ランチェスター戦略の競合診断をClaude Codeの2段スキルにして自分の事業で実機テストした
ランチェスター戦略の競合診断をClaude Codeの2段スキルにして自分の事業で実機テストした
蔵書データベースに入れてある戦略理論の1冊を読み込ませて、法則のまとめと事例集のレポートを作らせた。 図解を5枚付けさせ、右側にスクロール追従の目次を出し、ブラウザで表示するところまでやらせた。 読み物としては整っている。
理論の核は一点に集約できた。 勝敗は総力ではなく局面ごとの力関係で決まる。 そこから弱者の差別化と一点集中、シェアの数値基準が全部演繹されている。
構造は分かった。分かっただけだった。 このレポートからは、自分の事業で明日何をするかが一行も出てこない。
スキルにするなら、事業計画のどの工程に置くか
そこで聞いてみた。 事業計画書を作るときのスキルにするなら、どういう設計になり得るか。
返ってきた見立ては、知識リファレンス型ではなくワークフロー型になる、というものだった。 診断して、処方して、数値に分解する。
見立てには同意したうえで、後ろ半分を削ることにした。 数値計画も行動分解も月次モニタリングも、この理論に固有の話ではない。 どこの計画づくりでも同じことをやる。 理論が効くのは現状診断と戦略策定の2工程だけだ。 シェア26%のような数値基準も、目標値ではなく「未満なら弱者」という判定に使うものなので、診断側に溶かせる。
適用範囲を現状診断と戦略策定の2つに絞らせた。
競合調査は外部AIのDeep Researchに外注する形にした。 差別化の6つの切り口(理念、市場、商品、価格、販路、販促)をそのまま設問軸にして、競合各社を同じ軸で埋めさせる。 自分で検索して回るより速いし、設問を固定しておけば比較できる形で返ってくる。
自社の棚卸しと局面診断を2段に分けた
出来上がったのは1本ではなく2本のスキルだった。
- 自社の戦力を棚卸しして「自社プロファイル」を作るスキル
- 戦場を定義して競合と比較し、差別化仮説を出すスキル
分けた理由は更新頻度の違いにある。 自社の棚卸しは、事業そのものが変わったときにしか更新しない。 局面診断のほうは戦場ごとに何度も回す。 1本にまとめると、局面を変えるたびに自社の情報を聞き直すことになる。 プロファイルを独立させておけば、複数の診断で使い回せる。
自分のコンテンツ事業を題材に実機テストした
同じ日の別セッションで実機テストに入った。 題材は自分のコンテンツ事業にした。 制作会社の社長が自分で使うスキル、という設定にして手持ちを棚卸しさせた。
サイト群、動画講座、電子書籍、直近に動いていたリポジトリ。 ディスクと公開面から確認できるものは読ませて埋めさせ、埋まらない項目だけ質問票にまとめて返させた。
事業の自己定義と「なぜやっているか」は自分で答えた。 AIが出る前は、分かりやすい教材を作ること自体が難しかった。 インタラクティブな教材もなかった。 だから、そこに手を入れれば分かりやすくなるという仮説を持ってプログラムを書いていた。 この動機はどのデータにも書いていない。
検索流入の実測も取りに行かせたが、こちらは空振りだった。 Search Console にドメインプロパティが無く、URLプレフィックス型も仕事用アカウントでは未検証だった。 結局、個人アカウント側でしか開けなかった。
「戦場を1つ選べ」に「全部やれ」と返した
診断側のスキルに進むと、戦場を1つ固定しろと言ってきた。 候補のマトリックスまで描いたうえで、捨てるのではなく順番を決めるだけだと説明された。
ここで引っかかった。 調査を人間がやるなら1つに絞る意味がある。 時間も体力も有限だからだ。 エージェントに投げるなら、調査コストはほぼゼロになる。
分岐していいので全パターンで診断して、と返した。 3局面ぶんのリサーチプロンプトを同時に作らせ、下調べのエージェントも3体並列で走らせた。 下調べはマークダウン3本で返ってきたが、並べて読み比べられない。 1本のHTMLに結合させ、目次から各局面に飛べる形にしてブラウザで開かせた。
Deep Research が空のまま3本走った
Deep Research は自分で貼りに行くつもりだった。 途中で、ブラウザ操作のスキル経由でClaude Codeから直接投げられることに気づいた。 任せた。
3本を投入させ、進行中であることを画面で確認させたところまでは順調だった。 結果が返ってきて、様子がおかしい。
レポートの冒頭に「調査テーマが指定されていないため」と書かれていた。 3本とも、プロンプト本文が乗らないまま空リクエストで走っていた。 返ってきたのは生成AIの動向といった汎用テーマの調査で、競合の話は一行も無い。 Deep Research の実行枠を3回ぶん捨てたことになる。
