その他法令上の制限 — 法令名・対象行為・許可権者を一覧で記憶する

この章の主張

  • 『その他の法令』の出題は、許可権者が誰かを当てる択一が中心になる。
  • 原則は 都道府県知事。例外を覚えるだけで多くの問題が解ける。
  • 法令名・対象行為・許可権者の3列マトリクスで一気に記憶する。
その他法令の許可権者は原則『都道府県知事』、例外パターンの分解図

1. 許可権者は原則『都道府県知事』— 例外パターンを覚える

『その他の法令』とは、都市計画法・建築基準法・農地法・国土利用計画法・土地区画整理法・盛土規制法という主要6法以外で、宅地建物の利用を制限する一群の法令を指します。出題は散発的ですが、許可権者は誰かを問う形式が大半です。原則は都道府県知事、例外として市町村長(都市緑地法の特別緑地保全地区)、環境大臣(国立公園の特別地域)、農林水産大臣(国有林等の保安林)、河川管理者(河川区域内の工作物)があります。

1.1 都市緑地法 — 特別緑地保全地区は市町村長の許可

緑地保全地域(届出)と特別緑地保全地区(市町村長許可)の左右比較

都市緑地法第8条は、特別緑地保全地区内で建築物の新築・改築や土地の形質変更を行うには市町村長の許可を要すると定めます。一方、緑地保全地域(同法第5条)は同様の行為について届出で足ります。許可と届出の違い、そして都道府県知事ではなく市町村長である点が引っかけです。

都市緑地法 第8条第1項: 「特別緑地保全地区内において、建築物その他の工作物の新築、改築又は増築」その他一定の行為をしようとする者は「市町村長の許可を受けなければならない」(→ e-Gov 都市緑地法)

1.2 自然公園法 — 国立は環境大臣、国定・都道府県立は知事

自然公園3類型と許可権者のツリー

自然公園法は公園を3類型に分け、特別地域内の工作物新築等の許可権者を次のように振り分けます。国立公園環境大臣(同法第20条第3項)、国定公園都道府県知事都道府県立自然公園都道府県知事です。国立公園を環境大臣ではなく都道府県知事と書く誤肢が頻出です。

1.3 森林法 — 保安林と林地開発で許可権者が分かれる

森林法における保安林指定と林地開発の許可権者マトリクス

森林法は保安林の指定林地開発で許可主体を分けます。保安林の指定権者は原則農林水産大臣(同法第25条)、ただし民有林の指定は都道府県知事が行う場合があります。一方、地域森林計画対象民有林で1ヘクタール超の開発(林地開発)は都道府県知事の許可(同法第10条の2)が必要です。「保安林=農林水産大臣、林地開発=都道府県知事」と覚えると正答率が上がります。

1.4 河川法 — 河川区域内の工作物は河川管理者の許可

河川区域内の工作物許可の対象範囲の鳥瞰図

河川法第26条第1項は、河川区域内で工作物の新築・改築・除却を行うには河川管理者の許可を要すると定めます。河川管理者は河川の種類で異なり、一級河川は原則国土交通大臣二級河川都道府県知事準用河川市町村長です。許可権者が「都道府県知事」と書かれていても一級河川なら誤りという形で問われます。

2. 個別法令一覧 — 土壌汚染対策法・土地収用法・道路法・海岸法

個別法令×対象行為×許可届出×監督者の総合マトリクス

近年は次の4法令も出題されています。いずれも都道府県知事または河川管理者・道路管理者等の管理権者が窓口になります。土壌汚染対策法は要措置区域内の土地の形質変更を都道府県知事の許可(同法第7条)としつつ、形質変更時要届出区域内の形質変更は届出(同法第12条)で足ります。土地収用法は事業認定を国土交通大臣または都道府県知事が行います。道路法は道路占用を道路管理者の許可(同法第32条)、海岸法は海岸保全区域内の工作物を海岸管理者の許可(同法第8条)と定めます。

2.1 土壌汚染対策法 — 区域指定後の形質変更は届出または許可

土壌汚染区域内の形質変更フロー(届出から確認まで)

土壌汚染対策法は、土壌汚染が確認された土地を要措置区域または形質変更時要届出区域に指定します。要措置区域内の形質変更は原則禁止で、例外的に都道府県知事の確認を得る形(同法第7条第1項)を取ります。一方、形質変更時要届出区域では形質変更を行う14日前までに都道府県知事に届出(同法第12条第1項)が必要です。「許可」と「届出」の違い、そして両区域の規制強度の違いを正確に押さえてください。

