台湾・韓国の2026年5月輸出統計を読む

/memory-makers の輸出統計ページ(台湾の輸出 / 韓国の半導体輸出)に2026年5月分が揃った。

輸出統計は通関ベースの確定値、つまり「実際にモノが国境を越えた金額」だ。企業の月次売上と違って会計方針の影響を受けず、半導体サプライチェーンの場合は AI サーバーやメモリが**実際にどれだけ出荷されたか(×いくらで売れたか)**を国単位で映す。この記事では5月分の着地と、意外と知られていない「この統計がいつ・どの粒度で出るのか」を整理する。

結論: 韓国半導体は歴代最高、台湾は歴代2位。6月も旬次速報で勢いが確認できる

  • **韓国の半導体輸出は5月に 37.16B(YoY +169.4%)で月間歴代最高**。韓国の総輸出(87.75B、+53.2%、これも月間過去最高)に占める半導体の比率は初めて4割を超えた。HBM・サーバー DRAM の価格高騰と数量増が重なった結果で、この系列は実質 Samsung + SK Hynix の体温計になっている。
  • **台湾の総輸出は5月に 78.48B(YoY +51.7%)で歴代2位**(最高は2026年3月の80.18B)。31ヶ月連続の前年比プラスで、内訳は情報通信・視聴覚製品 34.84B(+75.2%)、電子部品 26.84B(+56.0%、うち半導体 $25.5B)。AI サーバーと半導体が伸びの主因。
  • 韓国は月次を待たずに「10日刻み」で先が読める。関税庁が毎月11日頃・21日頃に旬次速報を出しており、今日(6月11日)発表の6月1〜10日分は総輸出 28.64B(+85.9%)・半導体 11.07B(+205.8%)でいずれも旬次として史上最大。ただし操業日数の差を調整した日平均では +46.1% で、「6月が5月を上回るペース」とまでは言えない(後述)。

台湾: 月次総輸出は歴代2位の $78.48B

台湾の月次総輸出(2024年1月〜2026年5月)

この図のポイントは、2025年から傾きが変わり、2026年に入って月次60B台後半〜80Bが新しい巡航速度になっていること。2024年の台湾は月$40B前後で推移していたので、2年で月次輸出がほぼ倍になった。

5月の 78.48B は3月(80.18B)に次ぐ歴代2位。1〜2月は旧正月のカレンダー効果で凹む(2026年は2月が春節)ため単月で見ると凸凹があるが、合算すると2026年1+2月も +44.4% でトレンドは崩れていない。財政部は2026年の第2〜第4四半期にかけて四半期 $200B 超の輸出を維持すると見ている。→ Focus Taiwan(5月分発表)

韓国: 半導体輸出 $37.16B は歴代最高、総輸出の4割超え

韓国の半導体月次輸出(2024年1月〜2026年5月)

韓国のチャートは台湾よりさらに急で、2025年12月($20.77B)から5ヶ月で1.8倍になった。2026年は前年比 +100〜170% という異常な伸びが続いている。

注意したいのは、この伸びの大きな部分が価格効果だということ。輸出金額 = 数量 × 価格で、いまは HBM・サーバー DRAM の価格高騰局面なので、金額の +169% をそのまま「出荷数量が2.7倍」と読むと誤る。数量側の裏は、価格効果が乗らない後工程の受託売上で取れる。同日に書いた 台湾OSAT 4社の月次売上の読み方 で見たとおり、メモリ後工程特化の Powertech は +30%、テスト専業2社は +33〜37% で、数量・工数ベースの伸びは「3割増」のオーダー。残りの差分が価格、というのが大づかみの分解になる。

韓国の半導体輸出は Samsung + SK Hynix の合算がほぼすべてなので、月次開示のない SK Hynix の業績を推定する代理指標としても使える(SK Hynix の3層シグナル)。

