国税庁の新様式に印字された「F01」「E02」の正体 — AI-OCR様式の欄コードを消費税の7様式から読み解く

開発tax-assistant

国税庁の申請書・届出書の現行様式(2026年9月時点で国税庁サイトに掲載されているもの)を見ると、各記入欄のわきに「F01」「E02」「N01」のような英数字コードが小さく印字されている。欄の並びも旧様式から大きく変わっていて、様式IDと二次元コードも付いた。

このコードが何なのか、番号に規則はあるのか、どこかに定義表が公表されているのか。消費税の届出・申請書7様式を欄単位で突き合わせて調べた結果をまとめる。

結論を先に書くと、こうなる。

  • このコードは、令和8年(2026年)9月24日に稼働する国税庁の新基幹システム「KSK2」に向けた AI-OCR 様式の欄識別コード。書面で提出された申告書・届出書を AI-OCR で読み取ってデータ化するための欄IDで、e-Tax(電子申告)の XML 項目ID とは別体系
  • 番号は2層構造。F・H・R・K は様式をまたぐ共通欄の辞書(同じ欄なら別の様式でも同じコード。その様式で使わない番号は欠番として飛ぶ)、E・N・G・U はその様式の中だけで通用するタイプ別の連番(E=文字、N=元号付き年月日、G=数値、U=月日)
  • コードの読み方を解説した公式資料は見つからなかった。e-Tax の仕様公開(KSK2対応版)に「帳票フィールド仕様書」があるが、実物を開いて確認したところ中身は XML 項目ID(BJA00010 など)の体系で、紙のコードとは別物だった

以下、根拠と全コードの対応表。

背景 — KSK2 と AI-OCR 様式

国税庁は令和8年9月24日に基幹システム(KSK)を KSK2 へ更改する。これに伴い約2,300の様式が「AI-OCR 様式」に刷新され、書面で提出された申告書・届出書は AI-OCR で文字や数字を読み取ってデータ化される。様式には様式ID(例: NTA1SHZ120010011)と二次元コードが付き、収受日付印の押なつは行われなくなった(提出年月日はヘッダーに印字される方式に変わる)。

国税庁の記載ガイド「書面提出に当たって」も、内容は「文字の色は黒」「記載欄の枠内に楷書で」「様式を繰り返しコピーして使わない(かすれ・傾きが読み取りに影響する)」と、機械読み取りを前提にした注意で占められている。欄コードは、この読み取り処理で「どの欄の値か」を特定するための識別子と考えるのが自然で、実際にコードの英字は欄のデータの種類ときれいに対応している(後述)。

調べ方

消費税の届出・申請書7様式の現行PDF(国税庁「税務手続の案内 D1 消費税」の各手続ページから2026年9月3日に取得)を欄単位で読み、印字されているコードを全部書き出して突き合わせた。対象は次の7様式。

様式名様式ID
消費税課税事業者選択届出書NTA1SHZ120010011
消費税課税事業者選択不適用届出書NTA1SHZ125010030
消費税課税事業者選択(不適用)届出に係る特例承認申請書NTA1SHZ030010030
消費税の新設法人に該当する旨の届出書NTA1SHZ050010050
消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書NTA1SHZ150010020
消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書NTA1SHZ155010010
輸出物品販売場許可申請書(一般型用)NTA1SHZ280010060

以下の表は、この7様式に印字されていたコードの全数。この範囲からの帰納であって、公式の定義表ではない点に注意してほしい(別の税目・様式ではコードの割り当てが違う可能性がある)。

共通欄の辞書(F・H・R・K)— 様式をまたいで同じ欄=同じコード

まず F・H・R・K。これらはどの様式でも同じ欄に同じコードが付く。たとえば F05(郵便番号・納税地)と F06(納税地)は7様式すべてに同じコードで登場する。つまり様式横断の「欄の辞書」になっていて、その様式に無い欄の番号は欠番として飛ぶ。「F05 の次が F07」「F10 の次が F12」と見えるのはこのためだ。