⚠️ 試験での問われ方

  • 特別緑地保全地区内の建築 → 市町村長の許可(都道府県知事ではない)
  • 国立公園の特別地域での建築 → 環境大臣の許可
  • 保安林の指定 → 農林水産大臣(都道府県知事の場合もある)
  • 林地開発(1 ha 超) → 都道府県知事の許可
  • 一級河川の河川区域内の工作物 → 国土交通大臣の許可(都道府県知事ではない)

3. 35条書面との接続 — 重要事項説明で問われる『その他法令の制限』

35条書面における『法令上の制限』記載項目と本カテゴリの位置づけ

宅建業法第35条第1項第2号は、「都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で政令で定めるもの」を重要事項として説明するよう求めます。具体的な政令指定法令は宅地建物取引業法施行令第3条に列挙されており、本章で扱う都市緑地法・自然公園法・森林法・河川法・土壌汚染対策法・道路法・海岸法等もすべてこの政令3条のリストに含まれます。つまり業務の現場では『法令の名前を覚えただけでは終わらず、35条書面に書く必要があるかを判断する』段階まで進みます

3.1 政令3条の網羅性 — 都市計画法以外の法令もすべて列挙

宅建業法施行令第3条の構造と本章で扱う法令の位置づけツリー

施行令第3条は1項に全取引共通の説明事項(数十法令)を列挙し、2項以下で貸借取引のみに必要な追加事項を定めます。売買では政令3条1項のすべての法令制限を説明するのに対し、貸借では1項のうち借主に関係する制限のみでよい設計です。試験では「自然公園法の制限を貸借で説明する必要があるか」のような形で問われます。借主に関係する制限のみで足ります。

3.2 法令名×対象行為×許可権者の暗記表

その他法令の主要9法を一覧化した暗記マトリクス

最後に主要法令を1枚の表で総覧します。試験直前にこの表だけ見直せば、選択肢の正誤を機械的に判定できます。

法令名対象行為許可・届出監督者
都市緑地法特別緑地保全地区内の建築等許可市町村長
都市緑地法緑地保全地域内の建築等届出都道府県知事
自然公園法国立公園特別地域内の建築等許可環境大臣
自然公園法国定・都道府県立公園特別地域内許可都道府県知事
森林法保安林指定指定農林水産大臣または都道府県知事
森林法林地開発(1 ha 超)許可都道府県知事
河川法河川区域内の工作物許可河川管理者(国・都道府県・市町村)
土壌汚染対策法形質変更時要届出区域届出都道府県知事
道路法道路占用許可道路管理者
海岸法海岸保全区域内の工作物許可海岸管理者

このカテゴリから出る過去問

本カテゴリの過去問5問は、いずれも「許可権者は誰か」の択一形式で問われています。出題年度・問番号と論点を以下に整理します。具体的な問題文・正答の確認は、出典である一般財団法人 不動産適正取引推進機構の公表資料に基づきます(→ RETIO 試験情報)。

  • 令和元年度試験 問22 — 論点: 都市緑地法・自然公園法・森林法の許可権者
  • 令和3年度10月試験 問22 — 論点: 河川法・道路法の管理者
  • 令和4年度試験 問22 — 論点: 土壌汚染対策法の届出区域
  • 令和5年度試験 問22 — 論点: 海岸法・自然公園法の許可権者
  • 令和6年度試験 問22 — 論点: 都市緑地法・森林法・河川法の総合判定

本カテゴリの過去問の論点別集約・解説は Phase 3 で /takken/quiz/{year}/{q-number}/ に展開予定です。

参照条文

参考書籍(論点漏れチェックに参照、本文の引用なし)

  • みんなが欲しかった!宅建士の教科書 法令上の制限・税・その他(TAC出版, 2025年度版, 2024年, ISBN: 978-4-300-10880-5, 該当章 P.180〜200)
  • パーフェクト宅建士基本書(住宅新報出版, 2025年版, 2025年, ISBN: 978-4-910499-72-1, 該当章 P.430〜445)
  • 1週間で宅建士の基礎が学べる本(成美堂出版, 2025年版, 2024年, ISBN: 978-4-415-33558-2, 該当章 P.140〜148)
  • 動画で学べる宅建士テキスト(日建学院, 2025年度版, 2024年, ISBN: 978-4-86358-957-1, 該当章 P.260〜270)

関連カテゴリ

次に読む

法令上の制限は本章で終了です。次は税分野の 3_1 不動産取得税 に進むと、重要事項説明の「税」項目への接続が見えます。

本教材は 令和8年度(2026年度)宅地建物取引士資格試験 を対象として、2026 年 4 月 1 日時点で施行されている法令 に基づき執筆しています。法改正は /takken/changelog/ に掲載します。

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