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モールス符号の並び順に規則性はあるか

モールス符号の二分木を眺めると、アルファベットは ABC 順ではなく T, E, M, N, A, I... という順序で並んでいる。この並びは一見ランダムに見えるが、明確なルールがある。

符号そのものが木の位置を決める。 左に進むとダッシュ(ー)を追加、右に進むとドット(・)を追加する。各文字の符号をたどれば、木の中の位置が一意に決まる。

二分木の構造

               START
              /     \
           ー(-)    ・(dot)
            /         \
           T           E
          / \         / \
        ー   ・     ー   ・
        /     \     /     \
       M       N   A       I
      (--)  (-・) (・-)   (・・)
文字符号木での経路
T-START → 左
ESTART → 右
M--START → 左 → 左
N-・START → 左 → 右
A・-START → 右 → 左
I・・START → 右 → 右

符号が短い文字ほど木の上(浅い位置)にある。1符号の文字は2つ(T, E)、2符号は4つ(M, N, A, I)、3符号は8つ(O, G, K, D, W, R, U, S)と、深さが1増えるごとに最大数が倍になる。

頻度と符号長の関係

サミュエル・モールスは1830年代に符号を設計する際、英語で使用頻度の高い文字に短い符号を割り当てた。これはシャノンの情報理論(1948年)よりも100年以上前の直感的な最適化だった。

順位文字英語での頻度符号符号長
1E約13%1
2T約9%-1
3A約8%・-2
4O約7.5%---3
5I約7%・・2
6N約7%-・2
7S約6%・・・3

E と T の2文字だけで英文の約22%を占めるため、この2文字が最短の1符号で表現される。

ただし完全に頻度順ではない。O は頻度3位だが符号は3つ(---)と長め。1830年代の設計当時の判断であり、現代の頻度分析とは完全には一致しない。

ハフマン符号との比較

モールス符号の設計思想は、後にデイヴィッド・ハフマンが1952年に体系化したハフマン符号と本質的に同じ考え方。頻度の高いシンボルに短い符号を割り当てることで、全体の伝送効率を最大化する。

ハフマン符号は最適な可変長符号を数学的に導出するアルゴリズムだが、モールス符号はそれを経験的に先取りしていたと言える。

和文モールスとの違い

和文モールス(日本語)は国際モールスとは別体系で設計されている。

  • (1符号)
  • -(1符号)

「へ」や「む」が日本語で最頻出というわけではない。和文モールスは国際符号との互換性や運用上の都合を優先して設計されたため、頻度最適化の原則は英語版ほど明確ではない。

実際のモールス通信で使われる表現

SOSが最も有名だが、実際の無線通信ではさまざまな定型表現が日常的に使われている。

緊急信号

信号符号意味
SOS・・・ --- ・・・遭難信号。1906年に国際標準として採用
CQD-・-・ --・- -・・SOS以前の遭難信号。タイタニック号(1912年)が最初にCQDを、次にSOSを発信した

SOSは「Save Our Souls」の略と言われることがあるが、実際には略語ではない。・・・ --- ・・・ という符号パターンが聞き取りやすく打ちやすいために選ばれた。

アマチュア無線の定型略語

アマチュア無線(ハム)の世界では、モールス符号による電信(CW: Continuous Wave)が今も活発に使われている。

略語符号意味
CQ-・-・ --・-「誰か応答してください」不特定多数への呼びかけ
DE-・・ ・「こちらは〜」発信者を名乗るときに使う
K-・-「どうぞ(送信をお願いします)」
73・・・-- ---・・「よろしく」(Best regards)
88---・・ ---・・「愛と接吻」(Love and kisses)

実際の交信例

CQ CQ CQ DE JA6OLU JA6OLU K

「どなたか聞こえますか。こちらJA6OLUです。どうぞ」という呼びかけ。CQ を繰り返して注意を引き、DE で自局のコールサインを名乗り、K で応答を促す。これがモールス交信の最も基本的なパターンになる。

Q符号

国際的な略号体系として「Q符号」がある。Qで始まる3文字の組み合わせで、言語に関係なく意思疎通できる。

Q符号意味
QTH「あなたの位置は?」/「私の位置は〜です」
QSL「了解しました」
QRM「混信がありますか?」
QRZ「誰が呼んでいますか?」

インタラクティブなツリー表示

このサイトのモールス信号学習ツールでは、二分木をインタラクティブに操作できる。ノードをクリックすると対応する符号が光と音で再生され、ツリー上の探索パスがアニメーションで可視化される。「SOS」や「CQ」などの定型フレーズをワンクリックで連続再生し、ツリー探索の流れを確認することもできる。