F — 提出者(申請者・届出者)情報の欄

コード登場した様式
F01提出先(税務署長名)7様式すべて
F02法人番号輸出物品販売場、準ずる割合の適用承認
F03フリガナ(氏名又は名称)課税事業者選択以外の6様式
F04氏名又は名称課税事業者選択以外の6様式
F05郵便番号(納税地)7様式すべて
F06納税地7様式すべて
F07電話番号(納税地)7様式すべて
F08郵便番号(住所又は居所〔法人の場合は本店等の所在地〕)課税事業者選択
F09住所地等(住所又は居所)課税事業者選択
F10電話番号(住所又は居所)課税事業者選択
F11—(この7様式には登場せず)
F12通信日付印の年月日(税務署整理欄)課税事業者選択、選択不適用、準ずる割合の適用承認、同不適用
F13〜F20—(この7様式には登場せず)
F21フリガナ(納税地)輸出物品販売場

F21 だけ番号が大きく飛んでいるのが面白いところで、輸出物品販売場許可申請書ではレイアウト上 F05 と F06 のあいだに置かれているのに、番号は 21。並び順でなく辞書への登録順で振られている(「フリガナ(納税地)」が独立の欄として後から辞書に追加された)と読むのが自然だが、ここは推測になる。

H — 法人(本店・代表者)関係の欄

コード登場した様式
H01設立年月日新設法人
H02—(この7様式には登場せず)
H03郵便番号(本店又は主たる事務所の所在地)新設法人
H04所在地(本店又は主たる事務所)新設法人
H05電話番号(本店又は主たる事務所)新設法人
H06フリガナ(代表者氏名)課税事業者選択以外の6様式
H07代表者氏名課税事業者選択以外の6様式
H08住所(代表者住所)課税事業者選択、新設法人
H09代表者電話番号課税事業者選択、新設法人

H01(設立年月日)は日付なのに N ではなく H に入っている。英字が純粋なデータ型ではなく「欄のグループ」で振られていることが、ここから分かる。

R — 税理士の欄

コード登場した様式
R01税理士署名課税事業者選択、選択不適用、新設法人、準ずる割合の適用承認、同不適用
R02電話番号(税理士)同上の5様式

特例承認申請書と輸出物品販売場許可申請書にも税理士署名の欄自体はあるが、コードは印字されていない。

K — 本人確認(税務署整理欄)の欄

コード登場した様式
K21番号確認課税事業者選択、選択不適用、新設法人
K22身元確認課税事業者選択、選択不適用

K01〜K20 はこの7様式には登場しない。新設法人の届出書は K21 のみ(法人番号は書類での身元確認が要らないためだろう)。特例承認申請書には番号確認・身元確認の欄はあるがコードは印字されていない。

様式固有欄の連番(E・N・G・U)— その様式の中だけの番号

E・N・G・U は様式ごとにゼロから振り直される連番で、英字がデータの種類に対応する。

英字データの種類
E文字(フリガナ・事業内容・参考事項など)E01, E02, …
N元号付きの年月日N01, N02, …
G数値(金額・区分番号・1/2の選択入力)G01, G02, …
U月日のみ(事業年度の自・至)U01, U02

同じ E01 でも、課税事業者選択届出書では「フリガナ(名称)」、選択不適用届出書では「フリガナ(納税地)」と中身が違う。共通欄の F・H と違って様式内ローカルの番号なので、様式をまたいだ突き合わせには使えない。

以下、7様式それぞれの全数。

消費税課税事業者選択届出書(NTA1SHZ120010011)

この様式だけ提出者情報の構成が他と違い(名称(屋号)と氏名が左右に並ぶ)、名称・氏名まわりが F03/F04 ではなく E 系で振られている。

コード
E01フリガナ(名称(屋号))
E02名称(屋号)
E03フリガナ(氏名又は代表者氏名)
E04氏名又は代表者氏名
E05フリガナ(納税地)
E06フリガナ(住所又は居所)
E07フリガナ(代表者住所)
E08事業内容
E09参考事項
N01適用開始課税期間(自)
N02適用開始課税期間(至)
N03①の期間の基準期間(自)
N04①の期間の基準期間(至)
N05生年月日(個人)又は設立年月日(法人)
G01②の期間の総売上高
G02②の期間の課税売上高
G03資本金
G04届出区分
U01事業年度(自)
U02事業年度(至)

消費税課税事業者選択不適用届出書(NTA1SHZ125010030)

