不当景品類及び不当表示防止法 — 不動産広告で禁止される表示と景品の上限

この章の主張

  • 景品表示法は『不当表示の禁止』と『過大景品の禁止』の2本柱で広告を縛る。
  • 不動産業者は法律本体に加えて『不動産の表示に関する公正競争規約』という業界自主ルールも併せて守る必要がある。
  • 不当表示の主な類型と景品の上限金額(取引価額の20%・100万円・10万円)を覚えれば本カテゴリは答えられる。
景品表示法の全体像 — 不当表示の禁止と景品規制の2本柱

1. 景品表示法の全体像 — 不当表示の禁止と景品規制の2本柱で広告を縛る

景品表示法は、消費者が誤認するような表示と、商品選択を歪めるほど過大な景品提供を禁じる法律です。柱は2つしかありません。不当表示の禁止(景品表示法第5条)と景品類の制限(景品表示法第4条)です。両方ともに違反すると、内閣総理大臣(消費者庁長官に委任)の措置命令や課徴金納付命令の対象になります。

景品表示法第1条は目的を「商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止する」と定めています(→ e-Gov 景品表示法)。

1.1 不動産業者は『不動産の表示に関する公正競争規約』も併せて守る

法律と公正競争規約の二層構造

不動産業界では、景品表示法第36条の規定に基づき業界団体が公正競争規約を作っています。法律本体だけでは「どこまで具体的に書けば不当表示か」が分かりにくいため、自主ルールで境界を細かく定めるしくみです。あなたが向き合う実務ルールは次の2階建てになります。

  • 法律: 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)
  • 自主規約: 不動産の表示に関する公正競争規約(公正取引委員会・消費者庁長官の認定)

公正競争規約は告示扱いのため、違反は法律違反と同等に扱われます。実務上の表示ルールはほぼ規約側に書かれているので、試験対策でも規約の具体的禁止事項を覚える必要があります。

1.2 規約を運用するのは不動産公正取引協議会連合会

景品表示法と規約の運用主体ツリー

規約の運用主体は、全国の地域別不動産公正取引協議会と、その上部組織である不動産公正取引協議会連合会です。業界の自主規律として、違反業者には警告・違約金・除名処分等を行う権限を規約で持っています。法律本体の措置命令を出す行政機関(消費者庁・都道府県)とは別系統の規律であり、両方が並行して動きます。

2. 不当表示の典型類型 — おとり・優良誤認・有利誤認・必要的明示事項

不当表示の4類型分解図

景品表示法第5条は、不当表示を優良誤認表示(第1号)有利誤認表示(第2号)・**その他誤認させるおそれのある表示(第3号告示)**の3区分で禁止します。不動産業特有の論点は次の4つです。

  • おとり広告: 取引できない物件、または取引する意思のない物件を広告に載せる行為
  • 優良誤認表示: 物件の品質・性能を実際より著しく優れているように示す表示
  • 有利誤認表示: 価格や取引条件を実際より著しく有利に見せる表示(旧価格との二重価格等)
  • 必要的明示事項の不表示: 規約で「必ず書け」とされる項目(取引態様・所在地等)が書かれていない表示

2.1 おとり広告と二重価格表示の禁止

おとり広告と二重価格表示の比較

おとり広告は不動産公正競争規約第21条で明確に禁じられています。典型例は次の3パターンです。

  • 存在しない物件を載せる
  • 物件は実在しても、すでに契約済み・取引できないものを載せる
  • 取引はできるが売主等に取引する意思がない物件を載せる

来店誘引のために古い成約物件を放置するだけでもおとり広告に該当します。

二重価格表示は、過去の販売価格や架空の通常価格と並べて「割引」を強調する手法です。比較対照価格として書ける旧価格には厳格な条件があり、根拠のない旧価格との並列表示は有利誤認表示として処分対象になります。

2.2 必要的明示事項 — 取引態様・所在地・交通・面積・価格

必要的明示事項マトリクス

規約は、不動産広告に必ず明示すべき項目を物件種別ごとに定めています。代表的なものは次のとおりです。

項目表示ルールの要点
取引態様売主・代理・媒介の別を明示
物件の所在地都道府県・市区町村・字以下まで明示
交通の利便駅徒歩は道路距離80mにつき1分で算出、端数は切上げ
各種面積土地面積・建物面積は壁芯または内法で実測値、私道負担も明示
価格1戸当たり又は1区画当たりの消費税込み価格、用地は1m²当たりの単価併記等
写真・絵図当該物件の現況写真。完成予想図には現況と異なる旨を明示

