子どもに教えられる算数 — 🧮 計算編 / 第3章(全12章)

🔸 小数計算

小数のたし算では小数点をそろえ、かけ算ではそろえない。この使い分けを「位をそろえる」「整数に直して戻す」という原理から説明できるようにします。

小3年〜

たし算・引き算で小数点をそろえるのは位をそろえること

小数のたし算・引き算の筆算では「小数点をそろえなさい」と教わります。 一方、かけ算の筆算では右端をそろえます。なぜ使い分けるのか—— この質問に答える鍵は、たし算・引き算が「同じ位どうしでしか計算できない」ことにあります。

「小数点をそろえる」の正体は「同じ位どうしを縦に並べる」 十の位一の位.小数第一位小数第二位3.4512.616.05 小数点の列(赤枠)をそろえれば、十・一・小数第一・小数第二の各位が自動的に縦にそろう 整数の筆算の「右端そろえ」も実は「一の位そろえ」——ルールは最初から1つしかない
図: 3.45+12.6の位取り表。小数点そろえ=位そろえであり、整数の筆算と同じ原理

3.45+12.6を位取り表に書くと、小数点をそろえること=同じ位を縦に並べることだと一目で分かります。 実は整数の筆算の「右端そろえ」も、一の位という同じ位をそろえているだけ。 つまりルールが2つあるのではなく、「位をそろえる」というルールが1つあるだけなのです。 12.6を12.60と見て空いた桁に0を補うと、引き算(例: 12.6−3.45)でも迷いがなくなります。

参考: 原書 p.77

小4年〜

小数のかけ算は「整数に直して、あとで小数点を打ち戻す」

小数のかけ算の筆算は、たし算と違って小数点をそろえません。手順はこうです。 3.4×2.6なら、①小数点を無視して34×26=884を計算 → ②小数点を打ち戻す。 打ち戻す位置は、かけられる数とかける数の小数部分のケタ数の合計(1+1=2ケタ)だけ 右から数えて、8.84です。

なぜ「あとで2ケタ戻す」のか

3.4を10倍して34に、2.6を10倍して26にしたので、積884は本当の答えの10×10=100倍になっています。 だから最後に100で割って(小数点を左に2ケタ動かして)元に戻すのです。 「整数の世界で計算して、借りた倍率を最後に返す」—— この説明ができれば、ケタ数を数えるルールは暗記ではなくなります。

小数のかけ算は、整数の世界に下りて計算してから帰ってくる 小数の世界3.4 × 2.68.84整数の世界34 × 26 = 884×10・×10 して整数の世界へ下りる100倍したぶん÷100 で打ち戻す ×10×10 で借りた100倍を、÷100(小数点を左へ2つ)で返すと 8.84
図: 3.4×2.6の往復図。整数の世界に下りて計算し、小数点を打ち戻して帰ってくる

参考: 原書 p.80

小4年〜

小数点の移動規則 — かけ算と割り算でどう違うか

7200×0.08のような計算を、まじめに筆算すると大変です。 小数点を「ダンス」させましょう。0.08の小数点を右に2ケタ動かして8にしたら、 7200の小数点を左に2ケタ動かして72に。72×8=576が答えです。

小数点の移動は、かけ算は「逆方向」・割り算は「同じ方向」 かけ算 — 逆方向に同じケタ数7200 × 0.08←左に2ケタ右に2ケタ→= 72 × 8 = 576片方を100倍したら、もう片方を1/100にして帳消し割り算 — 同じ方向に同じケタ数21.75 ÷ 2.9右に1ケタ→右に1ケタ→= 217.5 ÷ 29 = 7.5両方を同じ倍率にすれば、商(割合)は変わらない 丸暗記しない——「積を変えない」「商を変えない」ための移動だと理解する
図: 小数点の移動規則。かけ算は積を保つため逆方向、割り算は商を保つため同方向

覚え方は「かけ算は逆方向・割り算は同じ方向」ですが、理由とセットで覚えるのが肝心です。 かけ算は積を変えないために片方を100倍したらもう片方を1/100に(帳消し)。 割り算は商を変えないために両方を同じ倍率に(割合は不変)。 この「何を保ちたいか」の違いが、方向の違いになって現れているだけです。