この統計はいつ出るのか — 韓国は10日刻み、台湾は月次のみ

輸出統計は「デイリーで出るのか?」と聞かれることがあるが、日次で定期公表している国はない。報道で見かける「日平均輸出額」は、速報の総額を操業日数で割った計算値だ。実際の発表サイクルはこうなっている。

国・発表元粒度発表タイミング
韓国・関税庁(KCS)旬次(1〜10日分)毎月11日頃(休日なら翌営業日)
韓国・関税庁(KCS)旬次(1〜20日分)毎月21日頃
韓国・産業通商部(MOTIE)月次(速報)翌月1日
韓国・関税庁(KCS)月次(確定値)翌月中旬
台湾・財政部(MOF)月次のみ翌月7〜9日頃
日本・財務省(参考)上中旬分速報(1〜20日)当月末頃

韓国の旬次速報が特殊で、1〜10日分の段階で半導体・自動車などの品目別、中国・米国などの国別内訳まで出る。月2回・品目別ありというのは世界的にも高頻度・高解像度で、だから韓国の旬次速報は半導体サイクルの最速の定点として広く参照されている。台湾には旬次・日次の速報はなく(月中に出るのは経済部の「輸出受注」という別統計のみ)、月次一本で読む。→ 韓国関税庁 報道資料

6月1〜10日の旬次速報: 半導体 +205.8%。ただし「5月超え」ではない

今日(6月11日)発表された韓国の6月1〜10日分はこうだった。→ The Korea Times

項目6月1〜10日前年同期比
総輸出$28.64B+85.9%(旬次として史上最大)
うち半導体$11.07B+205.8%(総輸出の38.7%)
日平均輸出(操業日数調整後)$4.09B/日+46.1%

ここで1つ注意がある。「6月の輸出がすでに5月を超えるペース」という受け止め方があり得るが、数字の上では成立していない

  • 今年の6月1〜10日は操業日数が7.0日と、前年同期(5.5日)より1.5日多い。総額の +85.9% のうちかなりの部分は日数差で、日数をならした日平均では +46.1%
  • 半導体を単純に月換算すると 11.07B ÷ 10日 × 30日 ≒ 33B で、5月実績($37.16B)をむしろ下回るペース。月初の旬は月末の駆け込み船積みがない分小さく出るのが通例なので「6月が失速」という意味でもないが、少なくとも「5月超え」が確定したわけではない
  • 史上最大というのはあくまで「過去の1〜10日区間との比較」で、従来の記録は2026年4月1〜10日の$25.2B

旬次速報は便利な最速シグナルだが、比較対象は常に「過去の同じ旬」に揃える。これがこの統計の正しい使い方になる。

まとめ

2026年5月の着地は、韓国半導体輸出 37.16B(+169.4%)が月間歴代最高、台湾総輸出 78.48B(+51.7%)が歴代2位。AI サーバーとメモリの出荷が金額ベースで記録を塗り替え続けており、6月も旬次速報(半導体 +205.8%)で勢いの継続が確認できた。ただし輸出金額は価格×数量なので、メモリ価格高騰局面のいまは OSAT の受託売上(数量・工数ベース)と突き合わせて、価格と数量を分けて読む。

定点観測のリズムとしては、**毎月1日に韓国月次(MOTIE)→ 7〜9日に台湾月次(財政部)→ 11日・21日に韓国旬次(関税庁)**が固定スケジュールで回ってくる。チャートの続きは 台湾の輸出韓国の半導体輸出 の各ページで追える。


データの出所: 台湾は財政部の月次プレスリリース(通関ベース・速報値、2026年5月分は6月9日発表)。韓国の月次は MOTIE「輸出入動向」(2026年5月分は6月1日発表)、旬次は関税庁の輸出入現況・暫定値(6月1〜10日分は6月11日発表)。チャートのデータは exportStats.ts(SSOT)から生成し、前年値×(1+YoY)=当年値の算術整合を全ペアでクロスチェック済み。