駅徒歩の「80mにつき1分」は本カテゴリ頻出論点です。坂道や信号待ちを所要時間に含める必要はなく、道路距離だけで機械的に算出します。

2.3 物件名称の使用制限 — 駅名・公園・河川の名称利用

物件名称使用制限のフロー

物件名称に駅・公園・河川・地勢の名称を使うには、規約上の距離要件を満たす必要があります。代表例は次のとおりです。

  • 駅名: 物件から最寄り駅までが直線距離300m以内なら駅名を使用可
  • 公園・庭園・旧跡等: 物件から直線距離300m以内なら名称使用可
  • 河川・湖沼・海等: 物件から直線距離300m以内で名称使用可(眺望できる場合を除き「○○川沿い」等の表現は控える)

距離要件を満たさないのに駅名や公園名を物件名に冠すれば、優良誤認表示として処分対象になります。

⚠️ 試験での問われ方

  • 駅徒歩は道路距離 80m=1分で算出、信号待ち時間を加算する必要はない
  • 完成予想図に「現況と異なる」旨の注記がなく実際と異なる外観で描く → 不当表示に該当
  • 取引できない成約済物件を広告に残し置く → おとり広告に該当
  • 物件から最寄り駅まで直線500mで駅名を物件名に使用 → 距離要件を満たさず不当表示

3. 景品類の上限規制 — 取引価額の20%・100万円・10万円の3つの数字

景品類の上限規制マトリクス

景品表示法第4条は、過大な景品提供を禁じます。不動産取引に適用される告示と規約では、景品の上限が取引の種類別に決まっています。3つの数字を覚えれば十分です。

景品の類型上限額根拠
懸賞による景品(抽選で当選者に提供)取引価額の20倍 または 10万円 のいずれか低い額/総額は売上予定額の2%以内告示「懸賞景品制限告示」
総付(取引者全員に提供)取引価額の10% または 100万円 のいずれか低い額告示「総付景品制限告示」
不動産業の上限上書きルール総付景品は 10万円 を上限(規約で更に厳格化)不動産の景品類の提供の制限に関する公正競争規約

「総付」とは応募・抽選を伴わず、契約者全員に同じ景品を渡す方式です。懸賞総付で計算式と上限が違うため、問題文がどちらの提供方式を指しているかをまず判断します。

3.1 景品とそれ以外(値引・付随サービス)の境界

景品と値引・付随サービスの判定フロー

景品規制の対象になるのは経済的利益の付随提供です。次のものは景品類に当たらないとされ、上限規制の対象外です。

  • 値引き(取引の対価そのものを減額する行為)
  • 取引に通常必要なアフターサービス(点検・保証等)
  • 取引に通常付随する物品(カタログ・パンフレット等)

「3,000万円のマンションを2,950万円に値引き」は景品ではなく値引きであり上限規制を受けません。一方で「契約者に家電製品を進呈」は総付景品にあたり、10万円上限の対象です。問題文で「値引き」と書かれていれば即座に景品規制対象外と判断できます。

⚠️ 試験での問われ方

  • 抽選で1名に旅行券を提供 → 懸賞景品(取引価額の20倍 or 10万円の低い方)
  • 成約者全員に商品券を提供 → 総付景品(10万円上限)
  • 「特別値引50万円」と称する販売価格の減額 → 値引きであり景品規制対象外
  • 引渡し後の無償点検サービス → 通常のアフターサービスで景品に該当しない

このカテゴリから出る過去問(公式由来確認済の問題)

本カテゴリの過去問27年分の集約・解説は Phase 3 で /takken/quiz/{year}/{q-number}/ に展開予定です。本カテゴリは例年問47で1問固定出題される定番カテゴリで、景品上限の数字・必要的明示事項・おとり広告の境界が中心論点です。

過去問の機械的引用は apps/web/app/data/takken-clean-exam-data/by-category/6_4.json の整備後に追記します(exam_id・年度・問番号付き)。本ドラフト時点では当該 JSON 未整備のため、論点別の俯瞰にとどめます。

参照条文

参考書籍(論点漏れチェックに参照、本文の引用なし)

  • みんなが欲しかった!宅建士の教科書(TAC出版, 2024年版, ISBN: 978-4-300-10822-4, 該当章 P.660〜P.685)
  • 1週間で宅建士の基礎が学べる本(翔泳社, 2024年版, ISBN: 978-4-7981-8265-9, 該当章 P.260〜P.275)
  • 動画で学べる宅建士テキスト(KADOKAWA, 2024年版, ISBN: 978-4-04-606589-0, 該当章 P.580〜P.605)
  • パーフェクト宅建士基本書(住宅新報出版, 2024年版, ISBN: 978-4-910499-37-8, 該当章 P.720〜P.745)

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本教材は 令和8年度(2026年度)宅地建物取引士資格試験 を対象として、2026 年 4 月 1 日時点で施行されている法令 に基づき執筆しています。法改正は /takken/changelog/ に掲載します。