コード
E01フリガナ(納税地)
E02参考事項
N01①この届出の適用開始課税期間(自)
N02①この届出の適用開始課税期間(至)
N03②①の基準期間(自)
N04②①の基準期間(至)
N05課税事業者となった日
N06事業を廃止した場合の廃止した日
G01③②の課税売上高
G02提出要件の確認(「はい」の場合1を入力)

消費税課税事業者選択(不適用)届出に係る特例承認申請書(NTA1SHZ030010030)

記入欄への E・N・G・U のコード印字なし。コードが付いているのは提出者情報の共通欄(F01・F03〜F07・H06・H07)だけで、本体(届出書の種類・課税期間・課税売上高・提出できなかった事情)にはコードがない。

消費税の新設法人に該当する旨の届出書(NTA1SHZ050010050)

コード
E01フリガナ(納税地)
E02フリガナ(本店又は主たる事務所の所在地)
E03フリガナ(代表者住所)
E04事業内容
E05参考事項
N01消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日
N02国内における課税資産の譲渡等に係る事業の開始年月日(消費税法第12条の2第3項の外国法人の場合)
G01上記の日における資本金の額又は出資の金額
G02「消費税課税期間特例選択・変更届出書」の提出の有無(1=有、2=無)
U01事業年度(自)
U02事業年度(至)

設立年月日は共通欄の H01(前掲)。

消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書(NTA1SHZ150010020)

コード
E01フリガナ(納税地)
E02採用しようとする計算方法
E03その計算方法が合理的である理由
E04参考事項
N01適用開始課税期間(自)
N02適用開始課税期間(至)
N03上記の割合の算出期間(自)
N04上記の割合の算出期間(至)
G01課税資産の譲渡等の対価の額の合計額
G02資産の譲渡等の対価の額の合計額

消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書(NTA1SHZ155010010)

コード
E01フリガナ(納税地)
E02承認を受けている計算方法
E03参考事項
N01承認年月日
N02この届出の適用開始日

輸出物品販売場許可申請書(一般型用)(NTA1SHZ280010060)

E・N・G・U のコード印字なし。コードが付いているのは提出者情報(F01〜F07・F21・H06・H07)だけで、販売場の所在地・名称・手続委託型の許可の有無・参考事項・税理士署名にはコードがない。

公式の定義表は見つからなかった — 探した経路

「どこかに公表されていないか」を、次の順で探した。

  1. 国税庁「国税システムの更改について — KSK2 更改の案内ページ。AI-OCR の記載ガイド「書面提出に当たって」(PDF)と、様式変更の公表時期一覧(Excel。ファイル名がそのまま ai-ocr.xlsx)は取れたが、欄コードの説明はない
  2. e-Tax「仕様公開(KSK2対応版)」の「XML構造設計書及び帳票フィールド仕様書【消費税関係】」 — 名前からして本命に見えるので、CAB を実際にダウンロード・展開して課税事業者選択届出書(シート名 SHZ120)を開いた。中身は e-Tax の XML 項目ID(BJA00010 のような形式)と XML タグ名の対応表で、紙の様式に印字された F01 等とは別体系だった。ただし様式ID の中核部分(NTA1SHZ120010011SHZ120)はこの仕様書のシート名と一致しており、様式の名寄せには使える
  3. 国税庁法人課税課「国税庁システム移行に伴う周知事項等について」(令和8年6月) — 21ページの説明資料。AI-OCR 様式への移行・収受日付印の廃止・お問い合わせ番号(13桁)などの説明はあるが、欄コードには触れていない

というわけで、2026年9月4日時点では、紙の様式のコードそのものの公開辞書は見つけられなかった。AI-OCR・KSK2 の内部処理用の欄IDで、納税者向けには解説されていない、というのが現時点の見立てだ。

何の役に立つか

公式解説がなくても、このコードは欄の識別子としてそのまま使える。「基準期間の課税売上高はどこに書くのか」を「N03・N04 の行の右、G01 の欄」と言えるようになるので、記入例の説明や書類チェックの指示が具体的になる。共通欄(F・H)は様式をまたいで同じなので、「F06 は納税地」とだけ覚えれば別の届出書でも通用する。

なお、書面ではなく e-Tax で出す場合はこのコードを意識する必要はない。e-Tax 側は別体系(前述の XML 項目ID)で動いている。

出典

#税務#消費税#KSK2#e-Tax#AI-OCR#国税庁