SK Hynix に月次売上は存在しない — 韓国半導体輸出統計を代理指標にした「3層シグナル」チャートを実装した日
要点
/memory-makers/sk-hynix ページの年次まとめを四半期表示に作り直してもらう作業から始めて、途中で「SK Hynix は月次売上を開示しないのに、なぜアナリスト予想がほとんどズレないのか」という疑問に行き着いた。Claude Code に確認させたところ、Samsung 暫定実績・韓国輸出統計(KCS/MOTIE)・HBM 比率という外部データ3層が事実上のガイダンスとして機能していると分かり、その3層を月次チャートとしてページに実装させた。あわせて台湾側の月次売上カバレッジも棚卸しして、Macronix と ADATA の2銘柄を追加した。
1. 年次まとめを四半期10本分に作り直す
発端は SK Hynix ページの年次サマリだった。年単位だとサイクルの転換点が潰れて見えないので、「過去10四半期分、売上高・営業利益・純利益の推移を作ってくれませんか。あと EPS も」と頼んだ。
Claude Code は stockanalysis.com から10四半期分を取得したが、Q1 2026 の値が不自然に大きく、TTM 表記の混入を疑って別ソースと照合してから進めた。最終的に公式リリースと値が一致するのを確認して、types.ts への型追加 → データファイル作成 → [maker].vue への四半期業績セクション挿入まで通った。
途中、チャート上端で棒グラフが切れて見えた箇所があり、私は「2026年の2Qは取得できるはず」と口を挟んだが、これは私の勘違いだった。SK Hynix の最新開示は 1Q26(4/23 発表)で、2Q26 の発表は例年通りなら7月下旬。stockanalysis.com にも 2Q26 の行はまだ存在しなかった。10四半期は 4Q23〜1Q26 で正しい。
2. 「ほとんどズレてない。本当に予測?」— 疑問の発端
四半期データを眺めていて手が止まった。1Q26 の売上は52兆ウォン。一方、beat-monitoring 側で見ていた SK Hynix のアナリスト予想は51兆ウォン。誤差 +3% 程度しかない。
月次売上を出していない会社の四半期売上を、アナリストはなぜこの精度で当てられるのか。ガイダンスを出しているなら分かるが、beat-monitoring の 000660.json を Claude Code に読ませると、答えは明確だった。
"guidanceLabel": "韓国企業は四半期数値ガイダンス非開示のためn/a",
"guidance": null // 全四半期
SK Hynix は数値ガイダンスを出していない。それなのに +3% で着地する。
ここで Claude Code が「韓国輸出統計(관세청 / KCS)の半導体輸出が月次で出るので、SK Hynix 出荷の代理指標として月次トラッキング可能」と説明してきた。私は「本当ですか?」と返した。それと、「そんなに予測できないですって。ほとんどズレてないんですよ。本当に?」とも。AI の説明をそのまま飲まずに、この精度はガイダンスありの動きではないかという直感をぶつけた。
3. 調べ直しの結果 — 「+3% 精度」の正体は3層の外部データ
Claude Code が調べ直すと、私の直感は半分当たっていた。SK Hynix 自体がガイダンスを出していないのは事実。ただし、外部に事実上のガイダンスとして機能する高頻度データが3層あるのが「+3% 精度」の正体だった。
- Samsung Electronics の잠정실적(暫定実績): 四半期末の数日後に速報値が出る。同じメモリ市場で戦う Samsung の暫定実績が、SK Hynix のフェアリード(先行指標)になっている
- 韓国輸出統計(KCS/MOTIE)の半導体輸出: 月次どころか旬報(10日ごと)まで出る高頻度データ。Claude Code が掘ったら想像以上の頻度で開示されていた
- HBM 比率: 半導体輸出に占めるメモリ・HBM の構成比
アナリストはこの3層を組み合わせて四半期売上を逆算している。ガイダンスがなくても当たるのは予知能力ではなく、データの開示頻度の問題だった。
4. 3層を月次チャートとして実装させる