原因は、Deep Research モードでは空の入力欄でも送信ボタンが押せてしまうことだった。 ブリッジ経由で差し込んだテキストが画面に反映されないまま、送信だけが通っていた。
同じ事故を二度やりたくないので、スキル側に書き残させた。 入力欄の中身を検証せずに送信しない。 これを禁止事項として明記させ、実証できた正しい手順を並べさせた。 書いた先は2か所ある。常時ロードされるスキル本体と、ブラウザ拡張側のレシピだ。
再投入では、貼り付けた文字数を検証してから送信させた。 1,712文字、1,977文字と数えさせ、送信後にユーザーメッセージ本文が載っていることも目視で確認させた。 確認できた2本は12分ほどで完了し、引用は39件と58件が付いていた。
検討結果はHTMLで読み、判断はボタンで返す
返ってきたレポートは、そのまま信じない設計にしてある。 数値と固有名をスポットチェックさせたら、ある書籍シリーズの発行部数がレポートと出版社表記で食い違っていた。 検証ノートに残させた。
ポジショニングマップを4枚描かせ、差別化仮説を出させ、統合レポートにまとめさせた。 そのうえで判断が要る項目が4件出てきた。 ターミナルの選択肢では前提を読みながら選べないので、レポートHTMLに3択ボタンを埋め込ませ、ローカルの決裁サーバーで受け取る形にした。
4件とも推奨案のまま返した。 コメント欄には何も書かずに送信した。
「結局どう進めばいいのか」が成果物から読み取れない
全工程が終わったと報告が来た。 確定版のHTMLを開いて、最初に聞いたのはこれだった。
結局診断した結果、どこにどう進めばいいっていうことなんですか?
口頭では一言で返ってきた。 主力を1つに寄せ、1つは数か月後に仕込みを始め、1つは最小メンテで守る。 ではそれはレポートのどこに書いてあるのか。 節番号がいくつも返ってきた。 散らばっている。
成果物を開いた人間が最初に知りたいのは「で、どうすればいいのか」だ。 それが節をまたいで散っているなら、書いていないのとあまり変わらない。
レポートの冒頭に結論セクションを新設させた。 一言の方針と、優先度、局面、戦略、やること、最初の一歩を並べた一覧表を置かせた。 表の中に出てくる「24本」のような数字は、何を指すのか本文だけで分かるように内訳を書かせた。 元の計画書の該当セクションへのリンクも張らせ、実際にクリックして着地まで確認させた。
テストで分かったことをスキルに戻す
3つ目のセッションでスキルの改訂に入った。
一番大きく変えたのは局面の扱いだ。 テスト中に「戦場を1つ選べ」と言われたときに全部やらせた分岐を、そのまま既定に昇格させた。
3局面同時の方が別にそんなコストかかんないから(中略)調査とかはほぼゼロコストでできるわけじゃないですか、人間のね。
局面の選別を途中でユーザーに求めない。 複数候補は全部同時に走らせ、判断は最後の横断比較に一度だけ集約する。 これを既定に書き換えさせた。 3ファイル4箇所で済んだ。
ほかにテストから戻したものが3つある。
- 事前準備資料リスト。デューデリジェンス前の資料依頼リストに相当するものを作らせ、両スキルに受付とチェックのフローを組み込ませた
- プロファイルの3値マーク。✅はこのセッションで確認済み、🔶は本人申告で未検証、❓は不明。診断側がこのマークを見て事実の重みを変える
- 決裁後の説得スライド。経営者を説得する立場で10枚の紙芝居を作らせたら形になったので、成果物の標準に加えさせた
スライドに出てきた「止まっている先行者」の正体
そのスライドの1枚に、こう書いてあった。
数値を動かして学ぶ型の先行者は止まっている。2020年更新停止
誰のことか分からなかったので聞いた。 元データまで遡って照合させたら、その先行者は自分だった。 数年前に出した自分の動画講座のことだった。
競合リサーチの結果に自社が混ざり、そのまま「先行者は止まっている、だからそこは空いている」という仮説の根拠になっていた。 レポートと検証ノートとスライドに訂正を入れさせ、スキルには失敗モードとして横展開させた。 競合リストを作る前に自社の資産を除外する、という一行を足した。
外から見れば当然の結果ではある。 公開してある以上、検索結果には自社も他社も同じ顔で並ぶ。 それを弾く仕事は、外部リサーチではなく自社プロファイル側にある。 棚卸しを別スキルとして切り出していたので、その置き場所には迷わなかった。
理論のレポートを作らせた朝に戻ると、あのとき足りなかったのは要約ではない。 自分の手持ちを競合と同じ軸で並べる工程だった。