ジェンセン・ファンCES 2026「世界最大のストレージ市場になる」発言の英語原文
結論
ジェンセン・ファンの発言は事実。ただし、日本語で「新しい市場を作った」と訳されているものは、原文では「まだ存在しない市場で、将来最大になる可能性がある」という未来形のニュアンス。
英語原文
CES 2026 Financial Analyst Q&Aセッション(2026年1月6日)での発言:
"For storage, that is a completely unserved market today. This is a market that never existed, and this market will likely be the largest storage market in the world, basically holding the working memory of the world's AIs."
日本語訳との比較
| 原文 | 直訳 | よくある意訳 |
|---|---|---|
| completely unserved market | 完全に未対応の市場 | 新しい市場 |
| market that never existed | 今まで存在しなかった市場 | 市場を作った |
| will likely be the largest | 最大になる可能性が高い | 最大になる |
「市場を作った」という過去形の訳は意訳であり、原文は「これから作られる」という未来形。
市場の反応
この発言を受けて、ストレージ関連銘柄が急騰:
| 銘柄 | 上昇率 | 備考 |
|---|---|---|
| Sandisk | +28% | S&P 500で当日1位 |
| Seagate | +14% | 過去最高値$332を記録 |
| Western Digital | 二桁上昇 | - |
Morgan Stanleyによると、DRAM価格は2026年Q1に前四半期比40〜70%上昇、NAND価格は30〜35%上昇の見通し。
なぜSandisk・Seagate・WDが上がったのか
実は、これらの企業はNVIDIAの公式パートナーリストに入っていない。
NVIDIAが発表した「Inference Context Memory Storage Platform」の公式パートナーは以下の通り:
AIC, Cloudian, DDN, Dell Technologies, HPE, Hitachi Vantara, IBM, Nutanix, Pure Storage, Supermicro, VAST Data, WEKA
これらはストレージシステムベンダー(組み立てて売る会社)であり、Sandisk・Seagate・WDはコンポーネントメーカー(中身の部品を作る会社)。
構造を整理すると:
NVIDIA (BlueField-4 プラットフォーム)
↓ 制御
Pure Storage / Dell / HPE など (ストレージシステム)
↓ 中身に使う
Sandisk / Seagate / WD (フラッシュチップ・SSD)
つまり:
- NVIDIAはストレージを作らない。KVキャッシュを高速に扱うプラットフォーム(BlueField-4)を提供
- ストレージシステムはDellやPure Storageなどが構築
- その中身のフラッシュチップやSSDをSandisk・Seagate・WDが供給
ジェンセンが「まったく対応されていない市場で、世界最大のストレージ市場になる」と発言したことで、「フラッシュストレージ全体の需要増→部品メーカーも恩恵を受ける」という連想で買われた。直接のパートナーシップではなく、間接的な恩恵への期待による株価上昇。
背景:なぜストレージが重要か
同じQ&Aセッションで、ジェンセンは以下の点を説明:
- 推論量の急増により、コンテキスト/トークンメモリとKVキャッシュのスループットが急増
- 既存のストレージアーキテクチャが限界に到達
- 「新しいストレージ階層」として大きな市場が形成される可能性
Rubinプラットフォームでは、各GPUに16GBのフラッシュストレージを割り当てる「KVキャッシュ」という新しいストレージソリューションが導入される。
KVキャッシュ問題の技術的背景
LLMのアテンション機構は、過去のトークンに対するKey-Value(KV)ペアを保持する必要がある。コンテキストが長くなるほど、このKVキャッシュは肥大化する。100万トークンのコンテキストでは、KVキャッシュだけで数百GBに達することもある。
従来、KVキャッシュはGPUのHBM(High Bandwidth Memory)上に置かれていた。しかしHBMは高価で容量に限りがある。
BlueField-4の「Inference Context Memory Storage Platform」は、この問題にGPUの「外」から対処する。KVキャッシュを専用ストレージ(NVMe SSD)に逃がし、必要なときにGPUに供給する。
NVIDIAの二段構え戦略との整合性
NVIDIAの推論戦略は「二段構え」と分析されている。
第一段階:Rubin世代(2026年)— GPUの「外側」の最適化
- 6つのチップの協調設計で推論効率を引き上げる
- BlueField-4のInference Context Memory Storage PlatformでKVキャッシュを最適化
- GPUコア設計は従来を継承しつつ、周辺チップで経済性を改善
この戦略において、ストレージは「GPUの外側」の最適化の中核を担う。
第二段階:Feynman世代(2028年)— GPUの「内側」の再設計
- 3D積層SRAMでAlways-on Weightを常駐
- Groqの決定論的アーキテクチャを統合
- デコードの根本問題(演算器の稼働率)を解決
ストレージ需要が増える構造
推論需要の増加
↓
KVキャッシュの肥大化
↓
GPUのHBMだけでは容量不足
↓
BlueField-4でNVMe SSDにオフロード
↓
フラッシュストレージ需要の増加
↓
Sandisk / Seagate / WD が恩恵
つまり、ジェンセンの「世界最大のストレージ市場になる」発言は、このKVキャッシュ問題を背景にしている。推論が増えるほど、KVキャッシュのストレージ需要は増える。これが「まったく対応されていない市場」であり、フラッシュストレージメーカーの恩恵につながる。
出典
- Wall Street's key takeaways from Jensen Huang's speech at CES - Sherwood News
- Seagate Touches All-Time High - Insider Monkey
- Sandisk's 1,000% Rally Gets Turbocharged - Yahoo Finance
- Nvidia pushes AI inference context out to NVMe SSDs - Blocks and Files
- NVIDIA BlueField-4 Powers New Class of AI-Native Storage Infrastructure - GlobeNewswire