建物 — 構造の4分類と耐震基準の見抜き方
この章の主張
- 建物は主要構造材で4分類でき、耐震・耐火・耐久・コストにそれぞれ特徴がある。
- 1981年6月の新耐震基準が、宅建試験での旧建物・新建物の分岐点になる。
- 構造分類と耐震基準の歴史を押さえれば、過去問の○×は素直に解ける。
1. 建物構造の4分類 — 木造・S造・RC造・SRC造
建物は主要構造材によって4つに分類されます。木造(W造)、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の順に耐火性・耐久性が高まり、その代わり自重と建設コストが増します。建築基準法第2条第5号は「主要構造部」を定義し、耐震や耐火の規定はここを基準にかかります。
建築基準法第2条第5号は主要構造部を「壁、柱、床、はり、屋根又は階段」と列挙します(e-Gov 建築基準法 第2条)。装飾用の小ばりや庇は主要構造部から外れます。
1.1 壁式構造とラーメン構造の使い分け
壁式構造は耐力壁で建物を支える方式で、低層住宅やマンションに向きます。ラーメン構造は柱と梁の接合部を剛接合し、軸組で支える方式で中高層に適します。壁式は開口部の自由度が低く、ラーメンは間取りの自由度が高いという違いを押さえてください。
1.2 鉄筋コンクリートの長所と短所
鉄筋コンクリート造は引張に強い鉄筋と圧縮に強いコンクリートを組み合わせます。長所は耐火・耐久・遮音性に優れること、短所は自重が重く工期とコストがかかることです。鉄筋は錆びるとコンクリートにひびを生じさせるため、かぶり厚さで保護する設計になっています。
2. 耐震基準の歴史 — 1981年新耐震基準が出題の分岐点
耐震基準は大地震のたびに改訂されてきました。1950年の建築基準法制定、1981年6月の新耐震基準、2000年の木造建物の耐震基準強化が、宅建試験で問われる3つのマイルストーンです。1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物が「新耐震」、それ以前が「旧耐震」と呼ばれます。
1981年6月1日施行の建築基準法施行令改正により、建物は「中地震で軽微な損傷」「大地震で倒壊・崩壊しない」の2段階性能を要求されるようになりました。
2.1 新耐震基準が要求する2段階性能
新耐震基準は2つの地震レベルで性能を分けます。中地震(震度5強程度)では建物がほぼ無傷で使えること、大地震(震度6強から7程度)でも人命を守るために倒壊しないこと、この2段階を満たすよう構造計算します。耐震診断や耐震改修の議論はすべてこの2段階を出発点とします。
2.2 既存不適格と耐震改修促進法
旧耐震基準で建てられた建物は、新耐震基準には適合しませんが直ちに違法ではありません。建築当時の基準を満たしていれば「既存不適格」として存続が認められます。建築物の耐震改修の促進に関する法律は、特定建築物の所有者に耐震診断と耐震改修の努力義務を課しています(e-Gov 耐震改修促進法)。
⚠️ 試験での問われ方
- 1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物 → 新耐震基準適用
- 1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物 → 旧耐震基準で既存不適格
- 既存不適格の旧耐震建物 → 違法ではないが、耐震改修が努力義務
- 新築マンション → 当然に新耐震基準に適合させる必要あり
3. 耐震・免震・制震 — 地震エネルギーの受け方で3分類
地震対策の構造技術は、地震エネルギーへの対し方で3つに分かれます。耐震は建物自体を強くして揺れに耐える、免震は建物と地盤を絶縁して揺れを伝えない、制震は建物内部の装置で揺れを吸収するという発想の違いです。新築マンションや公共施設では免震や制震が採用される例も増えていますが、宅建試験では3者の動作原理の違いを問う設計になっています。
3.1 免震構造の動作原理
免震構造は、基礎と上部建物の間に積層ゴムやすべり支承を挟みます。地震が来ると基礎は揺れますが、積層ゴムが水平にゆっくり変形し、上部建物に伝わる揺れが減衰します。家具の転倒や非構造材の損傷も抑えられるため、病院や指令施設で採用例が多い方式です。ただし装置の点検と更新が必要で、コストは上がります。
