図面の数値を建築基準法で全部検算したら、専有面積の合計が容積対象床面積と一致した

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図面の数値を建築基準法で全部検算したら、専有面積の合計が容積対象床面積と一致した

都内の共同住宅の企画図面を写真2枚で渡して、「なぜこの建物は5階なのか」を法令から説明させた。条文を並べれば終わる仕事だと思っていた。ところが数値を当て始めると、図面のほうが先に答えを持っていた。

5階と6階を分けているもの

まず階数の境目を条文から拾わせた。出てきたのは2本。

1本目は避難。建築基準法施行令121条1項6号イは、6階以上の階に居室があると床面積に関係なく直通階段を2本求める。5階建てはこの号に当たらない。共同住宅が2直を求められる別の経路(同項5号と6号ロ)には床面積の閾値があるので、基準階の専有が60.49㎡のこの建物は当たらなかった。

2本目は構造。平成13年国土交通省告示第1026号が、壁式鉄筋コンクリート造の適用範囲を「地階を除く階数5以下、軒高20m以下、階高3.5m以下」と定めている。6階にすると、この仕様規定ルートから外れる。

避難と構造という無関係な2本が、どちらも5階と6階の境目で切り替わっている。この重なりが5階を選ばせているのだろう、と当たりをつけた。

計画概要の7項目を検算する

図面には計画概要が載っている。敷地面積94.47㎡、建築面積68.10㎡、建蔽率72.08%、延べ面積320.43㎡、容積対象床面積282.38㎡、容積率298.90%、共同住宅5階14戸。この7項目を全部検算させた。

項目図面の記載検算
建蔽率72.08%68.10 ÷ 94.47 = 72.0864%
容積率298.90%282.38 ÷ 94.47 = 298.9097%
延べ面積320.43㎡68.10×4層 + 48.03(1階)= 320.43
容積対象床面積282.38㎡各戸の専有面積の合計と一致

決め手は専有面積の積み上げだった。1階は20.07 + 20.35 = 40.42㎡の2戸。2〜5階は20.07 × 2 + 20.35 = 60.49㎡の3戸が4層で241.96㎡。合計282.38㎡で、図面の容積対象床面積と一致した。

延べ面積との差38.05㎡は共用の廊下と階段で、建築基準法52条6項により容積率の算定から消える。延べ面積ベースなら339.19%のボリュームを、容積率298.90%として成立させている。狭小地の共同住宅で戸数を決めているのはここだと分かった。

1階で欠ける20.07㎡の正体

図面の1階には「敷地内通路 有効2.0M」と書かれていて、その帯の分だけ住戸が2戸しか入っていない。上階は3戸。東京都建築安全条例19条の窓先空地の規定は、住戸床面積の合計が200㎡を超えると屋外通路に2m以上を求める。ここは合計282.38㎡なので2.0mに落ちる。図面の記載と合った。

そこで建築面積を見直したら、68.10㎡が基準階の床面積(専有60.49 + 共用7.61)と同じだった。だとすれば1階の床面積は320.43 − 68.10×4 = 48.03㎡。差は20.07㎡で、上階の住戸1戸の専有面積とぴったり同じだった。

「1階で1戸失う」は比喩ではなく、通路が住戸を1戸ぶん食っていた。

検証記録と2枚の図解

検証結果を memo/2026-09-20/tokyo-rc5-verification.md にまとめ、SVG図解を2枚描かせて埋め込んだ。1枚は、5階と6階で適用される法令のセットが切り替わることを対比表にした。もう1枚は1階と基準階の平面模式図で、20.07㎡が抜ける位置を示した。2枚ともブラウザで描画を確認した。

Codexの8件を一次情報に当てる

計画書系ドキュメントのレビュー規約に従って、Codexでレビューした。8件の指摘が返ってきた。重要度をそのまま受け取らず、条文と区の公式資料で1件ずつ確かめた。結果は8件ともおおむね妥当で、全件を直した。

  • 「6階建ての壁式RCは建てられない」と書いていた。告示の仕様規定から外れるだけで、限界耐力計算のルートは残っている。禁止ではなく、小規模賃貸では割に合わないという話に書き換えた
  • 「容積率で6階は不可能」も飛躍だった。指定容積率300%なら上限は94.47 × 3.0 = 283.41㎡で、計画は282.38㎡。残りは1.03㎡しかない。積み増しができないだけで、総床を6層に配り直せば6階建て自体は枠内に収まる
  • 直通階段1本の緩和条件を「屋外階段と全戸バルコニーが必須」と書いていた。条文は「避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの」で、階段も屋外避難階段か特別避難階段のどちらでもよい。両方を同時に要求される関係ではなかった
  • 窓先空地の「床面積の合計」を建物全体で数えていた。実際は当該窓先空地に面する住戸を集計する方式で、しかも2025年4月に運用が改正されている。今回はどちらの数え方でも200㎡を超えるので結論は動かなかった
  • 区のワンルーム条例の閾値を、二次情報で拾っていた。区の公式資料で取り直すと、片方は専用面積30㎡未満の住戸が10戸以上で適用され、最低25㎡。もう片方は33㎡未満が15戸以上などの条件で適用され、最低28㎡だった。14戸のこのプランは、前者では成立せず後者では成立する

