メモリETF「639A」が東証に上場する。米国のDRAMとの違いは信託報酬ではなくNISAにある
メモリETF「639A」が東証に上場する。米国のDRAMとの違いは信託報酬ではなくNISAにある
この記事の結論
- 639Aは、マイクロン・SKハイニックス・サムスンなど世界のメモリ大手20社をまとめて買える国内上場ETFである。2026年9月30日に東証へ上場し、最低投資額は2,000円程度(10口単位)になる見込み。
- 信託報酬は年0.605%で、米国上場のDRAM(年0.65%)との差は年0.045%にすぎない。100万円持っても差は年450円である。
- 大きく違うのは税金と手間である。639AはNISA成長投資枠で買えて、円のまま東証で売買できる。DRAMはNISA対象外と案内されており、利益に20.315%の税金がかかる。
- ただし639Aはつみたて投資枠では買えない。成長投資枠を使い切っているなら、今年はNISAで買えず、2027年1月に新しい枠が付くのを待つことになる。
商品の概要
運用は野村アセットマネジメントで、Solactive社の指数に連動するパッシブ運用のETFである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | NEXT FUNDS Solactiveグローバル・メモリ指数連動型上場投信(愛称: NF・グローバルメモリETF) |
| 証券コード | 639A |
| 上場日 | 2026年9月30日(東京証券取引所) |
| 連動指数 | Solactiveグローバル・メモリ指数(税引前配当込み) |
| 信託報酬 | 年0.605%(税抜0.55%)以内 |
| 売買単位 | 10口(上場当初の最低投資額は2,000円程度の見込み) |
| 決算・分配 | 年1回(9月10日) |
| 組入銘柄数 | 20銘柄 |
| NISA | 成長投資枠の対象 |
出典: 野村アセットマネジメント ニュースリリース(2026年8月28日)、NEXT FUNDS 639A 商品ページ
連動指数と構成銘柄
指数は、韓国・台湾を含む先進国市場に上場するメモリ関連企業から、時価総額の上位20社を選ぶ。対象は、メモリデバイスやストレージシステムなどを主な事業とし、そこから収益の大部分を得ている企業である。1銘柄の上限は25%で、見直しは年2回(5月・11月)行われる。
上位10銘柄の比率は次のとおり。
| 順位 | 銘柄 | 比率 |
|---|---|---|
| 1 | マイクロン・テクノロジー(MU) | 28.8% |
| 2 | SKハイニックス | 21.4% |
| 3 | サムスン電子 | 17.5% |
| 4 | サンディスク(SNDK) | 6.9% |
| 5 | マーベル・テクノロジー(MRVL) | 5.8% |
| 6 | ウエスタンデジタル(WDC) | 4.8% |
| 7 | シーゲイト | 4.7% |
| 8 | キオクシア | 3.6% |
| 9 | アステラ・ラブズ(ALAB) | 1.4% |
| 10 | クレド(CRDO) | 1.0% |
この比率は、X(旧Twitter)で共有された投稿の数値で、基準日は書かれていない。運用会社の資料で確認できたのは「上位3社で約7割(2026年6月末時点)」までである。
中身は3つのグループに分かれる。
- DRAM・HBMの3大メーカー: マイクロン・SKハイニックス・サムスンで約68%を占める。
- NAND・HDDのストレージ企業: サンディスク・ウエスタンデジタル・シーゲイト・キオクシアで約20%。
- データ伝送の半導体企業: マーベル・アステラ・ラブズ・クレドで約8%。
マイクロンの28.8%は1銘柄の上限25%を超えている。5月の見直しのあと、株価が上がって比率が膨らんだものとみられる。11月の見直しで、25%まで引き下げられる可能性がある。
マーベル・アステラ・ラブズ・クレドは、メモリが主な事業とは言いにくい。どの基準で指数に入ったのかは、Solactiveの指数ガイドラインでまだ確かめていない。
米国上場のDRAMとの比較
いちばん大きな違いは運用方式とNISAの扱いである。DRAMはアクティブ運用で、スワップ(デリバティブ)も使う。639Aは指数に連動し、構成銘柄の株を実際に保有する。
| 項目 | 639A(東証) | DRAM(米国) |
|---|---|---|
| 正式名称 | NEXT FUNDS Solactiveグローバル・メモリ指数連動型上場投信 | Roundhill Memory ETF |
| 上場 | 2026年9月30日・東証 | 2026年4月2日・Cboe BZX |
| 運用方式 | 指数連動(パッシブ) | アクティブ |
