FFIVF5
直近8四半期 決算ビート × 株価モニタリング
株価推移 × 売上ビート率
点の色: 大幅ビート 軽ビート 軽ミス 大幅ミス。点の大きさはビート率の絶対値。 / 末尾「直近」は2026-09-04時点の終値(決算とは独立)。
売上・EPS 推移:実績 vs アナリスト予想
F5(FFIV)は、企業のアプリとAPIの手前に置く「配信」と「防御」を売る会社。看板は1990年代から続くロードバランサ BIG-IP で、届いた通信をどのサーバーへ振り分けるか、その通信を検査して通すか止めるかを、アプリの直前で決める。収益は専用ハードウェアの「システム」、ソフト単体で売るサブスクリプション(BIG-IP のソフトウェア版と NGINX)、保守を含む「グローバルサービス」の3本立てで、SaaS一色の同業と違い、業績を動かすのはシステムとソフトウェアの構成比になる。直近8四半期はシステムが+26〜42%で伸び続ける一方、ソフトウェアは-8%〜+22%と波打っている。生成AIはここに3経路で効くと会社は説明する。学習・推論の手前でデータを詰まらせずGPUを遊ばせない AI data delivery、CalypsoAI(2025年9月・$180M)と SurePath AI(2026年6月・約$50M)の買収で固めた AI Gateway / AI Guardrails による AI runtime security、そしてAIファクトリー内外のトラフィックとGPU利用率を最適化する AI factory load balancing である。ただしF5は単一セグメント開示で、AI関連売上を四半期ごとには出さない(唯一の金額開示はFY26上期の約$50M)。会計年度は9月末締め。2025年10月15日に国家支援型攻撃者による BIG-IP 開発環境への長期侵入とソースコード流出を開示して株価は2営業日で約14%下げ、FY26の売上成長ガイドも0〜4%へ切り下げたが、その後3四半期連続で引き上げて9〜10%まで戻している。AIの業績寄与が半導体からソフトウェア/サイバーセキュリティへ波及する過程を観測するために追加した銘柄で、成長が加速したSNOW・減速したZSと並べると、FFIVではAIが押し上げているのがソフトウェアではなくハードウェアの側だ、という第三のパターンが読める。
| 項目 | FY24Q4 2024/10/28 | FY25Q1 2025/1/28 | FY25Q2 2025/4/28 | FY25Q3 2025/7/30 | FY25Q4 2025/10/27 | FY26Q1 2026/1/27 | FY26Q2 2026/4/28 | FY26Q3 2026/7/27 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 重要イベント | システム売上は-3%と底だが非GAAP EPSが+6.4%ビート。$10億の自社株買い枠追加も同時発表し+10.1%。8四半期続くプロダクト2桁成長はここから始まった | 売上$766Mが会社ガイド上限$725Mを$41M超過。ソフト+22%・システム+18%の同時加速で通年ガイドを6〜7%へ引き上げ、+11.4% | システム+27%の一方でソフトウェアが$158Mと前年横ばい。売上ビートは+1.7%にとどまり反応はほぼフラット | システム+39%・ソフト+16%で全項目ビート。通年の含意成長率を約9%へ引き上げ | 実績はシステム+42%と好調も、12日前に開示した侵害を織り込みFY26ガイドを売上0〜4%・EPS$14.50〜15.50へ引き下げて-7.9% | 懸念された販売サイクルの停滞が起きず売上$822M・EPS$4.45。EPSビート+21.9%は8四半期で最大、通年ガイドも5〜6%へ引き上げ | システム+26%・ソフト+17%が揃い通年ガイドを7〜8%へ再引き上げ。会社は需要の背景に「AI推論の変曲点」を挙げた | システム+32%でプロダクト+19%、8四半期連続の2桁プロダクト成長。通年ガイドを9〜10%へ引き上げたが反応は-1.1%と材料出尽くし |
| 売上 ($) | ||||||||
| 売上実績 | $746.7 M | $766.5 M | $731.1 M | $780.4 M | $810.1 M | $822.5 M | $811.7 M | $865.1 M |
| アナリスト予想 | $730.4 M | $715.5 M | $718.9 M | $752.8 M | $794.1 M | $755.9〜758.1 M | $783.2 M | $834.6 M |
| ビート率 | +2.2% | +7.1% | +1.7% | +3.7% | +2.0% | +8.7% | +3.6% | +3.7% |
| YoY成長率 | +6.0% | +11.0% | +7.0% | +12.0% | +8.0% | +7.0% | +11.0% | +11.0% |
| EPS ($, 非GAAP) | ||||||||
