• #年金
  • #遺族厚生年金
  • #計算式
  • #300月ルール
  • #シミュレーション
  • #報酬比例部分
未分類

遺族厚生年金の計算方法と実例シミュレーション

1. 遺族厚生年金とは

遺族厚生年金は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4が支給されます。

遺族厚生年金 = 報酬比例部分 × 3/4

2. 報酬比例部分の計算式

報酬比例部分は、平成15年(2003年)4月を境に計算方法が異なります。

2.1 基本計算式

報酬比例部分 = A + B

A = 平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 平成15年3月までの加入月数
B = 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 平成15年4月以降の加入月数

2.2 用語の説明

平均標準報酬月額(A式で使用)

  • 対象期間:平成15年3月まで
  • 内容:各月の標準報酬月額の平均
  • 注意:賞与は含まれない

平均標準報酬額(B式で使用)

  • 対象期間:平成15年4月以降
  • 内容:標準報酬月額と標準賞与額を合わせた平均
  • 計算方法:(標準報酬月額の総額 + 標準賞与額の総額)÷ 加入月数
  • 注意:賞与を含む

給付乗率の違い

  • 平成15年3月まで:7.125/1000 = 0.007125
  • 平成15年4月以降:5.481/1000 = 0.005481

なぜ乗率が違うのか? 平成15年4月から、賞与も厚生年金保険料の対象になりました。賞与からも保険料を徴収するようになったため、帳尻が合うように給付乗率を下げて調整されました。


3. 300月ルール(短期要件)

3.1 ルールの内容

厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。

これは「短期要件」と呼ばれ、加入期間が短い場合でも一定の年金額を保障するための制度です。

3.2 適用例

例1:加入期間が15年(180月)の場合

実際の加入期間:15年 = 180月
計算用加入期間:300月(25年とみなす)

例2:加入期間が30年(360月)の場合

実際の加入期間:30年 = 360月
計算用加入期間:360月(そのまま)

3.3 300月ルールが適用される条件

以下の場合に300月ルールが適用されます:

  1. 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
  2. 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
  3. 1級・2級の障害厚生年金を受け取っている方が死亡したとき

注意:老齢厚生年金の受給権者・受給資格者が死亡した場合(長期要件)は、実際の加入期間で計算し、300月ルールは適用されません。


4. 具体的な計算例

4.1 前提条件

今回のシミュレーションでは、以下の前提で計算しています:

入力パラメータ(Excelで変更可能)

  • 平均標準報酬額:35万円
    • これは平成15年4月以降の給与・賞与の平均月額
    • 例:月給30万円 + 年間賞与60万円(月換算5万円)= 35万円
  • 厚生年金加入期間:15年(180月)
    • 実際の加入年数
    • 300月未満なので、計算では300月とみなす

定数(2025年度基準)

  • 給付乗率:0.005481(5.481/1000)
    • 平成15年4月以降の乗率

4.2 計算過程

ステップ1:計算用加入月数の決定

実加入期間:15年 × 12月 = 180月
300月未満 → 300月とみなす
計算用加入月数:300月

ステップ2:報酬比例部分の計算

報酬比例部分 = 平均標準報酬額 × 給付乗率 × 計算用加入月数
            = 35万円 × 0.005481 × 300月
            = 35 × 0.005481 × 300
            = 57.5505万円
            ≈ 57.55万円/年

ステップ3:遺族厚生年金の計算

遺族厚生年金 = 報酬比例部分 × 3/4
           = 57.55万円 × 0.75
           = 43.1625万円
           ≈ 43.16万円/年
           ≈ 3.60万円/月

5. 元のExcelの41.1万円の根拠(逆算)

元のExcelファイルに記載されていた「41.1万円」を逆算してみます。

遺族厚生年金:41.1万円
報酬比例部分:41.1万円 ÷ (3/4) = 54.8万円

54.8万円 = 平均標準報酬額 × 0.005481 × 300月

平均標準報酬額 = 54.8万円 ÷ (0.005481 × 300)
              = 54.8 ÷ 1.6443
              = 33.33万円

結論:元のExcelは、平均標準報酬額33.33万円、加入期間300月という前提で計算されていたと推測されます。


6. 様々なケースでのシミュレーション

ケース1:一般的な会社員(月給30万円)

