贈与税 — 親から住宅資金をもらったときの精算課税と非課税
この章の主張
- 贈与税は暦年課税が原則で、相続時精算課税は届出により選択する別建ての方式である。
- 相続時精算課税は累計2,500万円の特別控除に加え、2024年改正で年110万円の基礎控除が新設された。
- 直系尊属からの住宅取得等資金には省エネ等住宅1,000万円・一般住宅500万円の非課税枠が別途使える。
1. 暦年課税と相続時精算課税 — 課税方式の選択
贈与税の課税方式は暦年課税が原則で、一定要件を満たす贈与者と受贈者の組み合わせのときだけ相続時精算課税を選択できます。両者は基礎控除の金額・特別控除の有無・税率構造・相続時の取扱いがすべて異なります。一度選択した相続時精算課税は、同じ贈与者からの贈与については暦年課税に戻れません。
相続税法第21条の2第1項: 「贈与により財産を取得した者がその年中において贈与により取得した財産の価額の合計額をもつて、贈与税の課税価格とする。」(→ e-Gov 相続税法)
1.1 暦年課税 — 年間110万円までの基礎控除
暦年課税は、その年の1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産の合計額から基礎控除110万円を差し引き、残額に累進税率(10%〜55%)を適用する方式です。贈与者と受贈者の年齢制限はなく、特別控除もありません。年110万円以下なら申告も納税も不要です。
1.2 相続時精算課税 — 2,500万円特別控除と年110万円基礎控除
相続時精算課税は、贈与の年の1月1日に60歳以上の父母・祖父母から、同日に18歳以上の子・孫への贈与に限り選択できます。2024年改正で年110万円の基礎控除が新設され、これを超えた残額から累計2,500万円の特別控除を差し引き、超過分には**一律20%**の税率がかかります。
相続税法第21条の9以下が相続時精算課税の根拠条文です。改正は令和5年度税制改正で行われ、令和6年(2024年)1月1日以後の贈与から年110万円の基礎控除が適用されます。
1.3 選択の効果 — 一度選んだら戻れない
相続時精算課税は、最初に贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに相続時精算課税選択届出書を申告書に添付して提出する必要があります。届出後は同じ贈与者からの贈与について暦年課税に戻れません。贈与者が亡くなったときは、それまでの贈与財産(年110万円基礎控除分を除く)を相続財産に合算して相続税を精算します。
⚠️ 試験での問われ方
- 暦年課税の基礎控除 → 年110万円(受贈者ごと・贈与者の人数に関係なく合計で110万円)
- 相続時精算課税の特別控除 → 累計2,500万円(一度に使い切らなくても繰越せる)
- 相続時精算課税の年齢要件 → 贈与年の1月1日時点で贈与者60歳以上・受贈者18歳以上
- 一度選択した相続時精算課税は同じ贈与者からの贈与については暦年課税に戻れない
- 2024年改正で相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が追加(暦年課税の110万円とは別枠)
2. 住宅取得等資金の贈与非課税特例 — 直系尊属からの住宅資金支援
父母・祖父母(直系尊属)から18歳以上の子・孫が住宅取得等資金の贈与を受けた場合、一定額まで贈与税が非課税になる特例があります(租税特別措置法第70条の2)。配偶者の親(義父母)からの贈与は対象外です。この特例は暦年課税の基礎控除110万円や相続時精算課税の特別控除2,500万円と併用可能です。
2.1 受贈者の要件
受贈者は次の3つをすべて満たす必要があります。①贈与を受けた年の1月1日に18歳以上であること、②贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下(床面積40㎡以上50㎡未満の住宅は1,000万円以下)であること、③贈与者が直系尊属(父母・祖父母)であること。所得要件は「年間合計所得」であり、給与収入額そのものではない点に注意してください。
2.2 対象住宅と非課税限度額
対象は床面積40㎡以上240㎡以下の住宅で、床面積は登記簿上の表示面積で判定します。非課税限度額は、省エネ等住宅で1,000万円、それ以外の一般住宅で500万円です。資金は贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅の取得・新築・増改築に充てる必要があります。
