本はAIにその場で読ませない。本棚ごと全文検索DBにして日本語で質問する
税理士向けの生成AI活用をまとめた書籍を読んだ。 資料をAIにアップロードして、その資料だけを根拠に答えさせる使い方が紹介されている。 自分の環境で同じことをやろうとすると、アップロードの手前で止まる。 読ませたい相手がPDF数枚ではなく、本棚まるごとだからだ。
この記事は、その書籍の事例をお題に借りて、自分の実運用ともう一段の引き上げ方を書くシリーズの1本である。
本棚をまるごと全文検索DBにする
手元の紙の本は、裁断してスキャンし、OCRでテキストにして、全文検索できるデータベースに入れている。 2026年7月2日時点で349冊、章と節の単位に区切った断片にして47,158件になった。 Kindleで引いたハイライトも、同じデータベースに合流させている。
使い方は日本語の質問だけだ。 「減損について蔵書から関連する記述を探して、要約して」と Claude Code に頼む。 検索の組み立ても、当たった断片の読み込みも、どの本から引いたかを添えた要約も、AIエージェント側の仕事になる。 自分ではSQLを1行も書かない。 蔵書の検索用データベースの操作方法を、人間の側が覚える必要はどこにもない。 頼み方は、隣の席の人に調べものを頼むときと変わらない。
一回きりの添付ではなく資産にする理由
チャットにファイルを添付する方式だと、読み込ませた内容はその会話かぎりで消える。 次に別の論点を調べるときは、またファイル探しとアップロードから始めることになる。 データベースに変換しておけば、読ませる作業は1冊につき1回で終わり、あとはどの会話からでも同じ本棚が引ける。
もう1つの理由は、質問への回答以外の工程にも同じデータベースがつながることだ。 蔵書の1論点から演習付きの教材ページを生成するコマンドは、このデータベースを素材にして動いている。 実際に、消費税の経理処理という1論点では、蔵書の記述を素材にして、解説と演習を組み合わせたコースページをAIに組み立てさせた。 いま書いているこのシリーズ自体も、冒頭の書籍をこのデータベースに取り込み、事例の一覧を引き出すところから始まった。 読んだ本が、答えるだけでなく、作るための素材になる。
会計事務所の「本棚」も同じ形にできる
事務所にも、紙とPDFの知識が眠っている。 実務書、研修資料、税務雑誌の切り抜き、過去に書いた所内の検討メモ。 これらをテキストと出典のデータベースに変換しておくと、「この論点、どの本に書いてあったか」を探す時間が消える。 探し当てたあとで原典に戻れるように、書名と章の情報を一緒に持たせておくのがコツである。 職員を検索の上手な人に育てる必要はなく、日本語で聞けば返ってくる形まで変換しておくことが事務所側の仕事になる。
1つだけ線を引いている。 この本棚に入れるのは知識だけで、顧問先の申告データや個人情報は入れない。 同じ全文検索でも、知識の箱と顧客情報の箱は最初から分けて作る。 外部のAIサービスに渡る場所と顧客情報は、工程の設計段階で分けておく。
図解の作法をスキルファイルに固定した話と、やっていることは同じである。 本棚も、AIが読めるファイルにして初めて工程に組み込める。 作法も、工程も、本棚も、ファイルにする。