| EPS実績 | $3.67 | $3.84 | $3.42 | $4.16 | $4.39 | $4.45 | $3.90 | $4.73 |
| アナリスト予想 | $3.45 | $3.36 | $3.10〜3.11 | $3.50 | $3.97 | $3.65 | $3.44〜3.47 | $4.00 |
| ビート率 | +6.4% | +14.3% | +10.1% | +18.9% | +10.6% | +21.9% | +12.9% | +18.3% |
| 次Q会社ガイド (midpoint: 売上 $M / 非GAAP EPS $) | ||||||||
| 会社ガイド | $715.0 M | $715.0 M | $750.0 M | $790.0 M | $755.0 M | $780.0 M | $830.0 M | $880.0 M |
| アナリスト予想 | $701.0〜706.0 M | $701.9〜703.6 M | $737.9〜740.0 M | $770.6〜779.2 M | $789.4〜792.4 M | $745.2〜747.6 M | $815.0〜818.5 M | $854.3〜858.9 M |
| 上振れ率 | +1.6% | +1.7% | +1.5% | +1.9% | -4.5% | +4.5% | +1.6% | +2.7% |
| 次Q EPSガイド | ||||||||
| 会社ガイド | $3.35 | $3.08 | $3.47 | $3.93 | $3.60 | $3.40 | $3.97 | $4.20 |
| アナリスト予想 | $3.36〜3.37 | $3.19〜3.22 | $3.56 | $3.84 | $4.02〜4.04 | $3.36〜3.41 | $3.85 | $4.12〜4.14 |
| 上振れ率 | -0.4% | -3.9% | -2.5% | +2.3% | -10.7% | +0.4% | +3.1% | +1.7% |
| 株価反応 ($) | ||||||||
| 発表日終値 | $218.36 | $269.72 | $265.07 | $298.99 | $290.41 | $270.43 | $303.79 | $407.96 |
| 翌日終値 | $240.33 | $300.46 | $262.72 | $313.42 | $267.58 | $292.30 | $328.15 | $403.46 |
| 騰落率 | +10.1% | +11.4% | -0.9% | +4.8% | -7.9% | +8.1% | +8.0% | -1.1% |
注: 実績値は全8四半期ともSEC EDGARの8-K Exhibit 99.1(CIK 1048695)から転記。EPSは非GAAPの希薄化後1株利益で、F5はGAAPでも黒字だが(FY26Q3はGAAP $3.62に対し非GAAP $4.73)、市場は非GAAPで見ている。売上の金額は各リリースの連結損益計算書の実額(千ドル単位)を$M表記に直したもので、前年同期比は会社が本文で示した丸め値を優先している。
注: 実績のコンセンサスは、決算当日・翌日の報道が引用した各社の予想値(LSEG系のReuters/MarketScreener、Zacks、StreetInsider、Investing.com、StockStory、Benzinga、TipRanks、MarketBeat)を突き合わせ、独立に確認できたソースの中央値を採用した。売上で$2M超、EPSで1%超に割れた期はレンジで表記し、ビート率はその中央値に対して計算している。MarketBeatの「実績」列はGAAPと非GAAPが混ざっているため使っていない(FY25Q1の実績EPSを$3.11と表示するが非GAAP実績は$3.84、FY25Q2の実績売上を$590.16Mと表示するが正しくは$731.1M)。WallStreetZenは四半期ラベルと数値の両方が壊れているため不採用。FY25Q1の売上コンセンサスはMarketBeatだけが$716.5Mと外れており、他5社(LSEG・StreetInsider・Investing.com・TipRanks・Zacks)が$715.4〜715.8Mに固まるため$715.5Mを採った。FY24Q4の売上はブローカーポール系3社が$730.4Mで一致し、Zacksパネルのみ$729.6Mだったため前者を採った。
注: ガイダンス列は会社が示した次Qレンジの中央値。F5は売上と非GAAP EPSの両方を四半期ガイドで出すためguidance.epsはnullにしていない。FY26Q3行のガイドは宛先がFY26Q4で、会計年度末が9月30日のため発表は2026年10月下旬の見込み(本稿執筆時点で日程は未告知)。
