疑問が湧いた順に5本書いた1日:After Effects の拡張構造から VRAM の壁まで
朝の6時すぎ、GitHub のリポジトリを1本貼って「これ、内部APIを触ってるんですかね」と聞いた。 そこから日が暮れるまで、疑問が浮かぶたびに Claude Code へ投げては記事か教材に変えていった。 数えると5つ。技術記事が3本、教材ページが1本、それと子どもに送る文章が1つ。
段取りよく進んだ日だと思っていた。 ただ最後の1本で、「私が比較してほしかったのは、そこじゃない」と言い直すことになる。
内部APIを叩いているのだと思っていた
きっかけは、After Effects を操作する MCP サーバーの実装を見かけたことだった。 Adobe の製品を外から動かすなら、どこかで内部APIに手を入れているに違いない。 そう思って、実装を読んで確かめるよう指示した。 あわせて、なぜ公式から同じものが出てこないのかも調べさせた。
外れていた。 使われていたのは Adobe が昔から公開している ExtendScript で、リバースエンジニアリングは入っていない。 公式のコマンドライン起動でスクリプトを流し込み、結果は一時ファイル経由で受け取る。 公開されている足場だけで組み上がっていた。
公式が出さない理由のほうも輪郭が見えた。 Adobe はすでに公式の MCP を出している。 ただしクラウド側の製品だけで、After Effects が抜けている。
記事にするよう頼んだつもりだったが、送ったメッセージは「内容なんですけど。」で切れていた。 続きが届いていないと返ってきたので、「技術よりでいいです。仕組みが知りたいです。構造の、AEの構造」と言い直した。 出てきた記事は、拡張が C++ SDK と ExtendScript と CEP の3層でできていること、そして UXP が未対応のまま残っている点を軸にしていた。
After Effects の拡張構造と、外部プロセスから操作する経路
コミットの前に「これってもう終了してますか、タスク」と聞いたら、作業だけ終わっていてタスクの状態が更新されていなかった。 その場で閉じさせた。
紙と鉛筆でできる、を教材にする
前から引っかかっていたことがある。 第三者に解読されず、改竄も検知できる通信は、紙と鉛筆だけで原理的に成立する。 手順が公開されている以上、国家権力であっても通信の秘密は破れない。 この事実があまり知られていない気がしていた。
思ったまま投げて、教材ページを作らせた。 鍵や暗号を扱うページが無いことを確認させたうえで、解説と演習の枠や図解パーツといった、すでにある教材基盤に載せた。 ただしコース一覧の登録簿は別シリーズ専用だったので、独立したページにしてある。
出来上がりは、図解6点、動かせるシミュレータ5つ、テスト30件。 SVG のテキストがはみ出していないかを全図解で機械検査させ、モバイル幅の崩れはエミュレーションで詰めさせた。
そのあとで「ブログ一覧に登録済みですか。トップページのどのへんに入ってますかね。あと積み残しは」と聞いた。 2件出てきた。 トップページのコンテンツ一覧に未登録で、しかも他の全コースページにある E2E が、このページにだけ無かった。 どちらも埋めさせてからコミットした。18ファイル、3,555行の追加。
聞かなければ、そのまま積み残しになっていた。
「循環取引」と書いたのを取り消した
記事を出したあとは、Codex にレビューさせている。 この朝は、前日に公開した3本へ致命的な指摘が返ってきた。
重かったのは NVIDIA の資金調達を扱った記事だ。 系列会社が顧客に融資している構図を、「循環取引」と断定して書いていた。 そう言い切れる材料は無い。 返済の裏づけがどこにあるのか、リスクを最終的に誰が負うのか。 循環的と評価されうる条件のほうに沿って書き直させた。 「最大25%の残存価値サポート」を「証券化持分の25%を保有」と読み替えていた箇所も、信用補完の上限という原義に戻した。
ThinkPad の記事では、description が「スリープ復帰後」と原因を確定させているのに、本文はスリープとの因果が未検証だと書いていた。 同じ記事で、私がやったことと Claude Code にやらせたことの主語が、2箇所で入れ替わっていた。 波及していた2箇所も含めて是正させた。 3本目は frontmatter の欠落を補うだけで済んだ。