住宅取得等資金非課税特例の限度額・適用期間は税制改正で頻繁に変動します。本教材は基準日2026-04-01時点の制度で記述しており、最新値は国税庁HPで確認してください。
3. 申告と納付 — 翌年3月15日までに自主申告
贈与税は申告納税方式です。贈与を受けた年(1月1日から12月31日まで)に贈与された財産の合計について、翌年2月1日から3月15日までに、受贈者の住所地を所轄する税務署長へ申告書を提出し、税額を納付します。所得税の確定申告期限と同じ日です。
相続税法第28条第1項: 「贈与により財産を取得した者は、その年分の贈与税の課税価格に係る贈与税額があるとき……は、その年の翌年二月一日から三月十五日までに……申告書を……提出しなければならない。」(→ e-Gov 相続税法)
3.1 申告義務者と申告期限
申告義務者は贈与を受けた者(受贈者)です。納付も受贈者本人が行い、原則は期限内に金銭で一括納付します。一定の要件を満たせば延納が認められますが、相続税のような物納制度はありません。
⚠️ 試験での問われ方
- 申告期限 → 翌年2月1日から3月15日まで(所得税の確定申告と同日)
- 申告先 → 受贈者の住所地を所轄する税務署長(贈与者の住所地ではない)
- 相続時精算課税を初めて選ぶ → 申告書に相続時精算課税選択届出書を添付して提出
- 住宅取得等資金特例の適用 → 非課税になる場合でも申告は必要(特例は申告が要件)
このカテゴリから出る過去問(公式由来確認済の問題)
- 令和5年度試験 問23(贈与税)— 論点: 相続時精算課税の特別控除2,500万円と直系尊属要件。出典: 一般財団法人 不動産適正取引推進機構(→ RETIO 試験情報)
- 令和3年12月試験 問24(贈与税)— 論点: 住宅取得等資金贈与の非課税特例、直系尊属要件、床面積要件。出典: 同上
- 令和元年度試験 問23(贈与税)— 論点: 暦年課税の基礎控除110万円と相続時精算課税の選択。出典: 同上
本カテゴリの過去問7問の集約・解説は Phase 3 で
/takken/quiz/{year}/{q-number}/に展開予定です。過去問は RETIO 公式の試験情報を主基準として収集します。
参照条文
- 相続税法 第21条の2(暦年課税の課税価格): → e-Gov 相続税法
- 相続税法 第21条の5(暦年課税の基礎控除): → e-Gov 相続税法
- 相続税法 第21条の9〜第21条の18(相続時精算課税): → e-Gov 相続税法
- 相続税法 第28条(贈与税の申告): → e-Gov 相続税法
- 相続税法 第33条(贈与税の納付): → e-Gov 相続税法
- 租税特別措置法 第70条の2(住宅取得等資金贈与の非課税): → e-Gov 租税特別措置法
- 国税庁「贈与税のしくみ」: → 国税庁 タックスアンサー
参考書籍(論点漏れチェックに参照、本文の引用なし)
- みんなが欲しかった!宅建士の教科書(TAC出版, 2025年版, ISBN: 978-4-300-11199-1, 該当章 第3編 税・その他 P.480〜500)
- 1週間で宅建士の基礎が学べる本(KADOKAWA, 2024年版, ISBN: 978-4-04-606561-2, 該当章 第7章 税・その他 P.380〜398)
- 動画で学べる宅建士テキスト(中央経済社, 2024年版, ISBN: 978-4-502-50161-1, 該当章 税法 P.420〜438)
- パーフェクト宅建士基本書(住宅新報出版, 2025年版, ISBN: 978-4-910499-37-2, 該当章 第3編 税・価格の評定 P.500〜520)
関連カテゴリ
- 3_3 所得税 — 住宅取得時の併用特例(住宅ローン控除との関係)
- 1_13 家族法(親族・相続) — 贈与と相続の関係、相続時精算課税の精算
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本教材は 令和8年度(2026年度)宅地建物取引士資格試験 を対象として、2026 年 4 月 1 日時点で施行されている法令 に基づき執筆しています。法改正は
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