AIに検索させて終わりにしない。取得手順をファイルにして毎朝積み上げる
税理士向けの生成AI活用をまとめた書籍を読んだ。 AIにWeb検索をさせて、集めた情報の分析までつなげる事例が紹介されている。 自分も似たことを毎日やっているが、出発点が違う。 自分は検索の答えをその場で受け取る代わりに、取得の手順そのものをファイルにして、実行結果をデータベースに積み上げている。 毎回同じ問いを立て直すのではなく、同じ手順を毎朝そのまま走らせている。 AIに聞き直す作業を減らしたいのではなく、聞いた結果を後から見返せる形にしたいというのが出発点である。
この記事は、その書籍の事例をお題に借りて、自分の実運用ともう一段の引き上げ方を書くシリーズの1本である。
検索ではなく、定点観測のコマンドを持つ
自分の環境では、こうした定型の調べものを、コマンドと呼ぶファイルに書いている。 何を、どこから、どういう手順で取得し、どこに格納するかを一度書いておけば、次からはそのコマンドを呼ぶだけで同じ手順がそのまま走る。 監視している米国42銘柄については、決算ガイダンス(SEC EDGARの開示)とアナリスト予想と株価(Koyfin)を日次でデータベースに格納するコマンドがある。 過去24時間の決算でコンセンサスを上回った銘柄をX検索で拾う仕組みも、同じ形で用意してある。 月次の統計も変わらない。 韓国の半導体輸出、台湾の総輸出、内閣府の機械受注、台湾ODMの月次売上は、それぞれ取得元から反映先までが手順として書き出されている。 どの統計も発表元の更新周期がまちまちなので、手順ファイルには「いつ確認すればよいか」も一緒に書いてある。 検索なら銘柄ごとに1つずつ聞くところを、このコマンドは42銘柄をまとめて回す。 起動するのは自分だが、取得から格納までを実行するのはAIである。
流れる検索結果を、積み上がるスナップショットに変える
その場の検索は、答えを読んだ瞬間に消える。 翌週になれば、また同じことを調べ直すことになる。 検索の記録は自分の記憶にしか残らないので、前回何を調べてどう判断したかも、聞かれなければ思い出せない。 手順をファイルにしておけば、同じ品質のまま何度でも繰り返せるし、実行結果は毎回同じ形式でデータベースに残る。
結果が蓄積すると、差分と推移が見えるようになる。 毎朝見るのは「昨日と何が変わったか」だけで済むようになり、調べ直す作業そのものが要らなくなる。 同じ形式で積み上がっているからこそ、今日の1件だけでなく、先週からの推移も並べて見返せる。 取得元の仕様が変わったときも、直すのは手順ファイル1箇所であり、その修正は翌日からすべての取得に効く。
事務所の「調べもの」も定点観測にできる
業界統計、金利、補助金の公募状況のように、毎回誰かが同じことを調べている作業は、取得の手順を1回書けば定点観測に変わる。 調べる担当者が変わっても、手順ファイルさえあれば同じ取得元から同じ形式で結果が残る。 会計事務所に置き換えるなら、業界統計や金利の調べ方を1本の手順ファイルにしておく、ということになる。 そうすれば、調べ方は個人のブックマークではなく事務所のファイルとして残る。 「検索が上手い人」を育てるのではなく、取得の工程をファイルにして、結果を事務所の資産として積み上げていく。