「じゃあその3つ、それぞれチャートにして月次で出してもらってもいいですか」と頼んだ。
ここで一度つまずいた。Claude Code がデータ取得を試したところ現実的な制約が見えてきたと報告してきて、3つのデータの取得難易度のサマリを提示された。私は A 案(取得しやすいデータで進める案)を選び、Explore エージェント2並列でデータ収集を走らせてもらった。
収集が終わったら「表示確認してほしいんですけど、ちょっと進めてみてください」と背中を押して、チャート用ヘルパーのユーティリティ追加 → [maker].vue への「3層シグナル」セクション追加(年次セクションの直後)→ CSS 調整 → ブラウザ確認まで一気に通った。実装が終わって報告を受けた時、私は「ごめん、どこのページかわかんないです」と訊き返している。URL は http://localhost:3000/memory-makers/sk-hynix。
仕上げに、このデータ取得方法を毎朝の /make-diary チェーンに組み込ませた。台湾月次売上の update-tw-monthly-revenue と同じパターンで、専用コマンド update-korea-chip-exports をユーザーグローバルに作成し、make-diary の Step 11.5 として登録。これで韓国の月次半導体輸出は毎朝自動で更新される。
5. 台湾サイドの棚卸し — Macronix・ADATA を追加
同じ日の朝のセッションでは、台湾の月次売上カバレッジを広げていた。「月次の売上が取れていない企業って他にまだありますか」と訊くと、Claude Code がメモリメーカー全体のリストから取得状況を整理して返してきたので、未取得の6銘柄をまとめて追加してもらった。
追加後にハブページを見て、ASE Technology のチャートが最新月まで埋まっていないのに気づいた。「これはまだ取れてないんですか?」「エリートもまだなのか」と確認すると、Ticker・銘柄・DB最新月・状態の表で状況を返してきた。月次開示のタイミングの問題で、こちらは状況が分かれば十分なので深追いしなかった。
代わりに「Macronix・ADATA この2つって見てましたっけ?」と訊いたら両方とも未登録だったので、追加を指示。FinMind から2銘柄のヒストリを取得して 2026-05 まで格納し、TS 生成 → makers.ts / registry.ts 更新まで完了した。
開いた ADATA のページには、2025年末から月次売上が垂直に立ち上がるチャートが映っていた。2026年1月 YoY +199%、5月 +210%。Macronix も同じく 2026 年から立ち上がっていて、5月は YoY +175.8%。メモリサイクルの加速が、追加したばかりの2銘柄のチャートにそのまま刻まれていた。
6. make-diary からポスト案5個出力を削除
細かい話だが、毎朝の /make-diary の末尾で出していた「ポスト案5個生成」のステップを削除してもらった。もう出力しなくていいと判断したため。後続ステップの再番号付けと、「step 10」「step 11」といった残存参照のチェックまで Claude Code がやってくれた。
学び
- AI の説明は「本当ですか?」で一度止める。 「KCS の輸出統計が代理指標になる」という説明はそのまま信じれば1行で終わったが、疑って調べ直させたことで「Samsung 暫定実績 + 旬報レベルの輸出統計 + HBM 比率」という3層構造まで掘れた。チャート3本という成果物の質が変わった
- 「予想が当たりすぎる」は開示構造を疑うシグナル。 ガイダンス非開示の会社にアナリスト予想が +3% で当たるなら、どこかに高頻度の代理データがある。今回はそれが国の輸出統計だった
- 取れたデータは即・毎朝のチェーンに載せる。 一度きりの取得で終わらせず、
update-korea-chip-exportsとして make-diary に組み込んだので、明日から手を動かさなくても更新される
関連リンク
- SK Hynix ページ(3層シグナルセクション):
/memory-makers/sk-hynix - 同日の台湾ODM記事: 台湾4大AIサーバーODM、2026年5月単月で揃って過去最高