AMDのサーバーCPU市場規模を記事にした日|画素で測った棒を自前のSVGチャートに置き換え、記事が3本に分かれるまで
AMDのサーバーCPU市場規模を記事にした日
朝、AMDの公式ブログと Advancing AI 2026 の配布資料を渡して、記事にしてくれと頼んだ。
→ AMD公式ブログ「Agentic AI Changes the CPU-GPU Equation」
5月の時点でリサ・スーが「2030年のサーバーCPU市場は1200億ドルを超える」と言っていた。 ところが手元に保存してあったスライドでは、同じ市場が2200億ドルになっている。 数字が倍近く動くのに、そんなに時間は経っていないはずだった。 だからまず日付を調べさせた。
5月6日のQ1決算コールと、7月23日の Advancing AI 2026 のキーノート。 差は78日、2.6か月だった。
土台は動いていなかった。 2025年の約260億ドルという出発点は3回とも同じで、書き換わっていたのは成長率だけだった。 18%、35%、50%超と上がっている。 数字を大きくしたのではなく、傾きを立てていた。
書き上げたのは次の記事である。
積み上がったのはどの層か
初稿を読んで気になったのは、増えた1000億ドルの中身だった。 エージェンティックの部分が積み上がった分ということなのか、上振れ要素は結局どれなのかと聞いた。
答えを出すために、スライドの棒を画素で実測させて層別に割り戻させた。 2030年の2200億ドルのうち、約1470億ドル(67%)がエージェント専用CPUサーバーだった。 従来の汎用サーバー市場のほうは、5年で1.35倍にしかならない。 5月の時点でリサ・スーが「成長の最大部分はAgentic」と述べていたことも裏取りできた。
ここで初めて、この改定が何の話なのか腑に落ちた。 汎用サーバーの買い替えサイクルの話ではなく、エージェントを走らせるためのCPUサーバーという新しい層の話だった。
CPUとGPUが1対1に近づいたら、メモリはどうなるか
次に確認したのは波及のほうだ。 GPUとCPUの比率が1対1に近づいていくとしたら、CPUには必ずメモリがつくのだから、DRAMの出荷も増えるはずである。 この理解で合っているか、と聞いた。
合っていた。 しかも二重に効くという答えが返ってきた。 ソケット数が増えるだけでなく、1ソケットあたりのDIMM本数も増える世代なので、掛け算になる。
この確認の途中で、記事の表の誤りが見つかった。 LPDDRをエージェント用の層に紐づけていたが、実際はホストノード側についていた。 先に表を直させてから、メモリの節を書き足させた。
そのあと、本文の一節でつまずいた。 「TAMの半分なら1100億ドル」と書いてあり、その近くに2026年Q1のデータセンター部門売上58億ドル(前年同期比57%増)が並んでいる。 この58億ドルを単純に4倍して成長率を掛けていけば、1100億ドルに届くのだろうか。 頭の中で4倍して成長率も掛けてみたが、だいぶ足りない気がした。
分母がずれていた。 1100億ドルはサーバーCPUだけの目標で、58億ドルのほうはGPU込みの部門売上である。 AMDが7月に出した数字で揃え直すと、2025年の約90億ドルから2030年の1100億ドルまで、年65%成長を5年続ける必要がある。 足りない気がしたのは正しかった。
二強だと思っていた
そのまま、もうひとつ確認した。 この市場に入ってこられるのはAMDとNVIDIAだけで、二強が2200億ドルを分け合う。 そういう絵を思い浮かべていたので、その理解で合っているかと聞いた。
違った。 少なくとも4勢力あり、しかも現時点で最大シェアを持っているのはIntelだった。 AMD自身が配布資料の中で4者と比べている。
自分の前提が崩れる確認は、記事にとっていちばん実入りが大きい。 二強で書き進めていたら、全体が違う話になっていた。
実測した値をどこに置くか
2時間半ほど経ってから、localhost で記事を読み返した。 そこで引っかかったのがチャートだった。 棒を画素単位で実測してまで数字を出しているのに、記事に載っているのはスライドのスクリーンショットのままだった。 測った結果は本文の中に文章として埋もれている。
実測しているのだから、SVGの積み上げ棒で作ってほしいと頼んだ。
再実測させたら、表の合計が合っていない箇所が出てきた。 20+13+20は53なのに、52と書いてある。 実測値に揃え直させた。 最初のSVGは縦808pxあって、記事に埋めると縦に伸びすぎた。 568pxまで詰めさせ、ラベルの重なりが出ていないことを確認した。
途中でdevサーバーが応答しなくなった。 SVGはfile://で直接開いて確認し、そのあとポート3000のプロセスだけ落として立て直した。 復旧してから記事内の描画も見て、意図どおりに出ていた。
スクリーンショットのままでも記事は成立していたと思う。 ただ、画素で測った値をどこにも見せないまま文章だけで語ると、測った意味が半分になる。
TAMを出す会社と、出さない会社
チャートが片付いたところで、別のことが気になり始めた。 CEOがTAMを公表するのはよくあることらしい。 少なくともマイクロンのHBMとAMDのCPUでは出ている。 一方でNVIDIAは出していない気がする。 SK hynixやサムスンはどうなのか。
また前提が違った。 NVIDIAはむしろ最も派手に出している側で、年3〜4兆ドルという数字を掲げている。 SK hynixは率だけを出し、サムスンは金額をいっさい出さない。
出す会社と出さない会社があり、しかも同じ「TAM」という一語で数えている対象が揃っていない。 この対比が面白かったので、3本目の記事にした。
同じ日に、マイクロンの件も1本に分けた。 HBMが1000億ドルに届く年を2030年から2028年へ2年前倒ししていた件である。 2024年12月と2025年12月の決算資料を突き合わせさせたら、動いていたのは到達年だけではなかった。 2025年の土台と成長率の両方が書き換わっていた。
メモリ側では訂正も1件出た。 長期契約について「数量は守らない」と書かせていたが、これは誤りだった。 テイク・オア・ペイで、数量まで縛られている。 原文にあたって直させた。
この日に残ったもの
前提を口に出して確認したのは2回で、2回とも前提のほうが間違っていた。 二強だと思っていたのも、NVIDIAはTAMを出さないと思っていたのも、どちらも自分の思い込みだった。 「合っていますよね」と聞く形は、合っていないときに崩してもらえるので効率がいい。
測ったものは見せる。 画素実測は途中経過であって、成果物ではなかった。 自前のSVGにした時点で、表の合計が1ずれていたことにも気づけた。 可視化がそのまま検算になっている。
そして、1本に押し込まなかった。 TAMの改定、TAMを出す会社の対比、HBMの前倒し。 どれも別の問いだったので3本に分け、相互にリンクを張った。