注: ガイド側の「当時のコンセンサス」は、決算当日・翌日の報道(LSEG系のReuters/MarketScreener、Zacks、StreetInsider、Benzinga、Investing.com、StockStory、Seeking Alpha)を突き合わせた。提供元によって売上で$1〜9M、EPSで$0.01〜0.05の系統的な差があり単一の正しい値が存在しないため、割れた期はレンジで表記しビート率はその中央値に対して計算している。平均や補間で1点に丸めてはいない。FY26Q2が示したFY26Q3ガイドのEPSコンセンサス$3.85だけはZacks単独で、他社が当時の次QのEPS予想を記事にしていなかった。
注: ガイド比較のコンセンサスは8四半期すべて2社以上で確定できたため、この列にn/aはない。FY24Q4とFY25Q1が示したガイドはいずれも売上ではコンセンサスを上回り(+1.6%・+1.7%)EPSでは下回る(-0.4%・-3.9%)形で、FY25前半は「売上は強気・利益は保守的」というガイドの出し方が2期続いた。なおFY25Q1のガイドについてReutersは「EPS $3.02〜3.14 は市場予想$3.21を上回る」と書いているが数値上は下回るため、文言ではなく数値を採った。
注: F5は売上をシステム(ハードウェア)・ソフトウェア・グローバルサービスの3本に分けて開示する。KPIチャートの2本はこの開示値で、各決算リリース本文の$M表記(会社が丸めたもの)をそのまま使い、全8四半期について10-Qの製品売上内訳表と一致することを確認した。
注: AI関連売上は四半期ごとには開示されない。単一セグメント開示で、CFOは「製品を売上ラインで分解しない。当社は単一セグメントの会社だ」と述べている。唯一の金額開示はFY26Q2(2026/4/28)の決算説明会でLocoh-Donou CEOが準備原稿で述べた「FY26上期6ヶ月の、直接AI用途3種における売上が約$50M。前年同期比+200%超。AI用途でF5を使っている顧客は約100社に接近」で、Motley Fool版とGoodMoat版の2トランスクリプトで照合した。FY26Q3ではこの数字を更新せず「前四半期に$50Mを超えたと示したが、この数字を毎四半期更新するつもりはない」と後方参照するにとどめている。
注: AI関連の顧客数には性質の違う2つの数字があり、混ぜて読むと誤る。FY26Q3のQ&AでCEOが述べた「AIセキュリティの顧客数はこの四半期だけで100%増えた」(Timothy Long/Barclaysへの回答。roic.ai版とAlphaStreet逐語版の2ソースで同一文言・同一話者を照合)と、同じコールの準備原稿にある「直接AI用途3種の累計顧客数がQ3だけで50%増えた」は対象が別である。どちらも倍率のみで絶対数の開示がなく、前四半期のQ&Aでは同じCEOがAIセキュリティに注力する顧客を「ごく少数(a small minority)」と表現している。FY26Q2の「約100社」は直接AI用途全体の数で、AIセキュリティ単体の母数として使うと誤りになる。
注: 同じFY26Q3の説明で、Distributed Cloud上のAI対応WAFについて「当社がこれまでに投入したどの製品よりも立ち上がりが速く、数か月で数百社が稼働している」、AI関連の商談規模について「数十万ドルから8桁ドルまで幅がある」と述べている。いずれも件数・規模の話で、売上の話ではない。
注: F5はAIセキュリティを買収で埋めている。2025年9月にCalypsoAIを$180M(FY25Q4中にクローズ、AI Guardrails/AI Red Teamの元)、2026年6月にSurePath AIを約$50M(10-Qで確認、シャドーAI検知)で取得した。KPIチャートのソフトウェア売上の凸凹には、この買収分も乗っている。
注: サイバー侵害: 2025年10月15日にForm 8-K Item 1.05で開示された。国家支援型の脅威アクターが、2025年8月9日の覚知時点でBIG-IPの製品開発環境とエンジニアリング知識管理基盤へ長期・継続的にアクセスしており、BIG-IPソースコードの一部と未公表脆弱性の情報を含むファイルが流出した。NGINXのソースコード、F5 Distributed Cloud、Silverlineへのアクセス痕跡は無いと会社は説明している。米司法省が2025年9月12日に開示延期を認定していたため、覚知から公表まで2か月開いている。
注: 侵害開示への株価反応は開示当日ではなく翌日に出ている。開示前日10/14の$343.17に対し、10/15が$330.75(-3.6%)、10/16が$295.35(-10.7%)で、2営業日の下落率は-13.9%。開示が10/15の取引終了後だったためで、「開示当日は-3.6%」と読むと実態を取り違える。
注: 侵害の対応費用は非GAAPから除外されている。税引前でFY25Q4 $3.4M・FY26Q1 $17.5M・FY26Q2 $6.0M・FY26Q3 $3.0M(累計約$29.9M)で、FY26Q3に保険金回収$5.3Mを初めて計上した。売上への影響額は8-Kにも10-Qにも定量開示がないため、四半期ごとの逸失額は算出できない。
