VRAM 8GBでMiniMax H3は動くか:10秒の動画にかかる時間と、VRAMを増設できない理由
VRAM 8GBでMiniMax H3は動くか:10秒の動画にかかる時間と、VRAMを増設できない理由
MiniMax H3(Hailuo 3.0)の重みが2026年8月3日に公開された。33Bのオムニモーダルモデルで、4〜15秒のクリップを最大2K・24fpsで、音声つきで生成する。同じ日にComfyUIがネイティブ対応し、ノード4種と公式ワークフロー6種が入った。
手元にあるのはRTX 3070(VRAM 8GB)を積んだWindows機で、公式の最低ラインである12GBを下回っている。動くのか、動くとして10秒の動画に何分かかるのか、そしてRAMのように後からVRAMを足せないのはなぜか。公開されているベンチマークを突き合わせて見積もった。
結論
- VRAM 8GBでも動く。8GB機でOOM(メモリ不足クラッシュ)が起きなかった検証報告が複数ある。壁はクラッシュではなく時間として現れる
- 10秒のクリップは、608×352級の低解像度で15〜25分、832×480級で20〜30分、1280×736のHDなら1〜2時間の見当になる
- VRAMを後から足せないのは、GDDR6が448GB/sという帯域を出すためにGPUの基板へ直付けされているから。ソケットを挟むと速度が保てない
- 8GBから溢れた分はPCIe経由でRAMへ逃がすが、その道は約32GB/sしかない。オフロードが遅いのはこの14分の1の細さが理由で、RAMを増やしても道は太くならない
- MacBook Air M5の16GBはこの用途では上位互換にならない。統合メモリの利点が効くのは32GB以上からで、16GBは「8GB VRAM + 32GB RAM」の合計40GBを下回る
手元の環境
まず実測した構成を並べる。
| 項目 | 実測値 |
|---|---|
| GPU | NVIDIA GeForce RTX 3070(VRAM 8,192MiB) |
| CPU | AMD Ryzen 7 5800X(8コア16スレッド) |
| システムRAM | 31.9GB |
| ディスク空き | C: 111.1GB / F: 833.5GB |
MiniMax H3が要求するVRAMは公式で12GB以上、推奨16GB以上。システムRAMは64GB以上が推奨される。VRAMもRAMも一段ずつ足りない。
動くには動く。ただし「実験的」の区分に入る
VRAM別の区分は次のように整理されている。
| VRAM | 区分 | 条件 |
|---|---|---|
| 8〜12GB | 実験的 | 量子化・低解像度・強めのCPUオフロードが前提。生成時間が大きく伸びる |
| 16GB | 実行可能 | INT8やGGUFの構成が現実的。システムRAM 64GB以上が望ましい |
| 24GB | 実用的 | 高解像度・長尺に対応 |
| 32GB以上 | 推奨 | 大きな出力にも余裕がある |
fp16のままだと重みは42.5GBあるので、8GBには当然載らない。量子化GGUFを使うことになり、枝刈り済みのものは8.9GB〜21.6GBまで縮む。16GBならQ4_K_M、24GBならQ5_K_Mが目安とされている。
実際に8GB機で回した報告はいくつもある。RTX 3050(8GB)とシステムRAM 32GBという、今回の構成よりさらに厳しい環境でも、608×352の2秒が約4分、1280×736の5秒が約51分で完走し、OOMは一度も起きなかったという。RTX 3070の8GBでは、0.4MP・5秒のImage-to-Videoが9〜10分という報告がある。
ディスクは40GB前後、Ref2Vのモデルまで入れると60GB前後を使う。Comfy Desktopの新しい版はモデル取得を自動化していて、53GBをダウンロードする。F:ドライブに833GB空いているので、ここは問題にならない。
導入で引っかかるとすればComfyUIの版で、古いPortable版はアップデートが成功したように見えて実際には壊れる挙動が報告されている。Comfy Desktopの新しい版を入れるほうが早い。
10秒の動画に何分かかるか
8GB機の実測値から外挿すると、次のようになる。自分の機体で測った値ではないので幅を持たせている。
| 解像度 | 報告されている実測 | 10秒に換算すると |
|---|---|---|
| 608×352級 | RTX 3050で2秒が約4分 | 15〜25分 |
| 832×480級(0.4MP) | RTX 3070で5秒が9〜10分 | 20〜30分 |
| 1280×736(HD) | RTX 3050で5秒が約51分 | 1〜2時間 |
RTX 3070はRTX 3050より1.5〜2倍ほど速いので、HDは5秒で30分前後、10秒で1時間超という読みになる。
秒数よりも解像度のほうが計算量に効く。同じ検証で、動画の長さより解像度のほうが所要時間への影響が大きいと明記されている。まず解像度を落とすのが順序として正しい。
10秒という長さ自体は仕様の範囲内(4〜15秒)だが、フレーム数が倍になればVRAMから溢れる量も増えるので、時間は単純な2倍ではなく、それ以上に伸びる可能性がある。
参考までに、RTX 4090では5秒の生成が最適化前261秒、最適化後70秒という実測がある。24GBあれば分単位で終わる作業が、8GBでは時間単位になる。
なぜVRAMだけ増設できないのか
システムRAMはDIMMスロットに挿して増やせるのに、VRAMは増やせない。GPUの基板に半田付けされていて、挿す場所がそもそも無いからだ。
理由は速度にある。
