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開発tokyo-onkeiメモ

音アーカイブの事業戦略 - 法的課題とマネタイズ転換

音アーカイブプロジェクトの収益化について本格的に考えた日。マネタイズ仮説の洗い出しから始めたが、駅構内録音の法的調査で大きな壁にぶつかり、方向転換を決めた。結果的に「消えゆく東京の音風景」というより強いコンセプトにたどり着いた。

マネタイズ仮説の整理

まずは収益化の可能性を7つの仮説として洗い出した。

  1. YouTube収益: 環境音・街歩き系の動画配信
  2. 音源販売: 映像制作向けの環境音素材としてのライセンス販売
  3. インタラクティブウェブコンテンツ: 地図連動型の体験コンテンツ
  4. AIデータセット: 環境音の学習データとしての提供
  5. サブスクリプション: 高品質音源への定額アクセス
  6. 企業・自治体向けライセンス: 観光・まちづくり用途
  7. 書籍・メディア展開: 音風景をテーマにした出版

この時点ではどれも可能性ありと考えていたが、次の法的調査でかなり絞り込まれることになる。

駅構内録音の法的調査

当初は駅の環境音(発車メロディや構内アナウンスを含む)を軸に考えていたので、まずJR東日本の公開情報を調べた。

調査でわかったこと

  • 施設管理権: 駅構内は私有地扱いで、管理者の許可なく商用録音はできない
  • 個人への許諾: JR東日本のFAQを確認したところ、個人への撮影・録音許可は原則出さない方針
  • 発車メロディの著作権: 作曲者・管理会社が存在し、著作権が明確に保護されている
  • 公道からの環境音: 駅の外(公道)から聞こえる音を録ることは自由。ただし駅構内に立ち入っての録音は話が別

つまり、駅の中で録音して収益化するのは法的にかなりハードルが高い。

既存の類似サービスの存在

駅メロディを再生できるウェブサービスが既にいくつか存在していた。現状は黙認されているようだが、あくまで非営利の範囲だから成り立っている印象。収益化に踏み込むと権利者から指摘される可能性が高い。

この調査結果から、駅ベースの音アーカイブで正面から収益化するのは避けるべきと判断した。

マネタイズ方針の転換

法的課題を受けて、コンテンツの軸を大きく転換した。

Before: 駅ベースの音(発車メロディ、構内環境音) After: 「消えゆく東京の音風景」(再開発エリア、木密地域などの環境音)

転換のポイントは以下の通り。

  • 再開発エリアの音: 取り壊し前の商店街、建て替え前の団地など、数年後には消える音
  • 木密地域の生活音: 都市計画で変わりゆく下町の日常の音
  • 環境音ベース: 特定の楽曲や著作物に依存しない、その場所の空気感そのもの

公道や公共空間で録る環境音なら、著作権や施設管理権の問題をほぼ回避できる。しかもコンテンツとして独自性が高い。

YouTubeベンチマーク調査

方向転換に伴い、環境音・街歩き系のYouTubeチャンネルを調査した。

調査したジャンル

  • 環境音チャンネル(雨音、カフェ音など)
  • 街歩き系チャンネル(日本の都市散歩)
  • ASMR系で環境音を扱うチャンネル

収益構造としては、広告収益のほかにメンバーシップやスーパーチャットを組み合わせているチャンネルが多かった。再生時間が長い(1-3時間)環境音動画は、BGM的に流しっぱなしにされるため広告表示回数が稼ぎやすい傾向がある。

具体的な数値は控えるが、ニッチジャンルながら一定の収益が見込めるレベルだと確認できた。

撮影・録音の装備検討

フィールドワークの装備構成を検討した。

機材の組み合わせ

  • 録音: TASCAM Portacapture X6(既に所有)
  • 映像: Sony a7C(既に所有)
  • サブ: スマホ(GPSログ・メモ用)

収録サイクル案

  • 歩行パート: 20-30分の街歩き録音(動画撮影と同時)
  • 定点パート: 15分の定点録音(三脚固定、特定スポットの音を集中収録)

これを1セッション約45分として、1日2-3セッション回す想定。バッテリーとストレージの制約を考えるとこのくらいが現実的。

「消えゆく音」のコンセプト

今回の方向転換で見えてきた一番の強みは、時間経過とともにコンテンツの価値が増すこと。

  • 再開発で消えた場所の音は、二度と録れない
  • 5年後、10年後に「あの頃の音」として希少性が生まれる
  • AI生成では代替できない「実際にそこにあった音」としての本物感

AI時代に差別化できるコンテンツとは何かを考えたとき、「その場所・その時間にしか存在しなかった音」はかなり強いポジションを取れる。デジタルコンテンツなのに時間とともに価値が上がるという、普通とは逆の特性を持つ。

庭園での定点撮影の着想

調べものの途中で、東京都内の日本庭園が定点撮影・録音スポットとして有望だと気づいた。

なぜ庭園か

  • 入場料が安い(無料〜数百円)のでコストが低い
  • 環境音が豊か: 水音、鳥の声、風、砂利を踏む音
  • 季節変化が大きい: 同じ場所でも四季で全く違う音になる
  • 映像映え: 動画のサムネイルや映像としても成立する
  • 競合が少ない: 庭園の環境音に特化したチャンネルはほぼ見当たらない

特に旧安田庭園のような隅田川沿いの庭園は、庭園の静けさと都市の環境音が混ざる独特の音風景がある。このニッチは狙い目だと感じた。

定点撮影の運用イメージ

  • 同じ庭園に月1-2回通い、季節の変化を記録
  • 「春の庭園」「梅雨の庭園」「秋の庭園」とシリーズ化
  • 1本30-60分の環境音動画として公開

ふりかえり

駅ベースで考えていたときは「面白いコンテンツが作れそう」という発想だったが、法的調査で壁にぶつかったおかげで、もっと面白いコンセプトにたどり着けた。「消えゆく音」は時間が味方になるコンテンツで、今始めることに意味がある。

庭園の着想はたまたまだったが、競合の少なさと始めやすさを考えると、最初のコンテンツ制作としてはちょうど良いスタート地点になりそう。

次のステップ

  • 都内の日本庭園リスト作成(録音条件の良い場所を選定)
  • テスト撮影・録音の実施(装備の使い勝手を確認)
  • YouTube チャンネルの初期設計(サムネイル・タイトルの方向性)
  • 再開発エリアの情報収集(消えゆく音の候補地リストアップ)