法56条の2第4項をどう読むか

宅建テキストの修正をコミットするとき、レビューで日影規制の記述に指摘が付いた。法56条の2第4項には低層住居専用地域の例外があるのではないか、という内容だった。ここが分かれ目なので条文を読み直した。

第4項は「対象区域外にある高さが十メートルを超える建築物で、冬至日において、対象区域内の土地に日影を生じさせるもの」と書いてあって、用途地域による分岐がない。低層住専の「軒高7m超または3階以上」は別表第4(い)欄が定める対象区域内の建築物の区分で、第4項のみなし規定には効いてこない。自分の記述が条文どおりだったので、理由を残して通した。

この日の指摘のうち、条文と合わなかったのはこれだけだった。重要度を自分で判定し直す運用にしていなかったら、正しい記述を指摘どおりに壊していた。

高度地区が効く敷地と効かない敷地

検証記録をコミットするときのレビューでは、高度地区の記述に指摘が付いた。第三種高度地区が5階と6階を分けている、と書いていたが、この敷地では効いていない。真北方向の距離は、北側が道路なら道路の反対側の境界線まで測る。幅員8mの道路に面していればL ≥ 8mが確保され、1.25 × 8 + 10 = 20mまで建つ。5階の約14mも6階の約16.8mも内側に入る。5階と6階を分けるのは、北側が隣地境界の敷地のほうだった。

検証の核が「数字が全部合う」ことなのに、その周りで条件の当てはまらない話を書いていた。自分の判定も high にして直した。

既存の宅建テキストで見つかった2つのずれ

照合の副産物として、建築基準法の章の記述に現行法と合わない箇所が2つ見つかった。教材の信頼性に直結するので先に直した。

1つ目は北側斜線。「住居系4地域のみ」と書いてあったが、建築基準法56条1項3号が挙げるのは田園住居地域を含む5地域だった。田園住居地域は平成30年4月施行の13番目の用途地域で、低層住居専用地域と同じ起点5m、勾配1.25で扱われる。本文だけでなく図も直した。斜線制限の全体図にも「住居系4地域のみ」が残っていたので、章の全図を見て回った。

2つ目は日影規制。「商業地域、工業地域、工業専用地域は法律上対象外」は、対象区域として指定できないという意味なら正しい。ただし法56条の2第4項があるので、対象区域外の高さ10m超の建物でも、冬至日に対象区域へ影を落とせば規制を受ける。1行足すだけで誤解が消えた。

北側斜線の図には、中高層住居専用2地域が日影規制の対象区域では適用除外になる注記(法56条1項3号かっこ書き)も足した。本文には書いたのに図が「適用あり」のままで、図だけ見ると逆を覚える状態になっていた。行を1つ増やしたらサブタイトルが右端からはみ出したので、幅を実測して文言を短くした。

敷地の赤字寸法の読み違い

図面の出典を探すために画像を拡大して隅まで当たったところ、出典は見つからず、代わりに読み違いが2つ出てきた。1つは敷地の赤字寸法で、「14.00」と読んでいた箇所が実際には「14,100」だった。

検証で使っていた7.267m × 13.0mという寸法は誤りで、正しくは6.70m × 14.1m = 94.47㎡だった。図面の敷地面積と合う。建物の奥行13.0mとの差1.1mが奥の空地になる。

検算が全部通って「この図面は数値が1つも破綻していない」と書いた。その足元に読み違いが残っていた。

学び

  • 数字が合うのは強い証拠だが、合った瞬間がいちばん危ない。合ったことで読み違いを探す動機が消える。今回は出典探しという別件で画像を拡大したから見つかった
  • レビューの指摘は重要度も含めて自分で判定し直す。計画書レビューの8件は全部妥当だったが、コミット時に出た1件は、条文を読めば事実誤認だった。そのまま直していたら正しい記述を壊していた
  • 本文を直したら図も直す。本文と図が食い違うと、図だけ見た読者が逆を覚える
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