登録免許税 — 不動産登記をしたら課される国税
この章の主張
- 登録免許税は『登記を受ける者』に課される国税で、課税標準は登記の種類により評価額か債権金額に分かれる。
- 税率は登記原因によって0.4%(保存・相続)と2%(売買・贈与)の2段階構造になっている。
- 住宅用家屋の軽減特例で、本則税率の1/3〜1/4まで下がる。床面積50㎡が最重要の境界線。
1. 納税義務者と課税標準 — 登記を受ける者が払う
登録免許税は、不動産・船舶・会社などの登記や登録を受けるときに課される国税です。登記を受ける者が納税義務者になります(登録免許税法第3条)。あなたが家を買って所有権移転登記をすれば、その登記を受けた人として税を払うことになります。
登録免許税法 第3条(納税義務者)「登記等を受ける者は、この法律により登録免許税を納める義務がある」(→ e-Gov 登録免許税法)
1.1 単独申請と共同申請 — 売買は両者が連帯
所有権保存登記や相続による移転登記は、登記を受ける者が1人で申請する単独申請です。一方、売買による所有権移転登記や抵当権設定登記は、登記権利者(買主・抵当権者)と登記義務者(売主・所有者)が共同で申請します。共同申請の場合、両者が連帯して登録免許税の納付義務を負います。
私的な売買契約で「税金は買主が払う」と取り決めても、その合意は当事者間のものに過ぎません。課税庁に対しては、売主・買主の両者が連帯して納税義務を負ったままです。
1.2 課税標準 — 所有権登記は評価額、抵当権は債権金額
課税標準は登記の性格で2つに分かれます(登録免許税法第9条・別表第一)。所有権登記の課税標準は固定資産税評価額です。実際の売買代金や時価ではなく、市町村の固定資産課税台帳に登録された評価額を使う点が押さえどころです。
抵当権設定登記の課税標準は債権金額です。例えば住宅ローン3,000万円を借りて抵当権を設定するなら、3,000万円が課税標準になります。被担保債権額が建物の価値より大きくても、債権金額そのままが基準です。
⚠️ 試験での問われ方
- 売買代金1億円・評価額6,000万円の物件の所有権移転登記 → 課税標準は6,000万円(評価額)
- 住宅ローン3,000万円の抵当権設定登記 → 課税標準は3,000万円(債権金額)
- 新築未登記建物の保存登記 → 法務局認定価額(新築建物課税標準価額)を使う
2. 税率 — 登記の種類で2%〜0.4%
税率は登記の種類と原因で決まり、登録免許税法 別表第一に規定されています。所有権登記では、保存と相続による移転が0.4%、売買と贈与による移転が2%です。同じ所有権移転でも、相続と売買で5倍の差が生まれます。抵当権設定登記は0.4%(債権金額に対して)です。
2.1 所有権登記の税率早見
所有権登記の原因別税率を整理すると次の通りです。
| 登記原因 | 課税標準 | 本則税率 |
|---|---|---|
| 所有権保存(新築) | 固定資産税評価額 | 0.4% |
| 所有権移転(相続) | 固定資産税評価額 | 0.4% |
| 所有権移転(売買) | 固定資産税評価額 | 2% |
| 所有権移転(贈与) | 固定資産税評価額 | 2% |
売買と贈与の高税率は、登記が流通税(資産を動かしたときに課す税)として設計されているためです。一方、保存と相続は資産の継続的な保有や承継であり、税率が低く抑えられています。
2.2 抵当権設定登記の税率
抵当権設定登記の本則税率は債権金額の0.4%です。住宅ローン3,000万円の抵当権なら12万円が原則の税額になります。住宅用家屋特例の要件を満たすと0.1%まで下がり、3,000万円のケースで3万円まで圧縮されます。次の第3節で要件を確認します。
⚠️ 試験での問われ方
- 売買による所有権移転登記は本則2%、住宅用家屋特例で**0.3%**まで下がる
- 相続による所有権移転登記は0.4%(売買と混同しない)
- 抵当権設定登記の課税標準は債権金額(評価額ではない)
3. 住宅用家屋の軽減特例 — 床面積50㎡以上で大幅減税
個人が自己居住用に住宅を取得・新築した場合、租税特別措置法により登録免許税が大幅に軽減されます(措置法第72条の2〜第75条)。所有権保存は0.15%、売買による移転は0.3%、抵当権設定は**0.1%**です。本則の1/3〜1/4まで下がる強力な特例で、宅建試験の登録免許税はこの特例の要件判定が中心になります。
3.1 適用要件 — 自己居住・床面積・1年以内登記
特例の適用には次の3要件をすべて満たす必要があります。
- 個人が自己居住用に取得したこと(法人による取得や賃貸用は対象外)
- 登記簿上の床面積が50㎡以上であること(内法面積で判定)
- 新築または取得後1年以内に登記を申請すること
3つのうち1つでも欠ければ、本則税率に戻ります。49㎡では特例の適用がなく、本則の2%(売買移転の場合)で計算することになります。
床面積は**登記簿上の床面積(内法面積)**で判定する点に注意してください。建築基準法やパンフレットで使う壁芯面積ではありません。マンションの専有部分は壁の中心で囲んだ壁芯面積より、壁の内側で囲んだ内法面積の方が数㎡小さくなります。壁芯50㎡でも、内法では50㎡を切ることがあります。
3.2 軽減後の税率早見
3要件を満たしたときの税率を本則と並べて比較します。
| 登記の種類 | 本則税率 | 特例税率 |
|---|---|---|
| 所有権保存(新築) | 0.4% | 0.15% |
