ドメインはNamecheap、DNSはCloudflareに分けるべきか:Cloudflareの凍結リスクを一次情報で確かめる

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ドメインはNamecheap、DNSはCloudflareに分けるべきか

「Cloudflare は通報フォーム(アビューズフォーム)を悪用されてよく凍結されるから、ドメインは Cloudflare で取らないほうがいい。ドメインは Namecheap で取って、DNS だけ Cloudflare に向ける構成がいい」。こう勧められたので、真偽を一次情報で調べた。

結論

助言は半分正しい。

  • 凍結の事例は実在する。 Cloudflare の不正検知の誤判定でアカウントが止まり、Cloudflare で登録したドメインまで使えなくなった事例が、2022年から2026年まで繰り返し報告されている。虚偽とみられる通報で先にサイトを止められた事例もある
  • ただし「よく」かどうかは確かめられない。 Cloudflare は誤判定の件数を公表しておらず、頻度を示す公開データは見つからなかった
  • 分ける価値は「凍結されにくくなる」ことではない。 Cloudflare Registrar ではネームサーバーを変更できないので、アカウントが止まると DNS とドメインの両方を同時に失う。レジストラを別会社にしておけば、Cloudflare 側が止まってもネームサーバーを差し替えて逃げられる
  • Namecheap も通報でドメインを止める。 公式に「重大な場合は予告なしに停止することがある」と書いており、予告なしの停止事例もある。分けるのは「片方が止まっても、もう片方で立て直せる」ようにするためで、Namecheap が安全だからではない

重要なドメインなら、レジストラと DNS を分ける構成は勧められる。そのうえで、後半に挙げる備え(連絡先メールの置き場所、DNS レコードの控え)をしておく。

Cloudflare Registrar はネームサーバーを変えられない

まず構造の話から入る。Cloudflare Registrar は、ドメインを登録料の原価で売る。上乗せがないので安い。その代わりに条件がひとつある。

公式 FAQ は、Cloudflare Registrar のドメインはすべて Cloudflare のネームサーバーを使い、別のネームサーバーを使いたいなら他のレジストラへ移管するよう案内している(Cloudflare Registrar FAQ)。ネームサーバーとは、ドメイン名を IP アドレスに変換する問い合わせ先のことだ。つまり、Cloudflare でドメインを取ると、DNS も Cloudflare に固定される。

普段はこれで困らない。困るのは、Cloudflare のアカウントが止まったときだ。DNS の設定画面にも入れず、ネームサーバーを別の会社へ向け直すこともできない。残る手段は移管だが、その移管も止められることがある。同じ FAQ には、不正利用(abuse)や支払いの調査中にドメインを管理上ロックすることがあるとも書かれている。

実際に起きたこと

2022年:誤判定でアカウント停止、ドメインは削除待ちに

2022年5月31日、Hacker News に「Cloudflare が理由を説明せずにドメインを止めた」という投稿が出た(Ask HN: Has Cloudflare blocked your domain without explaining what's going on?)。投稿者は Namecheap から Cloudflare へドメインを移管し、個人のメールに使っていた。ある日すべてが動かなくなり、問い合わせると Trust & Safety(不正対策の部署)から次の返信が来たという。

Your account violated our terms of service specifically fraud. The suspension is permanent and we will not be making changes on our end.

(利用規約違反、具体的には詐欺。停止は恒久的で、こちらで変更することはない)

投稿が注目を集めると、同じ日のうちにドメインは復旧した。Cloudflare から届いたのは、復旧したという短い連絡だけだった。

同じ日に別の投稿が出て、より深刻な点を指摘した(Tell HN: Cloudflare prevents transfer-out of domains, sets to 'pendingdelete')。アカウントを止められたとき、ドメインは他社へ移管できず、「pendingDelete」(削除待ち)の状態にされる、という主張だ。削除されたドメインは第三者に取られうる。

これには Cloudflare の Trust & Safety 責任者が6月3日に返答している。不正な登録・移管と判断したドメインは削除することがあり、通常は異議を申し立てられるよう本人に通知する。移管は基本的にいつでもできるが、不正の兆候があるドメインは移管を止める。これはほぼすべてのレジストラがとる業界標準の対応だ、という説明だった。

