アイデアと企画は何が違うのか。岡田斗司夫が語る「通る企画」の3条件(市場性、著者適性、意欲)

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アイデアと企画は何が違うのか。岡田斗司夫が語る「通る企画」の3条件

岡田斗司夫が、1人5万円の出版企画セミナーで話した中身をニコ生(ニコニコ生放送)で明かした動画がある。 結論は3つに絞れる。 企画には市場性(なぜ今売れるのか)、著者適性(なぜ自分が書くのか)、意欲(最後まで書き切れるのか)が要る。 この3つがそろって初めて、思いつきは企画になる。

手元にあった動画は「最後のこの意欲っていうのは……」で切れていた。 残りは YouTube の切り抜き動画2本で確認し、この記事で補った。

先に結論

  1. 市場性。その企画が「なぜ売れるのか」を、編集者が納得できる形で説明できること。良い本だから売れるのではない。
  2. 著者適性。「なぜ自分が書くのか」を裏づける実績があること。何年も積み上げた体験や研究がなければ、最初の読者である編集者は納得しない。
  3. 意欲。最後まで書き切る人だと編集者に信頼されること。企画書ではなく、面談でちゃんと喋れるかで見られる。

アイデアと企画の違いもここから出てくる。 アイデアは「こういうのを思いついた」で止まっている。 そこに市場性と「私がやる理由」を足した時点で、アイデアは企画になる。

セミナーの背景

この話は、岡田がその日の夕方6時まで大阪で開いていた出版企画セミナーの報告として語られた。 3時間のセミナーで参加費は1人5万円、参加者は4人に限定していた。 普段の岡田のイベントは500円から3000円、例外的に5000円までだったというから、桁が違う。

高いのには理由がある。 セミナー本編よりも、後のフォローに手間をかける設計だからだ。 出版社に持ち込まれる企画書が通る確率は、岡田によれば200人か300人に1人いるかいないかである。 一方で、出版関係者が間に入った企画は通りやすい。 紹介する側が、絶対に通らない企画書を事前にふるい落としているからだ。 だからセミナーでは、まず「通る企画とはどんなものか」を講義し、その後に参加者一人ひとりの企画を3時間かけて聞いた。

以下の3条件は、その講義の中身である。 岡田自身は「あらゆる企画の共通項」だと言っている。

条件1: 企画の市場性

市場性とは、その企画がどれくらい売れそうか、である。 企画にこれが含まれていないと通らない。

セミナー当日に持ち込まれた例が「手話は素晴らしいから広めたい」という企画だった。 これは市場性がない。 普通に手話の本を出しても、書店では福祉のコーナーに置かれて終わる。

岡田が対比として挙げたのは、こんな状況だ。 耳が聞こえず口もきけない人がノーベル賞のような大きなことを成し遂げ、インタビューで手話で語る。 その姿が美しかった、と話題になる。 そうなれば「自分も手話をやってみたい」という人が世の中にあふれ、その瞬間なら企画は通る。 つまり、外部からの流行のようなものがない限り、市場性は生まれない。

岡田が強調したのは、「いい本が売れる」のではない、という点だ。 出版社はどこも経営が厳しい。 なぜそれが売れるのかを説明できないと、編集者が納得できない。

岡田自身の分野であるアニメ評論の例も出ている。 岡田ですら、宮崎駿やジブリのような必ず売れる題材の本しか出していない。 売れる本とは、書店が置きたがる本であり、話題になると分かりきっているものだ。 だから無名の新人がアニメ評論を書きたいなら、アニメ全般の評論ではなく、特定のアニメ1本の評論本にする。 それなら、ある程度は売れるだろうという。

条件2: 著者適性

著者適性とは、なぜその著者が書くのか、という理由である。 企画に市場性があると認められても、次の段階でここが問われる。

岡田は自分を例にした。 今の岡田がダイエット本を出してもダメだ。 著者の今の状態から見て、ダイエット本を出せる状態ではないからである。

もう1つの例が「勉強しなくても東京大学に行ける」という本だ。 岡田には出せない。 ホリエモンなら出せる。 高校2年か3年からいきなり勉強して東大に入ったからだ。 岡田が出せるとしたら、自分は東大に行っていなくても、高校生を何人も東大に行かせた実績がある場合に限られる。

放送中のコメントで流れた言葉を借りれば、これは「説得力」の話だ。 編集者は最初の読者である。 その人が納得できる実績がないと通らない。

実績がない例として、「全国のコンビニにあるお菓子のパターンを見つけて本にしたい」という持ち込みを想定している。 「どれぐらい研究しましたか」と聞かれて「今から調べます」と答えた時点で、絶対にダメだ。 何年間もの実績、積み上げ、自分なりの研究がなければ著者適性はない。

「スラムダンクが好きだからバスケの漫画を描きます」も同じだ。 意欲は分かったし、バスケの漫画は売れるかもしれない。 しかし『スラムダンク』の井上雄彦はバスケットが好きで、ずっと試合を見てきた。 それに対して「スラムダンクを100回読みました」では話にならない。