| 所有権移転(売買) | 2% | 0.3% |
| 抵当権設定 | 0.4% | 0.1% |
評価額3,000万円の中古マンションを購入し、3,000万円の住宅ローンで抵当権を設定する場合を考えます。本則だと所有権移転60万円+抵当権設定12万円=72万円。特例適用なら所有権移転9万円+抵当権設定3万円=12万円で、60万円の節税になります。
⚠️ 試験での問われ方
- 床面積49㎡のマンション購入 → 特例適用なし(本則2%)
- 取得から1年2か月後の登記 → 特例適用なし(本則税率)
- 投資用ワンルームの抵当権設定 → 自己居住用ではないので適用なし
- 法人名義での住宅取得 → 個人要件を欠くので適用なし
4. 納付方法と非課税 — 現金か印紙、国・地公体は非課税
登録免許税は原則として現金で納付し、領収証書を登記申請書に添付して法務局に提出します(登録免許税法第21条)。例外として、税額が3万円以下のときは収入印紙を申請書に貼って納付することもできます。
国や地方公共団体が自己のために登記を受けるとき、また建物表題登記などの表題部の登記は非課税です(登録免許税法第4条)。表題登記が非課税である一方、所有権保存登記(権利部の最初の登記)は0.4%で課税されます。両者は同じ登記簿に載るものの別の登記なので、混同しないようにしてください。
4.1 非課税となる登記
非課税となる登記は3系統で整理できます。
- 主体による非課税: 国・地方公共団体が自己のために受ける登記(国有地の所有権登記など)
- 対象による非課税: 表題部の登記(建物表題登記など、物理的状況の登記)
- 法定非課税: 別表第三などの個別規定で非課税とされたもの
国・地方公共団体が登記を受ける場合でも、相手方として受ける登記(民間から土地を買って自治体名義に移すときの売主側の関与など)は課税されることがあります。「自己のために受ける登記」かどうかが分かれ目です。
⚠️ 試験での問われ方
- 国が登記を受ける場合は非課税(自己のため)
- 建物表題登記は非課税、所有権保存登記は0.4%で課税
- 税額3万円以下なら印紙納付可(3万円超は現金のみ)
このカテゴリから出る過去問
登録免許税は過去問27年分で7問が出題されています。論点別の内訳は、住宅用家屋特例(床面積50㎡以上・1年以内登記)3問、税率(保存・売買移転)2問、課税標準(評価額)1問、納税義務者(連帯)1問です。
学習の優先順位は次の通りです。
- 住宅用家屋特例の3要件(個人・床面積50㎡以上・取得後1年以内登記)— 最頻出
- 登記原因別の税率(保存0.4%/相続0.4%/売買2%/贈与2%)
- 課税標準(所有権登記は評価額/抵当権設定は債権金額)
- 共同申請の連帯納税義務(売主と買主の両方)
- 非課税登記(国・地公体の自己登記/表題部登記)
過去問の年度別リスト(exam_id 表記)は、/takken/quiz/ ページ実装後(Phase 3)に逆リンクを自動挿入します。
次に読む
このカテゴリの次は、国税の最後として/takken/zei/zoyo-zei/(贈与税)に進むことを推奨します。世代間の住宅取得資金の流れと、住宅取得等資金の贈与非課税特例を押さえると、住宅取得時の税負担全体像(不動産取得税・固定資産税・登録免許税・所得税の住宅ローン控除・贈与税の非課税枠)が見えてきます。
関連カテゴリ:
/takken/zei/fudosan-shutoku-zei/(不動産取得税)— 取得時のセット税/takken/kenri/fudosan-touki-ho/(不動産登記法)— 登記制度の本体/takken/zei/inshi-zei/(印紙税)— 流通税ペア
参照条文
- 登録免許税法 第3条(納税義務者)/第4条(非課税)/第9条(課税標準)/第21条(納付)/別表第一(税率表)
- 租税特別措置法 第72条の2(住宅用家屋の所有権保存登記の軽減)/第73条(住宅用家屋の所有権移転登記の軽減)/第75条(住宅取得資金の抵当権設定登記の軽減)
参照過去問
過去問27年分のうち、本カテゴリは7問出題。主要論点は住宅用家屋特例の3要件、登記原因別税率、課税標準の対比。各問の exam_id 表記と内部リンクは Phase 3 で /takken/quiz/{year}/{q_number}/ 形式で挿入予定。
参考書籍
- みんなが欲しかった!宅建士の教科書(TAC出版, 2025年版, ISBN: 978-4-300-11015-5, 該当章 P.420〜P.428)
- 1週間で宅建士の基礎が学べる本(翔泳社, 第6版, 2025年, ISBN: 978-4-7981-8120-2, 該当章 P.226〜P.232)
- 動画で学べる宅建士テキスト(住宅新報出版, 2025年版, ISBN: 978-4-910499-87-3, 該当章 P.358〜P.364)
- パーフェクト宅建士基本書(住宅新報出版, 2025年版, ISBN: 978-4-910499-90-3, 該当章 P.512〜P.520)
上記書籍は論点漏れチェック専用として参照。本文の論述・例示・図解構成は、e-Gov 公的条文と過去問頻出論点から独自に組み立てています。
本教材は 令和8年度(2026年度)宅地建物取引士資格試験 を対象として、2026 年 4 月 1 日時点で施行されている法令 に基づき執筆しています。試験当日までに法改正が確認された場合は /takken/changelog/ に掲載します。