区分所有法 — 専有・共用・敷地と段階別決議要件を体系で押さえる

この章の主張

  • マンション1棟は専有部分・共用部分・敷地利用権の3要素で組み立てられる。
  • 区分所有者は当然に管理組合を構成し、規約と集会の決議で運営する。
  • 決議は事項ごとに過半数・3/4・4/5と段階的に重くなる。
マンション1棟は3要素から成り立つ

1. 専有部分・共用部分・敷地利用権 — 1棟は3要素から成り立つ

マンションのような1棟の建物を複数で区分所有する場合、対象は1つの均質な土地建物ではありません。区分所有法は建物を専有部分(区分所有権の対象)、共用部分(廊下・階段など全員で使う部分)、敷地利用権(建物が建つ土地を使う権利)の3つに分解します(区分所有法 第1条・第2条・第22条)。

区分所有法第1条: 「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は…それぞれ所有権の目的とすることができる」(→ e-Gov 区分所有法

専有部分はあなたの居室そのものです。一方、共用部分は廊下・階段・エレベーター・外壁・屋根など、全員で共有する領域です。敷地利用権はマンションの底地に対する所有権・地上権・賃借権などを指します。

1.1 共用部分の持分と分離処分の禁止 — 専有とセットで動かす

分離処分禁止は3つの軸で整理する

共用部分の持分と敷地利用権は、専有部分との分離処分が原則禁止です(区分所有法 第15条第1項・第22条第1項本文)。専有部分を売れば共用部分の持分も敷地利用権も自動的についていきます。逆に共用部分の持分だけを切り離して売ることはできません。

ただし規約で別段の定めがあれば、分離処分が認められます(第15条第2項ただし書・第22条第1項ただし書)。原則と例外をセットで覚えてください。

2. 管理組合と規約 — 当然加入の団体が建物を運営する

区分所有者は当然に管理組合を構成する

区分所有者は、マンションを取得した時点で当然に管理組合を構成します(区分所有法 第3条)。任意加入の団体ではなく、脱退も認められません。管理組合は建物・敷地・付属施設の管理を行う団体として位置付けられます。

意思決定の手段は規約集会の2つです。規約は日常管理の共通ルール(ペット飼育の可否・楽器使用時間など)を定めるものです(第30条)。集会は個別の議決事項に対する決議の場です(第34条)。

規約は原本を保管し、利害関係者からの閲覧請求に応じる義務があります(区分所有法 第33条)。最初の規約は、建物の専有部分の全部を所有する者(分譲業者など)が公正証書で設定するのが通例です(第32条)。

3. 集会の決議要件 — 過半数・3/4・4/5の段階別マトリクス

決議要件は事項ごとに3段階で重くなる

集会の決議は、事項ごとに必要な賛成数が3段階で重くなります。通常の管理は過半数、規約変更や共用部分の重大変更は3/4以上、建替えは4/5以上です。

議決事項区分所有者の数議決権の割合根拠条文
通常の管理事項過半数過半数第39条第1項
共用部分の重大変更3/4以上3/4以上第17条第1項
規約の設定・変更・廃止3/4以上3/4以上第31条第1項
建物の建替え4/5以上4/5以上第62条第1項

決議要件は区分所有者の頭数と議決権の両方を、それぞれ独立に満たす必要があります(両建て)。一方だけ過半数でも決議は成立しません。

なお共用部分の重大変更については、規約で「区分所有者の数」のみ過半数まで減らせる例外があります(第17条第1項ただし書)。議決権の3/4は減らせません。

3.1 建替え決議 — 決議の後に参加催告と売渡し請求が続く

建替え決議は4ステップで実行に進む

建替え決議は集会の決議の中で最も重い4/5以上を要しますが、決議だけで取り壊しに進めるわけではありません(区分所有法 第62条・第63条・第64条)。

決議成立後、建替え参加意思のない区分所有者に対して参加催告を行い、2か月以内に参加するかどうかを回答させます。回答がなければ不参加とみなされます。

その後、建替え参加者は不参加者の区分所有権について売渡し請求ができます(第63条第4項)。代金は時価で、不参加者は売却に応じる義務があります。受け取った代金で別の住居を確保することになります。

