子どもに教えられる算数 — 🧮 計算編 / 第2章(全12章)

✖️ かけ算と割り算

かけ算の筆算で2段目を左に1つずらすのはなぜか。0で割ってはいけないのはなぜか。「そういうルールだから」で済ませてきた問いに、分配法則と逆算の考え方で答えます。

小3年〜

2ケタ×1ケタの筆算は分配法則の縮図

12×6の筆算は「2×6=12を書いて1繰り上げ、1×6=6に1をたして7」という手順で72になります。 この手順の裏で動いているのは分配法則です。 12を「10と2」に分けて、それぞれに6をかけてからたす—— 式で書けば (10+2)×6 = 10×6 + 2×6 = 60+12 = 72。

12×6 の筆算は「分けてかけて、あとで合体」している 筆算で見ると12×672一の位: 2×6=12→ 2を書いて1繰り上げ十の位: 1×6+1=7→ 7を書く中身は同じ分配法則で見ると(10+2) × 6= 10×6 + 2×6= 60 + 12= 72 筆算の手順の正体は「10×6 と 2×6 に分けてかけて、合体」——分配法則の縮図
図: 12×6の筆算と分配法則の対応。筆算の手順=分けてかけて合体

筆算の「一の位から計算して繰り上げる」という動きは、 この分けてかけて、あとで合体を紙の上で機械的にやるための工夫にすぎません。 だから筆算を教えるときは、先に「12×6は、10×6と2×6に分けられるよね」と 分配のイメージを見せてから手順に入ると、丸暗記にならずに済みます。

参考: 原書 p.43

小3年〜

2ケタ×2ケタの筆算で段を左にずらす理由

2ケタ×2ケタの筆算で子どもが必ず聞いてくるのが 「2段目はどうして左に1つずらして書くの?」です。 答えはシンプルで、2段目は一の位の計算ではなく十の位の計算だからです。

たとえば34×26なら、1段目は34×6=204。2段目は34×2に見えますが、 この「2」は20のことなので、実際は34×20=680です。 680の一の位の0を省略して「68」と書くから、左に1つずれて見えるのです。 ずらしているのではなく、0を省略している——この一言で納得する子は多いです。 試しに2段目の右端に薄く0を書かせてみると、ずらす理由が腑に落ちます。

2段目が左に1つずれるのは「×20 の 0」を省略しているから 34×262046808841段目: 34×6=2042段目: 34×20=680薄い0は、ふだん省略される0 ずらしているのではなく、十の位の計算(×20)だから0を省略して左に1つずれる
図: 34×26の筆算。2段目は34×20=680で、右端の0を省略しているから左に1つずれて見える

参考: 原書 p.48

小3年〜

かけ算の筆算を軽くする数の分解ワザ

かけ算の筆算が「楽になる」場面が2つあります。どちらも0の性質を使うワザです。

ワザ1: 十の位が0の3ケタの数(708×34など)

708のように真ん中に0がある数のかけ算は、0に何をかけても0なので、 実質「7と8にだけかける」ことになり、九九の結果を書き並べるだけで筆算が進みます。 34×708のように逆順で出題されたら、かけ算は順番を入れかえても答えが同じ(交換法則)を使って 708×34に並べ替えてから筆算すると、繰り上がりが減って速く正確になります。

ワザ2: おわりに0がある数(9700×260など)

末尾の0はいったん外して、最後にまとめて付け直すのが定石です。 9700×260なら97×26=2522を計算してから、外した0を3個戻して2,522,000。 0を律儀に筆算に含めると行数が増えてミスの温床になるだけなので、 「0は あとのせ」と教えてあげましょう。

末尾の0はいったん外して、計算のあとに「あとのせ」する 例: 9700×260① 末尾の0を外す9700 × 260外した0は全部で3個 → 脇に置いておく0置き場0 0 0② 計算して、0をあとのせ97 × 26 = 25220置き場から3個もどす2,522,000 筆算するのは97×26だけ——0は個数だけ覚えて最後にのせる
図: 9700×260は、末尾の0を3個外して97×26=2522を計算し、最後に0をあとのせして2,522,000

参考: 原書 p.51

小3年〜

17×13を暗算する — 面積で見る分配法則

九九は9×9までしか覚えないのに、インドの小学生は19×19あたりまで暗算するという話があります。 実は17×13のような「10いくつ×10いくつ」は、特別な暗記をしなくても、 図1枚で説明できる方法で暗算できます。長方形の面積で見るのです。

🎛️ 面積で見る2ケタ×2ケタ — 分配法則を「広さ」にする

×= 221
107103100703021

17×13 = 100 + 70 + 30 + 21 = 221

慣れたら2口で: (17+3)×10 + 7×3 = 200 + 21 = 221

スライダーを動かすと、どの数でも「10×10の大部屋」と「端数の小部屋」に分かれることが見える。 これが分配法則 (10+7)×(10+3) の正体。

たて17・よこ13の長方形を「10と端数」で切ると、部屋は4つ。 100の大部屋、70と30の廊下、そして7×3=21の小部屋。合計221です。 慣れてきたら「(17+3)×10=200」と「7×3=21」の2口に圧縮できます。 これは分配法則 (10+7)(10+3) を絵にしただけなので、 中学で出てくる展開公式 (x+a)(x+b) の先取りにもなっています。