ただし、描き手本人に体験がない例はある。 『巨人の星』の川崎のぼるは野球をしたことがないし、『あしたのジョー』のちばてつやはボクシングをしていない。 それでも原作者の梶原一騎は格闘技をやり、スポーツ系のライターをやっていた。 その意味で、著者側の実績はあった。

自分の属性を掛け合わせる手もある。 女子高生なら「女子高生から見た」、ニートなら「ニートから見た戦争アニメ」のように、自分の立場を題材に掛け合わせると、その著者が書く意味が出る。 基本は、自分自身がそれなりに体験したことを書くのが王道だと岡田は言う。 それが著者適性である。

条件3: 意欲

意欲とは、最後まで書き切る力である。 岡田によれば、本を最後まで書ける人は意外に少ない。 「こんな本を書きます」と言って編集者が「いいですね」と返しても、その後は編集者がおだてないと書けない人が本当に多い。 そういう人は役に立たない。

では、編集者は意欲をどこで見るのか。 面談したときにちゃんと喋れるか、である。

岡田はここで、ある程度残酷な言い方だと断ったうえで、こう続けている。 小説家、漫画家、ゲームデザイナーなど、エンターテインメント産業でヒットを出せる人間は、大体が面白い人だ。 面白い人が本を書くから面白くなる、という一般的な法則がある。 口下手でうまく説明できないが、書いてみたらすごかった、という確率はそれほど高くない。 面白い本を書く人は、話している内容もちゃんと面白いし、分かりやすい。

「コミュ障の人には無理なのか」というコメントには、例外があると答えている。 その人の持っている体験の独自性がものすごく高い場合だ。 このときは喋りが下手だろうが、人当たりが悪かろうが関係ない。

それ以外の場合、編集者が最後に信頼するのは、著者の人間性である。 話してみて「この著者はちゃんと信頼できて、最後まで書いてくれそうだ」と思えるか。 その人間性をプレゼンできないと、なかなかしんどい。

アイデアが企画になる条件

セミナーではアイデアと企画の差を30分ほど話したという。 アイデアは「こういうのを思いついた」である。 企画は、そのアイデアに市場性があるのか、そしてこの私がやる理由は何なのか、まで答えたものである。 そこまでやったら、アイデアは企画になる。

当日の持ち込みに「新しい漢字のゲームを考えた」という人がいた。 漢字の語源になっている象形文字を組み合わせて、パズルのようにするゲームだ。 これはアイデアであって、企画ではない。

企画にするなら何が要るか。 どこかの小学校や中学校、塾でもいいから、子供たちに実際に遊ばせて、楽しんでいるという実績を作ることだ。 それが著者適性の裏づけになる。

市場性の側も、思いつきの段階では見えていない。 パズルものは普通の本よりコストがかかる。 両面カラーで印刷し、トムソンと呼ばれる金型で抜き、組み合わせをそろえて1つずつテーピングし、箱に入れ、さらにシュリンク包装をかける。 流通経路も、幼児玩具とガンプラとフィギュアばかりのおもちゃ屋に、知育玩具として押し込まなければならない。 本当に売るのは難しい。

岡田はこうも言っている。 そういう実績なしに「こんなのを思いついたからどうですか」と持ち込む人に限って、企画をパクられることをすごく怖がる。 アイデアしかないから、そのアイデアがすごく大事だと思ってしまう。 しかしアイデアだけではダメで、まず企画になっていないといけない。

出版以外の企画にも当てはまるか

岡田がこの話をした理由は、あらゆる企画で同じことが言えるからだ。 アニメなら、このアニメがなぜ売れるのか(市場性)、なぜうちのスタジオがこれを作れるのか(適性)、最後までやり抜く意欲の3つを見せないと通らない。 漫画でも同じである。

自分の企画に当てはめる3つの問い

面白い話だと思ったので、問いの形にしておく。

  1. なぜ今それが売れるのか。編集者役の他人に説明して、納得してもらえるか。
  2. なぜ自分がやるのか。何年分の体験や研究を根拠に出せるか。「今から調べる」になっていないか。
  3. 最後までやり切ると、話してみて信じてもらえるか。

思いつきの段階では、3つとも答えられないことが多いだろう。 答えを埋める作業が、アイデアを企画に変える作業である。

出典

元の放送は岡田本人のチャンネルに3本の動画として置かれていたが、2026-09-10 時点では非公開になっている。 内容は次の切り抜き動画2本で確認した。

余談として、岡田はこの話が5万円のセミナーのうち2000円分ぐらいだと言っている。 よその出版セミナーがこの程度の内容で1万円を取り、自主流通本しか出していない人が数万円のセミナーを開いていることに腹が立ち、本気でやったらどれぐらいできるかを試したのが、5万円セミナーの動機だそうだ。

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