ここで押さえておきたいのは、この説明が正しいとしても、「不正と判断する」部分が誤判定だった場合に助かる手段が示されていないことだ。先の投稿者は、誤判定だったにもかかわらず「恒久的な停止」と告げられ、Hacker News で目立つまで覆らなかった。

虚偽とみられる通報で、先にサイトを止められた

助言にある「通報フォームの悪用」に近い事例も、同じスレッドに書き込まれている。ある開発者の顧客のサイトが、セキュリティ企業経由で「マルウェア配布」として Cloudflare に通報された。1か月分のアクセスログを調べても配布の痕跡はなく、むしろ攻撃者に何度も探られた跡があった。正攻法で落とせなかった誰かが虚偽の通報をした、というのがその開発者の見立てだ。

同じ通報は、サーバーを貸していた DigitalOcean にも届いていた。DigitalOcean は説明を受けて「今回は対応しない」と返したが、Cloudflare は返信より先にサイトを止め、その後の返答も「処理済み」だけだったという。この開発者は Cloudflare を経由しない構成へすぐ切り替えたので、被害は小さく済んだ。

2025〜2026年も同じ訴えが続いている

Cloudflare の公式コミュニティには、2025年以降も同種の投稿が並ぶ。

  • 2026年8月:アカウントを作った直後、ドメインも何も置いていない状態で「詐欺」として自動停止された(Cloudflare Community)
  • 2026年5月:フランスの中学校が使う教育サイトが「フィッシングの疑い」とされ、無料アカウントごと停止された(Cloudflare Community)
  • 新しく買ったドメインを追加した直後にアカウントが止まった。異議を出すフォームは「有効なドメインがあること」が前提なので、停止中は送れず、堂々巡りになった(Cloudflare Community)
  • フィッシングの誤判定に異議を出したが、2か月以上「審査中」のまま返事がない(Cloudflare Community)

最後の2件が示すのは、止められた後の出口の狭さだ。停止中は異議申し立ての画面にすら届かないことがある。

なお、これらはいずれも当事者の投稿で、Cloudflare 側の言い分は載っていない。Cloudflare が誤判定の件数を公表していない以上、「よく凍結される」と言える根拠も、「めったにない」と言える根拠も手元にはない。言えるのは、誤判定は起きていて、起きたときに抜け出しにくい、というところまでだ。

2024年:レジストラが別だったから数時間で移れた

逆に、レジストラを分けていたことで助かった例もある。2024年5月、あるオンラインカジノの運用担当者が「Cloudflare にサイトを落とされた」と書いた(Cloudflare took down our website)。月額の Business プランから高額な Enterprise プランへの移行を迫られ、断ったところ、全ドメインと DNS レコード、キャッシュやレート制限の設定がまとめて消されたという。

この話は投稿者側の主張で、経緯には Cloudflare 側の言い分もあるはずなので、事件の評価はここではしない。注目したいのは復旧の仕方だ。このチームはメインのサイトを別の CDN(Fastly)へ移し、数時間で基本部分を動かした。ネームサーバーの変更が行き渡るまでには1〜48時間かかったと書いている。ネームサーバーを自分で書き換えられたということは、ドメインは Cloudflare 以外のレジストラにあったことになる。Cloudflare Registrar で登録していたら、この手は使えなかった。

Namecheap も通報でドメインを止める

では Namecheap なら安心かというと、そうではない。

Namecheap の公式ヘルプは、フィッシング、マルウェア、スパム、WHOIS(登録者情報)の不正確さなどをドメイン停止の理由に挙げている。多くは問い合わせへの返答がない場合に停止するが、重大な場合は予告なしに即時停止することがある、とも明記している(Why has my domain been suspended?)。

実例もある。

  • 2017年、月数百万人が訪れるフォーラムの運営者が、投稿された画像2枚を24時間以内に消さなければドメインを止める、と Namecheap から警告された(Hacker News)。メールに気づくのが遅れていればドメインごと止まっていた
  • 2025年12月31日、Namecheap はガザ戦争の映像約1万6千本を集めたサイトのドメインを、事前通知も異議申し立ての機会もなく止めた。ドメインは3日以内に解放され、他社へ移管された(Wikipedia: Namecheap)