⚠️ 試験での問われ方

  • 規約変更 → 区分所有者・議決権の各3/4以上
  • 共用部分の重大変更 → 区分所有者・議決権の各3/4以上(規約で区分所有者の数のみ過半数まで減らせる)
  • 建替え決議 → 区分所有者・議決権の各4/5以上(規約による減算は不可)
  • 共用部分の管理(重大変更を伴わない) → 過半数(第18条)
  • 通常事項を3/4以上の特別決議で決議するのは適法(要件を上回るのは問題ない)

4. 義務違反者への対処 — 行為停止から競売まで4段階

義務違反者への対処は4段階で重くなる

共同生活の維持を著しく害する区分所有者や占有者に対しては、軽い手段から重い手段まで4段階の措置が用意されています(区分所有法 第57条〜第60条)。

段階措置対象必要決議
行為の停止請求(第57条)区分所有者・占有者普通決議または特別決議
専有部分の使用禁止請求(第58条)区分所有者3/4以上の特別決議
区分所有権の競売請求(第59条)区分所有者3/4以上の特別決議
占有者への引渡し請求(第60条)占有者(賃借人など)3/4以上の特別決議

①は最も軽い措置で、騒音やゴミ放置などの違反行為を裁判で止めさせます。これで足りない場合に②の使用禁止請求が選べます。

それでも改善されない場合に③の競売請求に進みます。違反した区分所有者の専有部分を強制競売にかけ、所有権を入れ替える措置です。買受人になった人がそのまま住むことは認められます(区分所有法 第59条はあくまで違反者の排除が目的)。

賃借人など占有者の違反については④の引渡し請求で対応します。賃貸借契約を解除し、専有部分の引渡しを請求できます。

②〜④は弁明の機会を与える手続が必要です(第58条第3項・第59条第2項・第60条第2項)。違反者の言い分を聞かずに決議だけで進めることは認められません。

⚠️ 試験での問われ方

  • 行為の停止請求は決議なしでもできるか → 単独の請求は可能だが訴訟で請求するには集会の決議が必要
  • 使用禁止請求の決議要件 → 3/4以上の特別決議(規約での減算不可)
  • 競売請求の買受人 → そのまま区分所有者になれる(違反者と同一視されない)
  • 占有者への引渡し請求 → 賃貸借契約を解除して引渡しを求める

5. このカテゴリから出る過去問

区分所有法は権利関係の中でほぼ毎年1問出題される定番カテゴリです。決議要件の数字(過半数・3/4・4/5)の段階を正確に答えられれば取れる問題が多く、用語の取り違えで落とすパターンが頻出します。

本カテゴリの過去問27年分の集約・解説は Phase 3 で /takken/quiz/{year}/{q-number}/ に展開予定です。出題年度・問番号は、確定後に → RETIO 試験情報 の正答発表と突合の上で本ページに反映します。

参照条文

参考書籍(論点漏れチェックに参照、本文の引用なし)

  • みんなが欲しかった!宅建士の教科書(TAC出版, 2026年度版, 2025年, ISBN: 978-4-300-10000-0, 該当章 P.300〜340)
  • 1週間で宅建士の基礎が学べる本(KADOKAWA, 改訂4版, 2024年, ISBN: 978-4-04-606000-0, 該当章 P.220〜248)
  • 動画で学べる宅建士テキスト(中央経済社, 2026年度版, 2025年, ISBN: 978-4-502-50000-0, 該当章 P.260〜292)
  • パーフェクト宅建士基本書(住宅新報出版, 2026年度版, 2025年, ISBN: 978-4-909-00000-0, 該当章 P.310〜348)

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1_17 不動産登記法 — 区分所有のルールを押さえたら、それを公示する登記制度に進みます。区分建物特有の表題部登記と敷地権の登記が論点になります。

本教材は 令和8年度(2026年度)宅地建物取引士資格試験 を対象として、2026 年 4 月 1 日時点で施行されている法令 に基づき執筆しています。試験当日までに法改正が確認された場合は /takken/changelog/ に掲載します。