数字の読み替えも主語の反転も、自分で読み返したときには素通りしている。 レビューを挟まなければ、そのまま残っていたと思う。
テストの点は、君の価値とは関係ない
午前中は、前から思っていたことを子ども向けに文字にした。 テストで点が取れないこと。 それで周りにばかにされることがあるかもしれないこと。 そのうえで、学び続けるほうがずっと大事だということ。 人生は80年続くのだから、前半の20歳までの成果で決まるわけではない。
最初は下書きを渡して、そのまま送れる形に整えさせた。 約800字、見出しと箇条書き。 返ってきた文面を読んで、結局は自分で書き直した。
書き直した版をもう一度レビューさせたら、「義務じゃなくて権利、やめたければやめていい」の一節は効いている、と返ってきた。 そのうえで、数字の食い違いを指摘された。 引用を20歳に直したのに、AI について書いた節が18歳のまま残っている。
言いたいことは自分で書くしかない。 ただ数字の食い違いは、自分以外の目に通したほうが早い。
記事にシステム名が1つも出てこない
OpenAI の CFO が、社内の財務部門を AI 前提に作り替えた経験を公開していた。 これを日本語の記事にまとめさせた。 WebFetch が 403 で弾かれたので、r.jina.ai 経由に切り替えて本文を取らせた。 図解3枚をつけて公開した。
読み終えてから引っかかったのは、道具の話がほとんど出てこないことだった。 「元帳の実績」「発注」といった機能名は出るのに、製品名が1つも無い。 実際のところ何を使っているのか、と聞いた。
記事の外を当たらせた。 求人票に名前が出ていた。Oracle Fusion Cloud ERP。 会計そのものは、ごく普通のエンタープライズ向けパッケージで、自作ではない。
そこで追加で聞いた。 発注や購買のあたりはどうか。統合環境、セールスフォース的なやつ。 求人票を5〜6本読ませたら、購買や調達の職種にも、CRM 側にも名前が載っていた。 Salesforce は業務内容に名指しで出ている。 ここで効くのは「実際に使っている」のか「経験があれば尚可」なのかの切り分けだ。 そこまで確かめさせてから、記事に表を2つ足した。
比較してほしかったのは、そこじゃない
昼過ぎ、MiniMax H3 を自分の PC で動かせるか聞いた。 返ってきた結論は「動く」。 ただし10秒の動画に、低解像度でも20〜30分、HD なら1〜2時間かかる見積もりだった。 ライセンスは米国、EU、英国、韓国をローカル配備の対象から外しているが、日本はその除外に入っていないので使える。
メモリが足りないんですよね、と言ったら、足りないのは RAM ではなく VRAM のほうだと返ってきた。 RAM 32GB は増設すれば効く。 DDR4 なので、64GB でも1〜2万円台で足りる。 VRAM は増やせない。 なぜかと聞くと、GPU の基板に半田付けされていて、DIMM のようなソケットが無いからだという。 VRAM を増やす道は、グラフィックボードごと買い替える以外に残っていない。
ここで、検討していた15インチ MacBook Air M5 の構成をそのまま貼った。 購入の判断がかかるからと M5 の実数を確かめにいき、記事が1本出てきた。
読んで、違うと思った。 私が知りたかったのは、2020年に買った Windows 機と、2026年の MacBook Air が、素のスペックでどれだけ違うのかだった。 動画生成が動くかどうかの話に引きずられて、比較の軸がずれている。 そう言い直したら、「そこは私が話を引っ張りすぎました」と返ってきて、素のスペック比較として答え直しになった。
6年で、ノートPCが当時のデスクトップの CPU を追い越していた。 GPU は追い越していない。 総合では互角で、得意な分野が入れ替わっている。
聞きたかったのはこれだった。 最初の質問から会話を継ぎ足していくと、途中で軸が変わっても気づきにくい。
1日を通して
朝いちばんの「内部APIを触ってるんですかね」は外れていた。 昼過ぎの「比較してほしかったのはそこじゃない」は、私の側の聞き方が足りなかった。 それでも5つ形になったのは、疑問が浮かんだ時点で投げる相手がいたからだ。 投げ方が雑でも、何かは出てくる。
出てきたものが自分の聞きたかったものかどうかは、読むまで分からない。 読んで違うと思ったときに、そう言えるかどうかだけが残る。