参考: 原書 p.55

小3年〜

0のかけ算・0を割る割り算が0になる理由

「0×5=0」「0÷5=0」は、ルールとして覚えさせるより、お金の例で一発です。

  • 0×5: 1個0円のみかんを5個買ったら? — 合計0円。0にどんな数をかけても0
  • 5×0: 1本50円のえんぴつを0本(1本も買わない)なら? — 合計0円。どんな数に0をかけても0
  • 0÷5: 0個のあめを5人で分けたら1人何個? — もちろん0個
0がからむかけ算と「0を割る」割り算は、答えが必ず0 0×5(0円×5個)1個0円のみかんを5個買うと?0+0+0+0+0= 0円50×0(50円×0本)1本50円のえんぴつを0本(1本も買わない)なら?50円は一度も発生しない= 0円0÷5(0個÷5人)0個のあめを5人で分けると?配るものが何もない= 1人0個 式の中に「×0」「0×」「0÷」を見つけたら、計算せずに答えは0
図: 0のかけ算と0を割る割り算をお金の例で見る。0がからむかけ算・0を割る割り算は必ず0

この性質はテストの時短にも直結します。長いかけ算の式の中に「×0」が1つでも入っていたら、 計算せずに答えは0。「×0を探すクセ」は教えてあげる価値があります。

参考: 原書 p.60

発展

0で割ってはいけない本当の理由

「0で割ってはいけません」は、算数で数少ない「禁止」として教わります。 でも理由を説明できる大人は少数派です。 ポイントは、割り算の答えはかけ算で決まっているということ。 6÷2=3が正しいのは、2×3=6だからです。

割り算をかけ算に戻すと、0で割る式は答えを決められない 5÷0=□ の場合かけ算に直すと0 × □ = 50に何をかけても0にしかならない→ あてはまる数が「ない」0÷0=□ の場合かけ算に直すと0 × □ = 0どんな数を入れても成り立ってしまう→ 答えが1つに「決まらない」 答えが「ない」か「決まらない」——だから0で割ることは定義しない
図: 「0で割ってはいけない」のは禁止ルールではなく、答えを定義できないから

5÷0の答えを□とすると、0×□=5になる□を探すことになりますが、 0に何をかけても0なので、そんな□は存在しません。 0÷0なら0×□=0で、こんどはどんな数でも成り立ってしまう。 「答えがない」か「答えだらけで決まらない」——どちらにしても割り算として成立しないので、 0で割ることは最初から「定義しない」ことになっているのです。 電卓に5÷0と打つとエラーになるのは、この事情をそのまま反映しています。

参考: 原書 p.63

小4年〜

割り算の筆算 — たてる・かける・ひく・おろす

割り算の筆算は、たし算・引き算・かけ算の筆算と見た目がだいぶ違うので、 「別の生き物」に見えます。でも中身は 「たてる→かける→ひく→おろす」の4拍子をひたすら繰り返すだけの機械です。

割り算の筆算は「たてる→かける→ひく→おろす」の4拍子の繰り返し ① たてる商の見当をその位に書く② かける割る数×商を下に書く③ ひく引き算してあまりを出す④ おろす次の位の数字を横に下ろす次の位でも同じ4拍子を繰り返す 92÷4: ①十の位に2をたてる ②4×2=8 ③9−8=1 ④2をおろして12 ①一の位に3をたてる ②4×3=12 ③12−12=0 → 答え 23
図: 割り算の筆算の4拍子。何ケタになっても同じサイクルの繰り返しでしかない

92÷4なら、十の位で1周(2をたてる→8→1→2をおろす)、一の位でもう1周(3をたてる→12→0)。 意味としては「92を、まず10のたばで4人に2たばずつ配り、残った12をバラで3個ずつ配る」という 上の位から順に配っていく作業です。 4拍子の口ぐせ(たてる・かける・ひく・おろす)を声に出しながら進めると、 どこで止まっているのかも見つけやすくなります。

参考: 原書 p.66

小4年〜

商の見当を1回で当てる四捨五入のコツ

割り算の筆算で最後に残る壁が「商の見当」です。4592÷56の十の位に何をたてるか。 概数(四捨五入や切り捨て)で見当をつける方法を教わりますが、 概数はあくまで「近い数」なので、見当が外れて立て直しになることがあります。

商の見当は概数より「2ケタ×1ケタの暗算」が1回で決まる 例: 4592÷56 — 「459÷56」の商はいくつ?(正解は8)四捨五入で概数460÷60 = 7あまり40→ 商7と見当あまり67が割る数56より大きい → 小さすぎて外れたてなおしが必要一の位を切り捨て450÷50 = 9→ 商9と見当56×9=504 が 459 より大きい → 大きすぎて外れたてなおしが必要2ケタ×1ケタの暗算56×□が459を超えない最大の□を直接探す56×8=(50+6)×8=448→ 商8が1回で決まるたてなおし不要 概数は「近い数」を見るが、暗算は「答えそのもの」を探すから外れない ※ 概数・切り捨てでも1回で当たる場合はある。確実に1回で決めたいなら暗算
図: 商の見当のつけ方3通りの比較。2ケタ×1ケタの暗算(分配法則)が決定打になる

1回で決めたいなら、回り道に見えても2ケタ×1ケタの暗算です。 「56×□が459を超えない最大の□」を直接探す——56×8=(50+6)×8=400+48=448で、8に決定。 この暗算は第2章の最初に出てきた分配法則そのものなので、 「かけ算の分配法則の練習が、割り算の最難関を解決する」という章のまとめにもなっています。

参考: 原書 p.70

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