メモリだけで約4,400億ドルになる

実際、各社の決算コメントもこの方向を裏付けている。

  • Microsoftは「部材価格上昇に対応するため、CapExを 250億ドル増額」と明言した
  • Metaは「今年の部品価格上昇、特にメモリ」と説明
  • Amazonは「メモリは供給制約とテック業界全体の強い需要により急騰している」と発言

メモリは、すべてのハイパースケーラーにとってコスト面の脅威になりつつある。Q4には部品コスト全体の約64%、2026年末までに70%超に達する可能性がある。

長期契約も部分的にしか救えない

「長期契約(LTA)でロックインしているから問題ない」という見方もあるが、これも部分的にしか救いにならない。

HBMを作るには通常のサーバー用RAMの3倍の生産能力が必要だ。工場が必死に装置をHBM生産へ振り向けているため、通常DRAMの供給が崩れて価格が急騰する。長期契約には割引価格で購入できる数量上限がある。 AIブームがあまりに急速に起きたため、ハイパースケーラーは契約上限をほぼすぐに使い切ってしまった。追加で必要な分については、その時点の市場価格を払わざるを得ない。

その結果、ハイパースケーラーは新しいLTAを急いで結びにいっている。期間は1年ではなく3〜5年。しかも対象は将来採用が広がらない古い世代のメモリで、HBM3からHBM4への移行が進めば価格はさらに上がる。価格決定力はメモリ側にあるまま、買い手は契約上限の外で市場価格を払い続ける。

メモリ最適化が始まっている — コスト圧力の証拠

ハイパースケーラー側もただ払い続けているわけではない。AMD・NVIDIA・Googleはすでにメモリ最適化に動いている。

NVIDIAは次世代Rubin NVL72ラックで、CPU側のSOCAMM DRAMを1ラックあたり 約55TBから約28TB へ減らす可能性がある。ほぼ50%の削減だ。これは合理的な判断で、VR200の部品表ではGB300比でメモリコストが +435% 増えているからだ。AMDはMEXTでメモリプーリング(フラッシュをDRAMのように動かす)を進めている。

SOCAMMはHBMではないが、ポイントは別にある。コスト圧力に直面したときに、企業はコストを削る方法を真剣に探し始めるということだ。 これはメモリへの依存度を下げる動きが始まっている証拠であり、需要側の構造を中長期で揺らす。

循環性は消えていない

「メモリはもう循環産業ではない」という見方が市場の一部に出ているが、筆者は同意しない。

仮にAI設備投資が今後10年強いまま続いたとしても、ブームと不況のサイクルは自然に起こる。「循環しない」という主張は、メモリ需要が毎年伸び続け、ハイパースケーラーの支出にサイクルが起きないという前提に立つが、それは現実的ではない。

そして3社は、いま明確に増産を加速させている。これは「設備投資が持続的に増え続けること、メモリ需要が持続すること」に賭けている賭けだ。能力が立ち上がったときに需要が想定通り強くなければ、過去と同じ供給過剰局面が来る。

著者シナリオ — 2027年半ばで利益率ピーク、株価は前倒しで反転

筆者の現時点の見立てはこうだ。下落が始まるのは 2027年前半〜後半、つまり1年後あたり。そこまでに決算とガイダンスを慎重に見ていく必要がある。

著者シナリオ — 2027年前半は価格カーブが平坦化、2027年半ばで株価が先行反転、2028〜2030年は本格的な不況局面。SK Hynixの粗利益率を軸に置いた

2027年Q1まで — 価格上昇が続く局面

SKハイニックスの粗利益率は約80%、マイクロンは78〜80%、サムスンは70〜75%まで延びる。契約価格は前年比+700%水準で滞留、HBM3→HBM4移行で単価はさらに上がる。ハイパースケーラー決算では「メモリコスト」への言及が定着し、CapExガイダンスにメモリインフレ分が乗ってくる。この局面ではメモリ株はまだ買われる。

2027年H1(2〜3月頃) — 価格カーブが平坦化

価格の上昇曲線は、2月か3月頃から平らになり始める。ただし生産能力はなお不足した状態が続く。注目すべきは、ハイパースケーラー側のメモリ最適化(SOCAMM削減・メモリプーリング)の発表が四半期ごとに増えてくる点で、これは需要側の構造変化の先行シグナルになる。

2027年H2(年央〜後半) — 設備投資のトーンが変わる

ここで筆者の見立てが当たれば、ハイパースケーラー決算で「設備投資の伸びが鈍化する」「2028年は今年ほどの増額は予定していない」という発言が出始める。投資家は、将来の利益率低下を織り込み始め、多くのメモリ株はこの段階で上昇が反転する。 利益率が実際にピークを迎える前に、株価は先に反転する。

2028年〜2030年 — 本格的な不況局面

新規生産能力が順次立ち上がり、供給不足は和らいでいく。一方でCapExの大きな増額はなく、需要見通しは2025〜2027年ほど強くない。粗利益率は60%台前半へ低下。ここで「メモリはまた循環した」と改めて確認される。

監視ポイント — 決算とガイダンスで何を見るか

このシナリオに対して、何が起きれば筆者の見立ては外れるか。逆に、何が起きれば見立て通りに進んでいると判断できるか。各社の四半期決算で次の3点を追えばよい。

① メモリ・部材コストへの言及量

Microsoft・Meta・Amazon・Alphabetの説明会で、メモリ・部材コストへの言及が増え続けるか、減り始めるかを見る。増え続けるうちはコスト圧力が続いている証拠で、減り始めたら需要側の構造変化(メモリ最適化の効果が出始めた、買い増しを止めた)の可能性が高い。

② 翌四半期DRAM/HBMの契約価格ガイド

3社の決算で、翌四半期の契約価格ガイドが 「+30%」→「+10〜15%」→「横ばい」 と段階的に減速していくかを追う。減速が始まった時点で、利益率ピークが視野に入る。

③ CSPの新規LTA締結とその金額

新規LTAの締結ペース・金額・期間(3年か5年か)が、買い手側の供給確保への切迫感を映す。LTA締結ラッシュが続いている間はカルテル側に価格決定力が残っているが、ペースが落ちたら「もう必要な分は取ったので追加では結ばない」シグナルだ。

楽観シナリオ

念のため楽観シナリオも書いておく。これら3社のメモリ価格が、市場に大量の供給が一気に出てきて崩れることだ。そうなれば、同じ設備投資額でより多くの計算出力が生み出せるようになり、AIインフラ全体の単位コストが下がる。買い手にとっても産業全体にとっても望ましい結末で、ボトルネックが外れる。

ただ、3社がそれを自分から選ぶ可能性は低い。供給の引き締めは今後2年続き、そのあとに過剰局面が来る。順序はこれまでの循環と同じだ。違いは、規模だけだ。


→ 関連: Dylan Patel氏(SemiAnalysis)のメモリ・HBM分析
→ SemiAnalysis(HBM・データセンターCapEx分析の一次情報元)