| 経費率 | 年0.605% | 年0.65% |
| 銘柄数 | 20 | 19(2026年9月時点) |
| 対象の範囲 | メモリ+ストレージ+データ伝送半導体 | 売上・利益の50%以上がメモリの企業 |
| スワップ | 構成銘柄の株を保有(NISA対象なので、ヘッジ目的以外のデリバティブは使わない前提) | 使う(中国CXMTなどをスワップ経由で保有) |
| 売買の通貨 | 円 | 米ドル(円からの両替が必要) |
| NISA成長投資枠 | 対象 | 対象外とされる(課税口座で売買) |
| SBI証券 | 上場日から国内ETFとして売買できる | 2026年6月3日から取扱 |
- 信託報酬だけならほぼ同じ。 差は年0.045%で、どちらを選ぶかの決め手にはならない。
- DRAMは現金の比率が高い。 2026年9月25日時点で、MMFを15.3%、米国短期国債を11.3%、米ドルを4.9%持っている。株の値動きをスワップで取り、担保として現金を置く構造である。
- 集中度は似ている。 上位3社の比率は、639Aが約68%、DRAMが約72%(解説記事の数値)。DRAMはサムスンの比率が最も大きく、639Aはマイクロンが最も大きい。
- DRAMがNISA対象外になる理由は推定である。 成長投資枠は「デリバティブ取引を用いた一定の投資信託等」を対象から外しており、スワップの使用がこれに当たるとみられる。米国上場のETFでもNISA対象のものは多いので、「米国上場だから対象外」という説明は正確ではない。
出典: Roundhill Memory ETF(DRAM)公式ページ、etfdb DRAM、新メモリETF「639A」とDRAM ETFの違いを全解説(note)、SBI証券によるDRAM取扱開始の告知(X)
NISA成長投資枠との関係
639Aのいちばんの利点は、成長投資枠でメモリ株を非課税で持てることである。
| 枠 | 年間の上限 | 639Aを買えるか |
|---|---|---|
| 成長投資枠 | 240万円 | 買える |
| つみたて投資枠 | 120万円 | 買えない |
- 生涯の上限は1,800万円。 そのうち成長投資枠で使えるのは1,200万円までで、2つの枠は併用できる。
- つみたて投資枠で買えるETFは限られる。 金融庁の基準を満たす一部の広い市場の指数に連動するETFだけが対象で、メモリのようなテーマ型ETFは入らない。
- 非課税の効果は大きい。 120万円が180万円に増えたとすると、課税口座なら利益60万円に約12.2万円(20.315%)の税金がかかる。成長投資枠ならこれがかからない。
- 損失は救えない。 NISA内の損失は、課税口座の利益と損益通算できない。値動きの大きいテーマ型ETFでは、この点も効いてくる。
- 分配金を非課税で受け取るには、受取方法を「株式数比例配分方式」にしておく。 ただしメモリ株は配当が少なく、分配は年1回なので、影響は小さい。
- SBI証券での買い方は国内株と同じ。 銘柄コード639Aを指定し、口座区分で「NISA(成長投資枠)」を選ぶ。
成長投資枠を使い切っているとき
私の場合、今年の成長投資枠はすでに個別株で使い切っている。この場合、今年はNISAで639Aを買えない。
- 年間の枠は、2027年1月に240万円ぶん新しく付く。
- NISA内の個別株を売っても、今年の枠は戻らない。売った分は翌年以降に、生涯の枠として戻る。
- いますぐ持ちたいなら課税口座で買うことになる。課税口座なら639AとDRAMの税率は同じなので、選ぶ基準は運用方式(パッシブか、スワップを使うアクティブか)と、円で売買できるかどうかになる。
出典: 金融庁「NISAを知る」、NEXT FUNDS「NISAとETF」
リスクと注意点
20銘柄に分散しているように見えるが、中身はメモリ市況ひとつに賭ける商品である。
- 集中リスク: 上位3社で約68%を占める。メモリ価格が下がる局面では、20銘柄がそろって下がりやすい。
- 為替: 円で売買しても、基準価額はドルとウォンの動きで変わる。円高に振れると、株価が同じでも基準価額は下がる。
- 取引時間のずれ: 東証が開いている間、米国市場は閉まっている。マイクロンなど米国株の値動きは翌日の東証で反映され、市場価格と基準価額の間に乖離が出ることがある。
- 上場直後の流動性: 出来高が少ないうちは、売値と買値の差が広がりやすい。成行ではなく指値で注文する。
- 構成の入替: 年2回(5月・11月)の見直しで比率が変わる。マイクロンの比率が25%まで引き下げられる可能性がある。
- 信託報酬以外の費用: 指数の商標使用料や上場の費用などが、信託財産から別に引かれる。実質的なコストは、最初の決算後の運用報告書で分かる。