日本語の推敲は、出力より差分の見せ方で使い勝手が決まる
直った文章を受け取っても、どこが直ったのかは分からない
推敲を機械にかけると、直った文章が丸ごと返ってくる。読めば、たしかに前より滑らかになっている。ただ、どこをどう触られたのかは分からない。結局は元の原稿と並べて頭から目で追うことになり、自分で読み直すのと手間が変わらない。
今日やったのは、その見比べる側だった。文章を直す側の道具は、同じ日の前半でそろえてある。残っていたのは、差分をどう出すかだけだった。
使えるかどうかから調べさせた
Antigravity CLI が手元で使えるのか、自分でも把握していなかった。そこでまず環境を調べさせた。返ってきたのは未導入という答えで、PATH に通っていた antigravity は IDE のランチャだった。エージェントは持っていない。名前が似ているせいで、入っているつもりになっていた。
導入を任せると、agy の v1.2.1 が入った。サインインだけは対話ログインなので、新しいターミナルを開いて自分でログインした。戻ってモデル一覧を出させ、疎通テストも通った。道具はここで揃った。導入の手順そのものは同じ日に別の記事として公開したので、ここでは繰り返さない。
この日の作業は、最後までこの分担で進んだ。手を動かすのは機械で、ログインの本人確認に応えるのと、出てきた物を見て注文を付けるのが自分の担当になる。
無料だと思っていたら Pro だった
自分のプランは無料枠だと思い込んでいた。念のため確認させたら、Google AI Pro だった。
ただし、使えるモデルの顔ぶれからプランを当てることはできなかった。料金ページを読ませたら、無料枠でも同じモデルに一通り触れると書いてある。無料と有料を分けているのは使えるモデルではなく、レート制限の緩さのほうだった。疎通テストが通ったことはプランの裏づけにならない。結局、プラン名はアカウントの表示を見に行くまで確定しなかった。
残量を見るページは、無かった
気になったのは残量のほうだった。Claude Code にも OpenAI にも、いま何パーセント使ったかを見る画面がある。5時間の枠と週の枠、どちらもそこで分かる。Gemini はそれがどこにあるのか分からなかった。
調べさせた結論は、そういう Web ページは存在しない、だった。ターミナルで agy を起動して /usage(別名 /quota)を打つ。これが唯一の手段になる。
ブラウザで見られないのは不便だが、無いと分かれば探すのをやめられる。「見つけられない」と「存在しない」は、消費する時間がまるで違う。
差分ビューアの1回目は、半角スペースで埋まっていた
日本語の推敲はスラッシュコマンドにして、別のリポジトリに /ja として置いた。原稿の1章分を通し、前後を見比べるために差分ビューアを作らせて Chrome で開いた。
開いてみると、差分の大半が半角スペースだった。
これは推敲の成果ではない。元の原稿に半角スペースが混ざっていて、それが落ちただけだ。悪かったのは元の文であって、消したこと自体に読む価値はない。しかも、スペースの増減に埋もれて、肝心の書き換えがどこにあるのか見えなくなっていた。
直った文のほうにも言いたいことはあった。読点が増えていて、息継ぎの多い文章になっている。ただ、それは中身の話で、いま困っているのは画面が読めないことだった。先に見せ方を直してもらうことにした。
消してほしいものと、残してほしいもの
指摘したのは2点だった。
- 半角スペースの差分は出さない。元の文にスペースが入っていたのが悪いだけで、推敲の判断ではない
- 句読点の増減と、文を短く割ったことは、差分として識別したい
2点目は1点目の裏返しになっている。ノイズは落としてほしい。ただし、残す側の変更には名前が付いていてほしい。読点が1つ減ったのか、一文が二文に割れたのか。種類が分かれば、飛ばして読む箇所と立ち止まる箇所を自分で選べる。
指示を整理すると、差分に出すかどうかは変更の大小ではなく、自分で採否を決める必要があるかどうかで分かれていた。
| 差分での扱い | 対象 | 理由 |
|---|---|---|
| 出さない | 半角スペースの増減 | 元の原稿の不備であって、推敲の判断ではない |
| 種類を付けて出す | 読点の増減、一文を二文に割った箇所 | 採るか捨てるかを自分で決めたい変更だから |
「読みにくい」という感想のままでは直しようがないので、こういう形に割って渡した。片方だけ伝えていたら、たぶんスペースと一緒に句読点の差分まで消えていた。消してほしいものを挙げるときは、残してほしいものも一緒に挙げないと届かない。
2回目で、変更に名前が付いた
直させたら、半角スペースの差分は消えた。代わりに、変更の種類がバッジで出るようになった。URL は変わっていないので、開いたままのタブを更新するだけで新しい画面になった。
これで、何を飛ばしてよいかが画面の側から示される。残った差分は、どれも自分が判断すべきものになった。
やり直しは1度で済んだ。1回目に出てきた画面が悪かったというより、こちらが何を見たいのかを言えていなかった。差分ビューアを頼んだ時点では、前後を並べてほしいとしか言っていない。並べるだけなら注文どおりの物が届いたわけで、読めなかったのは自分の言い方に穴があったからだ。
頼む前から半角スペースの件を予想できたかというと、たぶんできなかった。元の原稿にスペースが混ざっていることを、そもそも忘れていた。だから1回目は無駄ではなく、自分の原稿の状態を教えてくれた出力でもあった。
校正の道具は、出力ではなく差分で評価する
道具を選ぶとき、つい出力の質だけを見てしまう。どれだけ自然な日本語を返すか、余計なところまで触らないか。今日わかったのは、そこは入口でしかないということだった。
推敲は、機械の出力をそのまま採用する作業ではない。1箇所ずつ見て、採るか捨てるかを決める作業だ。だとすれば使い勝手を決めるのは出力そのものではなく、判断に必要なものだけを目の前に並べられるかどうかになる。
ノイズを落とすことと、意味のある変更に名前を付けることは、同じ作業の裏表だった。どちらか片方だけでは読めない。半角スペースを消しただけなら差分は静かになるが、残った変更の中身は依然として自分で読み解くことになる。バッジだけ付けてもスペースに埋もれる。
経緯をドキュメントに残させた
最後に、この日の経緯をドキュメントに残させた。目次付きで全5章、13,344字。明日そのまま続きに着手できる形になっている。
書かせたのは、道具の形が決まったのが今日の終わりだからだ。半角スペースを差分から外した判断も、変更に種類を付けた判断も、理由を書き残さなければ次に触るときに戻してしまう。ビューアのコードだけ残っていても、なぜそうしたかは読み取れない。
一日で手元に増えたものを並べると、こうなる。
agyの v1.2.1。日本語の推敲を回す本体/ja。推敲の注文をスラッシュコマンドに固定したもの- 差分ビューア。前後を変更の種類付きで見比べる HTML
- 経緯のドキュメント。なぜその形にしたかを残すもの
道具が3つで、残り1つは道具の理由だ。注文をやり直したのは3つ目で、そこで決めたのは機能ではなく、何を見せて何を見せないかだった。
明日も同じ原稿の続きを触る。バッジに出てくる変更の種類は、そのまま自分の書き癖の一覧になっているはずで、そこはまだ読んでいない。