OpenAIがClaude Codeで自社モデルを動かす手順を自ら公開した。逆方向は規約違反なのに

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OpenAIがClaude Codeで自社モデルを動かす手順を自ら公開した。逆方向は規約違反なのに

X(Twitter)で面白い応酬を見かけた。OpenAIのCodexリードが、ライバルAnthropicのClaude Codeの中で自社の最新モデルGPT-5.6 Solを動かす手順を自分から公開したのだ。

先に何が面白いのかを書く。第一に、同じモデルなのに、どのツール(ハーネス)から動かすかで出力の質が変わるという実測報告が発端になっている。第二に、まったく同じ行為——「自社サブスクのトークンを他社ハーネスで使う」——が、Anthropic側では規約違反としてブロックされ、OpenAI側では公式が手順を配るほど歓迎されている。第三に、この非対称性は両社の収益構造をそのまま映している。黒字化して守る側と、赤字のまま攻める側の構図だ。

経緯: 開発者の実測報告に、Codexリード本人が乗ってきた

2026年7月11日、開発者界隈で知られるTheo氏がこう投稿した。

gpt-5.6-sol is meaningfully better in Claude Code than in Codex(GPT-5.6 SolはCodexの中よりClaude Codeの中の方が明確に良い)

→ 元ポスト(@theo, 2026-07-11)

同じ重み、同じモデルなのに、どのハーネスが運転するかで結果が変わる、という主張だ。ここに飛んできたのが、OpenAIでCodexを率いるThibault Sottiaux氏(通称Tibo)のリプライだった。趣旨はこうだ。「レシピを共有してくれ。みんなSolをClaude Codeで使う方法を知りたがっている。うちはハーネスで差別しないので」。

そして翌日、聞くだけでなく本人が5分でできる手順を投稿した。

→ Tibo氏の手順ポスト(@thsottiaux, 2026-07-12)

自社のプロダクト(Codex)のリードが、「自社ハーネスより他社ハーネスの方がうちのモデルは良く動く」という指摘に乗っかって、乗り換え手順まで配る。普通の大企業のプロダクト責任者にはできない動きだと思う。

手順の中身: プロキシ1本とエイリアス1行

Tibo氏が公開した手順の実体は次の3ステップになる。

# Step 1: CLIProxyAPI をインストールして起動(ローカルプロキシ)

# Step 2: ChatGPT アカウントで OAuth ログインし、Claude Code の接続先を向ける
export ANTHROPIC_BASE_URL=http://localhost:8317/v1
export ANTHROPIC_AUTH_TOKEN=freecc

# Step 3: エイリアスを1本定義
alias claudex='CLAUDE_CODE_SUBAGENT_MODEL=gpt-5.6-sol \
CLAUDE_CODE_ALWAYS_ENABLE_EFFORT=1 \
CLAUDE_CODE_MAX_TOOL_USE_CONCURRENCY=3 \
ENABLE_TOOL_SEARCH=false \
claude --model gpt-5.6-sol'

→ CLIProxyAPI(GitHub)

鍵はANTHROPIC_AUTH_TOKEN=freeccというダミー値だ。本物のAPIキーはどこにも登場しない。Claude CodeはANTHROPIC_BASE_URLで指定されたローカルのプロキシに向かってAnthropic Messages API形式のリクエストを送り、プロキシがそれをOpenAI形式に翻訳して、ChatGPTアカウントのOAuthトークンでOpenAIのCodexバックエンドを呼ぶ。

Claude CodeからCLIProxyAPIを経由してOpenAI Codexバックエンドに届くリクエストの流れ。API形式の翻訳とOAuthトークンの添付をプロキシが担い、課金はChatGPTサブスクの枠を消費する
図1: Claude CodeのハーネスをGPT-5.6 Solが直接運転する。Anthropicのサーバーはこのループのどこにも登場しない

つまりClaude Codeという「ガワ」——Read/Edit/Bashといったツール群、システムプロンプト、エージェントの実行ループ——はそのままに、エンジンだけをGPT-5.6 Solに差し替える構図だ。Theo氏の主張は「このガワの設計がCodexのガワより優れている」という話であり、OpenAI側はそれを認めた上で「それでもモデルはうちのを選んでくれ」と言っていることになる。

