証憑は1枚ずつ読ませない。リネームから投入直前までを工程でつなぐ
税理士向けの生成AI活用をまとめた書籍を読んだ。 レシートや証憑をAIに読ませてデータ化する事例が紹介されている。 同じ課題を自分がどう回しているか棚卸ししてみたら、出発点がそもそも違っていた。 自分の設計は、読み取りの精度を上げる方向ではなく、読み取りの前後をつないで人間の確認を1箇所に集める方向にある。 1枚を上手に読ませることより、スキャンから会計ソフトへの投入直前までを1本の工程としてつなぐことを優先している。
この記事は、その書籍の事例をお題に借りて、自分の実運用ともう一段の引き上げ方を書くシリーズの1本である。
スキャンから投入直前までを1本の工程にする
税務資料のスキャンには、ひとつなぎのやり方を割り当ててある。 スキャンした税務資料のPDFを渡すと、中身をAIが判定してファイル名を正規化し、そのまま依頼資料のチェックシートへの記入まで済ませる。 ファイルを開いて中身を確かめる手間と、シートに書き写す手間を、1回の指示の中で終わらせている。
仕訳の入力にも、同じ形の工程を割り当ててある。 仕訳データはスプレッドシート上で作り、会計ソフト(クラウド会計)への取り込み直前まで自動で進める。 CSVへの変換も、取り込み画面までの遷移も、そのつど人間が操作を覚えている必要はない。
ただし、投入そのものを実行する操作だけは、毎回人間が対象と内容を確認してから行う。 これは自分の裁量ではなく、例外を認めないルールとして固定してある。 リネームやチェックシート記入の工程にはない緊張感を、この1点にだけ置いている。
精度を追うより、確認を1箇所に集める
1枚ごとの読み取り結果を人間が全部確かめるのであれば、AIに読ませていても手作業と大差ない。 確認のたびに手が止まるうえ、確認そのものが漏れやすくなる。
工程をつなぐと、人間が確認すべき場所を1箇所に寄せられる。 その場所は「取り消しがきかない操作の直前」であり、それ以外の工程には置かない。 確認の数を減らしたいわけではなく、確認する場所を絞り込みたいから、工程をつないでいる。
手前の工程で間違いがあっても、そこで見つけて直し、やり直せばよい。 ファイルの名前替えも、チェックシートへの記入も、後から直しがきく。 やり直しがきかないのは、会計ソフトへの投入だけである。
顧客の情報についても、渡す先を工程の段階で決めてある。 外部のAIサービスに渡らない経路だけを通るように、あらかじめ工程を設計してある。
「受け取る、名付ける、記す、入れる」型の業務すべてに効く
年末調整の資料回収も、届出書の処理も、構造は同じである。 受け取る、名前を付ける、台帳に記す、システムに入れる、という4段の工程になっている。
会計事務所に置き換えるなら、担当するスタッフが変わっても工程そのものは変わらない。 それぞれの工程を手順ファイルにして、人間の確認ゲートをどこに置くかだけ決めておけば、同じ形をそのまま使い回せる。 確認ゲートの位置は業務ごとに違ってよく、資料回収なら受け取りの直後、届出書なら提出の直前というように、取り消しがきかない場所に合わせて動かせばよい。 新しく入ったスタッフに一から教える代わりに、ファイルを渡せばよい。
読み取りの精度は、道具が上げてくれる。 事務所が設計すべきなのは工程そのものと、確認ゲートをどこに置くかである。 証憑の工程も、確認ゲートの位置も、頭の中の運用ではなくファイルに固定する。