この図の使い方
事業の方向に迷ったとき、新しい案件をやるか断るか迷ったとき、今の仕事が正しい道なのか分からなくなったとき、この図に戻ってくる。
4つの段階をこの順番で通す。順番を飛ばすと、だいたい間違える。
ルートの前提: 機会の窓は閉じる
そもそもこの図はなぜ必要か。機会の窓が今、開いているからだ。
AIで業務が変わる、クラウド確定申告が主流になる、税理士の世代交代が進む、EDINETの粒度で財務データが無料で手に入る。こういう変化は永遠には続かない。半年か1年で構造が固まって、新参者が入れる余地が閉じる。
窓が開いている間に、一点に集中して駆け上がる。それが「集中一点突破」。だから迷っている暇はない。でも焦って間違った場所で走り出すと、窓が閉じた頃に何も残らない。だからまず図を通す。
① 全体像を絵に描く
やること: 選択肢を全部書き出す。
迷っている時点で、選択肢が3つくらいしか見えていない。だいたいそれは視野が狭いからで、本当は10個の選択肢があるのに3つに絞って悩んでいる。
3つの軸で書き出す。
- 市場: 誰が顧客になりうるか、どんな需要があるか、競合は誰か、代替品は何か
- 自分の持ち札: スキル、資産、人脈、投入できる時間
- 窓の状態: 今、何が変わりつつあるか。技術変化、規制変化、世代交代、価格破壊
ここを飛ばして②に進むと、食わず嫌いが起きる。「AはたぶんBより稼げない」と思い込んで、実際に比較検討すらしないまま選択肢から落とす。後で振り返ると、Aの方がずっと伸びていた、ということになる。
紙に書く。頭の中で描こうとしない。頭の中の全体像は、ほぼ必ず歪んでいる。
② 勝負の場所を選ぶ
やること: 全体像の中から「ここだ」を1つ決める。
選ぶ基準は3つ。全部満たす場所を探す。2つで妥協すると後で刺さる。
- 今、稼げるか: 未来の夢ではなく、現在のキャッシュフローを生むか。「3年後にバズる」を理由に選ばない
- 得意領域か: 自分の持ち札が活きる場所か。不得意な場所で戦うと、得意な人の10倍の時間がかかる
- 伸びる構造か: やった分だけ資産が積み上がるか。使い捨ての労働になっていないか。プラットフォーム性があるか
「今、稼げる」だけを満たす仕事は、やってもやっても資産が残らない。「得意で伸びる」だけだと、今月のキャッシュが回らない。「今、稼げて伸びる」だけだと、不得意な場所で体力を消耗する。
3つ全部が重なる場所は、普通、1つか2つしかない。見つかったら、そこが勝負の場所。
③ やらないことを決める
やること: 選ばなかった選択肢を、意識的に捨てる。
②で勝負の場所が決まったから、初めて「やらないこと」が決められる。逆に言うと、①と②をやらずに「やらないこと」だけ決めようとすると、食わず嫌いになる。順番を守る理由はここにある。
捨て方は3種類ある。
- 不得意は捨てる: 経理事務、デザイン、動画編集、SNS運用。得意な人に払って外注する方が、時給で考えて安く上がる
- 他人に任せる: 自分でやらなくても回る領域は、分業してパイを大きくする。全部自分でやろうとすると、1人分の時間しか使えない
- 浮気しない: 選んだ一点以外の面白そうな話が来ても、手を出さない。選ばなかった選択肢をもう一度検討し始めると、③をやっていないのと同じになる
「やらない」を決めないと、全部が中途半端になる。体感で言うと、やることを1個増やすと、既存の仕事の質が2割落ちる。5個やると、全部が平均以下。
④ 一気に駆け上がる
やること: 窓が開いている半年〜1年で、決めた一点を駆け上がる。
ここまで来たら、あとは走るだけ。ただし走り方が3つある。
- ネックは組む: 自分一人でやれないボトルネックは、立っている者を誰でも使う。親でも友人でも、金を払える専門家でも。遠慮している間に窓が閉じる
- 完璧より速度: 8割で出す。迷う時間が最大の敵。迷っている間に、競合が7割で市場を取る
- ビジネス視点を失わない: 技術に偏重しない。ツールが面白くても、顧客が金を払う理由にならないなら、それは趣味。「これは誰のどの痛みを解消するか」を毎週確認する
駆け上がる期間は短い。だから①〜③で迷っている余裕はない、けど、①〜③をやらずに走り出すと、違う山を登ることになる。図の前半は短時間で、後半は全力で、というリズム。
フィードバックループ: 環境が変わったら①に戻る
窓の状態も、自分の持ち札も、時間とともに変わる。半年走ったら①に戻って、絵を描き直す。
変わっていなければ②〜④を続ける。変わっていたら、勝負の場所を選び直す。ここで「前に決めたから」と固執すると、窓が閉じた市場で走り続けることになる。
順番を守ることの意味
①→②→③→④の順番を守る。これがこの図の一番大事な部分。
- ①を飛ばして②に進む → 視野が狭いまま選ぶので、後で「あっちにすればよかった」と後悔する
- ②を飛ばして③に進む → 勝負の場所が決まっていないので、「やらないこと」の基準がなく、食わず嫌いになる
- ③を飛ばして④に進む → 手が広がって全部が中途半端になり、窓が閉じた頃に何も残らない
迷ったら、自分が今どの段階にいるか確認する。だいたいは「①か②が甘いまま④を走っている」状態になっている。一度手を止めて、①に戻る。
この図を見返すタイミング
- 新しい案件・依頼が来て、受けるか迷ったとき
- 今の仕事に違和感があるとき
- 半年に一度、定期点検として
- 大きな環境変化(技術、規制、市場)があったとき
迷ったらこの図に戻ってくる。それで十分。