地理と主要都市
台湾は南北400km・東西140kmの細長い島で、真ん中を3000m級の中央山脈が縦に走る。 『街道をゆく40 台湾紀行』に出てくる地名を地図上で結びつつ、なぜ都市が西側に集中し、なぜ高雄は「打狗」と呼ばれていたのか、そんな問いから台湾の地理を読み解く。
このページで考える4つの問い
全島マップ
南北約400km、東西約140kmの島。主要都市はほぼすべて西部の平野に並び、東部(宜蘭・花蓮・台東)は中央山脈の向こう側で交通の便が悪い。 括弧の旧地名は清代〜日本統治期のもの。詳しい対照は 下の対照表 に。
Q1. なぜ主要都市は西部にだけ集中するのか?
全島マップで都市ピン(青と緑)の位置を見ると、12都市のうち9つが西側の海岸沿いに一直線に並んでいる。 理由は単純で、台湾の真ん中を 中央山脈(標高3000m級)が縦に走り、島を物理的に2枚におろしているから。 西側は嘉南平野・台中盆地・台北盆地と農地に向く広い平地が広がるのに対し、東側は山が直接海に落ち込み、平地はごく細い帯しかない。
Q2. なぜ「6直轄市」はこの6つになったのか?
現在の台湾の地方行政は、第一級が 6直轄市(台北・新北・桃園・台中・台南・高雄)、第二級が 3市+13県。 この6直轄市体制は実は新しく、2010年の大規模再編+2014年の桃園昇格で完成したものだ。それ以前は直轄市は台北と高雄の2つだけだった。

この6つに住む人口は約1660万人で、台湾総人口(約2300万人)の 7割超 を占める。 政治・経済・人口の重心はほぼこの6点に集中している。直轄市の昇格史と人口比は次の表のとおり。
| 区分 | 名称 |
|---|---|
| 6直轄市 | 台北市 / 新北市 / 桃園市 / 台中市 / 台南市 / 高雄市 |
| 3市(旧省轄市) | 基隆市 / 新竹市 / 嘉義市 |
| 13県 | 新竹県 / 苗栗県 / 彰化県 / 南投県 / 雲林県 / 嘉義県 / 屏東県 / 宜蘭県 / 花蓮県 / 台東県 / 澎湖県 / 金門県 / 連江県 |
台北市を完全に取り囲んでいるのが「新北市」。旧「台北県」が2010年に直轄市化されたもので、本省人の生活圏としては台北市+新北市が事実上の一体。
Q3. なぜ「打狗→高雄」「鶏籠→基隆」と旧地名が書き換えられたのか?
『街道をゆく40』には清代・日本統治期の旧地名が頻出する。 多くは 原住民の集落名を漢人が音だけ拾って当て字 し、後に清朝や日本総督府が縁起のいい漢字(佳字)に書き換えた、という二段階の変遷をたどっている。

| 旧地名 | 現在 | 由来・備考 |
|---|---|---|
| 大員 / 大灣(タイワン) | 台南(安平区が拠点) | 原住民シラヤ族の地名に由来。オランダはここにゼーランディア城を築いた。後に島全体の名前「台湾」に転用された。 |
| 鶏籠(雞籠 / ケーラン) | 基隆(キールン) | 原住民ケタガラン族の族名がなまって「ケーラン」、漢字「鶏籠」が当てられた。1875年、清朝が「基地昇隆」の意で「基隆」に改称。 |
| 滬尾(ホービ) | 淡水(タンスイ) | 清代の淡水庁の置かれた港町。「滬」は漁具のこと。日本統治期に「淡水」に統一された。 |
| 艋舺(バンカ) | 萬華(ワンホア) | 台北で最も古い街。原住民ケタガラン族の小舟「Mankah」が語源。日本統治期に「萬華(マンカ)」と当て字された。龍山寺がある。 |
| 打狗(ターカウ) | 高雄(カオション) | 原住民マカタオ族の集落名「Takau」が起源。1920年に台湾総督府が「高雄」(日本語読み「たかお」)と改称した。京都の高雄から取ったとされる。 |
| 桃仔園(タオアーヘン) | 桃園(タオユエン) | 清代の地名。日本統治期に「桃園」に簡略化。空港のある場所。 |
| 蛤仔難(カマラン) | 宜蘭(イーラン) | 原住民クバラン族の族名「Kavalan」に由来。清朝が「蛤仔難」と当て字し、後に佳字「宜蘭」に改めた。 |
地名の層を剥がしていくと、表面の漢字の下に 原住民の音 → 漢人の当て字 → 清朝・日本の佳字 という3層が露出する。 詳しい原住民族の分布は 人口構成と原住民族、地名読みの言語的背景は 使われている言語 へ。
Q4. なぜ東部(宜蘭・花蓮・台東)は今も「島の裏側」のままなのか?
全島マップの右側、緑のピンが集まる東海岸を見ると、宜蘭・花蓮・台東しか町がない。 中央山脈が海に直接落ち込む地形で平地が極端に狭く、清代までは漢人の入植もほとんど進まなかった。 「化外の地」と呼ばれた台湾の中でも、東部はさらに 「外の外」 として原住民の世界が残った。

台湾の鉄道は2系統で覚えると早い。台鉄(在来線・環島線)が島を1周し、高鉄(高速鉄道)が西部だけを縦に貫く。

- 台鉄 環島線: 西部幹線(基隆〜高雄)+東部幹線(宜蘭線・花東線)+南廻線で島を一周。九份への玄関口・瑞芳駅、平渓線(十分・菁桐)など観光路線もここ。
- 高鉄(台湾高鐵): 2007年開業。台北〜高雄(左営)が最速 約1時間30分。在来線で6時間半かかっていた区間が一気に縮んだ。
- 台北MRT: 1996年運行開始。主要観光地は赤・青・緑などのライン名で覚えると早い。
桃園空港から台北中心部は 桃園機場捷運(空港MRT) で台北駅まで直達35分・各停50分前後。
北・中・南・東の4地域
Q1〜Q4の整理を踏まえて、地域ごとのキャラクターを一覧で押さえておく。
| 地域 | 主な都市 | キャラクター |
|---|---|---|
| 北部 | 台北・新北・基隆・桃園・新竹 | 政治・金融・IT(新竹サイエンスパーク)の中心。旅行で滞在する大半はここ。 |
| 中部 | 台中・彰化・南投・雲林 | 製造業+農業。日月潭・阿里山など内陸観光。八田與一の烏山頭ダムは台南方面だが嘉南平野の北端に近い。 |
| 南部 | 嘉義・台南・高雄・屏東 | 台湾最古の都・台南(旧オランダ拠点)、海運・重工業の高雄。気候は亜熱帯〜熱帯。 |
| 東部 | 宜蘭・花蓮・台東 | 山と海。原住民の比率が比較的高い。太魯閣渓谷・花東縦谷。台北からは台鉄で2〜3時間。 |