課金は従量課金ではなく、ChatGPTサブスクの枠内

このレシピが「5分でできる」理由は課金構造にある。プロキシへの接続はplatform.openai.comのAPIキー(従量課金)ではなく、ChatGPTアカウント(Plus/Pro)のOAuthログインで行われる。接続先はCodex CLIやCodexアプリが普段使っているのと同じバックエンドで、消費されるのはサブスクのレート制限枠だ。

APIキーの発行もクレジットカードの登録も要らない。既に払っているChatGPTサブスクが、そのままClaude Codeの中で使い回せる。

同じ行為が、片方では規約違反、片方では公式推奨

ここからがこの話の核心だと思っている。「自社サブスクのOAuthトークンを、他社のハーネスで使う」という行為への両社のスタンスは正反対だ。

Anthropic側では、Claudeサブスク(Pro/Max)のトークンをプロキシ経由でClaude Code以外のハーネスに流す使い方は消費者規約違反にあたり、2026年初頭からトークンの検出とブロックが行われている。一方OpenAI側は、ChatGPTサブスクのトークンをClaude Codeで使うことを容認するどころか、Codexリード本人が「ハーネスで差別しない」と公言して手順まで配った。

自社サブスクのトークンを他社ハーネスで使う行為に対する両社のスタンス対比。Anthropicは規約違反としてブロック、OpenAIは容認して公式が手順を公開
図2: 同じ行為が、Anthropicでは規約違反としてブロックされ、OpenAIでは公式推奨になる

この非対称性はほとんど報じられていない。今回の騒動も、一般メディアは「5分でGPT-5.6をClaude Codeに入れられる」という手順の面白さを拾うだけで、「片方は規約違反でブロック、片方は公式が手順公開」という構図の対比にはあまり触れていない。だがビジネスの観点では、ここが一番の情報だと思う。

非対称性の正体は、両社の収益構造の差

なぜスタンスが正反対になるのか。両社の置かれた状況を並べると理由が見えてくる。数値はいずれも2026年5〜7月の報道ベースだ。

Anthropicは2026年4月に年換算収益でOpenAIを追い抜いたと報じられ、2026年第2四半期には創業以来初の営業黒字(約5.6億ドル)を見込むと伝えられている。その成長を牽引しているのがClaude Codeで、AIコーディング市場のシェアは約54%と推計されている。収益の中心は企業向けで、個人サブスクは全体の約5%にすぎない。

OpenAIは年換算収益で約250億ドルと報じられる一方、2026年は140億ドル規模の損失を見込み、黒字化は2029年以降とされる。収益に占める個人サブスクの比率は約4割で、コーディングハーネス(Codex)は追う側にいる。

AnthropicとOpenAIの対比。営業黒字化・コーディング市場シェア約54%・企業向け中心のAnthropicはトークンを囲い、大幅赤字・追う側のOpenAIは計算機資源を差し出して開放する
図3: 黒字化してシェアを握る側は囲い、赤字で追う側は開放する。規約の非対称性は収益構造の写し絵になっている

この対比を踏まえると、両社の賭けの対象が違うことがわかる。

  • Anthropicの賭け: ハーネス(Claude Code)こそが製品体験の中核で、サブスクに人を呼ぶ理由。だからトークンだけ抜かれて他社ハーネスに載せられるのは防ぐ
  • OpenAIの賭け: ハーネスは乗り換え可能で、勝負はモデルの実力で決まる。だからどのハーネスでもうちのモデルを使えるようにした方が勝ち筋が広がる

54%のシェアを握っている側がハーネスを囲うのも、まだ奪えていない側がモデルを開放するのも、それぞれの立場からは合理的な選択になっている。

開放は気まぐれではない。Codex App Serverという公式窓口

OpenAIの開放姿勢は、Tibo氏の投稿だけの一時的なものではない。製品として既に形になっている。Codex App Serverだ。

Codex App Serverは、Codexのハーネス(エージェントの実行ランタイム)をサードパーティの製品に組み込むための公式プロトコルで、もともとCodex CLIやVS Code拡張を動かすための内部インターフェースだったものを外部の開発者に開いた。OpenAI自身が「Unlocking the Codex harness(Codexハーネスの開放)」と題したブログで設計の経緯を説明していて、実装はGitHubで公開されている。

ここでも鍵は課金にある。認証には「Sign in with ChatGPT」が組み込まれていて、利用はエンドユーザー自身のChatGPTプランの枠に載る。Codexを組み込んだアプリの開発者が、推論コストを負担する必要はない。ユーザーが自分のサブスクを持ち込む形だ。