注: FY26通年ガイドは、侵害を織り込んだ2025/10/27の売上成長0〜4%・非GAAP EPS $14.50〜15.50を底に、5〜6%(2026/1/27)→7〜8%(4/28)→9〜10%・EPS $17.21〜17.33(7/27)と3四半期連続で引き上げられた。KPIチャートに推移を載せている。会社は当初「侵害が無ければmid-single-digitの成長が可能だった」と説明していたので、最終的なガイドはその想定を上回っている。
注: 直近の株式分割は2007年8月の2対1で、本表の8四半期はすべてその後にあたる。したがってEPS・株価は全期間そのまま比較でき、分割調整はしていない。F5は無配のため、調整後終値と実際の終値も一致する。
注: 8四半期すべて引け後(AMC)発表。発表日終値は発表当日の通常取引終値、翌日終値はその翌営業日の終値で、Yahoo Finance chart APIとNasdaq APIの2ソースが一致した値を採用した(重複期間484営業日すべてで終値が一致)。なおFY26Q3の-1.1%は数字ほど平穏ではなく、翌日は日中で12.8%振れ、さらに翌々日に-4.1%下げて2営業日では-5.2%になっている。
ハイライト決算: FY26Q3
FY26Q3(2026年7月27日発表)は、侵害からの回復が完了したことと、AI需要がハードウェアの側に出ていることが同時に見えた四半期。売上$865Mはコンセンサス$834.6Mを+3.7%、非GAAP EPS $4.73は$4.00を+18.3%上回った。中身を分けると、システム(ハードウェア)売上が$240M・+32%と伸びの主役で、ソフトウェア売上は$223M・+7%にとどまる。プロダクト売上全体では+19%で、これで8四半期連続の2桁成長になった。会社はFY26通年ガイドを売上成長9〜10%(前回7〜8%)・非GAAP EPS $17.21〜17.33(前回$16.25〜16.55)へ引き上げており、2025年10月に侵害を受けて0〜4%まで切り下げたガイドを3四半期で戻し切った形になる。AIについては、Locoh-Donou CEOが決算説明のQ&Aで「AIセキュリティの顧客数はこの四半期だけで100%増えた」と述べ、準備原稿では「直接AI用途3種の累計顧客数がQ3だけで50%増えた」と説明した。ただしどちらも倍率だけで絶対数の開示がない。会社がAIについて出した唯一の金額は前四半期の「FY26上期6ヶ月の直接AI用途売上が約$50M・前年同期比+200%超」で、これは同期間の総売上$1,634Mの約3%にあたる(比率は当方の計算)。つまりこの四半期で確かめられるのは、AI関連の絶対額はまだ全社の数%であり、「AIが来ているはずの時期にシステム売上が+32%で伸び、ソフトウェアが+7%に留まっている」という構成比の事実のほうである。
出典
- F5 FY2026 Q3 8-K Ex-99.1 (SEC)
- F5 FY2026 Q2 8-K Ex-99.1 (SEC)
- F5 FY2026 Q1 8-K Ex-99.1 (SEC)
- F5 FY2025 Q4 8-K Ex-99.1 (SEC)
- F5 FY2025 Q3 8-K Ex-99.1 (SEC)
- F5 FY2025 Q2 8-K Ex-99.1 (SEC)
- F5 FY2025 Q1 8-K Ex-99.1 (SEC)
- F5 FY2024 Q4 8-K Ex-99.1 (SEC)
- F5 サイバー侵害の開示 8-K Item 1.05 (SEC, 2025-10-15)
- F5 Investor Relations(決算資料・スライド)
KPI の推移
ヘッドラインのビート幅ではなく、傾きを見るための図。値は各点に直接書いてある(ホバー不要)。
BIG-IP の専用機。$130M から $240M へ8四半期で1.8倍になり、直近6四半期はすべて前年同期比+26%以上。FFIV の成長を作っているのはこちら側で、括弧内は前年同期比。
BIG-IP のソフトウェア版と NGINX のサブスクリプション。$228M→$223M と8四半期でほぼ横ばいで、FY25Q2 と FY26Q1 には前年割れもある。大型のマルチイヤー更新が入る期に跳ねるため四半期の凸凹が大きい。
ソフトウェア比率が高い期(FY25Q1・FY25Q4・FY26Q1)に上がり、低い期(FY25Q2・FY26Q2)に下がる。ハードウェアが伸びるほど利益率には逆風がかかる関係が読み取れる。
横軸は「どの決算で示したか」。2025年10月の侵害開示を織り込んだ初回ガイドが底で、そこから3四半期連続で引き上げられた。縦軸は幅を見せるため0起点にしていない。
- FY25Q4: FY26 の初回提示。侵害で販売サイクルに短期的な混乱を見込み、売上成長ガイドを0〜4%に設定
- FY26Q1: 1回目の引き上げ。売上成長ガイドは5〜6%へ
- FY26Q2: 2回目の引き上げ。売上成長ガイドは7〜8%へ
- FY26Q3: 3回目の引き上げ。売上成長ガイドは9〜10%へ。侵害前に会社が示唆した「mid-single-digit」を上回った