背景として、Namecheap は悪用されやすいレジストラでもある。Wikipedia によれば、APWG(フィッシング対策の業界団体)の2025年第4四半期報告で、Namecheap はビジネスメール詐欺に最も悪用されたレジストラだった。悪用が多い会社ほど通報も多く、対応は機械的になりやすい。この傾向は Cloudflare と変わらない。

構成ごとに「何が起きたら何が止まるか」

ここまでを整理すると、2つの構成の違いは次の表になる。

起きたことCloudflare で登録+Cloudflare DNSNamecheap で登録+Cloudflare DNS
Cloudflare のアカウントが止まったDNS もドメインも操作できない。移管も止められうるNamecheap でネームサーバーを別の DNS へ向け直せる
Namecheap がドメインを止めた関係ないドメインごと止まる。DNS が無事でも名前が引けない
Cloudflare の Workers や Pages でサイトを動かしている止まるやはり止まる。移し先を用意していなければ同じ
費用原価なので最も安いNamecheap の価格(原価への上乗せあり)

この表が言っているのは、分ける構成は「どちらか一方が止まっても、もう一方で立て直せる」状態を作るということだ。止まる確率そのものは、2社に分けても下がらない。むしろ関わる会社が増えるぶん、止められる窓口は2つになる。

それでも分ける構成を勧めるのは、損失の大きさが違うからだ。Cloudflare 一社にまとめると、誤判定ひとつで「DNS」「ドメイン」「移管の手段」を同時に失う。分けておけば、最悪でも「ネームサーバーを差し替えるまでの数時間」で済む。2022年の Hacker News のスレッドでも「レジストラは他のサービスからできるだけ離しておけ。同じ会社のサービスを多く使うほど誤って目をつけられる面が増え、止められたときの被害も大きくなる」という意見が出ていた。

表の3行目にも注意したい。Workers や Pages のように Cloudflare の上でサイト自体を動かしている場合、DNS を逃がしても中身は止まったままだ。分ける構成が守ってくれるのは名前(ドメイン)と、その向き先を変える自由までになる。

分けたうえでやっておくこと

レジストラを分けるだけでは足りない。止められたときに実際に動けるよう、次を済ませておく。

  1. レジストラの連絡先メールを、そのドメイン以外のアドレスにする。 例えば example.com の登録メールを [email protected] にしていると、ドメインが止まった瞬間に警告や異議の連絡も受け取れなくなる。Namecheap の「24時間以内に対応しなければ停止」という警告を受け取れる場所に置く
  2. レジストラのアカウントに二要素認証とドメインロックをかける。 分ける構成ではレジストラが最後の砦になる。乗っ取られたら意味がない
  3. DNS レコードを定期的に書き出しておく。 Cloudflare のダッシュボードから DNS レコードをゾーンファイルとして書き出せる。控えがあれば、別の DNS サービスへ同じ設定を数分で入れ直せる
  4. 移し先の DNS を決めておく。 止まってから探すと時間がかかる。候補を1つ決め、できれば無料枠でアカウントだけ作っておく
  5. Cloudflare 固有の機能への依存を把握しておく。 Workers、Pages、R2 などを使っているなら、DNS を逃がしても戻らない部分がある。どこまでが止まるかを一覧にしておく

Cloudflare Registrar を使ってよい場面

Cloudflare Registrar が向かないわけではない。登録料も更新料も原価で、レジストラ側の上乗せがない。失っても困らない検証用のドメインや、Cloudflare 以外を使う予定がまったくないドメインなら、安さを取る判断は十分ありえる。

判断の目安は、「そのドメインが止まったら何が止まるか」だ。メールの受信、他のサービスのログイン、仕事のサイトがそのドメインにぶら下がっているなら、レジストラは分けておく。以前、お名前.comから Cloudflare へドメインを移管する手順を書いたが、移管を考えている人は、移す前にこの判断を一度挟んでほしい。

参考

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