カスタムGPTは作らない。手順書をファイルにして工程に埋め込む
税理士向けの生成AI活用をまとめた書籍を読んだ。 業務に合わせた指示をあらかじめ組み込んだ自分専用のAIチャットボットを作る事例が紹介されている。 同じ課題を自分はどう扱っているか棚卸ししてみると、出発点がそもそも違っていた。 自分の環境にも相当するものはあるが、チャットボットの形をしていない。 工程ごとの手順書ファイルが71本ある、という形をしている。
この記事は、その書籍の事例をお題に借りて、自分の実運用ともう一段の引き上げ方を書くシリーズの1本である。
手順書ファイル71本で回している
自分の環境にはスキルとコマンドという2種類のファイルがある。 スキルとコマンドは、Claude Code のようなAIエージェントが作業のたびに参照して実行するルールと手順のテキストファイルのことだ。 「会議をまとめて」「デプロイして」のような一言で対応するファイルが読み込まれ、毎回同じ手順で作業が進む。
2026年7月2日時点で棚卸しをすると、プロジェクト側にスキルが10本とコマンドが21本、共通の環境側にスキルが28本とコマンドが12本、合わせて71本のファイルが積み上がっていた。
中身は幅広い。 会議の文字起こしから議事録を作るコマンド、前日の作業ログから日記を生成するコマンド、図解の配色やレイアウトの作法を固定したスキル、本番デプロイの手順を固定したスキルなどが並ぶ。 このシリーズの記事の作り方も例外ではない。 型、チェック項目、書く手順を1本のコマンドファイルに固定してあり、この記事自体もその手順に沿って書かれている。
チャットボットではなくファイルにする理由
ファイルの形にしているのには理由がある。
まず、ただのテキストファイルなので、gitで差分を管理でき、変更のレビューができる。 何をどう変えたかが、コミット履歴としてそのまま残る。
そして、組み合わせられる。 あるコマンドが別のスキルを呼び出す構造になっていて、たとえば議事録を作るコマンドは、文章を整えるスキルを内部で呼ぶ。 チャットボット1個の中で完結させる設計とは、ここが違う。
失敗を追記して育てられる点も大きい。 図解の作法を定めたスキルには、実際に踏んだ事故の注意書きが蓄積されている。 一度起きた事故は、注意書きが残る分だけ次から起きにくくなる。
チャットボットは、人が話しかける入口として置かれる。 スキルとコマンドは、工程の中に置かれて呼ばれる側になる。
事務所の「公式AI」より、工程の手順書
会計事務所に置き換えて考えると、この違いはそのまま設計の選択になる。 事務所公式のチャットボットを1個作る発想と、工程ごとの手順書ファイルを貯めていく発想は、同じ「AIに仕事を任せる」目的でも行き着く先が違う。
手順書ファイルの書き方自体は特別なものではない。 新人に渡す業務マニュアルと同じ考え方で書けばよく、違うのは実行する側が人ではなくAIだという点だけである。 書いた手順書は、次に同じ作業をするときにAIがそのまま実行する。
上手に頼める人を育てるのではなく、事務所の工程をファイルにする。 事務所の作法や工程は、人の頭に置くのではなくファイルに置く。 このシリーズで書いていく話の背骨は、すべてここにある。