RTX 3070のVRAMは448GB/sの帯域を持つ。この速度を出すには配線を極限まで短くする必要があり、抜き差しできるソケットを挟んだ時点で信号が保てない。速さと引き換えに拡張性を捨てている。
容量は「バス幅 ÷ 32bit = チップの数 × 1チップの容量」で決まる。RTX 3070は256bitなので、256÷32 = 8個のチップ × 1GB = 8GB。設計の時点で確定する数字であって、後から挿す場所は基板上に存在しない。
そしてオフロードが遅い理由もこの図に出ている。8GBに載りきらない分はシステムRAMへ逃がすが、その往復はPCIe 4.0 x16の約32GB/sを通る。VRAM内の448GB/sに対して14分の1の細さで、推論の各ステップでここを往復することになる。
RAMを64GBに増やしても、この道の細さは変わらない。SSDへのページングが消えるぶんは速くなるが、桁は動かない。10秒のHDが1時間から40分になる程度で、待てる時間には入ってこない。
MacBook Air M5の16GBは上位互換にならない
統合メモリなら「メモリ=VRAM」になるので、Apple Siliconはこの壁と無縁に見える。実際そのとおりだが、16GBでは足りない。
購入を検討している15インチMacBook Air M5(10コアCPU / 10コアGPU、16GB、512GB)と、手元のWindows機を並べる。
| 項目 | Windows機(2020年構成) | MacBook Air M5 16GB |
|---|---|---|
| CPU(Geekbench 6 マルチ) | 11,042 | 約17,100 |
| CPU(PassMark) | 27,664 | 26,832 |
| GPU向けメモリ帯域 | 448GB/s(VRAM 8GB) | 153GB/s(統合16GB) |
| メモリ総量 | 8GB + 32GB = 40GB | 16GB |
| ストレージ空き | 833GB | 512GB(新品時) |
| 冷却 | ファンあり | ファンレス |
CPUはベンチマークによって勝敗が逆転する。Geekbench 6ではM5が5割ほど速く、PassMarkでは5800Xがわずかに上に出る。前者は短時間の応答性を、後者は16スレッドぶんの総量を強く見るためで、どちらが正しいという話ではない。日常の操作はM5が快適で、全コアを長く回す処理では8コア16スレッドのデスクトップが粘る、と読むのが実態に近い。
ファンレスであることも効く。M5 MacBook Airは長時間の負荷でフレームレートが最大40%落ち、12〜15分を超えると性能が下がるという計測がある。実機レビューでは、向かない用途として動画生成と動画処理が名指しされている。
そしてメモリが決定的に足りない。統合メモリの利点が効くのは32GB以上からで、16GBでは40GB積んだWindows機の合計を下回る。モデルのファイルだけで40〜60GB使う相手に、512GBのSSDも余裕があるとは言えない。
MacBook Air M5は日常の開発機として速く、静かで、バッテリーが持つ。ただしMiniMax H3を回す道具としては、手元のWindows機より下になる。
使い分け
| やりたいこと | 妥当な手段 |
|---|---|
| ローカルで一度動かして感触をつかむ | 手元のRTX 3070で足りる。608×352の4〜5秒なら数分 |
| 10秒のクリップを何本も回す | クラウドGPU。10秒あたり約9円という検証報告がある |
| ローカルで実用にする | VRAM 16GB以上のGPUに買い替える。RAM増設だけでは届かない |
ローカルで回す前提を捨てるなら、RAMの増設も要らない。
なお、MiniMax H3のライセンスはコミュニティライセンスで、米国・EU・英国・韓国をローカル配備の許諾範囲から除外している。日本は除外対象に入っていないので使えるが、OSI承認のライセンスではなく、商用利用には帰属表示と収益に関する条件が付く。
出典
- MiniMax H3 — Open-Weights General-Purpose Multimodal Video Model(fal)
- MiniMax H3 Open Source Weights: 42.5 GB, and 4 Excluded Countries(Atlas Cloud)
- MiniMax H3 Open Weights: License Excludes US/EU(explainx.ai)
- MiniMax H3 Open Weights Land With Native ComfyUI Support(ComfyUI Wiki)
- MiniMax H3 Requirements: VRAM, RAM, GPU & Storage
- MiniMax H3 GGUF: Quant Levels, Sizes & Low-VRAM Setup
- 【検証】話題のMiniMax H3、VRAM 8GBの普通のPCで動くのか(ゆーき)
- 【ComfyUI】音声つきAI動画がローカルで作れる「MiniMax-H3」導入完全ガイド(リダ)
- MiniMax H3 Reddit Review: VRAM, Speed, Quality & User Feedback(virse)
- ローカルGPUが非力でも MiniMax H3 は使える(JUNI)
- MacBook Air (M5, 2026) ベンチマークレポート(Mac OTAKARA)
- M5 MacBook Air は AI とゲーム両方で何ができるか(AIハードウェア図鑑)
- Apple M5 (10 Cores) vs Ryzen 7 5800X(technical.city)
- AMD Ryzen 7 5800X Benchmarks(Geekbench Browser)