前提

  • 月給:30万円
  • 賞与:年間60万円(月換算5万円)
  • 平均標準報酬額:35万円
  • 加入期間:15年

計算

報酬比例部分 = 35万円 × 0.005481 × 300月 = 57.55万円
遺族厚生年金 = 57.55万円 × 3/4 = 43.16万円/年(月額約3.6万円)

ケース2:高収入の会社員(月給50万円)

前提

  • 月給:50万円
  • 賞与:年間120万円(月換算10万円)
  • 平均標準報酬額:60万円
  • 加入期間:20年

計算

報酬比例部分 = 60万円 × 0.005481 × 300月 = 98.66万円
遺族厚生年金 = 98.66万円 × 3/4 = 73.99万円/年(月額約6.2万円)

ケース3:長期勤続者(加入30年)

前提

  • 平均標準報酬額:40万円
  • 加入期間:30年(360月)→ 300月を超えているので実期間で計算

計算

報酬比例部分 = 40万円 × 0.005481 × 360月 = 78.93万円
遺族厚生年金 = 78.93万円 × 3/4 = 59.20万円/年(月額約4.9万円)

7. 計算式のExcelでの実装

7.1 セル配置

入力セル(黄色)

  • F4:平均標準報酬額(万円)
  • F5:厚生年金加入期間(年)

計算セル(グレー)

  • F6:計算用加入月数
    =IF(F5*12<300, 300, F5*12)
    

    → 25年未満なら300、以上なら実月数
  • F11:報酬比例部分
    =F4*F7*F6
    

    → 平均標準報酬額 × 給付乗率 × 加入月数
  • F12:遺族厚生年金
    =F11*3/4
    

    → 報酬比例部分の3/4

定数セル(緑色)

  • F7:給付乗率 = 0.005481

7.2 データテーブルでの参照

各年齢における遺族厚生年金額(I列)は、以下の式で参照:

=IF(H{行}="", "", $F$12)

→ 遺族基礎年金が支給されている間は遺族厚生年金も支給


8. 注意事項

8.1 平成15年3月以前の加入期間がある場合

今回のシミュレーションは簡略化のため、すべて平成15年4月以降の加入と仮定しています。

平成15年3月以前の期間がある場合の正確な計算式:

報酬比例部分 =
  平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 平成15年3月までの月数 +
  平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 平成15年4月以降の月数

より正確なシミュレーションが必要な場合は、年金事務所にご相談ください。

8.2 標準報酬額の上限

標準報酬月額には上限があります(2025年度:65万円)。 平均標準報酬額を入力する際は、この上限を考慮してください。

8.3 実際の年金額

実際に受給できる遺族厚生年金額は:

  • 死亡した方の厚生年金加入履歴
  • 各時点での標準報酬月額・標準賞与額
  • 物価スライド・賃金スライドによる調整

などにより決まります。正確な金額は、年金事務所で試算してもらうことをお勧めします。


9. 参考資料

公式資料

  • 日本年金機構「遺族年金ガイド 令和7年度版」
  • 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
  • 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」

計算式の根拠

  • 厚生年金保険法第43条(遺族厚生年金の額)
  • 厚生年金保険法第48条(報酬比例部分の計算)

10. まとめ

遺族厚生年金の計算の要点

  1. 基本式:遺族厚生年金 = 報酬比例部分 × 3/4
  2. 報酬比例部分:平均標準報酬額 × 給付乗率 × 加入月数
  3. 給付乗率:5.481/1000(平成15年4月以降)
  4. 300月ルール:25年未満は300月とみなす
  5. 変数:平均標準報酬額と加入期間を変えることで、様々なケースをシミュレーション可能

活用方法

今回作成したExcelツールでは、以下を変更することで、ご自身のケースに合わせた試算が可能です:

  • 平均標準報酬額(F4セル)
  • 厚生年金加入期間(F5セル)
  • 妻の初期年齢(B4セル)
  • 子の初期年齢(B5~B8セル)

すべての計算式が連動しているため、入力を変更するだけで自動的に再計算されます。


最終更新:2025年3月2025年度(令和7年度)の年金額基準による計算