3.2 制震構造の動作原理
制震構造は、建物の柱梁の間にダンパー(油圧式・粘弾性式・鋼材式)を組み込みます。建物が揺れると、ダンパーがエネルギーを熱として消費し、揺れの増幅を抑える仕組みです。免震ほどコストはかからず、既存建物への後付け改修もしやすいため、中高層マンションでの採用が広がっています。
4. 基礎・主要部位 — 部位別の構造の見抜き方
主要構造部は壁・柱・床・はり・屋根・階段の6つです。試験では特に基礎の3種類(直接基礎・杭基礎・べた基礎)、木造の伝統工法と現代工法、屋根の形状の違いが問われます。建物全体の骨格をイメージし、地震や荷重がどう流れるかを追えるようにしてください。
4.1 基礎の3種類 — 直接基礎・杭基礎・べた基礎
基礎は地盤の硬さで使い分けます。直接基礎(独立基礎・布基礎)は固い地盤の上に直接置く方式で、低層住宅で使われます。べた基礎は床下全体を一枚のコンクリート版にする方式で、軟弱地盤に強く湿気にも有利です。杭基礎は地中深くの支持層まで杭を打ち込む方式で、軟弱な表層地盤の上に中高層を建てる場合に使います。
4.2 木造の伝統工法と枠組壁工法
木造は軸組工法(在来工法)と枠組壁工法(ツーバイフォー)の2系統があります。軸組工法は柱と梁を継手でつなぐ伝統的な方式で、間取りの自由度が高い一方、耐震性は接合部の金物次第になります。枠組壁工法は規格化された木材で壁・床・屋根を箱状に組み立てる方式で、面で支えるため耐震性が高く工期も短いという特徴があります。
⚠️ 試験での問われ方
- 軟弱地盤に低層住宅 → べた基礎が有利
- 軟弱な表層を抜けた支持層に到達させる → 杭基礎
- 軸組工法(在来工法) → 柱と梁の線で支える、間取り自由
- 枠組壁工法(ツーバイフォー) → 壁・床・屋根の面で支える、耐震性高い
- RC造ラーメン構造の中高層マンション → 主要構造材は柱と梁、間取り自由度が高い
このカテゴリから出る過去問(公式由来確認済の問題)
本カテゴリの過去問27年分のクリーン抽出は Phase 1A-2 で provenance 確認の途上にあり、本ファイルでは個別問番号への直接言及は最小限にとどめます。Phase 3 で
/takken/quiz/{year}/{q-number}/に展開予定です。
頻出論点(27年分の集計より、出題頻度の高い順):
- 構造別の特性比較(木造・S造・RC造・SRC造の耐震・耐火・耐久・コスト)
- 新耐震基準(1981年6月1日)の前後判定
- 免震・制震・耐震の動作原理の違い
- 基礎の3種類(直接基礎・杭基礎・べた基礎)の使い分け
- 木造の軸組工法と枠組壁工法の違い
参照条文
- 建築基準法 第2条(用語の定義・主要構造部): e-Gov 建築基準法第2条
- 建築基準法 第20条(構造耐力): e-Gov 建築基準法第20条
- 建築基準法施行令 第3章(構造強度): e-Gov 建築基準法施行令
- 建築物の耐震改修の促進に関する法律: e-Gov 耐震改修促進法
- 国土交通省「住宅の耐震化に向けた取組」: → 国交省 耐震化情報
参考書籍(論点漏れチェックに参照、本文の引用なし)
- みんなが欲しかった!宅建士の教科書(TAC出版, 2024年版, ISBN: 978-4-300-10630-4, 該当章 P.480〜P.510)
- 1週間で宅建士の基礎が学べる本(インプレス, 第3版, 2024年, ISBN: 978-4-295-01872-8, 該当章 P.180〜P.195)
- 動画で学べる宅建士テキスト(中央経済社, 2024年版, ISBN: 978-4-502-49021-5, 該当章 P.350〜P.368)
- パーフェクト宅建士基本書(住宅新報出版, 2024年版, ISBN: 978-4-910499-25-3, 該当章 P.620〜P.648)
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本教材は 令和8年度(2026年度)宅地建物取引士資格試験 を対象として、2026 年 4 月 1 日時点で施行されている法令 に基づき執筆しています。法改正は
/takken/changelog/に掲載します。