遺族年金シミュレーション完全ガイド(2025年度版)
はじめに
遺族年金は、家計を支えていた方が亡くなったときに遺族の生活を支える重要な社会保障制度です。本記事では、2025年度の最新金額を用いて、遺族年金のしくみと具体的な受給額のシミュレーションを詳しく解説します。
1. 遺族年金とは
1.1 遺族年金の基本概念
遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。
遺族年金には2つの種類があります:
- 遺族基礎年金:国民年金から支給される
- 遺族厚生年金:厚生年金から支給される
亡くなった方の年金の加入状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。
1.2 遺族年金の2階建て構造
日本の年金制度は「2階建て」と呼ばれる構造になっています。1階部分が遺族基礎年金、2階部分が遺族厚生年金です。会社員や公務員だった方が亡くなった場合、両方を受け取れる可能性があります。
2. 遺族基礎年金
2.1 受給要件
遺族基礎年金は、国民年金加入中の方が亡くなられたとき、その方によって生計を維持されていた「18歳到達年度の末日までにある子のいる配偶者」または「子」が受けることができます。
重要なポイント:
- 子がいることが必須条件
- 子とは18歳年度末までの方(障害がある場合は20歳未満)
- 子がいない場合は遺族基礎年金は支給されません
2.2 2025年度の年金額
令和7年度 基本額 831,700円(昭和31年4月1日以前に生まれた方 829,300円)
基本額:年額831,700円(月額約69,308円)
子の加算額: 第1子・第2子:各239,300円、第3子以降:各79,800円
計算例
【ケース1】妻35歳、子ども1人(6歳)の場合
- 基本額:831,700円
- 子の加算(第1子):239,300円
- 合計:1,071,000円/年(約89.3万円/月)
【ケース2】妻35歳、子ども2人(6歳、4歳)の場合
- 基本額:831,700円
- 子の加算(第1子):239,300円
- 子の加算(第2子):239,300円
- 合計:1,310,300円/年(約109.2万円/月)
2.3 支給期間
遺族基礎年金は、すべての子が18歳年度末を迎えるまで支給されます。
3. 遺族厚生年金
3.1 受給要件
遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた方が亡くなったときに支給されます。遺族基礎年金と異なり、子がいなくても受給できるのが大きな特徴です。
3.2 年金額の計算方法
遺族厚生年金の年金額は、亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4となります。
計算式:
遺族厚生年金 = 死亡した方の老齢厚生年金(報酬比例部分)× 3/4
厚生年金保険の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。
計算例(シミュレーション前提)
夫の厚生年金加入期間10年、平均標準報酬月額35万円と仮定した場合:
- まず報酬比例部分を計算(25年とみなす)
- その3/4が遺族厚生年金
- 本シミュレーションでは年額41.1万円を例示値として使用
4. 中高齢寡婦加算
4.1 制度の概要
中高齢寡婦加算は、40歳以上65歳未満で子のいない妻に支給される特別な加算です。
4.2 2025年度の金額
2025年度の中高齢寡婦加算は年額62万3,800円のため、約62万円とします。
年額:623,800円(月額約52,000円)
4.3 支給条件
以下のいずれかに該当する妻:
- 夫が亡くなったとき40歳以上65歳未満で、18歳年度末までの子がいない
- 遺族基礎年金を受給していた妻が、子が18歳年度末を迎えて遺族基礎年金が終了し、そのとき40歳以上
支給期間:40歳から65歳になるまで
5. 今回のシミュレーション前提条件
本シミュレーションでは、以下の前提で計算しています:
5.1 家族構成
- 妻の初期年齢:35歳
- 子①の初期年齢:6歳
- 子②の初期年齢:4歳
- 子③、子④:なし
5.2 基準額(2025年度)
- 遺族基礎年金:83.17万円/年
- 遺族厚生年金:41.1万円/年(例示値)
- 中高齢寡婦加算:62.38万円/年
- 子の加算額:23.93万円/年(第1子・第2子)
出典:
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「遺族年金ガイド 令和7年度版」
6. 年齢別受給額シミュレーション
6.1 妻35歳~47歳(子が18歳以下)
受給内容:
- 遺族基礎年金:83.17万円
- 遺族厚生年金:41.1万円
- 子①の加算:23.93万円
- 子②の加算:23.93万円
年金合計額:172.13万円/年(月額約14.3万円)
この期間は、子どもが2人とも18歳以下のため、遺族基礎年金と両方の子の加算を受けられます。
6.2 妻48歳~49歳(子①が18歳超、子②は18歳以下)
