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AMD MI355X vs NVIDIA B200
―「1百万トークンあたりコスト」で見る真の勝者はどちらか
🔍 はじめに
2025年のAIインフラ競争は、性能よりもコスト効率(TCO / Cost per Million Tokens)が主戦場になりつつあります。 最近のSemiAnalysisレポートでは、AMDのMI355XがNVIDIAのB200を一部条件下で上回るという主張がありましたが、これは本当に現実的な比較なのでしょうか。
ここでは、公開データ・実測・仮定モデルをもとに、両者の実効コストを徹底比較します。
🧩 1. 基本スペック比較
| 項目 | AMD MI355X | NVIDIA B200 |
|---|---|---|
| アーキテクチャ | CDNA4 | Blackwell |
| メモリ | HBM3E 288 GB / 8 TB/s | HBM3E 約192 GB / ~7.7 TB/s |
| TDP | 約1,400 W(液冷) | 約1,787 W(DGX B200換算) |
| FP8演算性能 | 約10 PFLOPS | 約8 〜 10 PFLOPS(構成依存) |
| FP4演算性能 | 約20 PFLOPS | 約18 〜 20 PFLOPS |
| システム構成 | Infinity Fabric ×8 GPU | NVLink/NVSwitch ×72 GPU(NVL72) |
💡ポイント: MI355Xはメモリ容量とFP4/FP6性能で優位。 一方、B200はNVSwitchスケール性能・ソフトウェア最適化で優勢です。
⚙️ 2. コスト構造の前提
TCO(総所有コスト)は、以下の変数で大きく変わります。
- GPU本体価格(AMDはNVIDIA比約30%安いと推定)
- 消費電力+冷却インフラコスト(OPEX)
- 実効性能(スループット/トークン処理速度)
- ソフト最適化・サポート費用
- 利用率・契約形態(オンデマンド/リザーブド等)
こうした複合要素のため、TCOは見かけ上AMDが安く見える構造になりがちです。
💰 3. 「1百万トークンあたりコスト」比較
3.1 TCOモデル上の比較(AMD公称)
| 指標 | MI355X | B200 | 差 |
|---|---|---|---|
| TCO per 1M Tokens | $1.48 | $1.95 | -24% (AMD有利) |
📉 これは理論上のTCOモデルによるもので、 AMDは「同等性能をより低コストで実現可能」と主張しています。
しかし、多数の前提(電力単価・稼働率・サポート費用など)がこの比較には含まれており、現実的な価格差は20〜30%の範囲にとどまると考えられます。
3.2 実測ベース(SemiAnalysis / InferenceMAX v1)
| 条件 | 結果 | コメント |
|---|---|---|
| 同一ワークロード(SGLang + TRT-LLM) | B200がCost per Million Tokensで優位 | 実測スループットが高く、CUDA最適化が効いている |
| 消費電力効率 | MI355Xやや有利(TDP比) | ただし液冷・PUE次第で差は縮小 |
| ソフト最適化負荷 | B200が低い | ROCmは改善中だがエコシステム差が大きい |
🧮 実運用条件に寄せるほど、B200優位が明確になる。 AMDが理論値で示すTCO差は、運用・最適化・スケール効率でほぼ相殺されます。
⚡ 4. 実効コストを左右する要因
コスト構成要素の比較
(1) スケール効率
- B200 NVL72構成は72 GPUを一体化可能で、推論・トレーニング両方で効率が高い。
- MI355Xは8 GPU単位のInfinity Fabric構成で、通信帯域面で不利。
(2) 電力・冷却コスト
- MI355Xは1400 Wと高密度だが、液冷前提。
- B200はシステム全体で14.3 kW(8GPU)。 → データセンターPUE(1.1〜1.4)を考慮すると、OPEX差は年率で数%程度。
(3) ソフトウェア最適化
- NVIDIAのCUDA + TensorRT-LLMが圧倒的に成熟。
- AMDのROCmは対応拡大中だが、最適化工数・サポートコストが潜在的負担に。
📊 5. 総合評価
| 観点 | 優位 | コメント |
|---|---|---|
| 理論TCO | 🟢 AMD | 1.48 vs 1.95 で24%安価(仮定ベース) |
| 実測スループット | 🟢 NVIDIA | 高負荷LLMで20〜30%高性能 |
| 電力効率 | ⚪ AMD(僅差) | 高TDPだがシステム全体では拮抗 |
| ソフト・運用性 | 🟢 NVIDIA | エコシステムの安定性と人材層 |
| スケーラビリティ | 🟢 NVIDIA | NVL72構成で圧倒的スケール |
🧭 6. 結論
- AMD MI355Xは小〜中規模LLM推論で高い価格性能比を発揮。
- しかしNVIDIA B200は大規模運用・実測性能・安定性で依然優位。
- 1百万トークンあたりの実効コスト差は±20〜30%の範囲に収束する見込み。
要するに、
「AMDは理論上安い、NVIDIAは実運用で強い」 というのが現時点の最も現実的な評価です。
📚 参考資料
- AMD公式仕様書: AMD Instinct MI355X
- NVIDIA公式: DGX B200
- SemiAnalysis: “InferenceMAX v1 Cost per Million Tokens Benchmark” (May 2025)
- Inference & AI Infra Reports, 2025 Q2〜Q3