CLIProxyAPI(claudex)と並べると、OpenAIの開放には2つの方向があることがわかる。

  • claudex方式(非公式を容認): 他社のハーネス(Claude Code)に自社モデルを載せる。ガワを譲ってモデルを取る
  • Codex App Server(公式): 自社のハーネスごと他社製品に組み込ませる。ガワごと配る
OpenAIの2方向の開放。非公式容認のclaudex方式と公式のCodex App Serverが、どちらもユーザーのChatGPTサブスク枠に着地する
図4: 開放の方向は2つあるが、着地点は同じ。入口がどのガワでも、課金はChatGPTサブスクの枠に集まる

方向は逆に見えるが、終着点は同じだ。どちらの入口から入っても、課金と利用はユーザーのChatGPTサブスク枠に着地する。「ハーネスで差別しない」という発言は、この製品戦略を一言に縮めたものと読める。claudexの容認は例外的な太っ腹ではなく、既定路線の延長線にあった。

「OpenAIは損をしていない」わけではない

当初この開放を「サブスク枠はどのハーネスから叩かれても同じだけ消費されるから、OpenAIに追加コストはない」と整理しかけたのだが、これは正確ではない。

同じユーザーが同じ量を使う場合に限れば、Codex経由でもClaude Code経由でもOpenAIの負担は変わらない。しかしこの開放は、利用量そのものを増やす方向に働く。CodexのUXが合わずにサブスク枠を余らせていた人が、Claude Codeのハーネスで快適に回し始めれば、収入は定額のまま推論のGPU消費だけが増える。追加の1トークンから得られる収入はゼロで、計算機のコストは実費でかかる。

つまりOpenAIは、計算機資源という実費を差し出して、Claude Codeが握る開発者のマインドシェアを取りに行っている。「失うものがない開放」ではなく、シェア獲得のための先行投資と読むのが正確だと思う。赤字を掘ってでも成長を優先する側だからこそ打てる手でもある。

手元のcodex CLIでGPT-5.6 Solを動かすまで

この記事を書く前に、自分の環境でもGPT-5.6 Solを指定できるようにした。私はClaude Codeを日常の運転席にして、セカンドオピニオン用にcodex CLIを呼ぶ構成で使っている。claudex方式とは逆に、Claudeがメインで、GPTはCodexハーネスの中で動く外注レビュアーという位置づけだ。

手元のcodex CLI(mise管理の0.125.0)で-m gpt-5.6-solを指定したところ、400エラーで拒否された。

ERROR: {"type":"error","status":400,"error":{"type":"invalid_request_error",
"message":"The 'gpt-5.6-sol' model requires a newer version of Codex.
Please upgrade to the latest app or CLI and try again."}}

安定版最新の0.144.3にアップデートしたら通った。

mise use -g [email protected]
codex exec -m gpt-5.6-sol "1+1の答えだけを数字で返して"
# → 2

あわせて、Claude Codeから計画書や記事のレビューでcodexを呼び出すルールファイル側の-m gpt-5.5指定もgpt-5.6-solに更新した。モデルを明示指定している設定は、CLI本体を上げただけでは切り替わらない。

まとめ

  • OpenAIのCodexリードが、Claude Code上でGPT-5.6 Solを動かす手順を自ら公開した。仕組みはローカルプロキシによるAPI形式の翻訳で、課金はChatGPTサブスクの枠内で完結する
  • 同じ「自社サブスクを他社ハーネスで使う」行為が、Anthropicでは規約違反としてブロックされ、OpenAIでは公式推奨になっている
  • OpenAIの開放は一時の気まぐれではない。Codex App Server(ハーネスごと他社製品に組み込ませる公式プロトコル)が既にあり、そちらも課金はユーザーのChatGPTサブスク枠に載る。入口がどこでも自社サブスクに着地させる設計が先にあった
  • 非対称性の背後には収益構造の差がある。黒字化してコーディング市場の過半を握るAnthropicはハーネスを囲い、赤字で追うOpenAIは計算機資源を実費で差し出してでも開発者を取りに行く

モデルとハーネスを分けて評価する視点は、この先AIツールを選ぶときの基本になっていく気がする。同じモデルでもガワで性能が変わるなら、「どのモデルか」と同じくらい「どのハーネスか」が問われることになる。

参考リンク