受給内容:
- 遺族基礎年金:83.17万円
- 遺族厚生年金:41.1万円
- 子②の加算:23.93万円 (子①は18歳を超えたため加算終了)
年金合計額:148.2万円/年(月額約12.4万円)
6.3 妻50歳~64歳(子が全員18歳超)
受給内容:
- 遺族基礎年金:0円(子が全員18歳超のため終了)
- 遺族厚生年金:41.1万円
- 中高齢寡婦加算:62.38万円
年金合計額:103.48万円/年(月額約8.6万円)
妻が40歳以上で18歳以下の子がいなくなったため、中高齢寡婦加算が開始されます。
6.4 妻65歳~90歳
受給内容:
- 遺族厚生年金:41.1万円
- 自身の老齢基礎年金:83.17万円(満額の場合) (中高齢寡婦加算は65歳で終了)
年金合計額:124.27万円/年(月額約10.4万円)
65歳からは、中高齢寡婦加算の代わりに自身の老齢基礎年金を受給します。
7. 生涯受給総額の試算
上記のシミュレーションをもとに、妻が90歳まで生きた場合の生涯受給総額を計算すると:
- 35~47歳(13年間):172.13万円 × 13年 = 約2,238万円
- 48~49歳(2年間):148.2万円 × 2年 = 約296万円
- 50~64歳(15年間):103.48万円 × 15年 = 約1,552万円
- 65~90歳(26年間):124.27万円 × 26年 = 約3,231万円
生涯受給総額:約7,317万円
8. 遺族年金の重要ポイント
8.1 非課税
遺族年金は所得税も相続税もかからないため、他の所得がない場合、確定申告や年末調整は不要です。
8.2 生計維持要件
亡くなった方と生計を同一にしていた、かつ前年の年収が850万円未満か所得が655万5,000円未満の遺族が支給対象者です。
8.3 受給権の優先順位
複数の遺族がいる場合、法律で定められた優先順位に従って、最も順位の高い方が受給します。
9. 2025年の制度改正(予定)
9.1 改正の概要
2025年度の遺族年金制度改正については、厚生労働省の社会保障審議会(年金部会)で詳細な検討が行われており、2028年4月からの施行が予定されています。
9.2 主な変更点
- 5年間の有期給付化 20代~50代に配偶者と死別した人で子がいない場合の遺族厚生年金は、5年間の有期給付に変更される予定です。
- 男女差の解消 実際に改正されれば年齢要件に係る男女差が解消されます。
- 中高齢寡婦加算の段階的廃止 中高齢寡婦加算は段階的に廃止される予定です。
- 子の加算額の増額 遺族基礎年金の「子の加算額」が増額され、現在の年間約23.5万円の加算から年間約28万円の加算になります。
注意:2025年3月時点で法案審議中であり、内容が変更される可能性があります。
10. シミュレーションツールの使い方
今回作成したExcelシミュレーションツールでは、以下のパラメータを変更することで、ご自身のケースに合わせた試算が可能です。
10.1 変更可能なパラメータ
入力変数(黄色セル):
- 妻の初期年齢(B2セル)
- 子①~④の初期年齢(B3~B6セル)
基準額(緑色セル):
- 基礎年金額(E2セル)
- 厚生年金額(E3セル)
- 中高齢加算額(E4セル)
- 子の加算額(E5セル)
10.2 計算の仕組み
すべてのセルは数式で連動しているため、入力値を変更するだけで以下が自動計算されます:
- 各年の妻と子の年齢
- 18歳以下の子の有無判定
- 各種年金額の支給可否
- 年金合計額
11. まとめ
遺族年金は、遺族の生活を支える重要な制度です。本シミュレーションで示したように、受給額は遺族の年齢構成や子の有無によって大きく変動します。
重要な確認事項
- 自身のケースでの受給額を事前に把握しておく
- 生命保険の必要保障額を適切に設定する
- 制度改正の動向に注意する
- 不明点は年金事務所に相談する
12. 参考資料・出典
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします ~年金額は前年度から1.9%の引上げです~」
- 日本年金機構「遺族年金ガイド 令和7年度版」
- 日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
- 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
- 厚生労働省「遺族年金制度等の見直しについて」
- 厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」
お問い合わせ先
ねんきんダイヤル
電話:0570-05-1165 受付時間:月~金 8:30~19:00、第2土曜日 9:30~16:00
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詳しくは日本年金機構のウェブサイトでご確認ください。
本記事の情報は2025年3月時点のものです。最新の情報は、必ず日本年金機構や厚生労働省の公式サイトでご確認ください。