子どもに教えられる算数 — 🧮 計算編 / 第1章(全12章)
➕ たし算と引き算
「7+5はどうやって計算するの?」と子どもに聞かれたら、何と答えますか。すべての計算の出発点である「10のまとまり」の考え方から、筆算という発明の仕組みまでを言葉にできるようにします。
繰り上がりのたし算は「10の相棒」さがし
「7+5って、どうやって計算するの?」——大人は7+5=12を「見た瞬間に」答えられるので、 いざ聞かれると説明に困ります。指を折る、おはじきを並べる、いろいろな教え方がありますが、 ゴールは1つで、頭の中だけで答えを出せる(暗算できる)ようになることです。
そのゴールへの定番ルートが、今の教科書で広く使われている「さくらんぼ計算」です。 やることは1つだけ。足す数を2つに割って、先に「10のまとまり」を作るのです。 7+5なら、5を「3と2」に割ります。7と3で10。10と残りの2で12。 つまり繰り上がりの計算とは、「10の相棒」を探すゲームなのです。
つまずきの正体は「たして10」の練習不足
子どもがさくらんぼ計算で止まるポイントは、ほぼ決まっています。 「7と何で10になる?」が即答できないのです。 1+9、2+8、…、9+1という「10の相棒」ペアは全部で9通りしかありません。 ここがスラスラ言えないうちに繰り上がりへ進むと苦手意識だけが残るので、 つまずいていたらさくらんぼより前に「たして10」だけを練習するのが近道です。
🎛️ さくらんぼ計算ラボ — 10のまとまりを自分で作る
7 + 5 — 5 をいくつといくつに分けると、7 と合わせて10が作れる?
上の教具で、わざと間違った分け方も押してみてください。 「10にならない」体験をしてから正解を選び直すプロセスが、 そのまま子どもに教えるときのセリフ(「7の相棒はどれかな?」)になります。
参考: 原書 p.21
繰り下がりの引き算は「10から引いて戻す」
繰り下がりの引き算にも、さくらんぼ計算が使えます。ただし、たし算と違って道が2本あります。 15−8で考えてみましょう。
- 道1(引いてたす): 引かれる数15を「10と5」に割る → 10−8=2 → 2+5=7
- 道2(引いて引く): 引く数8を「5と3」に割る → 15−5=10 → 10−3=7
学校で主に教わるのは道1ですが、「いったん引いてから、こんどはたす」という方向転換を ややこしく感じる子もいます。その場合は道2を見せてあげてください。 こちらは「引いて、また引く」と方向が一定なので、すんなり入ることがあります。 どちらも「10のまとまりを経由する」点は同じで、 上の教具の「引き算」タブで2つの道を並べて確かめられます。
どちらを教えるべきか
結論は「子どもがつまずいていない方」です。方法の優劣ではなく、 2本の道があると知っていること自体が、教える側の余裕になります。 1つの教え方で詰まったときに「じゃあ別の道で行こう」と切り替えられるのは、 大人が仕組みを理解しているからこそです。
参考: 原書 p.26
たし算の筆算は「位ごとに分けて足す」発明
筆算は「位ごとに分けて計算する」ための道具です。 56+75を頭から計算しようとすると大変ですが、筆算なら 一の位どうし、十の位どうしという1ケタの計算の積み重ねに分解できます。 ではなぜ、その分解で正しい答えが出るのでしょうか。
いちばん伝わる説明はお金です。56円は10円玉5枚と1円玉6枚、75円は10円玉7枚と1円玉5枚。 一の位の計算は「1円玉を数える作業」、十の位の計算は「10円玉を数える作業」です。 そして1円玉が10枚たまったら10円玉1枚に両替する——これが繰り上がりの正体です。
筆算の小さな「1」のメモは、「両替した硬貨を1つ上の位に送りました」という伝票なのです。 位取り記数法(10集まったら1つ上の位に進む仕組み)を硬貨で体験させると、 筆算は「ルールの暗記」から「当たり前の手順」に変わります。
🎛️ 筆算ステッププレイヤー — 位ごとの処理を1手ずつ
「1手進む」で一の位から処理を始めます
参考: 原書 p.29
引き算の筆算の繰り下がりは「10の両替」
引き算の筆算も、同じお金のたとえで説明できます。52−18の一の位は「2−8」で引けません。 そこで隣の十の位から10円玉を1枚借りて、1円玉10枚に両替します。 1円玉は2+10=12枚になり、12−8=4。十の位は1枚貸したので5−1=4枚、そこから1枚引いて3。 答えは34です。
「借りる」より「両替する」と言う
繰り下がりは「上の位から1借りる」と教えられがちですが、「借りる」という言葉は 返さないといけない気がして、子どもには引っかかりやすい表現です。 実際に起きていることは貸し借りではなく両替—— 10円玉1枚と1円玉10枚は同じ金額で、表し方を変えただけです。 「10円玉をくずして1円玉10枚にした」と言い換えるだけで、 十の位の数字が1減る理由まで一気に納得できます。
上の筆算プレイヤーを「引き算」タブに切り替えて、305−187のような 0をまたぐ繰り下がりも1手ずつ追ってみてください。 どんな複雑に見える筆算も「引けないときは両替」の繰り返しでしかないことが分かります。
参考: 原書 p.33
少年ガウスの「1+2+…+100」一瞬の答え
ドイツの小学校で「1から100まで全部たしなさい」という問題が出されたとき、 のちに大数学者となる少年ガウスは、ほとんど時間をかけずに5050と答えたという逸話があります。 順番にたしていったのではありません。数列を逆向きにもう1本並べたのです。
1+100、2+99、3+98……縦に組むと、どの組も101。 この「形を変えると一瞬で数えられる」感覚は、第6章の面積公式(形を変えて長方形にする)や 第12章の場合の数(数え方を工夫する)にもつながる、算数の楽しさの原点です。
参考: 原書 p.41
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