本は読んで終わりにしない。AIが実行できる手順書に変換する

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税理士向けの生成AI活用をまとめた書籍を読んだ。 よく使う指示文をひな形にして手元に置く、という事例が紹介されている。 同じ課題を自分がどう回しているか棚卸ししてみると、出発点がそもそも違っていた。 ひな形を集める代わりに、本そのものをAIが実行できる手順書、つまりスキルに変換している。

この記事は、その書籍の事例をお題に借りて、自分の実運用ともう一段の引き上げ方を書くシリーズの1本である。

書籍からスキルを生成するパイプライン

土台になっているのは、裁断とスキャンとOCRで作った蔵書の全文検索データベースである。 数え直すと、349冊、チャンク数にして47,158件が入っている。 このデータベース自体は書籍を横断して検索するために作ったものだが、そこにコマンドを2本足すことで、検索用の資料が実行可能なルールに変わる。 1本目は、OCR済みの書籍からスキルを自動生成するコマンドである。 2本目は、生成したスキルの品質をレビューするコマンドで、抽象化のずれや重複を洗い出す。

書籍を元にしたスキルの実例が2つある。 1つは日本語校正のスキルで、本多勝一『日本語の作文技術』の原則を整理したものだ。 もう1つはドキュメント作成のスキルで、中川邦夫『ドキュメント・コミュニケーションの全体観』の方法論を整理したものである。 この2つは、毎日の執筆と校閲の工程で実際に呼ばれている。 この記事も、公開前に同じ校閲工程を通る。

ひな形と手順書の違い

ひな形との違いは、働くタイミングにある。 ひな形は指示文なので、使う人が思い出して貼ることで初めて働く。 覚えていなければ、その回は使われずに終わる。 スキルはそうではなく、AIが作業のたびに自分でファイルを参照する。 人が覚えていなくても、毎回効く。 呼び出し方も具体的で、「文章を直して」と言えば日本語校正のスキルが、「計画書を書いて」と言えばドキュメント作成のスキルが、そのつど自動で読み込まれる。 どちらの本を読んだかを思い出す手間そのものがいらない。

この違いは、本の中身がどこに置かれるかの違いでもある。 ひな形にとどめている場合、本の学びは結局「読んだ人の記憶」に置かれたままになる。 スキルに変換すると、本の学びは「工程の部品」になる。 ここまでの流れを図にすると、書籍がOCRを経て、スキル生成、品質レビュー、スキルの棚をたどり、日々の工程で実行されるところまでが一本の線になる。

書籍がOCRを経てスキル生成、品質レビュー、スキルの棚をたどり、日々の工程(執筆、校閲、図解)で実行されるまでの流れを示す図
図1: 本をAIが実行できる手順書に変え、生成とレビューを経て日々の工程に置く

一度スキルにしてしまえば、解釈が気に入らないときはファイルを直せばよい。 直すたびに、本の読みが自分の業務に合わせて育っていく。

事務所の定番書を、所内スキルにする

どの事務所にも、新人に必ず読ませる定番の実務書やマニュアル本があるはずだ。 税法の解説書のこともあれば、事務所独自の業務マニュアルのこともあるだろう。 それを読書会や回覧で済ませてしまうと、学びはやはり個人の記憶にとどまる。 章ごとのルールをスキルの形に変換して工程に置けば、事情は変わる。 必要な章だけを取り出して差し込むこともできるので、本を1冊丸ごと覚えさせる必要もない。 「あの本を読んでおいて」という指示が、「この工程はあの本のルールで動いている」という状態に変わる。 新人が異動しても、担当が変わっても、ルールは工程の側に残る。

本の学びを頭の中に置いたままにせず、工程から呼べるファイルに変換する。 そこまでやって初めて、1冊の本が事務所の作法になる。