参考: 原書 p.85

小5年〜

あまりの出る小数÷小数 — あまりの小数点だけ元の位置

小数÷小数の筆算は、割る数を整数にするところから始めます。 21.75÷2.9なら両方の小数点を右に1ケタ動かして217.5÷29に直し、あとは整数と同じ手順。 商の小数点は動かしたあとの小数点の位置をそのまま上げて7.5です。

あまりの小数点だけ「元の位置」

つまずきポイントは、あまりが出る場合です。 「28.7Lの水を1.5Lのペットボトルに詰めると何本できて何Lあまる?」—— 287÷15=19あまり2と計算したとき、答えは「19本あまり2L」ではありません。 小数点を動かしたのは計算の都合であって、実際の水の量は変わっていないからです。 あまりの小数点は動かす前の位置に戻して0.2L。検算(1.5×19+0.2=28.7)で確かめられます。 「商は新しい小数点、あまりは元の小数点」の理由まで言えると、ここはもう怖くありません。

商の小数点は動かした後、あまりの小数点だけ元の位置 28.7 ÷ 1.5 の筆算割る数が整数になるよう小数点を右へ1つ28.7 ÷ 1.5 → 287 ÷ 1519152872850.2小数点は動かす前の位置 → あまり 0.2ルールと検算商の小数点 → 動かした後の位置商 = 19あまりの小数点 → 動かす前の位置あまり = 2 ではなく 0.2検算すると元の式に戻る1.5 × 19 + 0.2 = 28.7 商は動かした後の小数点・あまりだけ元の小数点に戻す
図: 28.7÷1.5の筆算。商は動かした後の小数点、あまりの小数点だけ元の位置

参考: 原書 p.90

小5年〜

2÷0.4=5 — 1より小さい数で割ると答えが大きくなる理由

「2÷0.4=5って、割ったのに増えてない?」——これは小数の割り算で最も本質的な違和感です。 この違和感の正体は、割り算を「等しく分ける」イメージだけで捉えていることにあります。

2÷0.4は「2の中に0.4が何個入るか」——だから答えは2より大きい 2mのリボンを0.4mずつ切ると?0.4m0.4m0.4m0.4m0.4m全体で2m → 5本取れる = 2÷0.4=5等分除 — 等しく分ける6÷2 =「6を2等分するといくつ?」→ 3包含除 — 何個入るか数える6÷2 =「6の中に2は何個?」→ 3 「割ったのに増えた」と感じるのは等分除だけで考えているから——包含除を見せる
図: 2÷0.4のテープ図と、割り算が持つ2つの意味(等分除・包含除)

割り算には2つの顔があります。6÷2なら「6を2等分すると3」(等分除)と 「6の中に2が3個」(包含除)。2÷0.4は包含除で読んで 「2mのリボンから0.4mが何本取れるか」と考えれば、 5本という答えはむしろ当たり前です。切り分ける1本が短いほど、本数は増える—— 1より小さい数で割ると答えが大きくなる理由は、この一文に尽きます。

割り切れないとき — 1÷0.4=2.5の「0.5個」とは

包含除の読みが本当に身に付いたか試せるのが、割り切れないケースです。 1÷0.4——「1の中に0.4はいくつ入る?」。まるごと入るのは2個で、0.2mが残ります。 この残り0.2mは、0.4mのちょうど半分。だから「2個と0.5個分」で2.5です。

1÷0.4=2.5の「0.5」は、残りが0.4の半分という意味 1mのリボンから0.4mを切っていくと?0.4m(1個目)0.4m(2個目)残り0.2m=0.4の半分全体で1m まるごと入るのは 2個。残り0.2mは0.4mの半分=0.5個分 だから 1÷0.4 = 2個+0.5個分 = 2.5 商の小数部分は「割る数を1本とみたときの、残りの割合」 ※「2本取れて0.2mあまる」(あまりで答える)も正解。2.5と答えるか2あまり0.2と答えるかは問題が決める
図: 1÷0.4のテープ図。割り切れないとき、商の端数は「割る数の何割か」を表す

商の小数部分0.5は「割る数を1本とみたときの、残りの割合」を表しています。 ここまで言えれば、前のセクションでやった「あまりを0.2Lと答える」(あまり方式)と 「2.5と答える」(割合方式)が、同じ場面の2通りの答え方だということもつながります。 子どもが「2.5個入るでしょ?」と言えたら、包含除は完全に理解できています。

参考: 原書 p.96

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